- Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167110116
感想・レビュー・書評
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弟を大学へ進学させるため、必死で働くが体を壊して働けなくなり、盗みに入った家で殺人を犯してしまった兄。
刑務所から弟へ手紙を書き続けるが、それが、殺人犯を兄に持つ弟を苦しめることになっていく‥
差別や偏見がこの世から無くなることはない。
みんな、犯罪という恐ろしいものから離れた安全な所に身を置いていたいから。
それは、無意識のうちにとる危険回避の本能のようなものなのかもしれない。
幸せをつかもうとするたびに、重くのしかかる「犯罪者の弟」というレッテル。
わかってはいても、読んでいて辛く、やりきれない気持ちになった。
大半の人が本当のことを知ると途端に離れて行く。でも、そのことを知った上で寄り添ってくれる人もいた。
捨てる神あれば拾う神ありだ。
そしてその人たちのおかげで本当に大切なことに気付き、また一歩前へ踏み出す。
本作はミステリーではなく犯罪加害者の家族を正面から描いた人間ドラマだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりに再読したが、これぞ不朽の名作という小説であることを再認識した。
主人公の直貴が直面する現実は、想像以上に大変で、10代、20代前半という年齢にしては背負うものが重すぎるなぁと思う。
差別はあるのが当たり前なんだ…という言葉を聞いて、自分は差別をしていないと思っていても、犯罪者の家族というレッテルを貼らずに接していけるかどうかはとても怪しいなと感じる。
現実で、直貴のような方がいても、肩代わりは出来ないし、差別をしないで接していけるかどうかとても自信はない…。
しかし、背負っているものを想像して、一緒にその感情を味わうこと…は、この小説を通じて出来るのではないかと思った。 -
東野圭吾氏が書いた『手紙』は、解説を読んでない人は是非、解説まで読んで欲しいと思った。(途中に理由は書いてあります!)
東野圭吾作品として、被害者の立場でストーリーが展開するものとしては『変身』や『さまよう刃』等があり私はいつも〝被害者の気持ちになって〟読んでいることが多かった。なので、〝加害者やその周りにいる家族たち〟の気持ちにここまで感動した作品は『手紙』が最初で最後かもしれない。
特に終章に掛けて読む手が止まらなくなるくらいに胸が熱くなるのだが、その中でも直貴がバンドを通して仲を深めた寺尾に向けて言った一言がまさにこの作品で一番重要なことを言ってると感じた。
「差別や偏見のない世界。そんなものは想像の産物でしかない。人間というのは、そういうものとも付き合っていかなきゃならない生き物なんだ」と。
更に、直貴たちは兄の剛志が居る刑務所に行き『イマジン』を歌う。
この『イマジン』は、冒頭にも言ったように解説で細かく記されており、ジョン・レノンを主人公としたドラマに対して妻オノ・ヨーコが取った行動がこの『手紙』を通して私たちが生きている社会に投げかけているのでは無いかと感じた。(本当に解説読んで欲しい……)
恋人ができても自分の兄が殺人犯という事で別れ、会社も馘首にされそうになり…と直貴にとって苦しいことが続き、自分も悲しい気持ちなったがその中でも由美子や寺尾と言った味方もいて繋がりは本当に大切だと改めて考えさせられた。また、直貴が兄から貰っていた手紙をクシャクシャにして捨ててた時も勤め先の社長の助言で何とか立ち上がろうとする姿はやはり素晴らしいものであった。
『手紙』は、由美子が直貴を思い社長に懇願する手紙、被害者に書き続けた剛志の手紙、そして直貴に毎月書いていた剛志の手紙…様々な人の手紙を読んで、涙腺崩壊よ。
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犯罪加害者家族への偏見や差別についてが主要なテーマなので、重いです。読んでいて辛くなりました。
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弟のために強盗殺人犯の兄と、差別を受けながら生きることになった弟。「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる過酷な現実。犯罪者の兄を持つ加害者家族の苦悩を描いた作品。
犯罪加害者家族が味わう差別や偏見、贖罪といった重たいテーマを描き切った作品。正々堂々と生きることの難しさを感じます。
「差別は当然ある」
進学、恋愛、就職と、幸せを掴もうとするたびに「強盗殺人犯の弟」というレッテルが重くのしかかる。そんなことは知らない兄は一ヶ月に一度、弟に手紙を書く。その行為が次第に弟を苦しめることになる。その度に突きつけられる「強盗殺人犯の弟」という現実。
切っても切れない兄弟の絆。加害者家族の苦難。犯罪は被害者は元より自身の家族も社会的に殺してしまう。これが現実。胸が締め付けられました。
本作は、とても考えさせられる内容ですし、落ち込んでいるときに読むことはおすすめできませんが、多くの人に読んでもらいたい。そんな作品です。 -
今読み終わりましたが感想が頭に浮かばないのに、ただただ想いに深けてしまう…作品です。
最後のシーンは最近読んだ中では格別な印象でしたー
たったの10行ですが…
映画化されてるので、そのラスト10行の演出は観てみます、では。 -
重たいテーマを淡々と描く、いつもの読みやすい東野圭吾のクールな文体。お説教も自論も挟まない分、とても考えさせられる。被害者、加害者、加害者家族、その周りの世間。それぞれの立場からの視点。『手紙』そう手紙が書名、さすがです。 放送終了したBSドラマ『珈琲屋の人々』と脳内リンクしました。
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かなり前に読んで内容を忘れていたので再読。
加害者家族は、こうやって苦労していかなくてはいけないのか。。?
想像は容易いけど、実際自分の立場だったら色々諦めてしまいそう。 -
加害者家族の苦悩を描いた作品。
兄が強盗殺人犯だと知り差別する周囲の人々。幾度となく裏切られ差別され、どんどんと諦めることが当たり前になっていく主人公の人生の過程が読んでいてとても辛い。
「加害者家族への差別は当たり前」という一見過激な表現には驚いたが、実際自分の周囲にそういった立場の人がいれば確かに関わり合いになりたくないというのが本音であり普通の考え方である。
あからさまな差別は倫理的に避けたいが、今の平穏な暮らしを脅かすものからは逃げたいというのが人間の本質。
そういった細かな心情もしっかりと描いているため登場人物に感情移入しとても引き込まれた。
兄からの最後の手紙は涙なしには読めなかった。
ハッピーエンドとはいえない終わり方もリアリティがあってとても納得できた。 -
東野作品、どれを読んでも秀逸だなぁ。これもとても引き込まれて一気に読んだ。
殺人犯の弟がその後どのように生きていくのか、という重いテーマが淡々とかつ切実につづられている。
刑務所の中から月に一度届く兄からの手紙の内容と、弟の置かれている厳しい現実があまりにもすれ違っていて辛いものを感じた。
読後感も非常に重苦しく、お腹にずんと来るものがあった。
平野社長の言葉も考えさせられる。「正々堂々とやるのは、非常に選びやすい道だ」という言葉。
その後、妻子がひったくりの被害に遭い、実際に犯罪被害者の立場になってみてわかることもあり、「差別」がいかに身近で当たり前に存在しているか考えさせられた。
これを読むと「差別は悪いこと」とは一概に言い切れなくなる。 -
兄の大罪が弟の人生を狂わす
夢や恋人を諦め、家族を守るため兄との絶縁、そして被害者家族への謝罪
被害者家族から見せられた手紙
慰問コンサート
弟は兄の姿を見つける
項垂れ胸の前で合唱する兄
イマジンを歌えない弟
縁が切れない2人
これが2人にとっての贖罪なのか
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人間は社会性という人の繋がりを持ちながら、危険が満ちたこの社会の中で生活している。我々は、自分の身を守るためにいつの間にか、他者にレッテルをつけている。人として正しくあろうとする道徳心と自分や家族を守りたいという人間本能は、ある種の欺瞞として並存する。だからこそ、「犯罪者の家族」という目印は、本人たちは何も悪くないのに、不運な境遇にいるという同情を呼ぶ。しかし、誰も自分からては差し伸べようとしない。差別とは、気づけば、社会を構成する私たち全てが、自分の安全のために常に生み出しているのである。
人間として正しくあろうとしただけだった。でも実際のところ、何が正しいかなんてことは、誰にも言えんのだよ。
それは、なにをどう選択するかなんだ。
世間の人々がそうしたレッテルを貼る行為を責めることもできません。この世界は、危険に満ちています。いつどんな人間が危害を加えてくるかわからない世の中です。誰もが自分の身は自分で守るほかなく、これといった力のない庶民としては、周りの人間にせめて何らかの目印でもつけておくしかないのです。
差別や偏見のない世界。そんなものは想像の産物でしかない。人間というものは、そういうものとも付き合っていかなきゃならない生き物なんだ。 -
人は皆何らかの、レッテルを貼られている。
差別をなくそう!差別のない世の中を!
差別とはなんなのか、それをもう一度深く考える必要がある。
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主人公の直貴は悪いことは何もしてない。
にもかかわらず、このような人生を歩まなければならないのか。
償えない罪、許されない過ちはないと思っていたが、綺麗事にすぎない。それ相応の罰を受ける義務がある。
悪いレッテルを剥がすこと、隠すことは難しい。
また、自分自身の環境はまだまだ恵まれているとも感じた。 -
刃のように鋭く胸に来るものがあった。
言葉にするのが難しい
ラストシーンは涙が止まらなくなりそうになった。
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文春文庫50thの限定カバーに惹かれ購入。
じつに15年ぶりに読んだ!
(私が小説にはまるキッカケをくれた思い出の本☺︎
なのに当時の本は行方不明に…;)
罪を犯すこと(とくに人を殺めること)について
「加害者の家族」という視点をベースに様々な人の立場で多角的に捉えることができる一冊。
母親、剛志、直貴の3人に共通する欠点。
それは「独りよがり」だったこと。
人のため、自分のために行動できる強さを持っていて素晴らしい人たちだっただけに残念。
もう少し互いの意見に耳を傾け、尊重し合っていればこんなことにならずに済んだのに。 -
弟の学資を得るため強盗殺人を犯してしまった兄武島剛士が刑務所から弟に宛てた手紙
弟の暮らしを気遣い、唯一その返事から癒しを得ようとする兄、刑に服しているとは言え狭い空間での変化のないある意味平穏な日々
それに反して、強盗殺人犯の弟というレッテルを貼られ住まい、生活費、学校・・・次々と押し寄せる困難と差別に曝される弟
切なくて切なくて読むのも辛かった
重い文章が続く
あっちを取れば、こっちは取れない。人生は何かを選ぶ代わりに何かを捨てるってことの繰り返しだ
だから俺は兄貴を捨てるよ。俺には兄貴なんていない。俺はずっと生まれた時から一人っ子だった
多くの人が遠巻きに応援はしてくれるが、自分の手をさしのべようとはしてくれない
直貴に幸せにはなってほしいと思っている。だが自分は関わりたくない。誰か別の人間が助けてやればいいのに
というのが彼らの本音
油断してはならない、どんなに親身になってくれようとも心を許してはならない
兄のことが知られてはおしまい
普通の人間は自分のような者は受け入れてくれない
世の中は、加害者の弟というだけで何と冷酷なんだろうと思い読み進めていたが、平野社長の言葉にはっとさせられた
「君が兄さんを憎むかどうかは自由だ。ただ我々のことを憎むのは筋違いだ。我々は君のことを差別しなきゃならないんだ。自分が罪を犯せば家族をも苦しめることになるーー全ての犯罪者にそう思い知らせるためにもね」
「会社にとって重要なのは、その人物の人間性ではなく社会性なんだ。今の君は大きなものを失った状態だ」
「こつこつと少しずつ社会性を取り戻していくんだ。他の人間との繋がりの糸を、一本ずつ増やしていくしかない
君を中心にした蜘蛛の巣のような繋がりができれば、誰も君を無視できなくなる」
たくさんのブク友さん同様、最後の慰問コンサートで兄と対面する場面は、胸を締め付けられたが、
私は、直貴が加害者の家を訪ね、加害者の息子と兄の手紙を前に対面する場面が印象に残った
「もう、これで終わりにしよう、何もかも。お互い、長かったな」という言葉の何と重いことか
ふと想像してみた。刑期を終えて出所してきた兄剛士、その頃には40歳前後になっているはず、あまりにも過酷な社会生活が待っているだろうことを思うと、言葉がない
感想を残してなかったので、5年ぶりに再読した
東野さんを代表する圧巻の大作だと思う -
記録
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切ない。
兄貴はなんて馬鹿なことをしたんだ!
もう少し弟に甘えても良かったのではないか。
殺人は加害者本人だけではなく加害者家族まで巻き込み、世間から敬遠される。
辛すぎる。 -
もし、自分がその立場なら?と、とても考えます。殺人犯の家族、被害者側、何も関係のない第三者。
自分がどの立場になるかで価値観や見え方、生き方が変わる。
正解も間違いもない。
感動とは違う涙が出ます。泣