おろしや国酔夢譚 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.98
  • (48)
  • (37)
  • (45)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 343
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167104016

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 映画を見てから小説を読みました。
    大黒屋光太夫が凄いのは、いつか日本に帰れることを信じて、その時に役立つと思い、ロシアの詳細なメモを取り続けていたところ。そのメモと光太夫への聞き取りを元に江戸時代に数冊の本が書かれ、そういった本を元にこの小説が書かれているので話に説得力があります。
    映画と小説の違いを一番感じたのは、映画では西田敏行が演じた庄蔵が凍傷した足を切断する時に大声で叫ぶところが漂流の大変さを象徴するシーンになっているが、小説では庄蔵は我慢強い男で足を切断するときにも全く声を上げなかったり、映画では光太夫が女帝エカチェリーナ2世に会いその場ですぐに帰国の許可を得るが小説では面会後かなり経ってから許可が出ていたり。
    根室まで帰ってきて壊血病で死んでしまった小市は可哀想ですね。今なら壊血病の原因はビタミンC不足と分かっているのでそう簡単に亡くなることはないのに。
    この小説が書かれた当時は資料が足りなくて分かっていなかったが実際は帰国後、半幽閉といいながら故郷の伊勢にも許可が下りて一度帰っているので、小説の最後から想像する悲観して人生を終えたという感じとは違うようなので良かったです。

  • キリル・ラックスマンが好きすぎて、思わず手を出してしまった1冊。
    両親の実家が三重県鈴鹿市白子なので、その影響もありました。
    現代においても海外に行くにはそれなりの準備を要するのに、漂流と形で辿り着いた異国に対する恐怖と驚きが巧みに描写されています。

    個人的には、江戸に帰ってきた光太夫と磯吉が、日本の窮屈さに嘆いてロシアを恋しく思うシーンが印象的でした。
    広い世界を知ったからこそ感じる、鎖国日本の視界の狭さ。
    日本の土を踏んでも自由は与えられず、思わずロシア語で会話する二人には涙しました。 
    なぜ日本に帰りたかったのか、という光太夫の問い掛けに 
    「ラックスマンがあまりにも日本の石や植物を見たいと言っていたから」
    と答えた磯吉。
    純粋に日本に訪れたかったラックスマンの思いを汲み取った一言だと思います。

    鎖国の罪深さを表したシーンでした。

  • 第1回日本文学大賞
    著者:井上靖(1907-1991、旭川市、小説家)
    解説:江藤淳(1932-1999、新宿区、文学評論家)

  • 30年ぶりくらいに読んだが、最初のグローバル人材だなぁ

  • 最初は16人いた一行のうち、最後まで生き残ったのが4人。うち2人はキリスト教に帰依し、10年の後日本に帰国したのは2人。18世紀のシベリアの過酷な自然環境や華麗なロシア文明を描いた作品です。
    小説と史書の中間、どちらかと言えば丹念に調べた史実を忠実に再現しようとしています。主人公の感情とかの描写は少なく、事実が淡々と述べられていく。作家は皆さん古くなるとこうゆう傾向になるのでしょうか?司馬遼太郎も吉村昭も方向の違いはあれ、そんな感じがします。この作品についていえば吉村昭の最近の作品に近いように思います。もちろん井上靖の方が大先輩ですので、本当は井上さんに吉村さんが近いと言うべきでしょうが。

  • 授業でちらっと勉強しただけの大黒屋光太夫
    漂流民として暮らしているときよりも
    日本に戻ってからのほうが苛酷

  • 映画が面白かったので。高校の世界史にも名前が出てくる大黒屋光太夫の物語。故郷とは何かを考えさせられる。家族や友人、生まれ育った生活風俗や言葉、帰りたいと思う場所。ロシアからの見送りがあまりに温かく、もしも時代が違っていたなら、光太夫たちが日本の通訳として再びロシアを訪れたり、日本に訪れたラクスマンのお供をして各地を案内したり、そういう未来があったかもと夢見てしまった。

  • 大黒屋光太夫のお話なのだが、この時代にこれだけはるばる移動した人も少ないだろうし、運命に翻弄されるがまま異邦人になってしまったというのはまさに波乱万丈。でも、やっぱり頭のいいというか、這い上がれる力を持った人だったのだろうということはよく分かった。こういう不撓不屈的な人物の話は個人的に好きだ。

  • アムチトカ島を出るまでは他にもある漂流記と大きく違いは無いが、カムチャッカに渡りさらにヤクーツクさらにイルクーツクまで来るともはや漂流記を逸脱して異世界冒険譚となる。主人公が異世界を旅するフィクションは掃いて捨てるほどあるが、そのどれも物語としての迫真さにおいて本作には叶わない。これが江戸時代のシベリアの大地と帝政ロシアを舞台にした実話というところが驚き。

  • 海流の影響か、昔からロシアには日本の船が流れ着くことが珍しくなく、もちろん日本には帰れずに現地で一生を終える者がほとんどだった。そんな中、和歌山の商人である大黒屋光太夫は知恵とど根性で日本に帰ってくるのだ。帰りの船を出してもらうために当時の女帝エカテリーナに謁見するという歴史的な事実もあって、ロシアでは知られた人のようだ。ロシア人の気質なども垣間見られる貴重な調査記録だ。

全37件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

井上 靖(いのうえ やすし)
1907年5月6日 - 1991年1月29日
北海道旭川で生まれ、天城湯ヶ島、三島・沼津で18歳まで過ごす。その時代までのことは『しろばんば』をはじめとした「自伝的小説三部作」に詳しい。金沢の第四高等学校(現・金沢大学)で詩作を始め、京都帝国大学を卒業後大阪毎日新聞社に入社。
小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950年デビュー。現代小説、歴史小説、エッセイ、自伝的小説、シルクロード西域関連の作品、詩集など創作範囲は多岐に及ぶ。主な代表作に、『風林火山』『氷壁』『天平の甍』『おろしや国酔夢譚』などがある。
1964年日本芸術院会員に。同年『風濤』で第15回読売文学賞、1980年菊池寛賞、1985年朝日賞などをそれぞれ受賞。1976年には文化勲章も受章しており、多数の受賞歴がある。

おろしや国酔夢譚 (文春文庫)のその他の作品

井上靖の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

おろしや国酔夢譚 (文春文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする