菜の花の沖 新装版 (四) (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2000年9月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784167105891

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

物語は、主人公・高田屋嘉兵衛が蝦夷地に魅せられ、航路を開くために奔走する姿を描いています。江戸幕府の蝦夷地政策を背景に、彼が出会う様々な人物たちとの交流や、蝦夷人との深い関わりが心に響きます。特に、嘉...

感想・レビュー・書評

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  • ▼主人公・高田屋嘉兵衛は蝦夷地に惹かれる。この巻では、さながら、「1800年前後の、江戸幕府の蝦夷地政策物語、そこで集った人物列伝」。

    ▼航路を開く、という意味が良く分かりました。昔の船だと知らない航路は危なかったんですね。

    ▼嘉兵衛が徐々に「志士」になっていきます。同時にもう貧乏物語ではない。そしてこれまでの恩人たちが嘉兵衛にやや白眼視し始めます。皮肉ですね。

    ▼しかし、蝦夷地と松前藩と幕府の歴史は勉強になりました。かわいそうだったんですね、蝦夷。手塚治虫の「シュマリ」くらいじゃ分からないですね、この悲惨さは。

    ▼そんなこんなが、これでもか、と分かりやすく語られる。オモシロイ。

    ▼なんだか、鮭とか鱒とか鰊とかが、猛烈に食べたくなる本です。

  • 江戸後期に活躍した廻船業者、高田屋嘉兵衛の伝記小説の第4巻です。
     
    30代になった嘉兵衛。
    船の数を増やし、蝦夷地との航海を活発に行います。
    時期を同じくして進められていたのが、幕府による蝦夷地の統治の見直し。
    複数の幕府の役人たちが、嘉兵衛の航海能力、そして人柄を頼って、協力を求めてきます。
     
    彼らとの交流を深めていく、嘉兵衛。
    相場を見ながら商品を仕入れて、必要とされる土地で売っていく、廻船業の仕事。
    それに対して公的機関の下請けのような形で、決められた荷物だけを運ぶ幕府の御用は、廻船業としての将来を狭めることになります。
     
    物産を流通させることにより、経済そして地方を活性化させる。
    公共投資に協力することで、未開の地を開拓するという大義。
     
    いずれの道を選ぶか悩む、働き盛りの嘉兵衛の忙しい日々が、描かれています。
    そんな姿を読み進めていくうちに、「何のために仕事をするのか」「どのような生活をすれば、“有意義な人生を送ることができた”と思えるのか」などなど、考えさせてもらいました。
     
    『菜の花の沖 (3)』司馬遼太郎
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4167105888
     .

  • 「国後から択捉への航路を切り切り拓いて欲しい。」

    そう頼まれて三筋の潮を読みきらんとする嘉兵衛。嘉兵衛が海のことを成し遂げるであろうことは容易に想像がつくものの、その頼み主が武士達であり、サトニラさんの前例なども頭にちらつきつつ結局受けてしまうところなどは序盤の嘉兵衛からすればこれまた想像つかない。

    そして彼は択捉に魅せられ、その地に何としてでも貢献したいと奔走する。正確にいうと島だけに魅せられたわけではない。まずは最上徳内、三橋藤右衛門、高橋三平等といった志をもった武士達に魅せられ、そしてさらには択捉で会った蝦夷人達に魅せられてしまうわけだ。後者について、以下の下りが特に印象深い。

      「夷人(いじん)」
      と、幕臣たちは蝦夷人のことをいう。嘉兵衛が蝦夷人を好きなのは、
     かれらに欲が薄く、どこか、山川草木が人の姿を藉(か)りて物を言って
     いるようなところがあるからであった。たとえば、かつてアッケシの野で、
     嘉兵衛が、そこに自生している稗(ひえ)について蝦夷人に質問したとき、
     その人は背をまるくして稗のそばにかがみ、稗と対話するようにぶつぶつ
     言いながら、
     「この草の実が食べられることを、父は知らなかった。母も知らなかった。
     父の父も、母の母も知らなかった。もし父や母が知っていれば、私は
     うまれたときからこの草の実を食べていただろう」
      と、いった。通詞を通してそのことばをきいたとき、嘉兵衛は、その
     ことばが、当人の人柄と密着して、透きとおった美しいぎやまんを見る
     ような感動をおぼえた。


