トッド人類史入門 西洋の没落 (文春新書)

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  • 文藝春秋 (2023年3月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784166613991

作品紹介・あらすじ

トッド理解の最良の入門書にして、主著『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』を読み解くための最適なガイド。政治学、経済学ではわからない現代の混迷(「西洋の没落」)を人類学が解き明かす。「世界」がそれまでとは違って見えてくる! 世界で物議を醸した仏フィガロ紙インタビュー「第三次世界大戦が始まった」も特別収録。

『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』
――「21世紀の人文書の古典だ」(佐藤優氏)
――「読めば読むほど味わい深い」(片山杜秀氏)

(内容)
1 日本から「家族」が消滅する日――「家族」の重視が少子化を招く E・トッド
2 ウクライナ戦争と西洋の没落――「露と独(欧州)の分断」こそが米国の狙いだ E・トッド+片山杜秀+佐藤優
3 トッドと日本人と人類の謎――「西洋人」は「未開人」である 片山杜秀+佐藤優
4 水戸で世界と日本を考える――日本に恋してしまった E・トッド
5 第三次世界大戦が始まった――弱体化する米国が同盟国への支配を強めている E・トッド

●エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
1951年生。フランスの歴史人口学者・家族人類学者。国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態に着目する方法論により、『最後の転落』(76年)で「ソ連崩壊」を、『帝国以後』(2002年)で「米国発の金融危機」を、『文明の接近』(07年)で「アラブの春」を、さらにはトランプ勝利、英国EU離脱なども次々に"予言"。著書に『エマニュエル・トッドの思考地図』(筑摩書房)、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』『シャルリとは誰か?』『問題は英国ではない、EUなのだ』『老人支配国家 日本の危機』『第三次世界大戦はもう始まっている』(いずれも文春新書)『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(文藝春秋)など。
●片山杜秀(かたやま もりひで)
1963年宮城県生。思想史研究者・慶應義塾大学教授。著書に『未完のファシズム』『尊皇攘夷』『11人の考える日本人』など。
●佐藤優(さとう まさる)
1960年東京都生。作家・元外務省主任分析官。著書に『国家の罠』『自壊する帝国』『宗教改革の物語』『佐藤優の集中講義 民族問題』など。

みんなの感想まとめ

家族の観点から現代社会を新たに理解する視点を提供する一冊で、特に「核家族」の概念に関する主張が印象的です。著者エマニュエル・トッドの思想は、ウクライナ戦争や西洋の没落といった現代の重要なテーマに対して...

感想・レビュー・書評

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  •  エマニュエル・トッドの書いた本だと思って読んだのだが、半分以上は片山杜秀と佐藤優が書いた本だ。評論家にありがちなのだが、わざと難しい言葉や違う人の言ったことなどを紹介して難しくしている。エマニュエル・トッドが書いてる部分の方がずっとわかりやすい。「西洋の敗北」の最良の手引きというのだが、人の褌で相撲を取らないで欲しいと感じてしまった。

  • 著者のエマニュエル・ドット氏についての解説書として本書を読んでみました。
    「家族」という観点から、今までにない、新たな視点で世界を理解出来る本でした。
    「核家族」というのは、「もっとも原始的な家族形態だー」という主張は、面白いと思いましたー!
    新しい視点が得られる本でした。

  • 最初に驚いたのは佐藤優さんの「はじめに」が
    入院中に書かれたこと。
    さらに佐藤さんは2022年10月27日モスクワ郊外で開催されたヴァルダイ会議に、ロシア大使から招待されたということ。
    人工透析中で行けなかったそうですが、
    そんな声がかかるんだ!とびっくり。
    でも行くのは怖い気がします。
    (そう思うのは私だけでしょうか?)

