手紙 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167110116

作品紹介・あらすじ

強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く…。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。

感想・レビュー・書評

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  • 兄弟の絆としがらみ… 社会で生きる人が避けて通れない永遠のテーマ!社会派ミステリーの名作 #手紙

    ■レビュー
    犯罪者家族をテーマに兄弟の絆を描いた社会派ミステリー。
    いつもの東野先生どおり、シンプルな構成、読みやすい文体でどんどん読めてしまいます。ミステリー要素は少なめですが、社会派小説としてとてもよくできた作品です。

    本作のテーマはなかなか重い…登場人物の社長が狂言回しになっていて、読者に分かりやすく伝えてくれます。自分がごまかし、敬遠してきた課題に対して、真正面から問題提起してきますね。

    特に主人公が社会から卑屈になっていく様、愛する家族への疎ましく思う様、そして人生に思い悩む苦しむ描写が読んでいて辛くなりました。
    それでも兄弟二人それぞれが、勇気をもって結論を出し、未来に歩んでいく姿はとても心を打ちましたね。

    本作とてもバランスが取れた良い作品ではあるんですが… ごめんなさい、自分としてはもう一歩踏み込んでほしかった。
    この問題は小説や映画だけでなく、ノンフィクション、ドキュメンタリー、人文社会学でも散々議論があるテーマです。読み手にもっと危機感や使命感を訴えるようなエピソードや展開があれば、もっともっと作品に深みがでると思いました。

    ■推しポイント
    ・最初の恋人との逸話
    私も若いころに、恋心をいだいては行けない人を好きになってしまったことがあります。自分が見初められないのであれば仕方ないですが、両想いであるにも関わらず一緒になれない辛さ、皆さん分かります?ねぇねぇ

    「心が荒む(すさむ)」という言葉がありますが、まさにこうなります。

    ・主人公の最後の手紙
    私の両親はいつも仲が悪く、いつもケンカばかりしていました。
    客観的にみると父が一方的に悪いことが多いため、私はよく母親側について糾弾していました。しかし姉は父の肩をもって、私と母親に反撃をしてきます。常々家族中が言い合いなっていたものです。

    それでも父も姉も良いところもいっぱいあり、今でも大好きです。

    主人公の最後の手紙は、未来への覚悟を決めるというだけでなく、自分自身を消し去ってしまうという負への挑戦が伝わってきました。果たして自分が同じ立場ならできるのでしょうか。

  • 救いはあったのだろうか。主人公の不器用さが歯がゆい。葛藤から一歩前進する為に、どれだけの力を要するのか。幸せになることが許されないのは何故か。
    きっと幸福や不幸は量ることは出来無いけど、周囲の人は、目には見えない何かに惹かれ、時には、目に見えない何かに脅え、嫌悪することがあるということを上手く描いている。そこに綺麗事はないし、寛容さが入る余地もない。

    以下、ネタバレ有り(備忘録)。

    加害者家族の目線で物語は綴られる。
    強盗殺人を犯した罪で服役中の兄から弟へ、毎月送られてくる手紙。被害者家族と加害者家族について、逃れられない現実が描かれる。身内に犯罪者がいることで、これまでの生活が崩壊していく。
    武島直貴は、兄である剛志が送ってくる手紙を読み、生き方を考えることになる。

    遺族の悲しみや無念は尽きない。決して終わらないし、許されることも無い。

    弟の大学進学費用を工面するために、働いて金を稼ぐ兄。体を痛め、思うように働くことが困難になった。ついに犯罪に手を染める。そして強盗犯罪という過ちを犯す。弟との生活、弟の大学進学。金の為であった。
    一人残された弟は、殺人者である兄を持つことで、苦難の人生を歩み始める。兄のことを尊敬していたはずなのに、兄のことで不幸になる自分がいることへの、気持ちの整理がつかない日々を生きる。

