中国「軍事強国」への夢 (文春新書 1424)

  • 文藝春秋 (2023年9月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784166614240

作品紹介・あらすじ

習近平に最も近いブレーンが明かす、具体的かつリアルな台湾統一のシナリオ。

本書の著者は中国国防大学教授(上級大佐)で、中国軍人の中でもタカ派として知られている劉明福氏。2010年、中国が世界一の国家になるための構想を綴った著書『中国の夢』が国内でベストセラーとなり、その文言は2012年に発足した習近平政権の政治スローガンにも採用された。
ここから分かるように、劉氏は習政権の政策決定に大きな影響を与えるブレーンだ。政権の看板政策である「反腐敗キャンペーン」についても、早期から軍幹部の汚職事件に関する報告書を作成するなど、理論的支柱の役割を果たした。

本書は『中国の夢』の続編として、2020年に中国で出版された。人民解放軍を世界一流の軍隊にするための戦略を綴ったものだが、台湾統一のシナリオなど中国の安全保障戦略の機微に触れる部分は、掲載の許可が下りずに大幅削除となっていた。
今回、監訳者の峯村健司氏、訳者の加藤嘉一氏は削除された部分を含む完全版原稿を入手。劉氏から編集権、出版権を預かったうえで日本語版の刊行が実現した。

では、世界初公開となる台湾統一シナリオとはどのようなものか。劉氏は本書で、1861年に米国で起こった「南北戦争」を引き合いに、次のように書いている。
〈南北戦争の目的は、国家統一を守り、分裂に反対して封じ込めることであった、米国の南北戦争は性質上「米国統一戦争」と言ってもいいだろう。中国が台頭する過程においても、分裂に反対し、分裂を抑え込み、国家の統一を守るという課題を抱えている。将来、台湾海峡において、中国は「中国統一戦争」を戦わなければならなくなるかもしれない。したがって、米国の「統一戦争」を研究することは、中国統一戦争への準備として意義があることなのだ〉
第5章「反台湾独立から祖国の完全統一へ」では、北軍がどのように国際世論を味方につけたのか、戦略面で南軍をどう攻略したのか――南北戦争の歴史が細かく分析され、そのうえで台湾統一実現に向けた衝撃の戦略と戦術が明かされている。
中国の〝本音〟を知るための必読書。

●目次(一部抜粋)

第1章 習近平強軍思想とは何か
第2章 解放軍の戦略新思考
第3章 強軍化事業への道
第4章 習近平国家安全戦略の4大転換
第5章 反台湾独立から祖国の完全統一へ
第6章 イデオロギー戦で打ち勝つために
第7章 新時代の中国が直面する8つの戦場
第8章 世界一流の軍隊になるための戦略
第9章 科学技術の振興こそが強軍化への近道
第10章 富国強兵の鍵となる軍民融合
第11章 世界一流軍隊建設の要は海洋にあり
第12章 21世紀の人民解放軍は国土内には留まらず

みんなの感想まとめ

本書は、中国の軍事戦略や国防観を深く掘り下げ、特に台湾統一に関する具体的なシナリオを提示しています。著者は習近平政権のブレーンであり、その視点から中国の発展に対する強い意志や、国家統一のための戦略が鮮...

感想・レビュー・書評

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  • 日中関係が冷え込んでいる中、習近平の思考回路を理解するために本書を手に取った。個人的な中国への楽観的な見方が180度変わり、台湾有事は起こるか起こらないかでなく、いつ始まるかというレベルに至っているという事を強く認識した。
    西洋や日本への怨念、海洋大国への憧れ等を何度も何度も繰り返し言及されており、台湾問題を不用意に発言した日本首相に非がある、つまり近隣の強大国への理解が乏しかったと言わざるを得ない。
    台湾を国として認めない姿勢は、ロシアのウクライナ、米国のベネズエラやグリーンランドに対する態度と合い通ずる所があり正当化されてしまう、かつ過去の南シナ海の問題も全く反省するどころか正当な行為だと主張しており、もはや説得できる相手国ではない。
    日本はもはや頼れるかどうか分からない米国ばかりを理解しようとするのでなく、大国となってしまった中国への深いケアと理解をした上で、どこの国を味方に取り入れるか、日本の勝ち筋は何なのかしっかりと把握しなければならない。