    閑話休題。
    昨年トッドさんの『第三次世界大戦はもう始まっている』を読みました。
    トッドさんはウクライナ戦争に関する本を
    フランスではなく日本で出版。
    なぜかというと、日本はヨーロッパ人と同様反ロシア的だが
    戦場から地理的に遠く、
    ヨーロッパ人がウクライナに抱いているほどの
    感情的な関係がないこと。
    そして何より彼はフランスで
    「反逆的な破壊者」という汚名をきせられていますが
    日本では人類学者、歴史家、地政学者として尊重されていること。

    私だけじゃないでしょう、
    「ニホンダイスキ」と言ってくれる欧米人が大好き。
    トッドさんのお話しは面白いけど、
    うーん、鵜呑みにするのはどうかなあと思ってしまいます。

  • 「西洋の敗北」でトッドの本を初めて読み、興味を持ったのでこちらの本も読んでみた。

    「家族観が国際政治に影響を与える」という考え方がユニークだと思っていたが、理解がより深まった。

    【主な主張】
    ・人類史的には英米的な絶対核家族がむしろ原始的で、中国やロシアのような共同体が先進的。
    ・英米は先進的ではなく、むしろ未成熟であるが故に発展した
    ・日本やドイツのような直系尊属社会は、継承・蓄積は得意だが革新は苦手。英米のような個人主義社会は、継承・蓄積は苦手だが革新が得意
    →アメリカ人に対して、先進的だが未成熟なイメージが同居するのはそのせい
    ・日本は「考える時間を確保する」ために核武装すべき

    【感想】
    ・やってることは別として、プーチンの言っていることは説得力があると感じた。大悪人であるのは間違いないが、実際西側諸国を除く国際社会に広く共感を呼んでいる、プーチンの論理は日本人である我々も冷静に捉えるべき。

    ・確かに、ロシアにノルドストリームを破壊する動機はない。同盟国であるドイツにアメリカがこの仕打ちをしているとすると、日本に対してもすると考えた方が自然。アメリカとの関係は切れないし切るべきでもないが、日本はしたたかに立ち回らねばならない。

    ・核武装論はあまりに短絡的に思える。
    →抑止力を生むだけの核武装をするために必要な経済的、政治的コストと、核武装により抑止できるリスク(万能ではない。通常戦力の代わりにはならないことは核保有国を見ていればわかる)を考えなければならず、おそらく適切な手段ではない。

    以下抜粋

    佐藤さんが紹介されたプーチン演説を、日本の識者が先入観なしに、例えばプーチンの発言とは知らずに読んだらどうなるか。米国流のグローバル・スタンダードを押し付けられてきた彼らの多くは、むしろ共感するのではないか

    ★プーチンのヴァルダ演説★
    <今起きていることは、例えばウクライナも含めて、ロシアの特別軍事作戦が始まってからの変化ではありません。これらの変化はすべて、何年も長い間、続いています。(略)これは世界秩序全体の地殻変動なのです>

    <ソ連の崩壊は、地政学的な力のバランスも破壊しました。欧米は勝者の気分になり、自分たちの意志、文化、利益のみが存在する一極的な世界秩序を宣言しました。今、世界情勢における西洋の独壇場は終わりを告げ、一極集中の世界は過去のものになりつつあります。私たちは、第二次世界大戦後、おそらく最も危険で予測不可能な、しかし重要な一〇年を前にして、歴史の分岐点に立っているのです>

    <彼らは今、道徳、宗教、家庭を徹底的に否定する方向に進んでいます。(略)私たちは、小学校から学校で、(略)男性と女性以外に性別があることを教え、性転換手術を受けさせるのか?(略)このようなことは、私たちには受け入れられません。
    私たちには、自分たちの別の未来があるのです。(略)西側エリートの独裁は、西側諸国の国民を含むすべての社会に向けられています。全員への挑戦状です。このような人間の完全否定、倉仰と伝統的価値の破壊、自由の抑圧は、「宗教を逆手に取った」、つまり完全な悪魔崇拝の特徴を帯びているのです>

    <民族や文明の特殊性を尊重することは、すべての人の利益に適います。(略)西側少数民族の文化的独自性に対する権利は、もちろん保障されるべきであり、敬意をもって扱われるべきですが、他のすべての人々の権利と同等であることを強調しておきたいと思います。(略)西側と違って、私たちは他人の裏庭に干渉しないのです>

