考えるヒント (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167107017

感想・レビュー・書評

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  • 小林秀雄は、ちょっとわかりづらいというか、難しいと感じました。
    何度も目をとおしたのですが、なかなか、頭にはいってこない。
    書きおろしっぽくて、並びも、自由というか、話の一つ一つが、中で完結していて、連携が薄いと感じました。

    気になったことは以下です。

    ・常識を守ることは難しいのである。文明がやたらに専門家を要求しているからだ。私たち常識人は、専門的知識に、おどかされ通して、気が弱くなっている。私のように、常識の健全性を、専門家に確かめてもうらうというような面白くない事にもなる。
    ・常識がなければ、私たちは一日も生きられない。だから、みんな常識は働かせているわけだ。併し、その常識の働きが利く範囲なり世界なりが、現代ではどういう事になっているかを考えてみるのがよい。常識の働きが貴いのは、刻々に新たに、微妙に動く対象に即してまるで行動するように考えているところにある。

    ・政治は普通思われているように、思想の関係で成り立つものではない。力の関係で成り立つ。
    ・政治の地獄をつぶさに経験したプラトンは、政治への関心とは言葉への関心とは違うと繰り返しいうだろう。政治とは、巨獣を飼いならす術だ。それ以上のものではありえない。

    ・戦後、文段というものが崩壊して、分子という民主的職業人が、氾濫するに至った。

    ・嘘をつく、つかぬということは、良心の複雑な働きの中のほんの一つの働きにすぎない。嘘はつかなくても、悪いことはできる。
    ・現代の合理主義的風潮に乗じて、物を考える人々の考え方を観察していると、どうやら、能率的に考えることが、合理的に考えることだと思い違いしているように思われる。

    ・本居宣長に、「姿ハ似セガタク、意ハ似セヤスシ」という言葉がある。言葉は真似し難いが、意味は真似しやすいというのである。
    ・宣長は、「歌は言辞の道なり」という。歌は言葉の働きの根本の法則をおのずから明らかにしている。という意味である。
    ・宣長は、理より情を重んじ、人為より自然を重んじた。

    ・大衆が、信じられないほどの健忘症であることも忘れてはならない。プロパガンダというものは、何度も何度も繰り返されなければならない。それも、紋切型の文句で耳にたこができるほど言わねばならない。ただし、大衆の眼を、特定の敵に集中させておいての上だ。
    ・いまでも「平家物語」は折に触れて読むが、「源氏物語」となるとどうも億劫である。名作には違いないが、「源氏物語」のあの綿密な心理の世界には、何か私を息苦しくするものがある。

    ・ブルタルコスによれば、クレオパトラという女は決してパスカルが心配した意味での美人ではななかったそうである。その代わり、語学の天才で、土俗の言葉に至るまで自由に操り、非常な美声でその言葉には抗しがたい魅力があったという。
    ・歴史を鏡とよぶ発想は、鏡の発明とともに古いように想像される。歴史の鏡に映る見ず知らずの幾多の人間たちに、己の姿を観ずることができなければ、どうして歴史が私たちに親しかろう。
    ・ペリクレスの観察によれば、アテネが豊になればなるほど、人心の腐敗も豊になるということだった。

    ・「学問のすゝめ」の中に、「怨望の人間に害あるを論ず」という一昌があるが、福沢の鋭い分析的な観察はよく現れている。人間品性の不徳を語る言葉の種類は、実に沢山あるが、その内容をなす人心の動きに着目すれば、その強弱、方向に由って、間髪を入れず徳を語る言葉に転ずる

    日本の古い舞踊は、すべて、文学的なもの、あるいは、戯曲的なものの重荷を負いすぎている。と感じている。

    目次
     
    考えるヒント
     常識
     プラトンの「国家」
     井伏君の「貸間あり」
     読者
     漫画
     良心
     歴史
     言葉
     役者
     ヒットラーと悪魔
     平家物語
     ブルターク英雄伝
     福沢諭吉
    四季
     人形
     樅の木
     天の橋立
     お月見
     李
     踊り
     スランプ
     さくら
     批評
     見物人
     青年と老年
     花見
    ネヴァ河
    ソヴェットの旅

    ISBN:9784167107017
    出版社:文藝春秋
    判型:文庫
    ページ数:224ページ
    定価:429円(本体)
    発行年月日:1974年06月25日第1刷
    発行年月日:2001年10月20日第44刷

  • 小林秀雄初めて読んだけどこんなに難しいこと考えれてすごいなーってめちゃめちゃふつうのこと思ってしまった

  • 解説:江藤淳
    考えるヒント◆四季◆ネヴァ河◆ソヴェットの旅

  • #bookoff

  • 人形という、小説ともエッセイともつかない短編がいい。

  • (1983.05.08読了)(1983.03.02購入)
    *解説目録より*
    常識、漫画、両親、歴史、役者、ヒットラーと悪魔、平家物語などの項目を収めた「考えるヒント」に随想「四季」を加え、「ソヴェットの旅」を付した明快達意の随想集。

    ☆小林秀雄さんの本(既読)
    「ゴッホの手紙」小林秀雄著、角川文庫、1957.10.30
    「モオツァルト」小林秀雄著、角川文庫、1959.08.10
    「対話 人間の建設」岡潔・小林秀雄著、新潮社、1965.10.20
    「近代絵画」小林秀雄著、新潮文庫、1968.11.30

  • 2回読みました。
    まだまだ行間がつまりません。
    んー。
    【熊本学園大学:ペンネーム夏のせみ】

  • 万年積ん読。池田晶子があれだけ敬愛していたので絶対に読了したいと思い始めてはや数年。まずこのいかにも古いフォントが壁。というのは言い訳だが。

  • 最後の、「ソヴェットの旅」が一番面白かった。講演だからか。そのひとつ前の「ネヴァ川」と重なるところもあるのに、全然分かりやすいもん。のろのろと、具体的言えば3ヶ月かけて読んだようなので、前の方はどんなだったか忘れてしまった。でも、つまらなくはないし、なるほどと思ったこともあっただろうけど、全体的に面白いかと言うとそれほどでもない。ついこないだ、文学部の先輩が旅先にこの本を持っていってよかったとTwitterに書いてたが、読む人が読めば、ということか。あと、「考えるヒント」の部分よりも、それぞれがせいぜい3ペイジくらいの「四季」の部分のほうが印象に残ったかな。「人形」とか。解説は江藤淳。

  • 2008年132冊目。薄い本なのですが、読了するのにやたら時間がかかりました。

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著者プロフィール

小林秀雄
一九〇二(明治三五)年、東京生まれ。文芸評論家。東京帝国大学仏文科卒業。二九(昭和四)年、雑誌『改造』の懸賞評論に「様々なる意匠」が二席入選し、批評活動に入る。第二次大戦中は古典に関する随想を執筆。七七年、大作『本居宣長』(日本文学大賞)を刊行。その他の著書に『無常といふ事』『モオツァルト』『ゴッホの手紙』『近代絵画』(野間文芸賞)など。六七年、文化勲章受章。八三(昭和五八)年、死去。

「2022年 『戦争について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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