新装版 菜の花の沖 (6) (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 694
感想 : 59
  • Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105914

作品紹介・あらすじ

突然の災厄が、嘉兵衛を襲った。彼自身がロシア船に囚われ、遠くカムチャツカに拉致されたのだ。だが彼はこの苦境の下で、国政にいささかの責任もない立場ながらもつれにもつれたロシアと日本の関係を独力で改善しようと、深く決意したのである、たとえどんな難関が待ち受けていようとも…感動の完結篇。

感想・レビュー・書評

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  • 18世期末から19世期初めにかけて、廻船業者として活躍した、高田屋嘉兵衛の伝記小説最終巻です。
     
    前巻で長いページに渡って描写された、ロシアの歴史。
    その流れを経て、千島列島を南下していたロシアの軍艦と、嘉兵衛の商船との出会いから、この巻は始まります。
     
    日本とロシア。
    これまでの二国間の関係の経緯が、巡り巡って嘉兵衛の運命を急展開させることになります。
    その運命に対してどう、嘉兵衛が対応したのかが、最終巻の読みどころになっています。
     
    そしてこの巻でも、以下のようなことを学ばせてもらいました。
     
    ・自分は何をすべきかを理解し、その目標に向かって意志を保って行動することの大切さ
    ・精神的、肉体的に過酷な状況が続くと自らの精神を保つのが非常に困難になること、しかしそれができるかが、生死の分け目となること
    ・人は社会的立場に応じて、相手への態度を決めていること、反面、個人間の信頼関係はそれぞれの人格により醸成され、その信頼はときに、社会的立場を超える場合があること
     
    歴史というのは、つきつめていくと個人個人の判断・行動によって、積み重ねられてきたのですね。
    その片隅には自分自身もいるのだということに、気づかせてもらえた作品でした。
     
    『新装版 菜の花の沖 (5)』
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/416710590X
     .

  • この時代、差別が強く辛い思いをした人がたくさんいたのでしょう。蝦夷地の人もそうですけど、主人公の高田屋嘉兵衛さんも。貧しく身分の低い中きら登りつめた主人公は立派です。

  •  ついに最終巻。『サンケイ新聞』で1014回に渡って連載された歴史小説である。
     本巻は,嘉兵衛とロシアのリコルドとの,不思議で,純粋で,思慮深く,責任感のあるやり取りが余すところなく描かれていて大変面白かった。
     しかも,両者とも実際に日記のような記録を残しているので,その記録を基にして,ある出来事(言動)に対して,嘉兵衛側から見た描写・感想と,リコルド側から見た描写・感想を並列して解説されていて,これがとても興味深いのである。その時の二人の機微に触れることができて,臨場感で溢れている。
     江戸時代の後半に,ロシアとこういうやり取りをした一船頭がいたとは。
     最終巻を読むためには,第5巻の長々としたロシアの説明は必要だったんだなと納得した。
     題名にちなんだ部分を転載しておこう。

     かれが,その晩年を送るために都志本村に建てた屋敷は,小さな野にかこまれていて,季節には菜の花が,青い沖を残して野をいっぱいに染めあげた。(p.347)

     菜の花はむかしのように自給自足のために植えられているのではなく,…中略…肥料になって,この都志の畑に戻ってくる,わしはそういう廻り舞台の下の奈落にいたのだ,それだけだ,といった。(p.348) 

     みなさんも書いているように,ロシアの船が去って行くときの
    「ウラァ、タイショウ」
    「ウラァ、“ぢあな”(ディアナ)」
    の場面では、目頭が熱くなっちゃったよ。
     人間はわかり合えるんだよ。

  • 司馬遼太郎が江戸時代の商人高田屋嘉兵衛の生涯を描いた長編歴史小説全六巻。日露双方、文化、風土の違いはあれど分かり合える部分も多いのが印象に残る。

    江戸時代も後半、蝦夷地の開発が進む中、高田屋嘉兵衛はロシアとの争いに巻き込まれ日本が捕虜としたゴローニンの報復的にロシアに囚われる。

    あくまで一商人の嘉兵衛なのだが使命感や大局を見渡す視点など江戸時代の人々の文化的な水準の高さを表象しているように思える。言葉遣いや態度など司馬遼太郎は浄瑠璃の影響を指摘している。

