菜の花の沖 五 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2000年9月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784167105907

みんなの感想まとめ

物語は、江戸時代の商人である高田屋嘉兵衛を中心に展開しますが、第五巻では彼の出番が大幅に減少し、ロシアとの複雑な関係が詳細に描かれます。読者は、嘉兵衛の運命を見守りつつ、当時の日本とロシアの外交の背景...

感想・レビュー・書評

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  • ▼こ、これはすごい・・・。江戸後期の船乗り/商人である、高田屋嘉兵衛さんの生涯とその時代を描く司馬ワールドなんですが、この五巻はすごかった・・・。

    ▼高田屋嘉兵衛さんは、その生涯の後半というか終盤のあるポイントで、「ロシア軍艦に身柄を拉致される。そして軟禁生活を送るが、最終的にロシア人と信頼関係を築き、身柄の解放を勝ち取る。そして日本に軟禁されているロシア軍人の解放に尽力して実現する」という、言ってみれば日本史の舞台に躍り出る訳です。それはまあ、ある程度こちらも織り込み済みで読んでいます。その事件がなかったら、高田屋嘉兵衛さんはさほど歴史にゴシック大文字で残るような存在では、恐らく無かった。この本が書かれることも、無かったわけですから。

    ▼そして四巻までかかって、大雑把理に言うと、その、「大事件」の前夜までが描かれるんです。「いよいよ、事件が始まるかな!」と思って第五巻を開く訳です。読み始めると、まずは、「えっとね、一旦、嘉兵衛から離れて、事件が起こるまでのロシアと北海道の成り行きというか、事情っていうか、そういうものを紐解いて話すね」というような感じ。つまり、事件を味わうための予備知識直前再注入!という。
    (四巻まででも、ちょいちょい、かなりな量のそういう閑話休題があったんですけれど)

    ▼そうしたら・・・その、「ロシア&北海道の歴史事情解説」が、長いんです。そして・・・なんと、五巻はほぼほぼそれだけで終わってしまうんです・・・。な、なんて大胆なというか・・・なんて自由なと言うか・・・。
     駆け出しの小説家だったら、編集者が秒で却下して絶対に許さない所業です。

    ▼で、それが面白いのかと言うと、「全然おもしろくないよ!いい加減にしろ!ドラマチックな小説を読ませろ!」という読者もいっぱい、いっぱい、居ると思うんです。個人的にも恐らく10年20年前なら、そうだったと思います(今、50代なんですが)。

    ▼なんだけど、今の自分としては、この五巻も大変に面白かった(笑)。分かりやすいし、「へ~なるほど」がキラキラと散りばめられています。俯瞰の語りの中に、躍動するロシアの軍人や、北海道の日本人や、当時の幕閣までが体温を感じられます。

    ▼要は帝政勃興と隆盛発展とともに東へ東へシベリアへと、貂の毛皮を求めて進んできたロシアの冒険的人物たち(ほぼほぼアウトローな人々)が、皇帝のお墨付きを得て、ロシアそのものとして「遅れた帝国主義の暴虐強引さ」をもって、満州へ、あるいは樺太へ、そして北海道へと迫ってくる歴史的な成り行き。
    (その暴虐強引さ、って言うのは大正昭和と、日露戦勝後の日本もなぞっていくものなんですが・・・)

    ▼それがヒタヒタと、江戸幕府体制に迫ってくる。幕府は鎖国してます。摩擦を起こしていく。そういう「個々の人格の問題もあるけれど、それに惑わされちゃいけない全体状況」みたいなものが、ものすごく指紋露わに見えてくる感じです。

    ▼日本史で言うとこの温度が、ペリー来航で沸点に達して、明治維新が起きる。明治維新っていうのは、江戸時代の商品経済の爛熟(高田屋嘉兵衛的な)と、西欧帝国主義(嘉兵衛が拉致されるロシア艦隊的な)の接近。このふたつが出会って、、、、「俺たちは十分文化も経済も満ち満ちてるんだから、清国みたいに植民地化されたくないよ!武力が強いからってあんまりにも横暴だろ!」という戦いとして始まるんですね。無意識下でしょうが。
    (同様の構造上の、加害者に、昭和日本はなるんですが)