    しかし、懸命に前に進む直貴の精神的な強さは、兄を頼っていた弟と、同一人物とは思えないほど、しっかりとしているように見えた。働き、大学へ進学し、卒業して就職する。ゆっくりではあるが確実に前進していることはすごい。度々襲い掛かる苦難には、常に兄の影が付きまとい、逃れられない差別や偏見があった。

    最後に兄と弟は互いに何を想ったのか。
    救われた人はいなかったのだろうか。

    読了。

  • 重々しい話だろうなーと思って買ったが、やはり暗めの話だった。今まで犯人と被害者の心情しか書かれていない本が多かったが、これは犯人の「家族」の心情についてかかれている。とても現実味のある本だった。

  • 東野作品の有名作を読了。
    加害者家族の苦悩と差別の現実が描かれた作品。
    強盗殺人の罪で服役中の兄を持つ弟。
    彼の視点での事件後の人生。
    幸せをつかもうとにする度に「殺人犯の弟」という現実で壊れ。
    辛いけどこれが現実なんだと思う。
    犯罪は被害者は元より、自身の家族も社会的に殺してしまう。
    だから犯罪は絶対にやってはいけない。
    そう強く思った作品でした。

  • 久々の東野圭吾作品。

    昨年「白鳥とコウモリ」を読んだときに目にした「白夜行」「手紙」...新たなる最高傑作東野圭吾版「罪と罰」とのキャッチコピー。

    それ以来、どこがでずっと気になっていた本書をようやく手にとりました。

    重くて、辛くて、深い。

    「Aではない君と(薬丸岳)」をすぐに思い出しましたが、比較すると☆4つが妥当かな。

    本作の主人公は武島直貴。

    二人兄弟の兄・剛志は弟(直貴)の大学進学の為の金を得るために空き巣に入り、家人に見つかってしまい衝動的に殺めてしまう。

    直貴はそれ以来、強盗殺人犯の弟として人生を苦しめられることに。

    説明
    内容紹介
    武島剛志と直貴は二人きりの兄弟だった。
    弟の大学進学のための金がほしくて、剛志は空き巣に入り、強盗殺人の罪を犯してしまう。
    服役中の剛志から直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く。
    しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる。
    ある職場で疑いをかけられ、倉庫に異動させられた直貴のもとに現れた男性は、「差別はね、当然なんだよ」と静かに言うのだった――。
    年月が流れ、家族を持った直貴は、ついにある決意をする。
    人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。
    犯罪加害者の家族を真正面から描き、映画化(主演・山田孝之)、舞台化もされ、感動を呼んだ不朽の名作。文春文庫史上最速でミリオンセラーとなり、200万部を売り上げるベストセラー。
    内容(「BOOK」データベースより)
    強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く…。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    東野/圭吾
    1958年、大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒。エンジニアとして勤務しながら、1985年、「放課後」で第31回江戸川乱歩賞受賞。1999年、「秘密」で第52回日本推理作家協会賞受賞。2003年、本書「手紙」が第129回直木賞候補となる。2006年、6度目の候補作である「容疑者Xの献身」で第134回直木賞受賞。同書は第6回本格ミステリ大賞、2005年度の「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」各第1位にも輝いた。幅広い作風で活躍し、圧倒的な人気を得ている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 直貴と剛志のそれぞれの苦しみを想像すると悲しくて、ラストは涙なしには読めない。

    綺麗事はいくらでも述べられるけど、「差別や偏見のない世界。そんなものは想像の産物でしかない。」結局はそうなのかもしれない。
    けどその後に続く直樹の台詞「人間というのは、そういうものと付き合っていかなきゃならない生き物なんだ」この考え方がレッテルを貼る側、貼られる側、双方にとって重要なのかな…うーん。
    現実に自分の近くに武島兄弟がいたら、私はどうするだろうか。

  • 武島剛志と直貴は二人きりの兄弟。
    弟の大学進学のための金がほしくて、剛志は空き巣を思いつき、強盗殺人の罪を犯してしまう。

    世間から見れば、犯人が捕まればそれで終わり。
    自分に危害が及ぶことはないと確信できれば、それで事件について思い返すことはないでしょう。
    けれど被害者家族(遺族)、加害者家族にとってはそれは不可能なのです。
    逃げるにしろ向き合うにしろ、自分でその事実との関わり方を考えさせられます。

    罪を償うのは罪を犯した者だけであるはずなのに、世間の目はそれを許さない。
    途中直貴が本当に気の毒でしたが、もし自分の周りに同じような人がいたら自分はどう接するだろうと考えると、やはりあまり関わらないようにするだろうと思います。
    直貴に非はなくても、きっとどこかで差別してしまうのだろうと思いました。

  • 負の連鎖。
    逃げ切れない恐ろしさ。

    綺麗事では生きて行けない「現実」がリアルに描かれています。怖い‼︎

    お兄さんが獄中で勉強してる様が「手紙」を通して見えます。

  • 考えてみると、東野さんからはいつも
    (答えの出ない問題から目を背けるな。)
    と、言うメッセージを発信されているような気がする。

    日々のNEWSで度々目にする痛ましい殺人事件。
    (ひどい事するね)
    (他人の命奪う権利が、一体誰にあるっていうのよ!)

    犯人への怒りは収まらないが、
    フト、
    家族へのインタビューが始まると、複雑な気分になってしまう。

    私は
    彼らにも責任がある、とか
    同じ血が流れている事をおぞましい、とか
    思った事はない。

    むしろ気の毒だな・・・と、同情はするが、
    果たしてその感情は、どこまでが本心なんだろう?

    (身に降りかかる災いは避けようよ…)
    心の裏側から聞こえた薄暗い声が、自分のものである事に気付いて、
    ゾッとしてしまった。

    こんな、
    こんな自分の本音を聞きたくはなかった。

    物語内で殺人を犯してしまった兄だが、
    両親を早くに亡くし、(自分はいくら苦労しても構わないから、弟だけは大学に行かせてやりたい。)
    と、残忍な凶行に及んでしまったのは、実は弟を思いやる優しい気持が原因であった。

    殺人も突発的であり、同情の余地のある犯行…
    いや、でも、殺されてしまった家族にとっては犯人の事情なんて全く関係ないよな。

    弟の思いも複雑だ。

    思いっきり恨めればむしろ、すっきりするだろうに、
    自分の人生を蔑ろにしてまで弟の為に犯罪者になってしまった兄を心の底から憎むことが出来ない。

    …が、
    世間はやはり非情であった。

    犯罪者の家族、と貼られたレッテルは
    彼から全ての未来を奪って行った。

    夢も希望も愛する人も。

    人を信じる事が出来ないつらさ。まるで生きる事を剥奪されかけている弟には、一体どれ程の罪があると言うのだろう。

    はじめて
    東野さんの作品を
    (早く、読み終えたい…)と、思ってしまった。

    それは
    東野さんなら、答えを出してくれるのかも知れない。
    もしかしたら
    この後、彼に一筋の光を与える言葉を見つけてくれるかも知れない。

    でも、私は・・・
    私のなかで、その光を見つけ出せないのだ。

    一気に読み終え、
    ラストの光景を目にした私は、
    (救い)と言う意味の本当の意味を知った…様な気になった。

    温かい思いで心を満たしたい、と誰もが思うが、
    それだけが全てじゃない。

    犯罪者には決して届かない光を求めるから(苦しみ)は生まれるんだ。

    上手くは説明出来ないけど

    救われたいと願うから救われないのかも。

    全篇を通して流れる『イマジン』が
    差別と偏見のない世界を歌う。

    今も歌い継がれてる、今も聞く人の胸に響くと言うことは
    決して無くなってはいないからかもなぁ、とぼんやり思った。

    • 円軌道の外さん

      う〜ん
      難しい問題ですよね(>_<)

      自分は闘うことを止めてしまった
      ビートルズは嫌いやったけど、
      血を流して闘う
      スト...

