地政学時代のリテラシー (文春新書)

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  • 文藝春秋 (2024年1月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784166614417

感想・レビュー・書評

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  • 地政学というよりも、時事問題についてのエッセイという感じだ。米中対立、ウクライナ侵攻、イスラエル・ハマス衝突など、現代の国際情勢を取り扱っている。調べると、船橋洋一は、朝日新聞の元主筆であり、日本のリベラル派の代表的な論客として知られている、らしい。著者の豊富な経験と洞察が活かされ、現代の複雑な国際情勢を理解するための枠組みを提供しているという触れ込みではあったが。

    ― 二十世紀最大の理論物理学者の一人だったアルベルト・アインシュタインはユダヤ人だったが、人生の半分は平和を現実主義的に希求した知識人として行動した。彼はイスラエルの国家建設を支持したが、一九二九年に次のような警告を同胞に発している。「もし、我々がアラブの人々と真摯な協力と真摯な協定への道を見出すことができなければ、我々は二千年の歴史から全く何も学ばなかったということになる。もしそうであるならばそれがもたらす運命を甘受することになっても仕方がない」

    アインシュタインは、今のイスラエルを見て何を思うだろうか。

    ― 中国はロシア軍のウクライナ侵略がウクライナの国家主権を蹂躙したことには口をつぐみ、国連総会のロシア非難決議も棄権した。秦剛駐米大使は「非難は問題の解決にはならない」とロシアを擁護する。そして、米欧日などの対口経済制裁を非難している。中国はウクライナとの間で二〇〇〇年から一三年までの間四回、共同文書を発表しているが、すべてウクライナの「独立、主権及び領土保全」を尊重することを誓約している。中国は今回、ウクライナを見事に裏切った。世界中の厳しい憤りと反発を前に、中国はその後、「中立」の姿勢を示そうとしている。

    ― 米国主導の国際秩序の崩壊が加速化する。二〇一〇年代、中国とロシアは南シナ海とクリミアで国際法を無視し、力による「現状変更」を強行した。一方、米国は「アメリカ・ファースト」を掲げ、TPPからも、気候変動対策枠組みのパリ協定からも、イランとの「核合意」(JCPOA)からも撤退した。WTO(世界貿易機関)にも"絶縁状”を突きつけた形である。ルールに代わってパワーが現れつつある。戦後長い間、経済成長、市場信仰、経済相互依存、グローバル化、そして何よりもルールと国際秩序がそうした制き出しのパワーを封じ込めてきたが、その封印が外れつつある。

    自衛隊の持つ兵器のセキュリティパスワードをアメリカに変更されれば、一瞬で武装解除させられる。デジタル赤字についても述べられる。クレジットカードだってそうだ。LINEのようなアプリだってそうかもしれない。日本で何気なく日々暮らしていくのに、税金のように海外に手数料が取られ、情報が抜かれる。軍事については公のものだが、それ以外に「無自覚な植民地化」がじわじわと進んでいく。

  • 地政学の視点で、世界情勢から考える日本の課題についての連載記事(文藝春秋、2020年〜2023年)をまとめたもの。

    日本に脅威を与えうる周辺国の中国、北朝鮮、ロシアは専制主義であり、個人独裁体制を特徴としている。政策決定過程は不透明であり、意図は予測し難い。そのため意図よりも能力を中心に把握し、同時にこちらの能力を的確に把握させることが重要と説く。

    勢力を均衡させ、力によって現状を一方的に変更できると相手に思わせないようにしなければならない。経済を守り、育て、必要な時にはそれを提示する経済安全保障政策(具体的にはエネルギーや金融にかかる経済制裁か)が求められている。
    地政学と地経学の視点を駆使し、見えないところに潜む意味を考える「リテラシー」を磨くことを大切にしたい。ちょっと理解しきれないとこもあったので、勉強して再読必要。


  •  2020年初〜23年末の雑誌連載の書籍化。あまり本来の意味での地政学でもないというか、単に国際安全保障、と言い換えても良い気がする。
     今読むとコロナ禍もペロシ訪台に伴うミサイル演習も過去となり、一方でウクライナ戦争や米中対立、経済安全保障はすっかり常態化したのが分かる。「コロナ危機後の国際秩序崩壊」と題する章があるが、実はそれほど崩壊も変容もしていないのではないか。
     本書は基本的にはリアリズム視座だと思うが、中国に対しては声高ではない「静かな抑止力」、また同時に対話の必要性を各所で説く。国内的にもナショナリズムを上手に「抑え込む力」を岸田外交に期待する。

