新装版 菜の花の沖 (1) (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 81
  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105860

作品紹介・あらすじ

江戸後期、淡路島の貧家に生れた高田屋嘉兵衛は、悲惨な境遇から海の男として身を起し、ついには北辺の蝦夷・千島の海で活躍する偉大な商人に成長してゆく…。沸騰する商品経済を内包しつつも頑なに国をとざし続ける日本と、南下する大国ロシアとのはざまで数奇な運命を生き抜いた快男児の生涯を雄大な構想で描く。

感想・レビュー・書評

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  • 前回、同じ司馬遼太郎さんの城塞を読んだ後だけに明るい本を読みたいと思い高田屋嘉兵衛さんを主人公にしたこの本を読んだ。本の紹介で快男児という言葉に惹かれた。
    一巻は苦しい淡路島時代から兵庫に出て行くまでの話。今後の展開が楽しみです。

  • 江戸後期の商人・船乗りの話。人間とはどうあるべきか勉強になった。蝦夷地で当時膨張していたロシアとの接触の話が佳境であり、今まで具体的にはつかめなかった歴史が実感出来た気がする。
    うちの家系が商人なので庶民の歴史に興味がある。江戸時代は庶民が顔を持ちはじめる時代で、自分の先祖もその一人だったと思うと感慨深い。

  • 江戸時代後期に活躍した廻船業者、高田屋嘉兵衛の生涯を追った作品。
    随分前に全巻を読んだのですが、新たな気づきもあるかと思い、再読することにしました。
     
    場所は淡路島。
    収入が少なく兄弟が多い家で育った、嘉兵衛少年。
    隣の集落の、親戚の店を手伝うことになった11歳の場面から、物語は始まります。
     
    第1巻では10代から20代前半までの、嘉兵衛の日々が描写されていきます。
     
    自分が生まれた集落ではなく、隣の集落で若者が暮らす。
    21世紀の現代から見ると、なんら問題はないようなことに感じられます。
    しかし社会の制度が定着した江戸後期という時代に、それがどれだけ辛い結果を招くことだったのか、理解することができました。
     
    久しぶりに司馬遼太郎作品を読んだのですが、「情報量が多いなあ」と、あらためて感じました。
    それが邪魔にならず、物語の肉付けになっているところが、この作家さんのすごいところですね。
     
    第1巻後半では、この時代の日本の経済と物流について、学ばせてもらいました。
     
    全6巻に渡る長編。
    物語の展開と、著者が提示する膨大な知識の両方を、楽しみたいと思います。
     .

  • 商品経済の発展した江戸時代後期。農耕民族とは違った海洋民族も日本人のルーツの一つ。淡路島に生まれた高田屋嘉兵衛の壮大な冒険が今はじまる。

    司馬遼太郎の代表作の一つだろう。武士など農業が日本の歴史の主たる流れだろう。もう一つ南海道の方には海洋民族として日本人のルーツがある。

    江戸時代も後期となれば鎖国しつつも海運が大きく発達。元々はコメを大阪に回遊するためのものだが、やがて商品経済が発展し幕藩体制を蝕んでいく。

    そんな流れの中、高田屋嘉兵衛という船乗り、商人を主役とした作品。貧家に生まれ厳しい境遇。なんとも切ない出だしから。その分、淡路から海を渡り西宮で樽廻船に乗るあたりから急に展望が開けてくる。

    「峠」「花神」と同様、頑固で不器用、無骨な男が主役。全六巻の始まりです。

  • 実在の人物をもとにした作品。
    彼は貧困がゆえに自分の家では
    過ごすことができませんでした。

    そこで他の家での居候となりましたが
    ある選択肢を取ったがゆえに
    いわれのない仕打ちを受け、ついぞ
    その集団から追い出されてしまいます。

    失意の彼は地元を出て、ある場所へと行きます。

    確かにつらい描写はありますが
    文章にそんなに重々しさはないので
    あっという間に読めてしまうんですよね。

    ちょっと型破りな、いわゆるかわいげのない男
    だけれども、愛する女性の前では
    弱いのよね。
    なんかほほえましい。

  • こんなにも激しい作品は、なかなかないように思える。
    縄文の思想を読み終えたあとだけに、海民の風習が生き生きと浮き立ってくる。
    恋愛小説でないかと思わせるような激しい想いや武士階級への反骨精神。この幕末の武士階級への批判的な視線は司馬さん特有のものであるように思える。燃えよ剣しかり、花神しかり。

    ただ、嘉兵衛とサトニラさんの関係性が、急というか、いつのまに好意に変わったのだろうという印象を、受ける。嘉兵衛の大人び過ぎていて、好かれないという描写と、何か秘めていて事を成しそうだという描写が、やや噛み合っていないような。読みが浅いのか。

  •  この時期、嘉兵衛おぼろげながらかれ自身が生涯をかけてつくりあげた哲学の原型のようなものを、身のうちにつくりつつあった。
     そのことは、かれの気質や嗜好と密接にむすびついている。
     潮汐や風、星、船舶類の構造とおなじように、嘉兵衛は自分の心までを客観化してしまうところがあった。すくなくとも自分のすべてについて、自分の目からみても他人の目からみてもほぼ誤差がないところまで自分を鍛錬しようとしている。
     つまりは正直ということであった。しかし不正直ほど楽なものはなく、正直ほど日常の鍛錬と勇気と自律の要るものはないとおもいはじめていた。
     自分と自分の心をたえず客体化して見つづけておかねば、海におこる森羅万象がわからなくなる、と嘉兵衛はおもっている。

     嘉兵衛が貞代に感じた不愉快な感情は、煮物のにおいのように貞世の感覚にすぐつたわった。貞代は、
    (いやな男だ)
     と、ばく然とおもった。そういう感情が湧き出てしまった以上、貞代の理性は嘉兵衛のどういう部分がいやなのかということをさがし、自分を納得させねばならない。そういう目でみてゆくと、なんとも油断のならない男のように見えてくる。
     第一、若いくせに言うことに淀みがない。若いということは自分自身の気持ちが整理ができないということなのである。たいていの若者は何を問われてもたじろぎ、首をかしげる。貞代のように物事の整理がついた大人からいえば、そういう若者に接すると助言者としての快感をもつのである。


  • 高田屋嘉兵衛の子供時代。

    どんどん居場所がなくなって、村から出なくてはならないところが何とも切ない。
    加えて、現代にも通じる日本の文化的風景を感じてしまうところが更に切ない。

    しかし、この奥さん、芯が強いな。出会う女性で男の運命も変わるような。

  • 一巻読了。

    貧家に生れながら、後に偉大な商人に成長してゆく、高田屋嘉兵衛さんが主人公。

    サクセスストーリーと思って楽しみに読み始めたのですが、この巻の前半は、村社会特有の理不尽ないじめに嘉兵衛が晒され続け、正直読んでいてツラかったです。
    淡路島を脱出して以降の後半は、嘉兵衛の船乗りとしての才覚が垣間見えて、ようやく話が明るくなりつつある感じです。次巻以降、嘉兵衛の境遇が良くなる事を期待します。

  • 全巻読んだけど好きなのでまた1巻から読む。このシリーズは1巻と最後の巻が好き。
    船乗りの知識だけでなく江戸時代の文化や考え方まで分かるのでオススメ

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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