    日本が初めて本格的に直面する近代国家の進出。硬直的な幕府の官僚と対象的な嘉兵衛の生き方、態度を現代社会に置き換えてみるとどうなるのだろうか。

    嘉兵衛の故郷淡路島。対岸の本州に送る菜種油の原料の菜の花が咲きほこる地。そして故郷を飛び出し船乗りとなる嘉兵衛。江戸時代の商品経済の勃興を象徴した題名。

    司馬遼太郎ならではの日本人論とロシア論も含め、間違いなく歴史小説の名作の一つでしょう。

  • ついに読み終えてしまいました。
    故郷に足を踏み入れたいがために言語習得に
    熱を入れ、相手側からくる不条理には
    敢然と立ち向かった嘉兵衛。

    それはひとえに幼い時の経験が
    ものを言ったのだと思いますね。
    そうでなければここまで「庶民」としては活躍しませんもの。

    そのひたむきな心は当初は嘉兵衛たちに好意を
    持っていなかったものさえも変えてしまいました。
    (その後のほかの日本人の漂流時は
    その人は厚遇で彼らを救います)

    そして、すべてが終わった後の
    言葉のやり取り…
    間とかもうね、グッとくるものがありましたよ。

  • 司馬さんを悼む年忌のことを「菜の花忌」という。
    一個人にして、まだ国際交流、異文化理解という言葉も存在しない時代に、日露の架け橋となった高田屋嘉兵衛を主人公にして、江戸後期の北前船、ロシア情勢、蝦夷地の様子を描く。

    司馬さんがまだ戦車に乗っていた頃、対峙していたロシアというものを、「坂の上の雲」そして、この「菜の花の沖」で書き尽くしている。

    リコルドと嘉兵衛が言語の壁を超えてわかりあい、ゴローニンの釈放、帰還という歴史的事件を成し得たということにただただ感動してしまう。「タイショウ、ウラァ」というおらび声を後に、ディアナ号が去ってゆくさまは、胸に切々と訴えかけるものがあった。

    江戸時代という時代のどうにもならなささというか、仄暗さというか、ときに歯噛みしたくなるようなおもいを感じた。


  • 最終巻。

    突如、拉致され、交渉、政治物語に。

    最後になって、国を背負ってる意識 → 大物感出ちゃうんだけど、ビジネスマンとしての円熟期は描かれず。^^; 読んでる感じでは、 4 → 6 に飛んで、あれ?っていう。

    そ、そういう話じゃないのか。

    そして、家業を息子でなく、離れた弟に継がせちゃうところとか、考え方が進んでる。

    でも、他の兄弟や息子はどう思ったんだろう?

    そして、嘉兵衛のいなくなった次代であっさり高田屋が失速しちゃうんだけど、その辺の関係者の心情も描いてほしかったなー。

    まぁ、でも読んでよかった。

  • 六巻読了。

    まさに、この巻の為に、いままでの巻があったのだなぁ・・。という、感動の一冊でした。
    ロシア船に囚われた嘉兵衛(とその仲間数名)。
    ディアナ号艦長・リコルドと嘉兵衛の、探り探りのコミュニケーションから、お互いの人柄を信頼し合う間柄になっていくのが良いです。
    ラストの「ウラァ、タイショウ」「ウラァ、“ぢあな”(ディアナ)」の場面は、胸がいっぱいになりました。

  • 最後の嘉兵衛との別れ際にリコルドとロシア水夫たちが「タイシヨウ、ウラァ!!」と3回叫ぶ、このシーンを読むためにこの本は存在すると思う。

  • 氏の長編は最後の一冊のためにそれまでがある.本作も例外ではなし.

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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