    -------

    ここでロシアと日本を比べると、英米のヘゲモニーに対して、どちらも独立を求めるとしても、日本の場合には、「諸国民は同等だ」という考えが希薄なので、自国の独立のみを求めることになります。そこがロシアは違って、ヴァルダイ演説のように、すべての国に独立する権利があるというビジョンになる。ロシアの「普遍主義的特殊主義」に対して、日本は、自国の独自性のみを追求する「特殊主義的特殊主義」であると、日本へ来る時の飛行機のなかで思いつきました(笑)。

    平たく言うと、英米の「核家族(子供が親元を離れる)社会」は、「世代交代」や「創造的破壊」を得意とするのに対し、日独の「直系家族(長子が親と同居する)社会」は、「(知識や技術の)世代継承」や「キャッチアップ」を得意とし、ただしどこかで「硬直化」してしまう、ということ

    人々が共に行動するには、何らかの「基盤」が必要です。まず「宗教」がその役割を果たしました。その後、宗教的信仰が失われていくなかで、「国民意識」が「宗教」を代替するようになりました。しかし、今日、そうした「国民意識」すら失われつつあります。
    「国民意識」を再生することは、直ちに「排外主義」を意味するわけではありません。
    どの国も必要としていることで、合理的な振る舞いです。それぞれの国が自国の問題に取り組むには、「集団としての自己」を再発見しなければならないところに来ているからです。
    もちろん、いったん個人がこれだけアトム化した後に、「国民意識」(共に行動するための基盤)を再発見するのは、容易ではありません。しかし、不可能ではありません。その際、おそらく助けになるのは、それぞれの国民の歴史のなかにある「詩的な部分」「ポエティックな側面」です。それはまさに水戸という場所が体現しているものではないでしょうか。

  • 思い込みだったとは恐ろしい。
    世界の家族形態は、歴史的に新しくなればなるほど、女性の地位が上昇していったと思っちゃうし、共同体家族なんかより核家族社会の方が新しいと思っちゃう。
    すべては逆なのだ。

    家族の歴史は、女性の地位が低下し続ける方向で進んできたし、なんなら女性の地位が低下した社会は、先進的で革新的ですらあった。
    核家族社会なんて周縁部だからこそ生き残れた、最も古い未開の家族形態にすぎなかった。

    歴史にはこのように奇妙な逆転・反転現象が存在する。
    女性の地位が低く近親婚が推奨された中東の家族形態が、実はもっとも先進的で複合的だったりする一方で、ある時点で社会の発展が停滞し、狩猟採集民たちとさほど変わらない未開の西洋人が、科学技術を発展させていくという皮肉。
    この逆転の重要なファクターとなったのもやっぱり「女性の地位」だった。
    かつては"文明化の指標"だった「女性の地位の低下」が、ある時点から"社会の発展の阻害要因"となった理由は、女性だけでなく実は男性も、個人としての自由が制限されていて、自立性を失った〝子供〟のような存在になってしまったからだった。

    ユーラシアの中心部で発明された文字や国家、技術は周縁部にも伝わったが、「女性の地位の低下」までは受容されなかった。
    おそらくキリスト教の影響が作用していたのだろうが、何はともあれそのおかげで、近代のイノベーションが勃興していくのだから何が幸いするかわからない。
    今日の英米を中心とした、集団を否定し個人の自立を極端に称揚する、行き過ぎた個人至上主義も、歴史の揺り戻し・逆転現象が働きつつあり、社会的な連帯や専制的国家への見直しが始まっている。

    日本でも進歩的な左翼知識人が「日本の近代化の阻害要因」「遅れた日本の象徴」と糞味噌に貶した日本の家族制度が、実は急速な近代化や民主化の促進に貢献していたというのも、ある種の歴史の逆説である。
    左翼の高学歴エリートを巡っては、日本だけに限らず世界的に、社会の大多数の労働者や大衆からの遊離現象が起こっていて、それは彼らの依って立つ「高等教育」が、格差是認や平等の否定、体制順応主義への迎合が背景にあると説明している。

