新装版 菜の花の沖 (1) (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 84
  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105860

作品紹介・あらすじ

江戸後期、淡路島の貧家に生れた高田屋嘉兵衛は、悲惨な境遇から海の男として身を起し、ついには北辺の蝦夷・千島の海で活躍する偉大な商人に成長してゆく…。沸騰する商品経済を内包しつつも頑なに国をとざし続ける日本と、南下する大国ロシアとのはざまで数奇な運命を生き抜いた快男児の生涯を雄大な構想で描く。

感想・レビュー・書評

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  • 高田屋嘉兵衛の生涯です。
    貧しい漁村から身を起こした嘉兵衛が、海運を生かした商品経済のなかで大きく成長していきます。
    決められた大きさの船以外は建造が許されず、世界基準からいくとかなりの小舟で海運に従事することしかできません。江戸時代とはつまり進歩をとめることで統治を安定させる時代であったとあり、うわーすごい勉強になる!と司馬遼太郎の慧眼に心酔しました。ニシン脂に綿糸の流通、江戸時代の活気が漲ってる作品です。そして、後半のロシア来航では、敵対しそうになるも、ついには人と人としてわかりあっていくさまが感動的です。
    時代の魅力がぎっしりと詰まっている作品です。

  •  普段,ほとんど小説を読まない私が,あるラジオ番組(武田鉄矢の今朝の三枚下ろし)に触発されて手に取ってみた司馬遼太郎の作品。わたしが読んでいるのは,文藝春秋社から出ていた昔の単行本(昭和56年発行)である。
     本の最後に作者の「あとがき」があったのには,ビックリ。この作品は,小説と言っても,その内容がほとんどノンフィクションっぽいからこそ,作者自らがこういう解説をつけるんだろうな。
     文章の中にも,小説の流れの一部ではなくて,わたしたちの学習のために…というような知識の解説が随所にあり,物語を意味が分からないまま,時代背景が分からないまま読んでいくよりもとても分かりやすい。でも,こういう解説もまた,わたしがこれまで読んできた小説にはなかったことなので,司馬遼太郎の作品の特徴なのかもしれない。こうして作品中でいろいろ解説されると,歴史的な知識も増えるだろう。おそらくそういう意味でも,歴史好きな人は司馬さんの作品が好きなのかもなと思った。間違っていたらすんません。

     たとえば,本文中に苗字についてのこんな件がある。

     苗字という習慣は、平安中期ごろにおこったのであろう。その前に、氏があった。古代の氏族の氏はさておき、平安期になると、京の貴族グループの血縁的なわけ方として源、平、藤原、橘という四つの姓が氏の代表的なものになった。
     おなじ藤原氏でも幾つかの本流から多くの分流にわかれたために、その住まいの所在地を呼称することでまぎれないようにした。一條に屋敷をもつ家を一條家というふうにである。近衛、九條、三條、三條西というように呼称された。氏は藤原氏で苗字が近衛というかたちになる。
     やがてそれでも分類しきれなくなると、官職の一文字をとって呼称したりする。たとえば藤原氏本流からみると遠い分流の者で加賀介という地方官をつとめた者が一家をたてたとき加藤という苗字がおこり、似たような遠い系譜を称する者が伊勢に住むと伊藤とよばれたりして、その苗字が興る。(単行本のp.230~231)

     もうこうなると,小説なのか,歴史解説書なのか分からない。とても勉強になる小説だわ。

     あ,小説の内容については,みなさんのレビューをご覧下さいな。

  • 前回、同じ司馬遼太郎さんの城塞を読んだ後だけに明るい本を読みたいと思い高田屋嘉兵衛さんを主人公にしたこの本を読んだ。本の紹介で快男児という言葉に惹かれた。
    一巻は苦しい淡路島時代から兵庫に出て行くまでの話。今後の展開が楽しみです。

  • 近世史 トータルなイメージをつかむなら (谷沢)