  • 習近平のブレーンとされる劉明福国防大学教授(上級大佐)の著書。極めて鮮明に中国の発展観・国防観が明らかにされていて、(当然同意はできないが)率直で読んでいて気持ちが良い。ハイライトは第5章の「反台湾独立から祖国の完全統一へ」ということで、基本的には武力統一が出来て、台湾も米国も(日本も)抑止される強固な態勢を以て無血開城を目指している。その際、米国が反論し難いように、南北戦争における北部のスタンスを行動の指針に据えているところがとても興味深い。

    全般的には、中国が目指すべき理想とそれに向けたナラティブが散りばめられていて実現可能性は未知数だが、このような長期目標を立てていることを念頭に置いて行動すべき。

    ただ、一番目を引いたのは冒頭の劉明福の日本の読者向けの巻頭言とそれを解説した訳者の加藤氏の解説。日本は米国の統治下であり解放されるべき、米軍が日本から離れ安保条約を破棄し、新日本は米中の間で中立を維持し、親米・親中であり、双方から尊重される独立自主の新日本たるべしと、そしてその発想は習近平や軍高官も同じで自主独立の際の核武装や民主主義制度は容認すると。まあ、日本人(右翼にも左翼にも。空想的平和主義に毒された人はともかくとして)に刺さる上手いナラティブを考えるものだなと思いました。

  • なるほど、これまでの中国政府の要人の話を聞いているとほぼほぼこの本に書かれている思想と立ち位置で話をしているのだと納得する。中華思想というのはこういうものか、とちゃんと学ぶことが必要だ。

  •  監訳者は冒頭で、著者を習近平の「政策・戦略ブレーン」と呼ぶが、その真偽はどうあれ、海洋進出や軍民融合等の実際の中国の政策は本書と軌を一にしていると感じる。
     安全保障の個別論には、他国でもそうかと思えるものもある。主権は平和よりも尊いというのは現在のウクライナでそうだろう。また海洋重視、非伝統的安全保障も含めた総合的安全保障、科学技術振興等は日本でも頷ける。
     一方、根底にある思想はやはり西側と大きく異なる。自由よりも党の指導を絶対視、「米国の覇権」への被害者意識、南シナ海では協調よりも軍事面も含めた進出第一、台湾問題でも軍事面強調(ただし全面侵攻よりも「人員の死傷なしの勝利」はむしろリアルかもしれない)。
     日本語版の本書は中国出版時に削除された部分も含むそうだが、少なくとも、軍当局の本音とは見てよいだろうか。それをどこまで政権全体の公式見解とするかは、政権内のバランスや外交的配慮等の多くの要素があるだろうが。

  • 2025.11.16 にわかに高市首相による台湾有事発言で、日中関係が騒がしい。台湾問題を探していたら、この本にあたった。
    2025.12.05 読了

  • ★ 習近平政権以降、軍部の発言力は強まっており、外務省の権限は弱まっている。軍部の方がより大きな力を持っていることは間違いない。

    ★ 米国の偵察情報の95%、軍事通信の90%、GPSの100%、気象情報100%が宇宙における軍用衛生システムを利用

    ★ 世界秩序の中心は、「欧州中心」、「米国中心」、「アジア中心」へと変革

  • 習近平のブレーンと言われる劉氏が中国の強軍の夢を語る書。
    劉氏が実際のところどれくらいの影響力があるのか、中国軍の考え方のスタンダードとして受け取って良いのかはよく分からないが、向こう側からの視点の一つとしては参考になった。
    特に、米国の南北戦争を、武力統一の先例として意識している点は、興味深く、南北戦争についても知りたくなった。
    ただ、劉氏は南北戦争を引き合いに、中国の武力統一の権利を主張するが、中国が両岸問題の平和的解決を放棄する場合、日本や米国としては、共産中国を中国の正統政府と認める義理はなく、ひいては非正統政府の武力侵攻を黙認する義務もないのではないか。