  • コロナ以降の世界を読み解く本を立て続けに読んでいる。今度は日本人のもの。トッドさんのものより少しだけ古いので、本書にある予測や分析は少し外れているが、「思慮深い政治指導者を欠いた国家の悲劇」というのは間違いない。逆にいうと、そういう人をリーダーにしてはいけないということだろう。また、今後目指す方向性の一つとして、自国のモデル(民主主義や自由主義も、その他も)を他国に拡散しようとするのではなく、国内での定着や実施を通じて国力を蓄えることも必要というのは納得。さらに本書では、プーチンの政治・外交手腕を(悪であるが)賢く手強いと評価する。これが最もよく出ているのが、習近平に対して、ロシアのウクリナ侵攻を中国が憂慮しているのは理解しているとへりくだってみせたこと。中国はロシアの侵攻を容認しているのではなく、けしからんと思っていることを私たちは知っています、ご心配をおかけしてます、と、世界に宣言してみせることで中国の立場を高めたのである。これくらいの腹芸ができないと世渡りできないんだろうなあ。

  • 地経学の時代なのかね…物凄いスピードで変化してる状況を把握するのも難しい…

  • 現代日本を囲む地政学的なリスクを理解・認知には絶好の一冊。三度は程は読み返したい。巻末「地経学リテラシー七箇条」より、①経済安全保障の赤字国、②公正で安全の構築が必要,③経済相互依存は平和を約束しない、④経済安全保障は同盟国との政策協調が不可欠、⑤セキュリテイーは社会一丸の取組みが必要、⑥国力、安全保障に持続的維持には次世代技術の市場化実現、公共起業家精神が必要、⑦経済安全保障政策は戦略的自立性、同不可欠性、官民の同対話が不可欠。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/571918

  • 新型コロナの流行、ロシアのウクライナへの侵攻、そしてイスラエルによるパレスチナへの報復等、国際情勢は日々目まぐるしく変わり、少し先の未来ですら何が起こるか予測のつかない状況になっている。何より習近平体制で年々力を強め、今や世界第2位のGDPを誇る中国の動き方が世界の最大の注目ポイントである事は間違いない。民主的な国家と違い、先制主義的な体制は瞬く間に国家を一定の方向へと導き、その政策スピードには日本のそれは愚か、米国ですら追随するのは難しい。諸外国は中国の出方を窺い、その発言や行動に振り回される。残念ながら日本をはじめかつての先進国は中国のプレゼンスには遥かに及ばない状況が続く。一方でこの中国の動き方はある意味分かりやすく、一帯一路政策や台湾、南シナ海をその手中に収めようとする動きは単なる自国最優先の覇権主義でしかないとも言える。中国の利益の源泉をしっかり見極めれば、ある程度先の動きは読める。然し乍ら、それがわかったとしても、相互に経済的にも依存関係を持ってしまった一国が単独で挑むのは不可能である。
    本書は中国とアメリカを中心とした世界感を地政学的にそれらを取り巻く周辺諸国の在り方、そして将来の日本の動き方を示唆する内容となっている。役割として影響力の大きいインドやオーストラリア、そして東南アジアに南米やアフリカ諸国との信頼関係をどの様に気づいていくかの参考になる。なお従来の地理的な距離感を意識した地政学の世界から、現在はサイバー空間や宇宙空間までを結ぶ距離感の測れない、無いに等しく経済的な繋がりこそ電子空間上で決済の大半は繰り広げられる世界となった。よって直接の行使力を発揮できる地政学から経済中心の地経学に変わってきている。ロシアがウクライナを侵攻した際に国際的な決済システムであるSWIFTから除外された事は記憶に新しいが、そうした経済制裁はある意味軍事力による制裁よりも恐ろしい。それらを踏まえて本書を読んでいくと、過去の失敗に縛られ、失敗を恐れ中々前に進めず政策スピードの遅い日本が世界の中心点から徐々に離れていくのを感じる。一時期安倍政権時にはTPPなどで国際的に再び日本がイニシアチヴを取るチャンスは訪れたが、コロナやトランプの登場により停滞を余儀なくされた。また日本のインテリジェンスは未成熟で外交に必要な各国情報の入手にも未だ未だ課題は多い。日本企業特有の決定スピードの遅さからくる技術革新能力不足も相まって、外交面でも民間の力においても官民課題山積の状態にある。
    日本人特有の気質なのか、過去の過ちからくる徹底した失敗への恐怖なのか、やり方も考え方も大きく変えなければ、このまま世界の主要舞台に残る事は愚か、中国に尖閣も沖縄も併合されるのを指を咥えて見ているだけになる。そろそろアメリカの抑止力が効かなくなった後の事を真剣に考えるきっかけになる本であろう。

  • 【「法の支配」が崩れた世界でできることとは?】米中対立、ウクライナ侵攻、イスラエル・ハマス衝突――。動乱の世界でリスク管理をするためには地政学と地経学のリテラシーを磨け!

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著者プロフィール

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。法学博士。東京大学教養学部卒業後、朝日新聞社入社。同社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長等を経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。2011年9月に独立系シンクタンク「日本再建イニシアティブ」(RJIF)設立。福島第一原発事故を独自に検証する「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」を設立。『カウントダウン・メルトダウン』(文藝春秋)では大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

「2021年 『こども地政学 なぜ地政学が必要なのかがわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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