    なんのことはない。司馬氏の筆を通さずしてこの言葉は平成の世に生きる者の心には響くことは起こりえない。嘉兵衛がいくら人好きとはいえ、結局のところ司馬氏のそれにはかなわないんじゃないか…、そんな風にも思えたりするのである。

  • 蝦夷人に対する扱いが嘉兵衛の人の大きさというか良さを表していると思います。余談も相変わらず面白い。

  • 戦国大名や幕末の志士を主人公にした小説が目立つなかで、司馬遼太郎にしてはめずらしく、民間人である廻船商人・高田屋嘉兵衛を主人公にした長篇小説。この高田屋嘉兵衛という人物については、わたし自身はゴローニン事件の一方の当事者として、日本史ですこしだけ習った記憶があったが、ラクスマンやレザノフといった海禁政策下におけるほかの来航者と、それに対して幕府がどのような対応を行ったかという一聯の流れのなかで教わるため、個個の案件や人物については詳しくは知らない人が多いのではないであろうか。わたしもほとんど名前だけしか知らない状態で読み始めたが、この嘉兵衛という人物がじつに魅力的で、なぜいままでもっとよく知らなかったのだと後悔するほどである。嘉兵衛はたんに巨万の財を築きながら、不運にもロシア艦船に拿捕されてしまった被害者というわけではない。嘉兵衛は拉致された人質という立場にありながら、坐してただ助けを待っていたわけではなく、みずから事件解決の糸口を切り開こうと尽力する。突然言語もわからぬまま極寒の地に連れられてきて、希望を失わないどころか事態を理解して日露交渉に活路を見出したその姿勢には舌を巻くばかりである。また、事件に至るまでの前半生もすばらしい。「百姓は生かさず殺さず」という言葉に象徴されるように、江戸幕府がさまざまな規制によって農民を締めつけていたことは有名な話であるが、こと商人に対しても例外ではなく、たとえば船舶の建造にかんしても、じつにさまざまな制約があり、他国に見られるようなより技術的に発達した種類の船の建造は禁じられていた。嘉兵衛はこのような規制を率直におかしいと感じつつ、禁を侵さずにできるだけ最適の構造を追求して建造するなど、開明的な思想の持主であった。開明的といえば蝦夷地開発においてもそうで、当時まだ寂れた漁村に過ぎなかった箱館にその航海上の利点を見出し、開発に尽力したほか、松前藩が非人道的な扱いをしていた土着のアイヌに対しても、ちゃんと人間として尊重して、漁法を教えるなどの交流があった。こんにち、嘆かわしいことにいまだにネット右翼などのあいだでアイヌに対する差別が見受けられるが、いまから200年以上前の高田屋嘉兵衛のほうがよっぽど進歩的な考えの持主であった。嘉兵衛の行動については、それぞれ人質として助かりたい一心からどのように振る舞うことが最適か考えただけに過ぎない、あるいは商人としてひたすらに利益を追求した結果としてこのような姿勢になっただけである、という側面もないとはいえないかもしれないが、たとえそうであったとしてもやはり偉大な人物であることには変わりがないと思う。司馬遼太郎はよくもまあ、教科書にちょっと名前が出てくるだけの商人がこのようにすばらしい人物であるということを「発見」したものである。

  • 択捉島の開拓をするところまで。

    伊能忠敬や近藤重蔵など、蝦夷地開拓者のキーワードとなるような人物が登場する。

    嘉兵衛が幕府の役人に知己を得て、蝦夷地開拓で重要な役割を果たしていくことになる。

    蝦夷民が、お米やお酒を嬉しがるシーンが可愛らしい。

    嘉兵衛が頑張って開拓してるが、択捉島を取られたままなのが悔しい。

  • 嘉兵衛がいなければ、北海道はロシア領になっていたかも

  • 106

  •  これまでと同様,わたしが読んだのは単行本の方。
     高田屋嘉兵衛が,北海道から国後,択捉を回り,その後,幕府の関係者の頼み事を聞いているうちに,何やら,あまり自由が効かない世界へと進んで行く場面だ。苗字帯刀を許されることと引き換えに商売として自由が効かなくなってしまった先輩たちを見てきているのに…。
     さて今巻では,伊能忠敬の測量について,結構詳しく解説されている。持ち物や,その大きさの説明もあり,忠敬が、訪れた地域地域で住民に協力を求めなければならかなった理由もなんとなく分かった。そうそう,石川県の生んだ銭屋五兵衛の話題も。
     今はなき「火山帯」という言葉だが出てくる。こういう小説の場合には,書き換えるわけにも行かないしなあ。「解説者注」とかで説明するしかないんだろうな。それくらい,歴史的,科学的な事柄がしっかり説明されている小説だわ。