    ▼帝国主義の時代には、言ってみれば先進国はみんなプーチンさんやトランプさんみたいだった、とも言えます。ついこの間まで奴隷貿易してた方々ですから。「力こそ正義なり」。対抗するには富国強兵しかありません。その手段としての維新。欧米化。旧制度の反発と鎮圧(西南戦争)。手段としての憲法、議会。そして日露戦の勝利=近代史上初の有色人種の白人種への勝利。それで、言ってみれば幕末維新は、読点が打たれるんだなあ、と思いました。

    (だからその後は、加害者への守勢から、「自分が加害者になる」という方針転換になる。その時点で、新たな価値軸を見いだせなかった。仕方ないことかも知れませんが)

  • まさか五巻まできて嘉兵衛の出番が激減するとは思いもよらぬ展開。

    恥ずかしながら高田屋嘉兵衛という名のひとについてはこの作品にて触れるまでほぼ全くと言っていいほど知識がなかった。挙句の果てに「ああ、これはあれだな。井上靖の著作の司馬遼太郎視点版だな。」ととんでもない勘違いをした状態で読みはじめていたのだ。「一体いつになったら嘉兵衛は漂流するのだろう?」そう、恐ろしい程の勘違いであり、それは司馬氏自身によって文中で訂正さることとなる…。

    感銘をうけたその井上靖による物語「おろしや国酔夢譚」の主人公の名は大黒屋光太夫。同じ江戸時代の商人の身分とはいえ、光太夫がロシアに渡ったのはこの巻あたりの嘉兵衛から言うと20年以上も前のこと。そのあたりの勘違いは本作中の司馬版ダイジェストの助けを得て、幸運にもある種の喜びへと変化をとげることができた。「皇帝に拝謁することが許されたという数奇な運命をたどったその気立ての良い人の事なら知っている!」といういささか子供じみた喜びではあったが、それはそれ。以前に読んでいなければその感動さえも得られなかったであろうはず。

    そして本編の方はもう一つの自分の中での曖昧なキーワードである「ゴローニン」へのつながりをいそいそと綴ってゆく。物語全般での「筆頭助演俳優」とでも呼べるその人、遂に現る!といったところか。それがゴローニン本人でないところがまたミソ。

  • 五巻読了。

    この巻は、嘉兵衛は殆ど出てきません。
    ロシア事情の説明が延々と続きます。せめてこのロシア事情篇も小説風にしてくれたら、もうちょい読みやすかったかも・・。(論文調は眠気が・・苦笑)
    で、こじれにこじれた、日本とロシアの関係の背景が解ったところで、この状況下でロシア船に遭遇してしまう、嘉兵衛の運命や如何に!と、次巻への期待が否が応でも高まります。

  • 戦国大名や幕末の志士を主人公にした小説が目立つなかで、司馬遼太郎にしてはめずらしく、民間人である廻船商人・高田屋嘉兵衛を主人公にした長篇小説。この高田屋嘉兵衛という人物については、わたし自身はゴローニン事件の一方の当事者として、日本史ですこしだけ習った記憶があったが、ラクスマンやレザノフといった海禁政策下におけるほかの来航者と、それに対して幕府がどのような対応を行ったかという一聯の流れのなかで教わるため、個個の案件や人物については詳しくは知らない人が多いのではないであろうか。わたしもほとんど名前だけしか知らない状態で読み始めたが、この嘉兵衛という人物がじつに魅力的で、なぜいままでもっとよく知らなかったのだと後悔するほどである。嘉兵衛はたんに巨万の財を築きながら、不運にもロシア艦船に拿捕されてしまった被害者というわけではない。嘉兵衛は拉致された人質という立場にありながら、坐してただ助けを待っていたわけではなく、みずから事件解決の糸口を切り開こうと尽力する。突然言語もわからぬまま極寒の地に連れられてきて、希望を失わないどころか事態を理解して日露交渉に活路を見出したその姿勢には舌を巻くばかりである。また、事件に至るまでの前半生もすばらしい。「百姓は生かさず殺さず」という言葉に象徴されるように、江戸幕府がさまざまな規制によって農民を締めつけていたことは有名な話であるが、こと商人に対しても例外ではなく、たとえば船舶の建造にかんしても、じつにさまざまな制約があり、他国に見られるようなより技術的に発達した種類の船の建造は禁じられていた。嘉兵衛はこのような規制を率直におかしいと感じつつ、禁を侵さずにできるだけ最適の構造を追求して建造するなど、開明的な思想の持主であった。開明的といえば蝦夷地開発においてもそうで、当時まだ寂れた漁村に過ぎなかった箱館にその航海上の利点を見出し、開発に尽力したほか、松前藩が非人道的な扱いをしていた土着のアイヌに対しても、ちゃんと人間として尊重して、漁法を教えるなどの交流があった。こんにち、嘆かわしいことにいまだにネット右翼などのあいだでアイヌに対する差別が見受けられるが、いまから200年以上前の高田屋嘉兵衛のほうがよっぽど進歩的な考えの持主であった。嘉兵衛の行動については、それぞれ人質として助かりたい一心からどのように振る舞うことが最適か考えただけに過ぎない、あるいは商人としてひたすらに利益を追求した結果としてこのような姿勢になっただけである、という側面もないとはいえないかもしれないが、たとえそうであったとしてもやはり偉大な人物であることには変わりがないと思う。司馬遼太郎はよくもまあ、教科書にちょっと名前が出てくるだけの商人がこのようにすばらしい人物であるということを「発見」したものである。

