新装版 翔ぶが如く (3) (文春文庫) (文春文庫 し 1-96)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105969

作品紹介・あらすじ

-西郷と大久保の議論は、感情に馳せてややもすれば道理の外に出で、一座、呆然として喙を容るるに由なき光景であった-。明治六年十月の廟議は、征韓論をめぐって激しく火花を散らした。そして…西郷は敗れた。故国へ帰る彼を慕い、薩摩系の士官達は陸続として東京を去ってゆく-内戦への不安は、現実となった。

感想・レビュー・書評

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  • 西郷下野……明治日本を二分しての政争が始まる。大久保内務省、川路警察、江藤司法、板垣民権、と綺羅星のように表れた英傑たちが国家を産み出すため躍動する。明治ならではのダイナミズムが魅力的
    だ。それらは一方で混沌を併せ持っている。やがて西南戦争を予感させる。時代の沸騰が熱い。それぞれの生きざまは現代に通ずるリーダー論ともいえる。思想家西郷、実務者大久保という二人を軸に大きく展開していくのが楽しみだ。

  • 【感想】
    大久保利通の若干の狡猾さはあるものの、彼とて親友の西郷を出し抜く事に心を痛めているような描写もあり可哀相だなと思った。
    しかし、後年にも語り継がれる西郷の偉大さからは想像できないほど、晩年(というか明治時代)の西郷は愚鈍な人間っぷりだった。
    それもそのはず、西郷には桐野利秋というフィルターがかかっていたからねぇ。
    優秀な人材はもちろん、些細な情報からでさえ彼は蚊帳の外になってしまった。

    YESマンで周りを固めた「お山の大将」になってしまえば、こうも愚かになってしまうのだろう。
    そう思えば、自民党圧勝のこれからの日本がどうなるのか、先行きが怪しく感じてしまう・・・

    あと個人的に、今の都道府県名が明治初期の官軍・賊軍に由来しているという事実を初めて知った。
    いい勉強になったね


    【あらすじ】
    西郷と大久保の議論は、感情に馳せてややもすれば道理の外に出で、一座、呆然として喙を容るるに由なき光景であった―。
    明治六年十月の廟議は、征韓論をめぐって激しく火花を散らした。そして…西郷は敗れた。
    故国へ帰る彼を慕い、薩摩系の士官達は陸続として東京を去ってゆく
    内戦への不安は、現実となった。


    【内容まとめ】
    1.西郷の征韓論は財政上きびしく、散々待たされた挙句、破談してしまった
    2.幕末とは打って変わってしまった西郷。桐野たちの護衛の為、世論と触れ合う機会すら失ってしまった。
    3.結果、西郷は江戸を去る事になったが、この時点では西南戦争を起こすつもりなどなかったとのこと


    【引用】
    p66
    いちいちの能力論をもってしては、どうにも西郷という人間が出てこない。
    西郷は単なる仁者ではなく、その精神を常に無私の覇気で緊張させている男であり、その無私ということが、西郷が衆を動かしうるところの大きな秘密であった。

    p234
    大久保と西郷は陽と陰
    源頼朝と源義経、徳川家康と豊臣秀吉のときのように、一つの体制を作った人物が好まずにそこからはみ出て漂泊してしまう人物が好まれる。

    陽気な人格というものは欠点でさえ愛嬌になり、失敗でさえ気の毒になるという効用を持っているが、陰気ということはいかに誠実で謹直であっても、得体の知れぬ肚黒さを感ずるということがあるらしい。

    大久保はこの上なく謹直な男で、およそ栄達に驕るというところがなかったが、彼がのちに外国人を招待するために建てた粗末な西洋館の住宅さえ、薩摩人を激昂させ、歌舞伎における赤面のように驕りに驕った大久保像として流布された。


    p274
    新政府が熊本県と言わせなかったのは、一種の差別による。
    大藩のうち、戊辰戦争に参加して新政府を樹立させることに功のあった藩は、その城下の地名をもって県名にした。
    鹿児島県、山口県、高知県、佐賀県、福井県がそうである。

    また、遅ればせながらも積極的に参加した旧藩地も、この待遇を受けている。
    岡山県、広島県、鳥取県、福岡県、秋田県など。

    これらに対し、若松(福島県)、仙台、金沢、米沢、松江といったものは成立せず、それぞれその旧藩地における小さな郡名などをとって県名とされた。
    白川県もそうである。

    戊辰戦争における「官賊」という色分けを、こういった形で烙印した。

  • 相当バッシングがあったんだろうが、創作をやめないでほしかった。
    西郷がどんな気持ちで、どんなふうに鹿児島へ去ったのか、もっと司馬さんの創造する会話やモノローグをまじえて描いてほしかった。
    「竜馬」では、説明でなく会話で土佐の与太ぶりが表現されていて、それが最高だったのに。
    ぜんぶ差し引いても、読ませる文章なのはさすがなのだが。

  • ※2008.3.15購入
     2008.3.15読書開始
     調布PARCOで購入、読み始めた。なかなかBookOffに入らないため、新書で購入。(HPの日記より)
     2008.4.13読了
     2017.5.6売却@Book Off

  • いったん休憩

  • この小説は、西郷のほんとうのところを、事件を通して何度も何度も語り続けるものだとわかった。
    だから、この巻は征韓論をめぐるやりとりになるが、全体の色調はほかと変わらないのだ。
    つまり、この作品はよっぽど西郷に関心を抱くような人間でないと面白くはない。反面、司馬遼太郎の真摯さ・愚直さが伝わる作品なので、司馬遼太郎の研究にはかっこうだろう。

    お話としては、征韓論をめぐる、非常にぬめっとした決着である。まだ「仕組み」が可視化されていない時代、ほとんどが「流れ」で決まっている。流れゆえ、歴史は物語になりやすいのだろう。

  • 征韓論がついにつぶされてしまい、西郷さんが故郷に帰ってしまう。西郷さんが犬を連れていたのは、刺客対策であった。
    西郷さんに同調する志士たちが結束して東京政府を倒すことに備えて大久保や川路は国内紛争鎮圧のための警察組織を固めつつある。ここに東京vs地方の構図ができてくるところに現代日本を見る思いがする。
    会計主義による国家運営を基盤とする非征韓論派は今の日本の支配階級としてのエリート層に通じるものがある。

  • 三巻を読了。

    西郷隆盛の征韓論が新政府に容れられず、鹿児島に帰郷する流れが描かれる。
    西郷隆盛という巨人を、周囲の動きを繊細に描くことにより、リアリティもって読者を理解へと促してくれる。

    いわゆる英雄豪傑的な時代から、知者が時代を席巻していく流れが読んでいて面白い。

  • 西郷は向島小梅村の田園を都下のどこよりも気に入っていた104

  • 「尊王攘夷」のスローガンで始まった筈の倒幕運動から、明治維新が為ってみたら、幕末からの開国方針が何も変わっていないという、この歴史の流れが、長らく釈然としなかったのだが、これを読んで、漸く腑に落ちたというか――当時の士族達も釈然としなくて、だからあちこちで士族の反乱が起きて、最終的に西南戦争に至ったのね、と。しかし、旧支配層の武士は既得権益を取り上げられ、庶民は税金やら兵役やら負担が激増した、この明治維新という大改革が、よく破綻・瓦解しなかったものだという、新たな疑問が湧いてきた。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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