坂の上の雲 八 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (1999年2月10日発売)
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本 ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784167105839

作品紹介・あらすじ

シリーズ累計2000万部、司馬遼太郎記念財団によるアンケート〈好きな司馬作品〉第1位にも輝いた、不滅の青春文学。全8巻。

本日天気晴朗ナレドモ浪高シ——。

明治38年5月27日早朝、日本海の濛気のなかに、ロシア帝国の威信をかけたバルチック大艦隊が、ついにその姿を現わした。

国家の命運を背負い、戦艦三笠を先頭に迎撃に向かう連合艦隊。
大海戦の火蓋がいま、切られようとしている――。

感動の完結篇。巻末に「あとがき集」他を収録。 文庫解説・島田謹二

スペシャルドラマ〈坂の上の雲〉がNHK総合テレビにて放送!
(2024年9月8日より 毎週日曜 午後11時~/全26回)
出演:本木雅弘 阿部寛 香川照之 菅野美穂

感想・レビュー・書評

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  • 明治を描く一大叙事詩にして不朽の名作。ドラマ化も原作に忠実になされています。日露戦争をめぐる秋山兄弟と正岡子規の青春群像としての側面もあります。「竜馬がゆく」とともに若い頃に出会えて本当によかったと思える作品です。
    下らない身の上話になりますが、家系図によると、私の先祖が装甲巡洋艦の日進に乗艦していたそうです。本作の訓練の様子やロシア艦隊との激戦の最中にいたと思うと想像が膨らみます。とにかく司馬遼太郎が調べに調べ尽くして描いているので臨場感がまるで違います。
    戦艦の形から何型のロシア艦かを見分けたり、波の荒い日本海で弾薬を節約しながら訓練したりする場面にこんなことしてたんだと感慨もしきりです。
    同じ艦に若き日の山本五十六も乗っており、どっかで会ってるのかなとか東郷平八郎や秋山真之を遠目から見てたのかなとか、楽しみながら読めました。
    自分のルーツをたどると何かしら歴史上の出来事にブッキングしておりそこが歴史ずきになった一因でもあります。
    確かにその時代を生きた人々の足音が聞こえてくるようでした。

  • 実は司馬遼太郎作品はこれが始めてでした。
    学校の教科書では、東郷平八郎ひきいる日本海軍がバルチック艦隊に勝利した。くらいしか書いてなかった記憶があり、少年だった私も遠い昔の出来事として何も印象に残っていなかった。
    日露戦争を全般的に書かれているので、陸軍の二百三高地の激戦やその他の戦いもあります。
    作者の並々ならね膨大な取材に基づいた海戦、陸戦の細かい描写に頭が下がります。
    当時の日本の国力を考えればロシアに勝つなんて奇跡でしたが、日露戦争になぜ勝てたのか、ロシアはなぜ負けのかが理解出来ました。そして大東亜戦争になぜ負けたのかも。最終巻に作者の解説があり、作者の思いが伝わりました。
    でもロシアって昔から変わってないんだなとつくづく思う。

  • まるで戦場にいるかのようで、人物の心理にまで食い込んだ描写は、この巻だけではないがすごい!筆者の研究心、情熱はハンパないんだと思うこと、しきり。

    日露戦争は日本の勝利、とだけ暗記していた学生時代の知識が、多いにアップデートされた。本当に際どい戦いだったんだなあ。

    秋山真之が正岡子規の墓を訪れる場面。しみじみと心に残った。戦争に関する記述が多い中で、人が人を思う気持ちも描かれ、筆者の思いが感じとれた。

    たくさんの、ブク友の皆さんの感想を読ませていただき勉強になりました。自分の歴史観の低さを痛感しました。歴史に興味がなく、日本史や世界史の授業は居眠りばかり。歴史を知らずして、今は語れない!学び直します。ありがとうございました。

    • くにちゃんさん
      コメント、ありがとうございます!えみほさんの感想を読んで、私と理解の度合いが違い、尊敬!でした。
      コメント、ありがとうございます!えみほさんの感想を読んで、私と理解の度合いが違い、尊敬!でした。
      2025/03/15
    • koba-book2011さん
      読了おめでとうございます!坂の上の雲が楽しいとお感じになったとしたら、もし未読でしたら是非「竜馬がゆく」も!きっと楽しめると思いますー!
      読了おめでとうございます!坂の上の雲が楽しいとお感じになったとしたら、もし未読でしたら是非「竜馬がゆく」も!きっと楽しめると思いますー!
      2025/03/15
    • くにちゃんさん
      おはようございます♪
      本の内容も良かったのはもちろんですが、Koba-book20011さんの「坂の上の雲」のレビュー、とても勉強になりまし...
      おはようございます♪
      本の内容も良かったのはもちろんですが、Koba-book20011さんの「坂の上の雲」のレビュー、とても勉強になりました。さすがだなぁ。

      先日、司馬遼太郎さんは映像化することについて生前、拒んでいたとの記述を新聞で読んだのですが、読了してその思いが全てではないけれど、分かるような気がしました。映像化されやすい部分のみが誇張されてしまうこと、あるなあと。