      う〜ん
      難しい問題ですよね(>_<)

      自分は闘うことを止めてしまった
      ビートルズは嫌いやったけど、
      血を流して闘う
      ストーンズや
      ジョン・レノンは好きでした。



      今の世界を取り巻く状況は深刻で
      様々な環境問題や
      絶えることのない争いや犯罪…。


      ジョンの願った世界からは
      まだまだ程遠い現状だけど、


      だからこそ
      希望や光を内包する

      諦めない、
      信じることを教えてくれる
      音楽のチカラを
      自分は信じていたいって思うのです。


      人間の心を揺り動かす力を
      音楽は充分に持ちえてるし。



      イマジンなんて
      そんなの理想じゃないかと
      笑う人もいるけど、

      理想を語れなくなったら
      人は終わりやと思います。



      悪意の拡散を防ぎ
      抑止する
      『Imagine』を
      誰の胸にも持ち続けていって欲しいし、


      争うことは無意味で、

      人をゆるすことができなきゃ
      自分自身ゆるされることなんて
      一生ないんだと
      この歳になって
      最近思うんですよね(^_^;)




      「手紙」は
      読もう読もうと思いつつ
      もう何年も
      「読みたいリスト」入りしたまんまやったんで、
      近々自分も
      読んでみたいと思います(^_^)v


      2013/02/18
    • MOTOさん
      円軌道の外さんへ

      コメントありがとうございます!
      とても考えさせられるコメントに、しばし、うんうん、と沈思黙考しておりました。^^;

      差...
      円軌道の外さんへ

      コメントありがとうございます!
      とても考えさせられるコメントに、しばし、うんうん、と沈思黙考しておりました。^^;

      差別と偏見のない世の中…。
      ほんと、そうなったら理想ですよね!
      そんな世界ならきっと犯罪も起こらないだろうに。
      人は最低のサイクルを繰り返しているんじゃないかな?
      差別と偏見だらけの世界に、耐えられなくなった
      人間が犯罪を犯す。

      そんな人間に対して、まともな人達は一線を引いてしまう。
      同じ人間として見る事すらしなくなってしまう。

      全てを悟り、何もかも許す事など人には決して出来ないそうですね。
      それが出来たのは唯一お釈迦様だけ、だったとか。
      円軌道の外さんの様に

      人をゆるすことができなきゃ自分自身ゆるされることなんて一生ない。

      事に気付く人が増えたなら、
      この生きにくい世の中もほんの少しだけ、
      優しい世界に変われそうな気がするのですが。

      いつか、
      円軌道の外さんの「手紙」の感想も読んでみたいですね。^^♪
      2013/02/19
  • 加害者家族に焦点を当てた作品という事で読んでみたが、読んでいてとても辛かった。

    子供の不始末は親の責任とか、親の躾が悪いからとか、耳にする事があるが、親ならば多少なりとも責任はあるのだろう。

    では未成年の弟に、兄の犯した罪の責任はあるのだろうか・・・

    責任は無いと思っていても、強盗殺人犯と関係がある人と関わりを持ちたくない、怖い、と思ってしまうのは、ごく普通の考えだろう。


    実際に罪を犯した剛志よりも、何の罪もない直貴の方が苦しんでいる。
    剛志は、塀で守られ、衣食住を与えられ、病気をすれば医者に診てもらえ、仕事も与えられる。
    逆に直貴は、世間の冷たい目に晒されながら、必死にもがき苦しみ生きている。

    剛志から届くお気楽な手紙が、直貴の辛く苦しい人生を更に際立たせているように感じた。

    直貴の最後の手紙。剛志の最後の手紙。直貴の目に映る、剛志の最後の姿。
    何もかもが辛くて。。。。悲しくて。。。。涙が流れた。

    出所して、塀という守られた世界から出た時、剛志は初めて直貴の苦しみを理解することになるだろう。
    その時の剛志を思うと心が痛む。
    罪の償いに終わりはないのかもしれない。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

「2022年 『希望の糸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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