ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか デジタル時代の総力戦 (文春新書)

  • 文藝春秋 (2023年6月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784166614042

作品紹介・あらすじ

最前線! リアルタイムの戦争研究 

グローバリゼーションが進んだ世紀におけるウクライナ戦争の開始は、
「終わらない戦争」の始まりを告げる出来事となった。
見えない情報の行き交うサイバー戦、イーロン・マスクのスターリンクに
代表される民間による宇宙利用もが戦争の命運を握る。

ウクライナ戦争以後、戦争はどう変わったのか?
米中の覇権争いでは終わらない新たな問題群を前に、
台湾有事を抑止することは可能なのか?
ロシア・ウクライナ戦争をケーススタディに、
「大国間競争」に埋め込まれた「終わらない戦争」について考える。

感想・レビュー・書評

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  • 「終章 日本人が考えるべきこと」、「台湾海峡有事がヨーロッパ本土を戦果に巻き込むような世界大の戦争に拡大する可能性は極めて低い」「世界で最も厳しい安全保障環境に生き(中略)ている日本人」という率直な指摘が恐ろしい
    いざ戦端が開かれた時、日本の味方はとても少ないのでは、と思ってしまう
    自分もやれることをやっていきたい

  •  戦争に至る経緯、戦争の様相、終わらせ方をそれぞれ見る。
     露の中国バンドワゴンと米の対中戦略優先という観点から、この戦争と米中対立を結ぶ視点が新鮮。また、露が現状変革側に有利と認識したこと等による抑止の破綻や、宇宙利用、情報戦やハイブリッド戦争という様相からも、台湾海峡への含意を説く。
     また、高橋と福田はNATO東方拡大に責任を帰する議論を明確に否定。米国の協調路線を拒否して独自の極を形成するとの露のアイデンティティや、宇のNATO加盟の動きの停滞、プーチンの「ロシア世界」思想などを挙げる。大澤は、この「物語」には8割の歴史的事実を含むとしつつも、宇を支配下に置くという露の意図を指摘し、侵攻は計画的だったとする。
     そして、高橋の指摘のように、本戦争がアイデンティティをめぐる戦いという側面もあるとすると、終わらせ方は困難だ。高橋は、軍事的現実の政治的固定化、軍政両面にまたがるバーゲニング、ワイルドカードイベントの発生、の3シナリオを挙げるが、前2者は露宇双方が数年単位の消耗の後であり、後1者はそもそも可能性が低い。