  • 司馬遼太郎が江戸時代後期に活躍した船乗り、承認の高田屋嘉兵衛を主役とした大作、全6巻中の4巻。いよいよ択捉島の開発が始まる。

    エトロフ島の航路を確立。15万石に匹敵するというエトロフの開発が始まる。幕府の官僚的体制の中、それでも豊富な人材、多くの有為の人物との出会い。

    嘉兵衛は単に利益を求めるのでなくロマンに惹かれていく。師匠というべきサトニラさんの後悔を考えると止めた方が良かったのだが、蝦夷地定御雇船頭を引き受ける。ここの所がこの後どう響いてくるのだろうか。

    残り2巻、ロシアの存在が見えてくる今後。どのような展開になるのだろうか。

  • 歴史背景紹介が少々多めとなっています。
    なので嘉兵衛の生きざまを追いかけたい人にとっては
    少々退屈に感じてしまうかもしれません。

    もっとも個人的な意見ですが
    ある程度解説が入ってくれた方が
    助かる身でもありますので
    程よい一休みという具合に楽しめました。

    ついぞ嘉兵衛はいわゆる幕府にかかわることになります。
    それは嘉兵衛が従来関わってきた
    商売とは勝手が違うものとなることを
    意味してきます。

    本来は深入りするつもりはなかったのでしょうが
    彼にはあくなきほどの好奇心と情熱があります。
    抗うことはできなかったのではないでしょうか。

    ついぞ北へと本格的に舵を切っていく嘉兵衛
    これからどう繁栄させていくのかしら。


  • 業容拡大。

    内ではバカな役人と付き合いつつ、外はロシアの影がちらつくところ。

    これまでの支援者に猜疑の目で見られるあたり、切ない。

  • 四巻読了。

    蝦夷地に集中する嘉兵衛は、結局幕府に深入りする事に・・。
    「蝦夷人の暮らしを良くしたい」という熱い想いの嘉兵衛と、ピュアな蝦夷人との交流が良いですね。
    この時代の千島列島に対するロシア・日本の領土認識の違い等々、かなりの頁が割かれていて、司馬さんの熱意を感じます。

  • 廻船商人高田屋嘉兵衛の物語。嘉兵衛の人物の大きさ。素晴らしい。司馬さんは初読みだがもっと読みたい。詳細は→http://takeshi3017.chu.jp/file6/naiyou23901.html

  • 髙田屋嘉兵衛の生涯を描いた長編小説。❝波濤❞の章より、嘉兵衛が函館~様似を訪れる風景が描かれています。また、以前この作品を抜粋して、明治大学政経学部入試問題が作られました。問題の中では、北海道の地図を示し、『様似の位置はどこか』という問題も作られ、正答率は、10%ほどという難問だったようです。嬉しいような、さみしいような…。(様似町)

  • 読了。レビューは最終巻で。

  • 読了したけど、書評がどこかへ行ってしまった。
    再読してから書こう。

  • 2014.10.26
    領土という概念。東洋というか、中国文化は人心掌握が、占領の決めてとなった。主観的で相対的。一方、西洋は、土地の支配が決めて。客観的で絶対的。ロシアと日本の千島領土は、明治初期に決められたが、こうした、文化、意識の違いがあったのだ。ましてや、嘉兵衛の時代に、領土意識などないであろう。

    嘉兵衛が幕府へと足を入れて行く。

    蝦夷の民によりよい生活を与えるという、使命感が、嘉兵衛の人生をどう変えるのか。

    そして、貨幣経済の発展も興味深い。

  • ロシアの南下に備えた、幕府による松前藩からの東蝦夷租借と、高田屋嘉兵衛による択捉への航路開拓と開発の開始。小説であるけれども、司馬遼太郎お得意の欧米とアジア(中国的冊封体制による緩やかな支配)の領土感の違い等々の考察が面白い。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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