- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166612239
作品紹介・あらすじ
組織には個人を潰す力がある。生き延びるにはどうしたらいいか?現場で使える思考&ノウハウの詰まった一冊。外交の現場、国家権力との対決といった数々の修羅場をくぐり抜けてきた著者が、自らの切実な体験と該博な知識をもとに、日本の組織の正体を暴く。テキストとなるのは、夏目漱石『坊っちゃん』、城山三郎『官僚たちの夏』、『忠臣蔵』、『逃げるは恥だが役に立つ』など小説やドラマなど。物語に隠された「組織の内在論理」が鮮やかに分析される。さらには昭和史を「失敗と成功の教訓の宝庫」として読み解く一章も。「上司と戦ってはいけない」、「人事は最も危険な仕事」、「人脈はABCに分類せよ」など、怖いほどリアルな、目からウロコのアドバイスも満載。
感想・レビュー・書評
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昨年の10月11月に佐藤優さんが文藝春秋夜間授業を担当、「組織で生き残るにはどうすればよいか」という問題意識に従って行われた講義に基づいてつくられたのがこの本。
この場合の「組織」とは、「アソシエーション」、つまり共通の目的や利害、関心を持つ人々が自発的に形成する組織をさします。(血縁、地縁などに結びついた組織である「コミュニティ」については、改めて書いてくださるようなので、楽しみにしています)
ここでは組織論と文学を結び付けています。
佐藤さんはこれに関して、宇野弘蔵さんから学んだそうです。
いろいろな小説が例にあげられていますが、私が読んでもたぶん、佐藤さんのような解釈はできません。
だからこれからもそれらの小説を読むことはたぶんなく、佐藤さんの本で学んでいきます。
今回とくにためになったのは、『忠臣蔵』のところです。
私の言葉で語るより、まず佐藤さんの文を引用します。
〈人を動かすとき、最も力を発揮するのは、命令や強制でもなく、利益誘導でもありません。実はこの感化の力です。人の振る舞いをみて、影響を受け、自分も何かやらなくてはと思う。それは自発的な行為だけに強いのです。
人は、自己犠牲的な行動を取る人から感化され、動かされる。人を率いるためには、自己犠牲を厭わないこと。少なくとも自己犠牲を演ずること。これこそ人心掌握の要です。
このことを裏返して考えてみましょう。もしもあなたの周りに、自己犠牲的に仕事に打ち込み、周りに気配りも欠かさない人間がいたら、その引力圏に引きずり込まれないように注意すべきです。その彼ないし彼女は、もしかすると大変に恐ろしい人間で、大石内藏助のように、あなたを吉良邸に導き、気がついたら並んで切腹させられてしまうかもしれないからです。
この自己犠牲の構図は、実はブラック企業においても観察されます。ブラック企業は、従業員を脅しあげてブラック化するだけではありません。一生懸命に自分の仕事をこなし、睡眠時間も削り、チームや部下のために誠心誠意働いている上司がいると、「この人についていきたい」と感化を受け、自らブラックな働き方に突入していくのです。
あるいは、自己犠牲の究極の形のひとつに、自爆テロがあります。いま世界中でさまざまなテロが起きていますが、その担い手に大きな変化が起きています。かつてのように過激なテロ組織だけではなく、組織的に何の背景もなく、協力者すらいないローンウルフ(一匹狼)型が急速に増えている。これはまさに感化によるものです。メディアで自爆テロなどが報じられるのを見て、自分も一身をかけて何かしなくては、と思う、自己犠牲による感化は、それだけの力を秘めているのです〉
自分はめっちゃそういうタイプで
これは女限定で考えると300人に一人ぐらいの逸材なんですね、自分。
それって褒めていいのか何なのか。
だから佐藤さんのクールなお言葉がためになるのです。
これからも読みます、佐藤さんの本を。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ネトウヨはじめ保守を気取る連中は口を揃えて「戦後は個人主義が蔓延した」と嘆くが、なんのことはない。日本は未だ、全体主義どころか封建制なのだ。これを読むとよく分かるぞ。そして、そんな現代的封建制を生き抜くアドバイスもしっかり用意されているぞ。みんなも負けるなよ。
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なんか自分の気持ちを代弁しててもらったような一冊。自分も組織に馴染まなかったというイメージがあったので、あ、そういうことかと思えたというか。
佐藤さんの著作はあまり読んでこなかったけど、これから読みたくなる一冊。 -
自分の所属する組織に嫌気がさした時に手に取った本。色んな小説の一節をテキストとして取り上げて、組織の論理について説明してくれる。
複合アイデンティティについての章、もう少し知りたかった。でもこの本のコンセプトとして、そこに取り上げられた小説を読んで、自身で考えを深めていくべきなんだろうなーと。
そして昭和史に学ぶの章…身に積まされた。うちの組織はまだ昭和から抜け出せていないのか。
組織で生き残るには、がテーマの本ではあるけどちょっとしたブックガイドにもなっていて、読書熱が高まる。あとがきも良かった。もっと本を読もう。
★…4.5
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うまくいっている時の自戒として。
大きなものから細かいものまで参考になる。 -
身近なテキストを使って具体的に説いてくれるのでとてもわかりやすい。テキストとして使われた作品を読んでみたくなる。
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小説から組織におけるサバイバル術を学び取るというコンセプトが面白かった。佐藤優著作全般に言えるが、引用元を読みたくなる。