    核家族と民主制の連関というか親和性も、面白い指摘である。
    結婚した一組のカップルとその子供だけで形成される人類学的形態であればこそ、自由への理想は開花する。
    さらには「系族を通して権力を自動的に譲渡・継承していくことは不可能」であるからして、民主制が不可欠であった。
    代表制も、ヨーロッパというユーラシアの周縁部に位置する地域であったからこそ定着していった。
    すべては「進んでいたから」ではなく「遅れていたから」こそ成就した帰結なのである。

  • エマニュエル・トッドとの対談

    ロシアとウクライナ
    日本や西洋の立場でなく、非西洋的な立場から見れば違った視点が見えてくる。
    進んでいると思われた西洋の家族のあり方。
    ロシアから見たら西洋による侵略からの防衛戦争
    アメリカによるドイツの国力低下を狙った武器許与
    ロシアのGDPでは測れない軍事力

    正義でなく、ここにある現実を知ることの大切さ
    もちろん、殺戮が決して許されることではないけれど、そろそろ、冷静に2つの国の立場を確認することも大切なのかなと思いました。

  • 昨年出たトッドの『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』を読みたいのだが、上下巻の大著だし、難しそうだしで、躊躇していた。そこに、同書へのガイドとして編まれた本書が出たので、読んでみたしだい。


    トッドへのインタビューや、佐藤優さん、片山杜秀氏との鼎談などで構成されている。つまり全体が談話で成り立っているので、わかりやすい。

    そして面白い。帯の惹句通り「世界が違って見えてくる」ような感覚を味わえる。例えば、ウクライナ戦争についての見方が変わった。

  • トッド人類学のおおまかな考えがわかって他の本のとっかかりとなった。
    西洋絶対主義を全否定しており、家族観に根付く人類学的観点から各国を捉えていて、面白い。

  • この本は、トッドの大作『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』を読むための入門本と冒頭で紹介されているけど、それ以上の面白さ。

    前述の大作の面白いところをギュッと紹介してくれるだけでなく、現代社会の抱える様々な課題や疑問を家族制度の観点で説明するところにフムフムと読み入ってしまう。
    ところどころに見える刺激的なフレーズがまた良い。

    意図的に極解した切り取り
    ■日本やドイツは長男を頭とする直系家族社会。英米の核家族社会とは根本から異なる。
    ■日本は長男が家を継ぎ、老いた親の面倒を見て家が社会福祉を担った。英米は成長した子は親元を離れ、老いた親の面倒は社会税制が担った。
    ■日本が硬直化しやすく、英米が変化への対応が速いのは家族制の違いにルーツがありそう。
    ■大学はいまや人々をランク付けする不平等製造マシン
    ■宗教は死につつあるが死に果てていないゾンビ
    ■米国の地政学的基本スタンスとは「我々は正しいし負けない。大西洋と太平洋があるから侵略などされない」
    ■英米の正義とは絶対正義ではなく金にモノをいわせた訴訟による。米で裁判に負けたら広い国土のどこかに行けばいい。
    ■米の国土は広いのだから、地道な農地改良や資源節約などそもそも馴染まない。米国な旺盛な個人消費とは、長年培われた浪費主義だ。

  • 実は「西洋の敗北」に興味があって、そちらを読もうとしたけど、金額の高さと、もしかしたら難解かもしれないと思ったので、まずは「入門」とついているこちらを読んだ。意外にもわかりやすく、またいまの世界の見方が変わってしまうような衝撃をうけた。一番ショックを受けたのは、日本は軍拡はせずに、核装備をして時間稼ぎをして、じっくりと考えるべきだという件だ。核なんてもっての他だと思っていたが、少し心を揺さぶられた。さて次は「西洋の敗北」に挑戦してみよう。

