新装版 坂の上の雲 (3) (文春文庫) (文春文庫 し 1-78)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105785

作品紹介・あらすじ

日清戦争から十年-じりじりと南下する巨大な軍事国家ロシアの脅威に、日本は恐れおののいた。「戦争はありえない。なぜならば私が欲しないから」とロシア皇帝ニコライ二世はいった。しかし、両国の激突はもはや避けえない。病の床で数々の偉業をなしとげた正岡子規は戦争の足音を聞きつつ燃えつきるようにして、逝った。

感想・レビュー・書評

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  • 【あらすじ】
    日清戦争から十年・・・
    じりじりと南下する巨大な軍事国家ロシアの脅威に、日本は恐れおののいた。
    「戦争はありえない。なぜならば私が欲しないから」とロシア皇帝ニコライ二世はいった。
    しかし、両国の激突はもはや避けえない。
    病の床で数々の偉業を成し遂げた正岡子規は戦争の足音を聞きつつ燃え尽きるようにして、逝った。


    【内容まとめ】
    1.明治には、国民所得の驚くべき低さという宿命的な暗さが付きまとう。
    2.ロシアと日本の戦争に対する準備は正反対。「Giant Killigno」の理由は準備の怠りと相手の軽視
    3.この頃の人物たちは、当たり前だが「武士道」や「反骨精神」を心に持って生きている。


    【感想】
    ようやく物語は日露戦争に突入!
    しかし、今はまだ8分の3巻しか終わっていない・・・
    この物語はこの後どう続くんだ?
    長い。長すぎる!
    長いのは良いけど、わき道にそれてばっかりじゃキツイぜ?!笑

    上記にもあるが、この頃の日本人はしがみ着く思いを持って外国に対峙しているように思える。
    負けるかもしれない、でも祖国のために負けるわけにいかない。
    そんな緊張感と焦りを持ちつつ、現実から決して目を背けずにこの無謀な戦いに挑んでいる。

    それに比べ、今の日本はどうなのか?
    何故か高飛車な態度で生きて、中国やアジア諸国にツバを吐きつつアメリカや欧米国にはヘイコラよろしくやっていて、謙虚というよりもはや卑屈な態度で日々生きている人が多い。
    時代が変わって人が変わるのは仕方ないとは言えども、こんな世の中になるために昔の人は血を流したのか?
    この頃の人間が今の日本を作る為に奔走したことを思うと、今の自分たちを見ると、どう思うだろう?
    日本人である事に些かの情けなさすら感じてしまうな・・・

    話が逸れたが、、、
    戦国モノと違って近代の戦争はスケールが大きい!
    1人の力や戦略ではなく、色んな策略・謀略に富んでいて、面白い!
    が、文字で読むのが難しい!!笑

    これは小説で読むにはもう少し根性が要るな?
    あと5巻!楽しみだぜ。


    【引用】
    p9
    「秋山の天才は、物事を帰納する力だ。」
    あらゆる雑多なものを並べてそこから純粋原理を引き出してくるのが真之の得意芸。
    熱心さも度はずれたもので、「一生の大道楽」と人には言っていた。


    p42
    明治28年に日清戦争が終わり、1年間の総支出は9160万円ほどだった。
    しかし、翌年明治29年は当然民力を休めねばならないのに、総支出は2億円あまりである。
    軍事費が占める割合も、32%→48%に。
    明治の悲惨さはここにある。
    我々が明治という世の中を振り返るとき、宿命的な暗さが付きまとう。
    つまり国民所得の驚くべき低さがそれに原因している。


    p68
    要するに、日露戦争の原因は、満州と朝鮮である。
    日露戦争にもし日本が負けていれば、朝鮮はロシアの所有になっていたことは疑うべくもない。

    ただ、日本は海ひとつへだてているために、所有まではされなかったに違いない。


    p96
    ・ロシア陸軍大佐ワンノフスキーの日本観
    「日本陸軍がヨーロッパにおける最弱の軍隊水準にまで辿り着けるだけの道徳的基礎を得るまでに、あと100年はかかるであろう。」
    日本陸軍の装備や作戦能力ではなく、軍隊道徳的について論じている。
    当時の日本軍隊において過剰すぎるほどの要素は忠誠心と服従心でしかないのに、そのごく明白な事実すら、観察する能力を欠いていた。

    またこのワンノフスキー報告が、その後のロシア軍部の日本観の基礎となった。
    →ロシアは日本をクソ舐めてた


    p139
    好古の日記
    「ロシア帝国というのは、外交ひとつにしても嘘が多くて、何をしでかすか得体の知れぬ国であるが、しかしロシア人はその国家とは全く違った好人物だけである。
    特に酒宴でのロシア人の気分のよさは、世界一かもしれない。」


    p180
    ・戦前の日露間の外交について
    劣等民族である黄色人種へのサディスティックな外交は、この時だけでなく太平洋戦争やむしろ現代でもくすぶっているのでは?
    日本が調子に乗っちゃいけない、今もなお白人たちは劣等民族と思っている。

    日露戦争というのは、世界史的な帝国主義時代の一大現象。
    窮鼠猫を噛むかの如く、追い詰められた者が生きる力ギリギリのものを振り絞ろうとした防衛戦であった。

    そんな用意周到な日本に対し、ロシアの準備不足は日本を舐めてかかりすぎたから。
    大東亜戦争では、日本はこの頃の気持ちを忘れてやや哲学的に作戦を立てすぎていた。


    p317
    「これが、日露騎兵の第1戦なのだ。
    常に最初の戦いが大事であり、ここで負ければ日本の騎兵の士気に影響し、悪くゆけば負け癖がついてしまうかもしれない。
    ここで退却すればロシア騎兵に自信をつけさせ、今後の戦闘で彼らはいよいよ強くなるだろう。」
    戦術的に退却が妥当であることはよくわかった上で、この局面この段階での退却が全てを失う事になることを案じていた。