  • 本書の題名を見た際、「読むべき?」と思ったのだが、読了に至ってその思い付きは間違っていなかったと確信できる。これは「読まなければならない」と言って差し支えない。言葉を換えると「必読書」に挙げるべきかもしれない。
    「前史」というような展開は長いのだが、とりあえず“戦争”ということになったのが2022年2月であるから、既に1年4ヶ月間も続き、直ぐに1年半になってしまう。こうなると「何故終わらない?」という表現が口を突くというものだ。
    本書は複数の執筆者による論考を纏めているのだが、論考を綴ると同時に纏める作業を担当した編者は、テレビ番組等でコメントを求められ、「何故終わらない?」または「落としどころ?」というように尋ねられる場面が在り、そんな中で考えを色々と整理することを重ね、本書という形に纏まったということであるようだ。
    本書の各論考は、旧ソ連諸国や欧州の地域事情等を専門とするということではなく、所謂“安全保障”全般や、技術と社会というような事柄等、地域事情に拘泥しない論点を有する人達が手掛けている。それが凄く面白い。
    たった一言で“結論”を敢えて言えば、目下のウクライナとロシアとの戦争は「簡単に終わるようには見えない」ということに他ならないかもしれない。それは「何故?」ということを本書では説いている。
    ハッキリ言えば、ウクライナとロシアとは、経済規模や開戦当初の軍隊の規模等が「10倍以上の差」であった。そういう情況にも拘らず、ウクライナが善戦して持ち堪え、戦闘が膠着する場面も生じて、長期化している。その辺りの技術的なことも判り易く纏めているのが本書だ。
    一言で言えば、“成功体験”から「詰めが甘い?」という感で開戦に踏み切ったロシアに対し、苦心しながら備え、必死に抵抗し、効果的な反撃で持ち堪えるウクライナという図式になるであろうか。「国の一部に組み込んでしまえ」と攻めるロシアに対し、「それは断る」と守るウクライナで、両者の“自己同一性”を賭しているような情況になっていて、目下の戦いの“終わり”は見え悪い。
    「戦争」というような様相は、“外交”、“情報”、“軍事”、“経済”という諸要素が複雑に絡み合っている。そんな様相を、新しい意味で「総力戦」とでも呼ばなければならない筈で、目下のウクライナの戦争もそういう例に入らざるを得ないとしている。
    そして「戦争」は、或る1国で勝手に決断すれば起こしてしまうことは出来る。が、その結果として「交戦相手」が生じてしまう以上、少なくとも2国以上で何とかしなければ、簡単には終わらない。要は「始めてしまわないように…」としなければならないのが「戦争」なのかもしれない。
    このままであれば「厭戦ムード」が高まる迄の「更に数年?」というような時間が「終わり」に必要ではあるかもしれない。が、それは早ければ早い方が善いことは疑い悪いとは思う。国土が荒廃―通常兵器の激しい交戦の結果、「原爆??」という程度に破壊されてしまった都市も既に在る訳だ…―し、人々の生命が擦り減らされるばかりなのだから。
    この戦争の件に関しては、「考える材料」を怠りなく集めるべきだと思う。そういうことで、この種の本は積極的に読まなければならないと思う。
    本書の好さは、地域事情等でもない「外交や軍事や技術の全般」という視座でウクライナで起こっていることを説こうとしている点で、それ故に「非常に判り易い」という辺りだ。広く御薦めしたい。

  • 本書では、「なぜロシアによるウクライナへの軍事侵攻は起きたのか」換言すると「なぜロシア(現状変更者)への抑止は機能しなかったのか」から論考を始め、どのように始まったかを見た後に、終わるとしたらどのようなシナリオを考えることができるかを見ていく。

    (国内の事情を捨象する)システムレベルから見れば、背景には冷戦終結後の米国一強体制から、ロシア側の資源価格高騰に起因する経済復興と発言力の強まり、また米国側の対中政策へのシフトによる相対的な欧州の重要性の低下と、ロシアにとっての「機会の窓」は確実に広がっていたことが窺える。

    また、新START後の体制で、ロシアの核戦力と米国のそれとのギャップが埋まる中で、戦略レベルでの安定性が構築されたことで、ロシアから見れば地域での侵攻が核戦争を引き起こすことはないだろうという、戦略レベルでの安定性が地域レベルでの不安定性を引き起こすという(”stability-instability paradox”)が観測されているのは、冷戦期に大国同士の交戦はなかったものの、地域単位での紛争(代理戦争)が生じた時代と根底は変わってないことが窺える。

    ただ、今回米国側が実施していた「探知・開示による抑止」が失敗し、なぜロシア側にコストとして「認識」されなかったのかは掘り下げていく余地がありそうで興味深い。

    この戦争の終わり方に着いては複数のシナリオの記載があるものの、本書で書かれているとおり双方にとってそれぞれが何者であるかというアイデンティティと結びついているため、どの段階で戦況を固定化させたとしても、双方にとって飲み込めないという終わらせることが非常に難しい点、あとがきにあるとおり、一度始まってしまうと終わらせることが非常に難しいため、始めさせないようにすることが重要という点は非常に首肯する。

  • ロシア・ウクライナ戦争が両国のアイデンティティをめぐる戦争である以上、落とし所を見つけるのが事実上不可能であると言う説明に納得した。アイデンティティを巡る戦争は始めたら容易には終わらない、だからこそ始めさせてはいけないという言葉が刺さる。
    ロシア・ウクライナ戦争の本だが、終章の「日本人が考えるべきこと」は必読。台湾有事がより具体的に想像できて、どうやって戦争を始めさせないかを考えることが出来る。
    著者は戦争や軍事の研究家であられるが、その言葉には戦争による大量の死者や深刻な人権侵害を憂い、真に平和を希求するためにどうすべきかという真摯な思いが滲み出ている。誠実さを感じる文章。