  • 題名の「トッド」とは、フランスのエマニュエル・トッドのことである。独自な研究で世界を語るという感のエマニュエル・トッドである。近年『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』という人類の歴史を鳥瞰しながら、幾分掘り下げて行くという、長きに亘る研究の集大成的な本を上梓している。日本語版も登場して然程の時日が経っていない。この本の内容を念頭に、片山杜秀、佐藤優の両氏が「トッドの論点」で最近の話題等も掘り下げて論じるという感の一冊である。
    本書は、トッド自身のインタビュー、トッド、片山杜秀、佐藤優の3氏による鼎談、片山杜秀、佐藤優の両氏による対談というような体裁の各部、5つの纏まりから成っている。各々に興味深い。が、個人的には「ウクライナ戦争と西洋の没落」、「第三次世界大戦が始まった」という部分に殊に引き込まれた。
    「ウクライナ戦争と西洋の没落」、「第三次世界大戦が始まった」という部分に在る論点は、これまでにエマニュエル・トッド関係の本で論じられているモノに触れている内容と被る。それに佐藤優関係の本で論じられているモノも加わり、鼎談として内容が交差しながら掘り下げられている。
    色々な経過を辿った人類の経過の中、現在に至って「第三次世界大戦」とでも呼ばれるようになって行くかもしれない事態に「踏み込んでしまっている?」ということに「気付かなければならない?」ということが本書では示唆されていると思う。
    ウクライナの戦争に関して、本書の中では「思いも掛けぬ長期化」という見立てが色濃いかもしれない。他方に、1年程度の期間で何らかの収束が図られるかもしれないという見立ても在るのかもしれない。「あんた個人が如何思おうと、何ら関係無い…」とでも言われてしまうかもしれないが、それでも個人的には「人々の生命が擦り減らされるようなことを少しでも早く停めて頂きたい…」というように思いながら、この事案に纏わる情報に触れている。
    そしてトッドの研究の出発点でもあるような「家族」という問題を論じた部分も興味深い。表層的に然程の影響が無い様で在りながら、しぶとく影響力を行使し続けるような文化を「ゾンビ〇〇」と本書の中では呼んでいる。「ゾンビ儒教」とでも呼ぶべき、深く浸透した儒教の影響を免れ悪い地域の国々では、「子どもの面倒を」、「親の面倒を」と何でも背負い込むような感が在り、現に要る老いた親の面倒を見る関係で、未来を担う子どもに関する事柄を推し進め悪い側面が否定出来なくなるという論が展開されていた。日本もここで言う「ゾンビ儒教」という域内に入ってしまう。少し考えさせられた。
    初出が雑誌という部分が殆どなのだが、本書は何か「読み応えが在る記事を集めて一気に通読」という感じでもあると思う。本書のような、大著の内容を念頭に、その「触りの議論」へ一般読者を誘うような本は、なかなかに好いと思う。

  • 「トッドの人類史入門」という意味不明なタイトルがついているが、本書の要諦は、その国の立場、ものの見方、考え方を、家族類型に基づいて紐解いた地政学といった感じ。あのクソロシア、おそロシアでさえ、彼らの道理に照らせば合理的な判断に見えてくる。合点がいっても、腑に落ちない(共感できない)というなんとも気持ち悪い読後感。ただ、この気持ち悪さを丸呑みできないと、外国と渡り合っていくことはできないということは理解できた。でも、気持ち悪い。やっぱり日本に定住させていい外国人は、この辺の気持ち悪さを踏まえて決めなくてはいけない。

  • エマニュエル・トッドさんが来日された契機に、インタビュー、対談を行われた記録と、最新の著書などからの著者の思想についてまとめられています。戦争状態に近づいているかとみられている世の中についてのトッドさんの意見。人類学者としての視点。それを紹介される日本側からみた現在の世界について知ることができます。西洋といった見方では知ることができなく、地域としてのその家族構成とその類似点から導きだされる現状把握と未来の姿に、今までとは違った視点から世界を見ることの利点と必要性を感じさせられます。その視点からみた日本の現状と危険について知ることから、進むべき道と、進んではいけない道について考えることができます。

