宗教を学べば経営がわかる (文春新書)

  • 文藝春秋 (2024年7月19日発売)
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  • 本 ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166614622

作品紹介・あらすじ

なぜ日本企業はイノベーションを起こせないのか?


宗教を理解すれば、ビジネスがより深く考えられる。

経営理論から読み解けば、宗教がわかりやすくなる。

変化が激しい時代だからこそ、ビジネスパースンにとって宗教を学ぶことが不可欠だ――。
博覧強記のジャーナリストと希代のの経営学者が初対談。
キリスト教やイスラム教から、トヨタやホンダ、イーロン・マスクまで。人や組織を動かす原理に迫る。


・歴史上最も成功した「組織」はキリスト教とイスラム教
・企業研修は、ミサや礼拝を見習うべし
・「お金のためじゃない」から資本主義社会で成功する
・イスラム教が「ティール組織」を作れる理由
・米大統領選をも左右する、アメリカ社会の根底にある宗教思想とは?

ビジネスパースンの課題は、宗教と経営理論で解決できます!

感想・レビュー・書評

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  • かなり色んなことを学ばせて頂いた。
    経営と宗教というものを、人間と組織、信じるものに向かって進むという現象を捉えるという共通視点に立って分析していく本書は示唆に富むことが多かった。
    宗教から経営理論の理解を深める
    経営理論を用いて宗教を理解する
    国際社会のOSである宗教を理解することで、グローバル化する仕事やビジネスに役立てる
    これらの目的が、明確に、わかりやすく、面白く提示されている。
    今回扱ったのは、キリスト教とイスラム教のみだったので、日本的習合の宗教観や、世界にあるアニミズムなど、それぞれの社会にある、制度理論や無意識のバイアスから、その社会や経営というものを考えることもしてみたいと思う。
    人と、集団、組織、社会が動く上での行動規範に宗教的なものが、どう影響するのかは、面白い視点だ。

    恐らく、生理学や心理学、群集心理学、行動経済学、社会システム理論、自由意志などと合わせて、複合的に考えていくことが必要になるだろうが、一面としての経営理論と宗教学の関係をでそうした分析を見せてもらったのは、有意義だった。

    今回学んだ中でも、両ききの経営、探究と深化の両方が必要というのは一番刺さった。自分は探究が好きだと改めて認識した。
    そして、我が社は、日本社会でこの探究をサポートするというミッションを持てるのではないかと思った。
    また、リアル書店の効用として、この探究を手助けしてくれるということが紹介されていた。百學連環てきなもの。セクト的な物から新しいものが生み出されるというはなしから、自身が好きなこと、力の入ることがよく見えてきた。

    その他、学んだことがらは次のとおり。

    センスメイキング理論
    パーパスなど、腹落ちしていることが大事であること。それによってまた、組織の求心力と行動が進められる。次の探究を進める上でも重要。
    センスメイキング、腹落ちをしてもらうには、
    TOP自身が腹落ちするパーパス ビジョンを繰り返し語る
    中間層は、それをよく理解して、現場の言葉に置き換えて腹落ちさせる
    パーパス、ビジョンをきちんと言語化し、様々な形で残して、社員やステークホルダーにみせていく。
    未来を描いた動画や絵を作るなど。

    科学哲学の実証主義と相対主義のこと。

    両ききの経営
    探究と深化のバランスをとることの重要性。深化は、効率化。失敗が少なくなる。探究は、失敗も多いが、イノベーションを生み出す。イノベーションは異なるものの掛け合わせからしょうじる。

    チャーチ セクト理論と進化理論
    チャーチ、セクト、カルト、デノミネーション
    セクトから、デノミネーションに行くには社会的正当性レジティマシーを得る必要がある。
    社会的正当性を得る上で、ロビーイングが必要。LOOPは成功例

    宗教組織がうまく機能するための三つの役割
    共感性→センスメイキング
    行動規範→センスメイキングに裏打ちされた行動指針
    コミュニティ

    →組織文化の視点として挙げられている価値観、ストーリー、ツールキット(組織文化を支える手立て)