  • 5だけ、読む続けるのに努力がいりました。ロシア、黒てん

  • ロシア事情が詰まっている。

    ピョートル1世からアレクサンドル1世までのロシア史と、ラクスマン、レザノフ、ゴローニンなど、日露交流史の重要人物が描かれている。

    高田屋嘉平が全然出てこなくて退屈するが、ロシアが戦争していることを考えるとタイムリーな話題に感じた。

  • 帝政ロシアの基盤を作ったピョートル大帝とエカテリーナ2世の功績。
    利他の精神

  • 107

  •  わたしが読んだのは公立図書館の単行本。ずいぶん汚れていた。本好きな人は,公的な本も丁寧に扱ってほしいものだ。まあ,昭和57年発行だから,無理もないけど。
     この巻(全348ページ)のほとんど(p.45~p.325まで)が,当時のロシア事情の説明にあてられている。それくらい,当時の日本は,蝦夷地(樺太も含む)を巡って,ロシアとの関係が深かったようだ。もっとも,関係を深くしたかったのはロシアの方だけで,日本の幕府は鎖国中なのであったのだが。それでも,開国や貿易の巡ってのイザコザは,なかなか大きな出来事だったらしい。この辺りのことについての知識は全くなかったので,ほほ~という感じで読んだ。がしかし,嘉兵衛の話がなかなかでてこなくて,ときどき眠りに襲われて中断しいしいの読書だったのだが。
     この分だと,第6巻では,どんな流れが待っているのか。ほとんど,幕末歴史書と化しているのかも知れない。襟を正して,手に取るとするか(^^;;

     「あとがき」には,福井三国港のお話があって,これは興味深く読んだ。一度,見学してみたい。まだあるかな,資料館。

  • 江戸後期に廻船業者として活躍した、高田屋嘉兵衛の伝記小説、第5巻です。
     
    航海術をはじめとする能力を買われ、江戸幕府による蝦夷地開拓の仕事を請け負う、嘉兵衛33歳のシーンから、この巻は始まります。
     
    この巻前半のかなりのページを割いて書かれているのが、ロシアという国の歴史について。
    嘉兵衛の時代から約百年前のピョートル大帝から、同時代と言えるエカテリーナ二世までの歴史が、詳しく書かれています。
    ロシアという国がどういう歩みを経ていたのか、なぜ日本という国との関係を望むようになったか、理解することができました。
     
    後半も、ロシアという国の中でどのようなことが起こったのか、特に日本に関わりがある事柄を中心に説明が続きます。
     
    冒頭で嘉兵衛が登場して以降、“主人公”が登場しないままページが進んでいくという展開。
    戸惑いつつも、ロシアの歴史そしてこの時代の日本の課題について、学ぶことができました。
     