  • 「敵を知る」為に読んだ。途中かなりつらかったが。それでも、「習近平のブレーン」の言葉を読めて良かったと思う。
    ただ、

    中国は平和的発展を堅持するが、発展は平和よりも尊い
    中国は平和的台頭を堅持するが、台頭は平和よりも尊い
    中国は平和的解決を堅持するが、主権は平和よりも尊い
    中国は平和的統一を堅持するが、統一は平和よりも尊い
    中国は平和的外交を堅持するが、中国外交の原則は平和よりも尊い

    コレを真顔で言われてもつらい。大日本帝国の興亡を中国人は学ばないのかと。。。
    台湾併合のために南北戦争を研究していると言われても、「ああ、あなた方とは150年ほど時差があるようですね」としか言い様がない。

    こんなのが、核兵器を持った隣人なのである。戸締まりを厳重にしなければならないのは当然である。

  • 著者は中国国防大学教授(上級大佐)で、中国軍人の中でもタカ派として知られている劉明福

    内容よりもこの人物に関心。ただの覇権主義者かと思いきや、非常に魅力的らしい

  • 武蔵野大学図書館OPACへ⇒https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000273576

  • 正しいかは別として、中国の戦略的思想は、どの側面からも考え抜かれており、行動との整合性がある。
    中国側からの視点に触れた後は、日本国内での中国論がいかに的外れであるかを痛感する。
    国産装備が優秀だとか、水陸機動団が精強でだとか、防衛力のみが強調され、マスコミやネットで喧伝されること自体が中国の情報戦の効果なのではないかと考えてしまう。

  • まず著者が凄い軍人らしくて、会った人がみな強烈な印象を抱いている。高身長で姿勢もよく、メールの中身もぴちっとして時間も書かれ、待ち合わせではケータイをいじるでもなく時間に遅れることもない。威圧感があるように思いつつ、決して人の話を遮ったりせず、謙虚で質素らしい。
    習近平の反腐敗や中国の夢とか、ブレーン的存在らしい。
    中国では半分以上削除された原稿を、日本語に訳してエッセンスを抜き出したものとのことで、いかに世界最強の人民解放軍を作るかということ。2019年頃から中国の台湾政策が変わったと受け止められているが、その嚆矢とも言えるのが中国で削除された5章部分らしい。これはやはり出版して中国の政策が民衆に拘束されるのを嫌ったということなのか。

  • 5章

  • 中国のブレーン、凄い、、、

    感じたのは恐ろしくキレッキレの軍人がいるって事。
    出る杭を打ちまくる日本人は太刀打ちできるのかなぁ、、、

  • 初めてタカ派の軍人の話を聞けた。
    この本が世に出たのは、お二人の功績。

  • 自分のイメージを打ち砕かれた。台湾有事が起きるとすればではなく、起きることを前提とした内容。さらに有事と言っても平和的にと思っていたが、武力も辞さないことが赤裸々に記載されている。ニュースには触れているつもりだったが、自分も平和ボケしていたのだなと思わさせられた。

  • 【習近平のブレーンが明かす台湾統一の現実シナリオ】南北戦争で国家統一を死守した米国こそ台湾統一のお手本だ!――あまりに赤裸々ゆえに中国語版でも削除された重要部分を完全収録。

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著者プロフィール

中国人民解放軍国防大学教授。1969年入隊後、作戦部隊、大軍区機関、国防大学に勤務。済南軍区政治研究室主任、国防大学軍隊建設研究所所長などを歴任。軍隊建設学学科創設者。“劉伯承科学研究成果特等賞”獲得者。中国人民解放軍“全軍優秀共産党員”。著書に『習近平思想』『習近平が造る第三代解放軍』『覇権の黄昏』『論米国』など多数。2010年1月に出版した『中国夢』はベストセラーとなった。

「2018年 『日本夢 ジャパンドリーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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