    社会学ベースの制度理論
    いわゆる常識というもの。
    利害やなんかとは関係なく、自動的に集団内で共有されている常識的行動

    しがらみの強い組織では新しいものは生まれない
    →出島的にやるのが良い

    矛盾を抱えていることが強み
    →両利きの経営も同じ
    せめぎ合いがダイナミズムを生む。内田樹先生のいう葛藤の効果と通じる

    これら、学んだことを、どう実践に落としていくか。これからの試行錯誤と探究が続く。

    にしても、池上彰が、神道には経典がありますと言っているのは、正確ではない。そうして言ってるものもあるというところ、どの、神社系がいつ言い出したのかとか、そういうところまで書かないと、誤りとなる。こうしたことをしれっということは危ないし、それをそのまま書いてる文春新書もいかがなものかと思う。
    俺も
    ちょっと齧ってすぐ、こうだというのは、慎重になろう。




  • 世界の宗教に関する基礎知識が無いので読んだ

    キリスト教のカトリックとプロテスタントの違いを企業に準えて説明していて、わかりやすかった。企業の繁栄の流れは、将来的なワクワクするビジョンをトップが描き、働く人がそれを心の底から納得し、日々の目の前の仕事と並行して様々な探究ができ、それが企業の永続的成長をもたらすということらしい。その流れや構造が宗教と似ているというのも、感覚的に理解できた。

  • 経営って縁が無いので、
    池上さんが関わっていなければ
    まず手に取ることはないであろうタイトル。

    しかしこの入山章栄さん
    俳優の岡部たかしさんに似ていて、興味深い。

    読んでみると決して岡部たかしさんではなく(それはそうだ)
    でもタイトルから想像するより
    ずっと分かりやすく面白い本でした。

    ◎本書で学ぶ経営理論
    (1)センスメイキング理論
    (2)知の探索・知の進化の理論(両利きの経営理論)
    (3)レッドクイーン理論
    (4)エコロジーベースの進化理論
    (5)ティール組織とシェアード・リーダーシップ
    (6)社会学ベースの制度理論

    ここでいう(2)の知の探索。
    「イノベーションの父」と呼ばれた
    経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは
    90年ほど前に「新結合」という概念を提唱した。
    この考えによると
    「新しい知とは常に、
    『既存の知』と別の『既存の知』の
    『新しい組み合わせ』で生まれる」のだ。

    これは、この本における池上さんと入江さんの対談とも
    共通しているのではないでしょうか。

  • 学びがとても多い本だった。
    例えば、①宗教、優れた企業経営の共通点はセンスメイキング(腹落ち)で人を動かすことにあり、不確実性が高まっている現代では特に宗教のセンスメイキングから経営が学ぶことは沢山ある、②イノベーションには知の探索、知の深化を同時に行う両利きの経営が必要であるが、日本企業は深化にばかり目が行くために停滞している、③ベンチャー企業にはカルト的な発想が必要となる。しかし成功するには社会から選ばれること、すなわち自社の強みと外部ニーズを合致させ、かつ社会的正当性(コンプライアンス等)も必要となることなどを学んだ。

  • 腹落ち、確かに大事だ。

    それにしても、新規事業はカルトと同じ扱いかぁ。
    既存事業から理解を得るのはなかなか難しいなぁ。

  • こちら(↓)で書評を書きました。

    https://www.rinen-mg.co.jp/web-rinentokeiei/entry-5803.html

    人気ジャーナリストと人気経営学者の対談集。とはいえ、入山教授による長文の解説が各章に入っており、入山教授のほうがウェートが大きい本である。

    ”強い企業は宗教に似ている”というのは、入山教授の年来の持論であり、本書はそれを全面展開した1冊と言える。

    内外の優れた企業を宗教的観点から読み解き、キリスト教やイスラム教などの宗教を経営学的観点から読み解くという、双方向からのアプローチがなされている。

    既存の経営学にはそのようなアプローチが見当たらないとのことで、もっと広げれば1つの学問分野になり得るかも。

  • 三宅香帆さんがYouTubeですすめていたので読んでみた。
    なるほどなぁと思いながら読んでます。

  • 29
    センスメイキング理論は、「腹落ちの理論」と言える。センスメイクには「腹落ち」という意味がある。センスメイキング理論の経営実務への合意は、「変化の激しい時代に、腹落ちの弱い企業は生き残れない」と言うことだ。人は腹落ちをしてこそ初めて本気で行動するし、それが組織を動かす最大の原動力になるからだ。

    41
    成功する企業と宗教の間には、やはり共通点が多い。両者とも「人」「組織」「信じるものへ向かって進む」という意味で、本質が同じだからだ。その本質を鮮やかに切り取るのが「センスメイキング理論」なのである。