  •  本書は、高橋杉雄編著であり、高橋氏の他にも3人の研究者の章もある。このことで、より客観的に分析ができているように思える。
     内容は難しいものではなく、日頃ニュースを聞いてぼんやり思っていることを丁寧に文章化した感じなので、そうそうと納得しながら読める。
     このような丁寧な分析に基づく考察はとても説得力があり、かつ大事な現状説明である。一部分を取り上げてセンセーショナルに報道するマスコミやSNSを見ていると、いつの間にか見落としが出てくるのだ。
     決して派手な言論に与せず、冷静で慎重な文章・意見で一貫している本書はとても信頼できるものだと思う。

  • なんで戦争が終わらないのか、なんで侵攻したのか戦争が始まって2年ほど経ってるはずなのに全く知らなかった自分を恥じました

    なんかほんとに面白くて興味深すぎてあーー国際政治とか国際法とかもっと学びたいてなりました

  • ふむ

  • ロシア・ウクライナ戦争について、なぜこの戦争は始まったのか、この戦争はどのような戦争なのか、この戦争は終わらせることができるのか、という3つの論点について考察し、最後に日本の安全保障への影響についても論じている。
    1つ目の問いについては、この戦争はロシアとウクライナのアイデンティティをめぐる戦争であり、抑止はほぼ不可能に近かったと結論付けられている。
    2つ目の問いについては、この戦争は、「古さ」と「新しさ」が同居しているところに特徴があり、「デジタル時代の総力戦」と捉えられると論じられている。
    3つ目の問いについては、3つのシナリオが考えられるが、どれも相当の時間がかかることが見込まれたり、蓋然性が低かったりして、いずれも早期実現の可能性は低いという悲観的な結論となっている。
    そして、日本の安全保障への示唆として、中国による台湾海峡有事を念頭に置き、ロシア・ウクライナ戦争の最大の教訓は「戦争は始めるよりも終わらせることが難しい」ことであるとして、中国に「戦争を始めさせない」ために軍事的な抑止力の強化が必要であると指摘する。
    ロシア・ウクライナ戦争の来歴と性格、今後の見通しについてとてもよく整理されている良書である。DIMEという概念や構造的リアリズムにおける「バンドワゴン」と「バランシング」という概念など初めて知る概念も少なくなく、ロシア・ウクライナ戦争の分析を通じて、安全保障論全体の勉強にもなった。
    本書の結論はかなり厳しいものであるが、納得性の高いものであった。支援疲れが言われているが、ウクライナが占領地を奪回できるように国際社会が支援を継続していくことが大切だと改めて認識した。
    アイデンティティを巡る争いという点では、懸念される台湾海峡有事は、ロシア・ウクライナ戦争以上ともいえ、本書が指摘するように中国に戦争を始めさせないために日本としても最善を尽くすことが必要だと感じた。その点で、賛否両論あるが、日本の防衛力強化は重要だと再認識した。

  • 国家としてのアイデンティティがロシアの考え方や感じ方を規定して、クリミア併合とロシア・ウクライナ戦争を選択させた。
    これまでロシアの行動の理由の根本に何があるのかがわからなくて、ロシア・ウクライナ戦争勃発当初まことしやかにささやかれていたように、狂った独裁者にロシアが巻き込まれたという話が事実なのかどうか、いまだにいぶかしく思っていたけれど、国家としてのアイデンティティという考えを含めて考えると、すとんと納得できた。
    考えてみれば当然だ。日本を含めた西側諸国だって、自由な民主主義国家というアイデンティティのためにウクライナを支援してきた。