      「第一次世界大戦とは」というテーマに向けた読書の旅、と記されていましたが、歴史を大きな流れで考えていくと面白いと思いました。

      「竜馬がゆく」読んだことないです。読んでみます!
      2025/03/16
  • 司馬遼太郎の代表作のひとつ。
    文庫本にして八巻、構想五年・連載五年という大作。
    1972年刊行。

    伊予・松山の城下町に生まれた秋山好古・秋山真之兄弟と、真之の親友であった正岡子規の三人を主人公とし、明治初期〜日露戦争終結までを描いた小説。

    秋山好古は、佐幕藩であった伊予松山藩の徒士(下級士族)の三男として生まれ、大阪師範学校を経て陸軍士官学校を卒業する。その際、創立間もない騎兵学科を選択する。以降、好古は生涯を懸けて日本騎兵を世界水準まで押し上げることに身を捧げ、「日本騎兵の父」と呼ばれるに至る。
    後年、フランス軍人から「秋山好古の生涯の意味は、満州の野で世界最強の騎兵集団を破るというただ一点に尽きている」と賞される。

    秋山真之は、好古の実弟で、秋山家の五男として生まれる。幼少期は腕白なガキ大将だった。地元の松山中学を中退した後、共立学校を経て、兄を頼って上京し、大学予備門(現東京大学教養学部)に入る。予備門では子規らと共に帝国大学進学を目指すが、経済的な事情で海軍兵学校に進学、主席で卒業する。
    真之は、先輩・同輩から「異常に頭が切れる」と賞され、思考耐久力と直感力を併せ持った天才的な作戦家だった。その能力を買われ、日清戦争を経た日露戦争においては若くして連合艦隊作戦参謀となり、海上作戦を一任される。

    正岡子規は、言わずとも知れた明治文学を代表する俳人。真之の幼馴染でもある。
    子規は、松山中学を中退後、太政大臣になることを志して大学予備門に入る。卒業後、帝国大学に進学したものの、在学中に文学に強い興味を持つようになる。
    大学を中退後、新聞『日本』の記者となり、傍らで文芸活動をおこなう。
    子規は20歳頃から肺結核を患っており、35歳で若くして没するまで病に苦しんだ。しかし、彼の活動は俳句、短歌、新体詩、小説と多岐に渡り、日本の近代文学成立に多大な影響を与えた。


    本作で司馬遼太郎が取り扱うのは、「日本人とは何か?」という問いである。
    作者はこの問いの答えを、世界史上としても奇跡的な急成長を遂げた明治初期〜中期の日本に求めた。

    作者は、この時期の日本を「史上最も楽天的な時代」だと称している。
    はじめて日本が近代国家として成立し、その政府も陸海軍も小所帯であるが故に、どの階層の子も自らの努力と功績次第で国の中枢に入ることができる。各々の働きが日本の前進に直結する。この簡明さが、彼らのオプティミズムを醸成していると述べる。

    実際、これは小説を読んでいて感じた。
    若い国家において、若人が皆、健全な野心をもって世に出ていく。この価値観が強く描かれている。
    彼らには迷いがない。己が日本を前に進める大物になることを信じて疑わない。

    対して、現在の日本はどうだろうか。
    長く低迷の時代が続き、アメリカに追いつくどころか、かつては歯牙にもかけなかった中国・韓国にすら経済規模で抜かれようとしている。
    現在の日本の空気は暗く、日本人は自信喪失と自虐に蝕まれている。

    悪い要因はいくつもある。
    世襲と無能が招くビジョンが欠乏した政治、腐敗したオールド・メディア、現役世代を搾取し老人に「仕送り」を強制させる悪循環、挙げればキリがない。

    しかし、全てを前の世代と他人のせいにはできない。
    現役世代のビジネスパーソンは、99%は知識もスキルも足りていないと個人的に思う。危機感と主体性を欠いた怠惰な人間だと。
    現在の日本に必要なのは、これらの悪環境を嘆いて暮らす従順さではない。自らが上位1%の人間となり、根本からの変革を主導してやるという、健全な野心なのだと、私は考える。

    冒頭の問いに戻る。
    「日本人とは何か?」
    私が本書を読んで考える答えは、「日本人とは、勤勉さと勇猛さを兼ね備えた、本来は創意と工夫を得意とする類稀なる優秀な民族だ」ということだ。

    日本人は、この資質を持って、列強国に200年を遅れた近代化(明治維新)からわずか三十余年で当時世界最大の国家の一つであるロシア帝国と対等に戦い、列国の仲間入りを果たすことができた。
    このドラマは素晴らしい。それは間違いない。

    しかし、本書においても触れられているように、巨大な成功体験はその国を狂わせる。

    日露戦争の大勝は、後世の陸軍の自己批判の欠如を助長し、暴走を招いた。結果、日本を太平洋戦争という狂気に突入させた。

    経済においても、戦後の高度成長という、単なる先進諸国へのキャッチアップに過ぎなかった事象が自信過剰を招き、構造的失陥を是正することなく持ち越されてしまった。

    作中では、明治維新の藩閥を引きずる陸軍と、自浄作用を発揮して新生した海軍が対比的に描かれる。
    陸軍に無能が跋扈して大量の犠牲を出したのに対して、海軍は若く、何の後ろ盾もない真之を連合艦隊作戦参謀に登用し、海戦史上で類を見ない完全勝利を果たした。