    46
    「組織のメンバーや周囲のステークホルダーが、事象の意味について腹落ちして、それを集約させるプロセスと捉える理論」のこと。

    57
    会社に例えると、もともとは属人的で、トップダウンで統制を効かせていた「カトリック型の組織」だったけれど、ホールディングス型の会社にしたら、だんだん中心がぼやけていって、子会社の現地法人が好き勝手なことをやり始めたパターンですね。どうして東方正教会は、国ごとに独自に発展することになったのでしょうか。
    西側では政治的リーダーの皇帝と宗教的リーダーの教皇が分かれていたのですが、東側では皇帝がそのまま宗教的リーダーになった。結果として、政治と宗教が一致する形になったので、1つの教会が国境を越えて勢力を広げる事はなかった。

    68
    新しい知・アイデアはどうすれば生み出せるのか。これについて、「イノベーションの父」と呼ばれた経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、90年ほど前に「新結合(ニューコンビネーション)」という概念を提唱。この考えによると、「新しい知とは、常に『既存の知』と別の『既存の知』の『新しい組み合わせ』で生まれる」のだ。

    70
    企業がイノベーションを起こしていくためには、両面が必要なのだ。まず、「知の探索」で遠くの離れた知と知を組み合わせる。他方、「探索」の結果うまくいきそうなものが出てきたら、徹底して深掘りをして効率化する(「知の深化」)。経営学ではこの両方をバランスよく行うことをambidexterityと呼ぶ。私は「両利き経営」という語をあてた。

    79
    人や組織は認知に限界があるので、どうしても目の前にあるものを組み合わせてしまいがちになる。すると、組み合わせの種が尽きてしまう。だから幅広く世界を見渡して、なるべく遠くのかけ離れた知と知を組み合わせることが大事になります。これを経営学では「エクスプロレーション」と言い、私は「知の探索」と呼んでいる。

    84
    「レッドクイーン理論」
    簡単に言うと「ライバルと競争して切磋琢磨することは成長のために必ずしも良いことではないかも」と言う考え方です。

    102
    社会的正当性(レジティマシー)
    ベンチャー企業が社会から選択されるためには、もう一つ(多様な技術・アイデア・ビジネスモデルの中でも、顧客ニーズなど時のビジネス環境にマッチした企業)重要な側面があります。それは、社会的性統制すなわち「レジティマシー」を獲得すること。

    106
    歴史上長い間、人類は寿命が短く、戦争や飢饉など命に関わる環境変化が起こることも多かった。そのような時代には「なぜ人は死ぬのか」「死んだらあの世で救われるのか」を考えるようになる。結果、「来世救済型」の宗教が広く普及してきたのだ。キリスト教もイスラム教も仏教の数の宗派も、死んだらどうなるのかに答えるものなので「来世救済型」である。
    対して日本の戦後の経済成長期は、急速な経済成長と医療技術の発達による長寿化の進展の中で、多くの日本人が明るい未来を感じ、「死んだらどうなる」よりも「いかに今を生きるのか」「生きてる間に自分に良いことがあるのか」を考えるようになった。そこに「宗教を信じは現世で良いことがありますよ」と言う現世救済型がちょうど噛み合ったのだ。

    120
    宗教組織がうまく機能するには、少なくとも3つの役割をうまく果たすことが必要。
    ➀共感性
    ②行動規範
    ③コミュニティーとしての宗教団体の役割

    127
    「企業の宗教化」についてお話をしましたが、こうした宗教的ニーズも、企業の宗教化の背景にあるのかもしれません。不安定になってきてる世の中で既存の宗教が選ばれなくなってきて、逆に民間企業に対して、ある種の「救い」を期待する人たちが現れている。やはり、これからの経営者には宗教的なセンスが必要になってくるような気がする。

    142
    資本主義の厳密な定義にはここで立ち入りませんが、私個人の理解では、資本主義は少なくとも3つの要素がないと成り立たない。その要素とは、勤労、貯蓄と投資、そして金融と利子。

    145
    13世紀のオリヴィの「貨幣種子説」によると、金利・金融の仕組みがだんだんと理解されるようになってきたところで、16世紀の宗教改革により貯蓄と投資と言う価値観の下地ができた。そして、17世紀初頭にオランダ東インド会社ができて、株式会社が登場した。
    こうした要素がすべて揃って、18世紀後半からのイギリス初の産業革命に結実したのだと、私は理解している。

