新装版 翔ぶが如く (4) (文春文庫) (文春文庫 し 1-97)
- 文藝春秋 (2002年3月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167105976
作品紹介・あらすじ
西郷に続いて官を辞した、もとの司法卿・江藤新平が、明治七年、突如佐賀で叛旗をひるがえした。この乱に素早く対処した大久保は首謀者の江藤を梟首に処すという実に苛酷な措置で決着をつける。これは、政府に背をむけて、隠然たる勢力を養い、独立国の様相を呈し始めている薩摩への、警告、あるいは挑戦であったであろうか。
感想・レビュー・書評
-
ああ、西郷が不憫でならない。
廃藩置県でできた傷で西郷が苦しんでいたとか、考えたこともなかった。
「大久保が、西郷の苦しみを理解すべきだった。
大久保には、西郷の苦しみを倶にするような、情緒感覚に天性欠けるところがあった」
かといって大久保を責める気にはならないし、彼が悪いとも全く思わないが(好き嫌いは別。)、いろんな気持ちが込み上げて、胸が苦しくなった。
歴史をつくるのは、人なんだな…としみじみ思った。
あと村田新八という薩摩人を初めて知った。
ようやく西郷以外で好きになれそうな人物が出てきた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
西郷雌伏す。大久保国権を強める。江藤は佐賀の乱で自壊する。鹿児島私学校、征台論と時代の旋回が止まらない。急遽世界に漕ぎ出した日本外交と迷走。当時をありありと愚直に描き出している。統帥権問題、火力軽視など昭和へとつながる種も散見される。革命から実務の時代の変化がひしひしと伝わってきた。
-
【感想】
「竜馬がゆく」とは大きく異なり、現世に近いドロドロとした人間関係がエグイ・・・
大久保と西郷、2人とも日本の将来を展望していると言う意味では同じ立場かつ同じ目線なのだろうが、
それぞれの立場やわだかまりがズレを生じさせつつ、それが日本全体に波及していっている。
いくら影響力がある者同士とはいえ、国家を揺るがすくらいの問題になるのが今では考えられないなぁ。
とは言え、今は爆発寸前で一点の揺らぎもない状態で物語は進んでいる。
たまに突き合いがある程度でハラハラする事もなく、少々読んでて退屈になってきた。
【あらすじ】
西郷に続いて官を辞した、もとの司法卿・江藤新平が、明治七年、突如佐賀で叛旗をひるがえした。
この乱に素早く対処した大久保は首謀者の江藤を梟首に処すという実に苛酷な措置で決着をつける。
これは、政府に背をむけて、隠然たる勢力を養い、独立国の様相を呈し始めている薩摩への、警告、あるいは挑戦であったであろうか
【内容まとめ】
1.征韓論の衝突は、西郷・大久保という両大関の衝突
2.大久保だから、行き詰まらずに彼流儀の日本国を作り上げるかもしれない。
その時はその時で、自分は故山で朽ち果てるだけのことだ。
西郷は気長に物事を見ていた。
3.征韓論は、所詮近衛軍人や士族たちの憤りのはけぐち
西郷としては、これ以上抑え続ける自信がなかった。その征韓論を、大久保が蹴った。
【引用】
p12
「思うて一なれば敵なし。」
若い者に、自分は何事かをしようと思うがどう心がければいいかと問われ、西郷が答えた言葉。
卵を抱いているメンドリの心境。
どんなにうまそうな餌を近づけても、また脅しても、メンドリは見向きもしなければ逃げもしない。
また猫がねずみを狙う境地も似たようなもの。
元来、猫というのは物事に過敏な動物なのだが、ひとたびねずみを狙う時は恐れもせず他を振り返ろうともしない。
p21
西郷の思惑
10年もすれば、大久保のあの専制的なやり方は行き詰まる。
そのとき東京から自分を呼びに来るだろう。
しかし一面、大久保ほどの男のことだから、行き詰まらずに彼流儀の日本国を作り上げるかもしれない。
その時はその時で、自分は故山で朽ち果てるだけのことだ。
気の長い政略計算があっただけに、佐賀士族がこぞって乱を起こした時に、「しまった」と失落感があったと思える。
p82
西郷と薩摩人という存在がなければ、江藤は死刑にもならず、まして「晒し首」されなかったに違いない。
p171
「海老原に聞けばどうか?」
と、高橋がいうと、村田は一笑に付した。
「そういう人間に聞いたところで仕方がない。」
物事というのは、人間の料簡によって見方が違うのだ。
海老原ごとき小器量の人物に聞いたところで何になろう?
「征韓論の衝突は、西郷・大久保という両大関の衝突である。」
p185
東京政権が確立したのは、廃藩置県のおかげである。
それを可能にしたのは薩摩系近衛軍人で、彼らは政府に騙されたとはいえ、その功績は大きかった。
しかし彼らはことごとく政府に対して激怒している。
大久保は、性格上それに対して冷然としている。
西郷はその大久保の態度に、配下の近衛軍人と同様、憤りを覚えただろう。
その西郷が、近衛軍人や士族たちの憤りを他に向ける為に征韓論を持ち出した。
西郷としては、これ以上抑え続ける自信がなかった。
その征韓論を、大久保が蹴った。 -
品川駅の本屋で、文庫「翔ぶが如く<四>」司馬遼太郎著を立ち読みし、自宅で読み残していた最後の数ページを読み終えた。
本屋さんごめんなさい。(2008.6.3HPの日記より)
※2008.5.5購入
2008.5.6読書開始
2008.6.3読了
2017.5.6売却@Book Off -
台湾に一冊はかけすぎな
-
廃藩置県が、西郷さんに重たい十字架を背負わせ、それが西南戦争に繋がっていく要因になるんだなと感じました。西南戦争前の西郷さんは、革命を成就させるためだったとは言え、色々と辛かっただろうなと思う。
-
西郷が下野したことを受けて江藤が佐賀の乱を起こす。このあたりから面白くなってくる。また西郷の人事に関する考え方も述べられている。仕事のデキる者、専門職は刀や茶わんといった道具にすぎず、道具を使うトップとしてはふさわしくないという。後半は台湾征討へと続く。
-
維新達成後、有り余った武士(すでに元武士)エネルギーの発散と、廃藩置県による階級廃止及び、徴兵制度への不満解消は、重要な内治問題だった。そこで西郷は征韓論を発案し、大久保は征台策を発案した252