    「旅団長閣下が、最前線の機関銃陣地で不貞寝をしている。」

    「もう戦闘は1時間半も続いている。
    敵がやがてくたびれるはずだ。」
    とにかく自分や兵隊の体がちぎれようと吹き飛ぼうと、この現場から退かないというのが、好古の唯一無二の戦法だった。

    戦場での司令官は、あまり鋭敏であってもいけない。
    反応が鋭敏すぎると、かえって事を誤る。
    こういう極所には、わざと鈍感になるしかなかった。

  • 日露戦争も開戦した。戦艦、巡洋艦を以て戦う描写はまるでその場にいるのかと間違えてしまうほど細かい。
    また貧しい国の日本が大国ロシアと戦争をしなくてはいけなかったのかわかった気がする。

  • ▼正岡子規は本編の三人主人公の一人だが、3巻目で死んでしまう。秋山兄弟もそうだけれど、上回るくらいに司馬さんは正岡子規が大好き。その「好き」が泣けてくるような3巻目。それはまた「ひとびとの跫音」になっていく。▼そうだった、十代の頃に「坂の上の雲」を読んで、短歌俳句に興味を持ったんだった。正岡子規の「俳諧大要」とか岩波で買って読んだんだった。

  • ついに、日露戦争、、、!
    開戦前後の日本側のギリギリの努力がよくわかる。読んでいてヒヤヒヤする。
    日本、ロシアともに優れた人格の人が出てくる。当たり前だけど、実にいろいろな人が関わっていたのだなと。
    今回、正岡子規と、広瀬武夫が亡くなってしまった。
    四巻では、東郷の隠れた「人格的威力」が大いに発揮されそうだ。

    余談だが、司馬遼太郎さんの「余談だが…」が好きになってきた。

  • 東郷平八郎さんが何をしたか全然知らなかったが、これを読んで東郷さんのことをよく知れた。
    正岡子規さんが死んでしまって悲しい。
    正岡子規さんの事をよく知りたい。

  • 知らない事だらけで、なかなか進まない。
    戦艦に興味がなかったが、戦艦三笠は横須賀にあるなぁ〜と思い出す。あーこれに東郷平八郎や秋山真之が乗ってだんだなあ。

  • これを言ってしまうと元も子もないのかもしれないけど、そもそも秋山兄弟と正岡子規を、敢えて一つの作品にまとめる必然性って、果たして何なのでしょう。そんなに交流が深かったようにも思えないし、同時代を生きた同郷の人物っていう以上の意味合いが、正直見出せないのです。そうこうしているうちに、まだ物語の序盤だというのに、子規は早々と退場してしまったし。もっと言うと、日清戦争の描写にしても、ところどころ件の兄弟の話題も交えつつ、総合的には色んな人物を登場させながら進めざるを得ない訳で、いっそ主人公なしでも良かった気がしなくもないのです。もちろん、筆者の中でも名作の誉れ高いだけはあって、物語そのものは面白いと思うのですが。これから先の展開についても、そこまでワクワクしない自分がいるのも、これまた事実なのであります。

  • とうとう日露戦争に突入。
    ロシアという超大国に戦争を挑まなくてはならなくなった日本人の気持ち、恐怖や決意、様々な感情が、現在を生きる僕の胸にもつき刺さります。
     
    この時の日本人の感情は、真之と同期で、生涯の友人だった森山慶三郎の言葉にあらわれています。
     
    「私はただうつむいてだまっていた。涙がこぼれて仕方がなかった。この時脳裏を去来したのは、ロシアに負けるかもしれぬということであった。
    二年前に公用で渡欧し、そのときポーランドを過ぎてその亡国の状を見た。戦勝者のロシア人が、どの町でもその町の主人のような態度でポーランド人を追いつかっているのを見たが、その光景が思い出されてならず、日本もあのようになるのではないかと思うと、感情の整理がつかなくなり、涙がとめどもなくなった。」 
     
    この戦争に負けたら、日本がなくなるかもしれない。
    そんな覚悟を持った当時の日本人の姿からは、多くの勇気や教訓を与えてくれます。
    決して戦争を肯定する訳ではありませんが、このような覚悟をもった人々がいたことによって今の日本があることは、日本人として知っておくべきだと思います。

  • ついに日露戦争突入。正岡子規さんが亡くなられたが、もっと生前の活躍を知りたかった。それは別の本に譲るとして、日本が大国ロシアにどう立ち向かって行ったか、4巻以降からも学んでいきたい。

  • 国家存亡を背負う要人

    軍は児玉源太郎、経済界は渋沢栄一。

    ・2人が涙を流して覚悟を決めるシーンが印象的。
    本当はそんなイチカバチカの橋を渡るべかざるなのだが、渡らないとロシアの帝国主義に喰われる中、自らの手で事を成し遂げる精神に感服。

    ・一兵卒になってでも最後は戦うという気概。渋沢栄一のセリフ。
    なお児玉さんは大将?中将?ながら現場の指揮官(本当はもっと下の役職が担う)に立候補し勤めた。さすがです。

    ・なんだかんだ数的優位
    戦闘では数的優位をつくる。ランチェスター

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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