    149
    日本はプロテスタントの国ではないけれど、先の議論のように金利・投資・勤労の文化、そして貯蓄の文化と言う資本主義が発展する歴史的な要素が揃っていたから、明治期に西洋の資本主義を取り込んだ日本が一気に花開いたんだと思う。

    161
    社会学ベースの制度理論
    この理論の前提は、「人は必ずしも合理性だけでは行動せず、心理バイアスのかかった行動をとる。中でも、その社会・組織で正当性があると認識される行動を取るようになる」と言うものだ。結果、「その行動は正当である」と言う「常識」が社会や組織の中で出てくるようになり、多くの人がその常識に沿って行動するようになる。

    162
    特定の社会・組織の範囲内では、皆が常識に沿って深く考えず同じような行動を取りがちになる。学術的にはこれをアイソモーフィズムと言う。

  • この切り口で、この二人が議論する!
    宗教と経営、全然関係ないようで実は似ているこの両者を、
    宗教通の池上さんと、経営理論の大家入山さんが語り合う。

    私が前に勤めていた新興の不動産会社は、まさにこれ。
    オーナー社長がいい意味で教祖様。
    社員は社長の魅力に引き寄せられる。
    社長のことばを経営理念、経営信条に落とした3か月は忘れられない。
    その後会社は上場し、今は1兆円企業になった。
    私が入ったころは500億前後だったのに、、
    ぶれない社長。「すべてを決めるのはお客様です」
    この精神は残っている。あ、お客様は神様です、とは言っていないのがミソ。

    腹落ちした社員は、朝から晩まで土地を仕入れるために靴をすり減らして不動産会社を回る。
    仲介営業は、できた戸建てを売るために駅前でサンドイッチマンでも何でもやる。
    声をかけ、電話をかける。
    体育会系、ではなく、体育会!
    3か月に一回、成績トップの社員を派手に表彰する。時には親を呼ぶ。呼べずともビデオでメッセージを流す。
    表彰された社員は感動する。社員をよく知る社長は、社員のやってきたプロセスを語り、最後に昇進させる。
    このノリについていけない社員は、腹落ちしない社員は、やめていく。

    ま、宗教だわな。
    高度成長が終わり、コンプラだのワークライフバランスだのがうるさくなり、元気を失った平成の日本の会社に、
    もう一度昭和を持ち込む。カトリックに対するプロテスタントのようなものだ。
    あ、見ようによっては回帰主義か?いや違う。守るべきは守っているから、決して昭和ではない、新しい平成。
    やはりプロテスタント、だ。それが証拠に、いまや不動産業界No4、
    上にいるのは明治のどさくさに国から土地を譲り受けた財産で食っている財閥3社だけ。
    プロテスタントだ。

    なんてことはこの新書には書かれてはいない。
    例として出てくるのは、ソニーであり、ホンダであり、トヨタであり、パナソニック。
    ソニーは平井さんがソニーを「KANDOを提供する会社」と再定義して復活した。傍流から出た中興の祖。
    トヨタはカトリック、ホンダはプロテスタント。ホンダジェットの成功はホンダのある意味いい加減さからくる。
    パナソニック、、と書くとわかりにくい。松下幸之助。いろんな意味で宗教だ。
    近江商人三方よし、、

    キリスト教、ユダヤ教、イスラム教にも切り込む。

    プロテスタンティズムの精神と資本主義 マックス・ウェーバー。
    やはりこれがバイブルか。学生時代読んだけど、もう一度読むべきかなあ。
    ヨーロッパで経済破綻する国はカトリックばかり。
    倹約勤勉の精神が大事ってことか。