    現在の日本で求められるのは、旧態依然とした体制からの脱却である。
    この三十年間日本を停滞させてきた主犯の老人たちを一掃し、若く有能な若者を重要なポストに就かせるべきだ。これは政治でもビジネスの世界でも同じことだ。

    現在の日本は、本書で描かれる老朽したロシア帝国とアナロジーだ。彼らは旧く、内に抱える構造的欠陥ゆえに亡国の憂き目に遭った。

    日本を同じにしてはならない。変革が必要だ。
    それが、日本を高めるために身を砕き、坂を上るように日本を引き上げた秋山好古・真之ら英雄に報いる唯一の手段である。

  • 戊辰戦争後の明治時代を、正岡子規、秋山兄弟を主人公にして描いた作品。
    日清日露戦争が特に中心になっており、陸軍の秋山好古と海軍の秋山真之が中編からは主軸となっていた。
    文庫本全八巻と非常に長く、読むのに時間がかかったが、全体的には非常におもしろかった。
    とくに日露戦争の戦術面での勝因を明確に記載しており、わかりやすかった。

  • ▼エンタメと考えれば、この小説は(日露戦争は)いろいろあっても最後が日本海海戦で圧勝して終わるので、溜飲が下げられて素晴らしい。その、苦しい辛い中で最後スッキリというヤクザ映画的な語り口がこれまた上手い。海戦でも、まずは三笠が被弾しまくる描写も延々とやる。その次にロシア側の(日本軍と比べ物にならない)被弾を描く。そういう順番構成とか。上手い。

    ▼一つ勘違いしていたことがあって。ポーツマスの和平のあとで、日比谷焼き討ち事件がある。つまり民衆が「より戦争を、戦果を」と暴動を起こした。その戦慄の描写があって。そして、日本海海戦の完勝、その成果であるポーツマス条約。だがその中から昭和の戦争と完敗に向けた胎動が始まっている…というドロドロした思いが湧き上がって終わる。・・・と思っていたら、間違っていて、全然その描写は無かった。恐らく、同じ司馬遼太郎さんの「明治という国家」か、「昭和という国家」か、あるいは吉村昭さんの「ポーツマスの旗」か、どれかと記憶が混同していました。

    ▼今、個人的な興味関心で、「第一次世界大戦とは」というテーマに向けた読書の旅を続けていて、実は「明治日本と帝国主義先行国家とのせめぎあい」を畫いた坂の上の雲は、このテーマの流れとしてもとても良かった。

  • 日露戦争は日本の勝利と知っていたが、この本を読む事によって多くの両国の犠牲があった上でのことだと再認識させられる。

    最後の章の、真之が子規庵に行った場面は海上での戦いとのコントラストを強く感じた。他愛ない日常も、戦争のもとでの日々も同じ人間の生活の一部なんだと思った。

  • 完結巻。嗚呼、長かった物語もこれで終わりか。戦争の終結に至る過程はなんとも言えぬ思いで読んだ——ロジェストヴェンスキーが主将だったから露は負けたのだ。他の軍人だったならここまでの大敗はしなかっただろう。本当にどうしようもないヤツだ…。何があそこまでの強者を演出していたのか、不思議なくらいだ。
    ・・で、反対に日本のトップこと東郷であるが、故・野村克也みたいなひとだなぁ、と。
    秋山兄弟を通して、日露戦争…いや"戦争"の何たるかをよーく学べた気がします。
    (※後に、この快勝が太平洋戦争へと駆り立て、敗北へと導く原因のひとつなのですね…。)
    愛媛旅行がきっかけで、ほぼ一年くらい掛けましたが、読んで良かったなぁと心から思いました。星三つ半。

  • 歴史に残る大海戦。敵前回頭という大胆な作戦。訓練不足や不適切と思われるロジェストウェンスキー提督の指揮の数々。手に汗握る最終巻でした。

  • 旅順が肝でした。
    戦争的にも作戦的にも、読み進めるモチベーション的にも(苦笑)

    曠野戦の陰惨さに、ページを繰る手がどうしても止まってしまい、とうとう中断まで(しかも長め)。
    それを乗り越えての読了なので、感慨もひとしおです。

    曠野に比べて海の上の爽やかなことといったら!

    バルチック艦隊のターンを心待ちにするほどでした。
    ふつうにロジェストウェンスキー提督のファンになりましたし。

    日本海海戦を迎えたときは感無量なのと同時に、寂しさもない交ぜでした。
    ああ、長かった物語が終わる…と。

    後半はロ提督を楽しみに読みましたが、前半は子規。
    彼と真之の交友シーンはすべてよかったです。

    この本のおかげで、今まで敬遠していた近代史に目覚めました。
    「翔ぶが如く」も近いうちに読みたい。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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