    最後にどのような結末を迎えるか、最終巻を続けて読もうと思います。
     
    『新装版 菜の花の沖 (4)』
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4167105896

  • 江戸期の商人高田屋嘉兵衛の生涯を描いた大作。全六巻中の五巻。いよいよロシアと日本が衝突する時を迎える。

    江戸幕府とロシア、それぞれの立場の良く分かる巻。余談がほとんどを占め嘉兵衛はほとんど出てこない。ラクスマン、レザノフ、ゴローニン。日本史で習った人物たちが活き活きと描かれる。

    ここまでの四巻では全く出てこなかったロシア。唐突に現れるのも構成なのだろう。当時の日本人の驚きはもっとずっと大きかったことだろう。

    現代まで続く日露の国境の問題の原点ともいえる両国の蝦夷地開発の歴史が本作で良く分かる。

    残り一巻で結末まで持って行けるのか、まだまだ予断の許されない展開が続く。

  • 一応言っておきましょう。
    本編はないといっても過言ではありません。
    もう一度言いましょう、本編はほぼほぼありません。

    その代わり、ロシアに関してのこれでもかという解説が
    でてきます。
    要するに、北の地は漁業資源としても
    稀有だったわけでして、そこで二国間が考えの相違により
    拿捕合戦になったのは必然だったのだと思います。

    しかしながら利潤ばかり追求すると本当に
    ロクなことがないものです。
    同乗者に一人いたみたいですよ。
    ただし…途中で亡くなったようですが。

    そのあとの拿捕事件に関しても
    なんか名前だけは聞いたことがありますね。
    なんか考えさせられるものがありますね。
    言語が違う、文化が違うということを
    受け入れることって大事。


  • ひたすらロシアの話。

    成り立ちから。長い。

    けど、次への壮大な前フリなのだ。

    がんばれ、自分。

  • 廻船商人高田屋嘉兵衛の物語。嘉兵衛の人物の大きさ。素晴らしい。司馬さんは初読みだがもっと読みたい。詳細は→http://takeshi3017.chu.jp/file6/naiyou23901.html

  • 読了。レビューは最終巻で。

  • いやぁ、長くかかってしまった。何しろページが進んでいかない、というのが正直な感想。主人公である高田屋嘉兵衛は主人公なのにこの巻では全く登場せず、日本における江戸時代のロシアの話ばかり。
    ま、ピョートル一世、エカテリーナ二世というロシアの17~18世紀の統治者の概略が理解できたし、レザノフやゴローニンという幕末史において日本とロシアとの関係で登場する人物を深く知ることが出来て良かったかな。
    この流れで日露戦争を扱う「坂の上の雲」を読めば、ロシアの近代史を広く掴むことが出来るのだろう。
    ラスト一巻。主人公である高田屋嘉兵衛の活躍に期待したい。

  • 小説部分の少ない巻。コサックによるシベリア東進や、ピュートル大帝・エカテリーナ二世のロシア近代化。アダム・ラクスマン、レザノフと続いた日本への交易要求・樺太襲撃等々、本小説の後半のクライマックスである、ゴローニン事件につながっていく出来事を体系的に解説。司馬さんには『ロシアについて―北方の原形』という著作もあり、ダブる内容もありますが、いずれもロシア国家の性質を理解するのに優良な著作。

  • 2014.11.6
    ロシアと日本の話。司馬遼太郎の戦争観、国家観が表れている。
    嘉兵衛の蝦夷での活躍は凄まじかったのだろう。船と海を愛した好漢。ロシアとの出会い、次の展開が楽しみだ。

    幕末前、この時期は商品経済の勃興という矛盾、鎖国という矛盾が露呈し始めていた。この矛盾が幕末、明治維新の原動力になったのか。

  • 速く読みたいけれど。
    ゲームの勉強もしたいし、時間配分が難しいが。
    本当読みたい本に限り、出来るだけ一日1章ずつ読んでいるので1冊読むのに1週間はかかる。
    だからゲームの勉強との兼ね合いもあり、時間配分が難しい。
     本日、読了しました。
    余りにも面白くて、一気に読み進めてしまいました。ロシアとの駆け引きやピョートル大帝、間宮林蔵等様々な歴史上の登場人物が、生き生きと描写されており、悦に入ってしまった。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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