  • 江戸後期の商人・船乗りの話。人間とはどうあるべきか勉強になった。蝦夷地で当時膨張していたロシアとの接触の話が佳境であり、今まで具体的にはつかめなかった歴史が実感出来た気がする。
    うちの家系が商人なので庶民の歴史に興味がある。江戸時代は庶民が顔を持ちはじめる時代で、自分の先祖もその一人だったと思うと感慨深い。

  • 【読了メモ】司馬遼太郎記念館を訪れて以来、読みたかった作品。

  • 江戸時代後期に活躍した廻船業者、高田屋嘉兵衛の生涯を追った作品。
    随分前に全巻を読んだのですが、新たな気づきもあるかと思い、再読することにしました。
     
    場所は淡路島。
    収入が少なく兄弟が多い家で育った、嘉兵衛少年。
    隣の集落の、親戚の店を手伝うことになった11歳の場面から、物語は始まります。
     
    第1巻では10代から20代前半までの、嘉兵衛の日々が描写されていきます。
     
    自分が生まれた集落ではなく、隣の集落で若者が暮らす。
    21世紀の現代から見ると、なんら問題はないようなことに感じられます。
    しかし社会の制度が定着した江戸後期という時代に、それがどれだけ辛い結果を招くことだったのか、理解することができました。
     
    久しぶりに司馬遼太郎作品を読んだのですが、「情報量が多いなあ」と、あらためて感じました。
    それが邪魔にならず、物語の肉付けになっているところが、この作家さんのすごいところですね。
     
    第1巻後半では、この時代の日本の経済と物流について、学ばせてもらいました。
     
    全6巻に渡る長編。
    物語の展開と、著者が提示する膨大な知識の両方を、楽しみたいと思います。
     .

  • 商品経済の発展した江戸時代後期。農耕民族とは違った海洋民族も日本人のルーツの一つ。淡路島に生まれた高田屋嘉兵衛の壮大な冒険が今はじまる。

    司馬遼太郎の代表作の一つだろう。武士など農業が日本の歴史の主たる流れだろう。もう一つ南海道の方には海洋民族として日本人のルーツがある。

    江戸時代も後期となれば鎖国しつつも海運が大きく発達。元々はコメを大阪に回遊するためのものだが、やがて商品経済が発展し幕藩体制を蝕んでいく。

    そんな流れの中、高田屋嘉兵衛という船乗り、商人を主役とした作品。貧家に生まれ厳しい境遇。なんとも切ない出だしから。その分、淡路から海を渡り西宮で樽廻船に乗るあたりから急に展望が開けてくる。

    「峠」「花神」と同様、頑固で不器用、無骨な男が主役。全六巻の始まりです。

  • 実在の人物をもとにした作品。
    彼は貧困がゆえに自分の家では
    過ごすことができませんでした。

    そこで他の家での居候となりましたが
    ある選択肢を取ったがゆえに
    いわれのない仕打ちを受け、ついぞ
    その集団から追い出されてしまいます。

    失意の彼は地元を出て、ある場所へと行きます。

    確かにつらい描写はありますが
    文章にそんなに重々しさはないので
    あっという間に読めてしまうんですよね。

    ちょっと型破りな、いわゆるかわいげのない男
    だけれども、愛する女性の前では
    弱いのよね。
    なんかほほえましい。

  • こんなにも激しい作品は、なかなかないように思える。
    縄文の思想を読み終えたあとだけに、海民の風習が生き生きと浮き立ってくる。
    恋愛小説でないかと思わせるような激しい想いや武士階級への反骨精神。この幕末の武士階級への批判的な視線は司馬さん特有のものであるように思える。燃えよ剣しかり、花神しかり。

    ただ、嘉兵衛とサトニラさんの関係性が、急というか、いつのまに好意に変わったのだろうという印象を、受ける。嘉兵衛の大人び過ぎていて、好かれないという描写と、何か秘めていて事を成しそうだという描写が、やや噛み合っていないような。読みが浅いのか。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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