この国のかたち 四 (文春文庫 し 1-64)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105648

作品紹介・あらすじ

最後まで、この国の行く末を案じ続けた著者が、無数の歴史的事実から、日本人の本質を抽出し、未来への真の指針を探る思索のエッセンス。

感想・レビュー・書評

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  • 第二次世界大戦を引き起こすきっかけとなり、「日本国家の構造の問題」と著者が位置付ける昭和時代の統帥権について、本巻ではかなりの紙面が割かれている。また、最後に「日本人の二十世紀」というテーマで、著者の口述をもとに出版社がまとめた章があるが、ここでも昭和時代の日本の本質を抜き取っては厳しく非難をしている。
    本巻を読んで感じたことは、歴史は「滅亡(あるいはそれに近い危機的状況」と「変革」の繰り返しであるということである。幕末、250年にわたる鎖国のため、日本は世界の列強と比較しても、知識や技術の面において、大幅な遅れを取っていた。鎖国によって日本独自の文化が生まれた点は否めないため、そのことを批判したいわけではない。言いたいことは、黒船来航、尊王攘夷思想の発達により、明治維新が起こったことである。明治維新により、日本で「国家」が誕生した。日本「国家」が、廃藩置県、富国強兵といった国策を取ったことにより、日本は列強の仲間入りを果たせるまでに成長をした。しかし、日露戦争の勝利をきっかけに、日本政府、軍部、そして国民は自己陶酔に陥り、大きな進歩もないまま満州事変を引き起こし、日中戦争、太平洋戦争を経て、日本は敗戦した。この時、「日本は滅びた」と著者は述べている。しかし、その後、高度経済成長時代を迎え、日本は世界第2位の経済大国へと飛躍した。一度滅びた日本が復活したわけである。
    現在、中国にGDP世界第2位の座を明け渡し、デフレ、失業率の高止まり、日本企業の凋落といった暗いワードばかりがメディアに溢れているが、これまでの歴史が「滅亡」と「復活」の繰り返しを物語っているのであれば、今後、日本の「復活」があるのかも知れない。期待も込め、そう信じたい。

  • 「統帥権」を例に、戦前の昭和がいかに日本史の中で異色だったのかを述べる。明治のリアリズムは消えてしまった時代。厳しく批判するこの時代の異様性。将来の世代に十字架を負わせたとの言葉に、そうなんだ、これなんだと言いたかった。

  • 統帥権を悪用した軍部上層部は天皇をも傀儡としたと言える。
    日本史に例を見ない(軍部による)独裁を許した30年を司馬遼太郎は許せないのをひしに感じた。

  • 統帥権の論調は叱責しているような論調は同意せざるを得ない。歴史を外科医のようにオペしている。
    最終章の先見性も鋭いと思う。

  • 左翼思想は疑似的な普遍性を持った信仰であり、国家や民族を超えてこの疑似的普遍性に奉仕せよと考える。彼らの日本史の捉え方はリアリズムを欠く。江戸時代の百姓は帝政ロシアの農奴であり、大名は帝政ロシアの地主(貴族)であり、東京の都市労働者は英の産業革命以後のプロレタリアートであると勝手に当てはめて理解している。そこにありのままの日本史は存在しない。p.192-193.▼軍事は身に着けるべき一般教養。戦後は軍事に触れるだけでも具合が悪いという細菌恐怖症のような気分がある。現実を認識しない平和論はかえって恐ろしい。軍事を遠ざけることが、軍部の独走という非リアリズムを生む。いつの時代も合理的に判断行動するように。

    日本の庭園。夕闇。寂滅じゃくめつ為楽いらくの宗教的境地に浸る。▼龍安寺石庭は15個の石で大海を表す。大徳寺大仙院は禅の理想郷(枯淡幽寂)を造形化。大徳寺こほうあん、今生の華麗さを描く。

    ※日露戦争は祖国防衛戦争p.173。
    ※高麗は仏教を尊んだが、朝鮮は仏を拝し儒に代えた。小中華という空想や礼がもつ滑稽さ。
    ※馬を去勢する遊牧民文化。古代エジプト・オリエントの宦官。日本には馬を去勢する習慣が明治までない。▼士は男性器の立つ形を示す象形文字。
    ※日本の奥州と大陸の沿海州の交流。靺鞨が住む大陸の南にある青森出身だから陸羯南。

  • この刊は、紙面のほとんどを太平洋戦争に費やし、統帥権について司馬遼太郎さんの意見を述べておられる。
    もちろん、あのような戦争は2度とあってはならないし、主張しておられる内容も多分に理解は出来るのだが、当時の軍部が全て悪いというのは、当事者は真剣にこの国の未来のことを考え抜いていたであろうから、余計悲しい。

  • この巻では、「統帥権」という事について最大の稿を割いている。

    筆者の言う、日本らしからぬイデオロギーを持った唯一の時代が昭和の初期に存在し、自国の本当の国力や軍事力を考えないまま戦争に突入し、敗戦国となった日本。

    戦の勝国になったか、負国になったかという問題ではなく、三権を超越する権力として統帥権を操り、暴走の徒と化す一部の人間達(陸軍参謀本部等)によって、日本が如何に狂騒の時代へ突入したかにスポットを当てている。

    兎にも角にも、この巻では「統帥権」という言葉が印象に残る。

  • この国のかたち [04]

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  • 江戸時代に、テグスを作る技術が向上した。それで史上初めて、庶民の食事に鮮魚も出るようになった。

    などなど、いちいち、衰えない「へー」度の高いエッセイ集。



    #以下、本文より

    日本国の通弊と言うのは、為政者が手の内、とくに弱点を国民に明かす修辞というか、さらにいえば勇気に乏しいこと。

    自己を正確に認識するリアリズムは、ほとんどの場合、自分が手負いになるのです。大変な勇気が要ります。

    勝者と言うのは、自分がかつて勝った経験しか思考の基礎にしない。

    今、我々の足元を見ると、結局、物を作って売って国を航海させているわけですから、やはりお得意さんが大事という精神、このリアリズムだけが、日本を世界に繋ぎとめる唯一の精神だと思えてなりません。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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