    アメリカの独善さはピューリタンからくる、、許しがたいけどね。



    本書を手に取った方へ 入山章栄
     宗教は経営であり、経営は宗教である
     宗教は経済・社会のオペレーティング・システムになっている
     池上さんとの対話だからこその成果
     宗教×経営の「掛け算」を楽しむ
    第一章  トヨタはカトリック、ホンダはプロテスタント ~強い企業と宗教の類似性はセンスメイキングにある~ 
     解説 宗教と優れた企業経営は、本質が同じである 入山章栄
      本書全体でカギとなる経営理論「センスメイキング理論」
      ◎本書で学ぶ経営理論(1):センスメイキング理論
      リーダーが企業に腹落ちを浸透させるには
      ソニー平井氏は、現代のマルティン・ルター
      企業研修は、ミサや礼拝を見習うべし
      文章や絵の力を最大限に活用すべし
      あなたの会社はカトリック型か、プロテスタント型か
     対談 池上彰×入山章栄
      経営学は、人間と組織の学問
      「腹落ち」こそが人を動かす
      イスラム国の指導者が「カリフ」を名乗った理由
      テスラやスペースXは「イーロン・マスク教」
      「江副教」から脱したリクルート
      創業者を信じているホンダ、トップダウンのトヨタ
      ウクライナ戦争は子会社と孫会社の争い?
      ローマ教皇の人選はマーケット戦略
      プロテスタント型が生み出したホンダジェット

    第二章 イノベーションのためには、宗教化が不可欠 
     解説 なぜ企業の宗教化がイノベーションを引き起こすのか
      イノベーションの基本理論が「両利きの経営」
      ◎本書で学ぶ経営理論(2):知の探索・知の進化の理論(両利きの経営理論)
      多くの企業が「知の深化」に偏りすぎている
      トップの任期の短さが足かせに
      ◎本書で学ぶ経営理論(3):レッドクイーン理論
     対談 池上彰×入山章栄
      ホンダやソニーは「知の探索」をしていた
      「知の探索」はコスパが悪い
      二番煎じをやりたがるテレビ局の「編成官僚」
      書店は「知の探索」にうってつけの場所
     「創造性は移動距離に比例する」
      これからの企業は「宗教化」する
      若者を集める宗教的ベンチャー企業

    第三章 どんなビジネスも最初は「カルト」 
     解説 カルト宗教の行末は、ベンチャー企業の進化論に学べる 入山章栄
      チャーチ・セクト論
      ◎本書で学ぶ経営理論(4):エコロジーベースの進化理論
      ベンチャー成功のカギは、正当性(レジティマシー)獲得にある
      カルト・セクトの成長のカギも、正当性(レジティマシー)にある
     対談 池上彰×入山章栄
      キリスト教は「カルト」だった⁉
      組織は誕生したときがいちばんイノベーティブ
      創価学会の「座談会」は「QCサークル」
      高度成長期にフィットした「現世利益」
      過激派の政治的セクト、そして旧統一教会
      デジタル技術が生む「新しい宗教」

    第四章 パーパス経営の時代こそ、プロテスタントの倫理が求められる 
     解説  ビジネスの行動原理は、宗教というOSで決まっている 入山章栄
      『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
     対談 池上彰✕入山章栄
      人間の行動原理は宗教というOSで決まる
      「お金のためじゃない」から成功する
      今も生きているプロテスタンティズムの精神
      キリスト教もイスラム教も利子は禁止⁉
      産業革命で大ブレイクした背景
      近江商人の「三方よし」はパーパス経営
      儲からないフリをする日本人
      「子ども銀行」運動が高度成長の原動力に
    第五章 なぜイスラム教は「ティール組織」が作れるのか 
     解説 イスラム教こそ、次世代ビジネスの最強OSかもしれない 入山章栄
      イスラム教を理解する上で重要な「ティール組織」
      ◎本書で学ぶ経営理論(5):ティール組織とシェアード・リーダーシップ
      宗教の本質を理解する上で最重要な「常識の理論」
      ◎本書で学ぶ経営理論(6):社会学ベースの制度理論
      常識は幻想であり、衝突を生む
     対談 池上彰×入山章栄
      『コーラン』は翻訳してはいけない
      シーア派とスンニ派の違いとは
      『コーラン』の「多義性」がもたらすもの
      解釈をめぐって割れたソニー
      戒律に厳格な国と緩やかな国
      ユダヤ教徒との共通点も
      『聖書』は物語、『コーラン』は理念
      近代資本主義の一歩先を行く?
      「イスラム金融」は利子を取れない
      世界中で信者が増える理由
      「すべてを神に委ねよ」という安心感
      「常識の理論」でイスラムとの関係を考える
      「ティール組織」と相性がいいイスラム教
      ISはネットワーク型テロ組織
      組織を動かす力は時代によって変化する

    第六章 アメリカ経済の強さも矛盾も、その理解には宗教が不可欠 
     解説 宗教と経営の学びあいは、さらに続く 入山章栄
      対談から得た学び
      「企業経営はさらに宗教化すべし」
     対談 池上彰×入山章栄
      個人主義でリスクを恐れず短期志向
      成功者は神に祝福されている
      救済が保証されないから、さらに努力する
      隣人愛の実践と「強欲資本主義」
      信心深さの原点は「リバイバル(信仰復興)」
      突然宗教に目覚めた「リボーン・クリスチャン」
      「神の国」であるがゆえの傲慢さ
      しがらみの強い組織で新しいものはできない
      全国一律への嫌悪感
      東海岸はチャーチ、西海岸はセクト
      「反知性主義」が生まれる理由
      「コロナは神からの罰だ」という福音派
      モルモン教徒はなぜ成功する?
      矛盾を抱えているからこそ強い

    おわりに 池上彰 

    初出・参考文献

  • 宗教と経営理論の類似性(根底に人/組織、それらの行動がある等)に着目し、互いの領域の知見を対話形式で披露することで、各領域の理解を深めることを試みた一冊。経営学に慣れ親しんでいる身としては、両利きの経営等のコトバ自体は把握しているものの、宗教という視点を入れることにより、議論が広がり非常に面白かった。
    例えば、経営が苦しい状況において、両利きの経営を実践する(ここでは知の探索を継続する)ためには、仕事に従事する各人が、「なぜ我々が知の探索を行うのか」をメイクセンスしている必要がある。但し、これは言うは易しであり、特に日本での成功事例はまだ多く積み重ねられていない状況。では、なぜ海外ではこの理論をサポートするような企業が多数生み出されているのか、それを理解する一つの観点が宗教である。つまり、企業→個人というレイヤーだけでなく、そもそも宗教→個人という関係性において、「なぜ汗水を流して働くのか」という理由が個人で腹落ちしており(例えば来世での救済)、故に特定の行動に至るということ。こう考えると、以下引用箇所(p.136)にも記載の通りだが、経営学研究においても、個人や組織に対し、このような複層的な作用が働いていることを念頭に置きつつ、議論を重ねることが肝要であるように感じる。もちろん、どこまでどの変数が作用しているのか、ということを完全に可視化することは困難であるが、宗教という観点を入れることにより、解釈に幅を持たせられることはできるはずであり、多様性のトレンドとも相まって今後盛り上がる可能性はある。
    (弊社は現世救済型ではなく、来世救済型になるというのは笑い話としてメモ)

    特に印象に残った箇所は以下
    「「創造性は移動距離に比例する」。「知の探索」とは要するに人間の認知の幅を広げることで、いちばん手っ取り早い手段は、自分自身を遠くに移動させることなんです」(p.88)
    「経営学も本来なら、こうした視点を導入しなくてはいけないと思うんですね。「なぜ経営者はこのような行動をとるのか」「なぜこのような組織が出来上がってくるのか」といった問題を検討するときに、知らず知らずにその人自身や、その人の家族、地域、あるいは国に埋め込まれている宗教の影響を考慮する必要がある。ウェーバーの議論は、経営学と非常に親和性が高いというか、ある意味、補完的なものであると感じます」(p.136)
    「私には大学時代の指導教員から言われたフレーズで、すごく印象に残っているものがあって、いわく「完璧な論文は、いい論文じゃない」。世の中を揺るがすような論文は、ツッコミどころがけっこうあるんだと。だからこそ、「ここはおかしい」「自分ならこう解釈する」と議論が盛り上がる。いっさい反論や解釈の余地がない論文だと、それ以上の発展がないわけです」(p.171〜172)
    「「両利きの経営」も、言ってみれば「矛盾を内包できると強い」ってことなんです。幅広く「探索」することと、ピンポイントで「深化」させることは完全に別のベクトルですが、これを両立できると強みになる」(p.246)

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著者プロフィール

池上 彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京科学大学特命教授を務め、現在5つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』(ちくまプリマー新書)、『お金で世界が見えてくる』、『日本の大課題 子どもの貧困』編者、『世界を動かした名演説』パトリック・ハーラン氏との共著(以上ちくま新書)、『なぜ僕らは働くのか――君が幸せになるために考えてほしい大切なこと』(監修、学研プラス)、『経済のことよくわからないまま社会人になった人へ』(ダイヤモンド社)、『20歳の自分に教えたい経済のきほん』(共著、SB新書)ほか、多数。

「2025年 『池上彰の経済学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池上彰の作品

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