    この本の中でも盛んに論じられている、ロシアがウクライナで核兵器を使用する可能性についてだけれど、ソ連はチェルノブイリ原発事故でとどめを刺されたようなものだったし、核による被害についてのトラウマは旧ソ連国内にはまだ根強くあるんじゃないかと思う。
    ロシアの目的はウクライナの国土強奪のはずだし、手に入れたい国土を核兵器で汚染させるだろうかと思う。
    でも、手に入れたいはずのウクライナ人をブチャで虐殺したことを考えると、ロシアの核兵器使用に関する私の考えは、使わないでほしいという願望だけに基づいたものかも。

    冷戦時代はイデオロギーをめぐる対立だった。ソ連が崩壊して冷戦が終わってから、イデオロギーの害悪について盛んに語られるようになった。
    いま起きている戦争がアイデンティティの対立によるものなら、争いが終わった後にアイデンティティの害悪が語られるようになるの?そんなことになったら、誰も自分がだれかわからなくなってしまうので、そんなことにはならないはず。でも、一瞬だけそんなことも起きてしまうのかもと思った。

    ロシア・ウクライナ戦争以前は軍事力が存在しなければ戦争も起きないと夢想していた。もうそんな夢は見られない。日本にも防衛力が必要だ。最低限、中国共産党が台湾有事をためらう程度の防衛力が。

    高橋杉雄がロシア・ウクライナ戦争について、さまざまな媒体で非常に理解しやすく解説しているのを見て、著書も読むようになったけれど、文章でもやはり理解しやすい。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1323863

  • 開戦原因、抑止や宇宙、ハイブリッド戦争などの観点から、戦略や安全保障の専門家によるウクライナ戦争の分析と台湾有事へのインプリケーション

  • 2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻で始まったロシア・ウクライナ戦争は、「ヨーロッパの一部」となることを選択したウクライナに対し「旧ソ連的な勢力圏」を形成するためにウクライナ(の領土)を必要とするロシアが一方的に攻め込むという構図であるが故に、ロシアがその意図を充足するか、断念しない限り終結しない。
    前者はウクライナに妥協を強い、後者はロシアの宗旨変えか物理的な無力化を意味するために、短期間での終結は見通せない。

    本書の本筋は1章と5章の編著者による論考であり、挟まれた他著者による論考は補足的なものなので、1+5章を読んだ後に2〜4章を読むのも勉強としてはあるが、各論にも同等の重みを置き、結論(書名の命題に対する回答)を最後に配置する本書の構成が落ち着きが良いのだと思う。

  • ロシア・ウクライナ戦争の開戦から現在に至るまでの戦争の経過からわかる現代の戦争の特徴(&従前の戦争との共通点)や、戦争を終わらせるに至るシナリオについての検討がされている。それぞれの国家の論理からすれば、落としどころを見つけるのは極めて困難で、戦争を始めさせないこと(つまりは抑止力を高めること)が最も重要であろう。

  • 非常に読みやすい。ウクライナ-ロシア戦争の本質はアイデンティティの問題(ウクライナを旧ソ連の一部としてロシアに併合すべきというロシア側の考えと独立した存在としてヨーロッパの一部でありたいウクライナ)。その為、一度開戦してしまえばお互いに落とし所が無く、長期化しているのが現状。アメリカがヨーロッパに積極的に介入していないのはアジア戦略を優先している為であり、アジアのリソースを欧州に割いた結果、パワーバランスが崩れ、台湾有事を引き起こしてしまうことを恐れている。発生してしまえば台湾有事もアイデンティティの争いとなる為、大切なことは戦争を始めさせないということである。

  • 【米中の覇権争いでは終わらない。世界は戦争の世紀に突入した――】ウクライナ戦争以後、戦争はどう変わったのか。台湾有事を見据え、戦争抑止の視点から「終わらない戦争」の終わらせ方を考える。

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著者プロフィール

防衛庁防衛研究所第1研究部助手。早稲田大学卒、同大学院政治学研究科修了。
著書・論文:「米国のミサイル防衛構想とポストMADの国際安全保障」『国際安全保障』(第29巻第4号、2002年)、『ブッシュ政権の国防政策』(共著)(日本国際問題研究所、2002年)ほか。

「2004年 『戦争の本質と軍事力の諸相』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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