  • 1.日本から「家族」が消滅する日
    日本やアジア圏の少子化は「ゾンビ儒教」によるもの。老後の世話と子どもの教育が負担が重すぎ、少子化を招いている。
    今後老人はどんどん増えていくため、儒教的な老人支配は強まる一方。親の面倒ばかり見たり老人への支援ばかりしていると少子化は進む一方だが改善される兆しはない(一人一票の民主主義の構造上の欠陥、マジョリティ優先)
    フランスは老後の面倒や子どもの教育を国が行っているため少子化になりづらい、移民も多いが。

    2.ウクライナ戦争と西洋の没落
    ロシアの行動は西欧社会の勝手な価値観(グローバルスタンダード)を世界に押し付けようとしたことへの反発にある。日本もアングロサクソン的なグローバリズムの言説より各国の特殊性を重んじるプーチンの言説に共感するのではないか。

    3.トッドと日本人と人類の謎
    能力主義社会になってから身分社会以上に格差は広がった。下位のものは上に対して何も出来ずルールにも抵抗できないため自分を攻撃するしかなくなっている。左翼の高学歴エリートは人類という概念を愛しているが、その中に低学歴の労働者層は含まれていないことからより乖離は広がっている。高等教育が格差是認に繋がったことからエリート主義vsポピュリズムという世界になってきている。(アメリカでも日本でも至る所で)
    アメリカは巨大な島国、軍事力もあるため侵攻されることがないからとりあえず戦争を吹っ掛けられる。

    4.水戸で世界と日本を考える
    世界崩壊の前にできることは「考える時間」を与えること。そのためには何もしないこと、いったん立ち止まることが必要。
    また、中国は決して覇権国にはならないという意識をもつ。急激な少子高齢化によって、今後十年間で労働人口が大幅に失われる見込み。(まあ、日本もだけど)
    「核武装」こそ軍拡競争から身を引くための手段、平和と安全と考える時間を確保するための手段。対米依存から脱却して独立国家としての自律性を確保するための手段ともなる。

    5.第三次世界大戦が始まった
    ロシアは強い。耐久力。
    でも、あと5年以内に決着がつかないとロシアは負ける。

    トッドの話を聞くと西欧よりロシアのが正しいのかも、、、となる。まさに世界の見え方が変わる。
    これを読んだ今日、まさにアメリカとイスラエルがイランを攻撃した。この行動が正しいとは思えない。

  • 日本は父系直系家族の携帯から核家族に移行していく中で国のあり方がこの家族形態と不整合を起こしているのか、あるいはそれを担えるだけの人材が現れないことが国力の減退の原因かも。

  • 三宅夏帆さんおすすめ。『西洋の敗北』を読む前に、トッドの思想をざっくり理解したく手に取った本。
    インタビュー形式なのでとても読みやすかったです。

  •  人類史を独自の観点で考察したという『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』は、とっつきにくくて途中で投げ出してしまったが、その最適なガイド本ということで本書を手に取った。エマニュエル・トッド氏へのインタビューだけでなく、日本人の論客二人との鼎談や、彼の著書から読み取れる考察などから構成されており、読みやすかった。

     著者の肩書である”歴史人口学者・家族人類学者”は初めて聞くものだったが、目先の社会情勢や無意識の偏見に左右されずに、客観的な人口動態や家族の形態の変遷から導きだした仮説をわかりやすく紐解いてくれており、とても興味深かった。一見新しいようでいて実は原初の家族形態であるらしい欧米型の「核家族社会」と、日本のような「直系家族社会」を比較した考察は、簡潔で的を射ていると感じた。

    ”直系家族社会は、「知識や技術や資本の蓄積」を容易にし、「加速の原則」という強みをもっていますが、他方で、過剰に完璧になると硬直化するという弱みがあります。「キャッチアップ」は得意でも「創造的破壊」は不得意なのです。「老人支配」を招きやすいのも難点です。
     これに対し、原初のホモ・サピエンスに近い家族形態で、より柔軟性があるのが、アングロサクソンの「絶対核家族社会」です。成人すると親元から独立する英米社会は、移動性が高く、世代間断絶が起こりやすい。つまり「継承」が得意な直系家族に対して、「革新」を得意とします。ここに、「アングロサクソンがなぜ覇権を握ったのか」を解く鍵があります。”(P.28-29)

     また著者が日本を何度も訪れ研究していることから、エセ保守や戦前回帰論に支配されている現代の日本人の家族観に関しても客観的によく見て、日本人以上によく理解していると驚いた。

    ”さらに日本では、母親が、育児に時間とエネルギーを注ぐことを要求される雰囲気がある。これも「ゾンビ・儒教」や「ゾンビ・直系家族」のメンタリティが根強く存在している証しです。”(P.34)
    ”結婚にしても、出産にしても、「家族」に関わる選択が、日本では、とくに日本の女性にとっては、あまりにも重すぎる”決断”となっています。[中略]「家族」をあまりに完璧なものに見立てたり、「家族」ですべてを背負おうとすると、現在の日本の非婚化や少子化が示しているように、かえって「家族」を消滅させてしまうのです。”(P.35)
    ”日本についていえば、三世代同居が実際には見られなくなっても、直系家族に由来する価値観がいまだ残存していることを「ゾンビ・直系家族」と名付けている。”(P.97)

     最近は世界中で、自国ファースト的な短絡的な排外主義が横行し、ものを考えない多くの人間が付和雷同しているが、その哀れで危険な傾向に対しても冷静に警鐘を鳴らしており、本書が出版された2年後の2025年現在でも通用する内容になっている。

    ”「戦争(敵)がなければ集団としてのアイデンティティは生まれようがない」ということを「人類の悲しい現実」というより、「人類の普遍的なあり方」として位置付けています。”(P.122)
    ”「国民意識」を再生することは、直ちに「排外主義」を意味するわけではありません。どの国も必要としていることで、合理的な振る舞いです。それぞれの国が自国の問題に取り組むには、「集団としての自己」を再発見しなければらないところに来ているからです。”(P.154)
    ”人々は「個人の現在」にだけ関心を抱くようになっています。しかし、社会生活は「現在」だけで成り立っているのではありません。「過去」を忘却すれば、「社会としての一体感」も失われます。[中略]そういう自覚、つまり「歴史意識」を取り戻すことが、いま世界中で求められているのだと、この水戸で改めて思いました。”(P.155-156)
    ”ここで大事なのは、みずからに「考える時間」を与えることです。[中略]いま最も避けるべきは、迂闊に戦争や紛争にコミットすることです。[中略]
     日本では「中国の脅威」が叫ばれ、どこでも同じように「戦争の再来」が言われています。各国とも、よく考えずに軽率な行動に走ってしまう恐れが高まっているのです。ここで最悪なのは、「混迷する現状」を打開する「解決策」として、戦争や紛争にコミットすることです。私が恐れているのは、無意識のうちに、「戦争」が、方向性を見失った人々の人生に「意味」を与えかねないことです。”(P.170-171)

     以前、同じ著者の『ドイツ帝国が世界を破滅させる』を読んで、ドイツを「人間の非合理性の集積地」「大きな病人」とまで愚弄していたフランス人著者の過激な言い方に辟易していたが、無意識の思い込みを見直すにはこのくらいの偏った振り方に触れるのも必要かもしれないと感じた。自分の人生を犠牲にしてまで年老いた親の面倒をみる必要があるか、とか日本の核武装を安易に提案するなど、物騒で受け入れがたい言説もあるが大局的な物の見方にはうなずけるところがあった。

  • 『西洋の敗北』がとても面白かったので、理解を深めるために本書をAudibleで聴いた。『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』などからの引用が多く、そのたびに出典の書名も音読されるのが非常に苦痛だった。

    本の分量は少なく、さらっと聴くことができたし、内容自体も理解を定着させるという意味では良かったと思うが、それ以上ではない。

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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