手紙 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 2861
  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167110116

感想・レビュー・書評

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  • 強盗殺人の罪を犯した兄を持つ直貴が進学、恋愛、就職、夢をつかもうとするたびに犯罪者の弟という運命を突きつけられる。人の絆や贖罪をテーマにした作品。
    自分が直貴の立場だったら、直貴の周囲の人間の立場だったらと登場人物に自分を置き換えた場合に、自分はどんな行動、態度をとれるだろうかなどいろいろ考えさせられる作品でした。

  • 小説も映画も気になってたけど、どちらも観ないままだったと気づいて。
    大ヒットした作品だから今さらながら、という感じだけど。

    端的に言うと、強盗殺人事件を起こした兄を持つ青年・直貴を主軸とした物語。
    獄中の兄から毎月届く手紙と、その手紙を巡る人間模様。
    自分は何も悪いことはしていなくても、そういう兄弟を持ってしまったことで、就職、恋愛、結婚、夢、あらゆることがうまくいかなかったり、差別を受けることになってしまう。とても重くて、辛い内容。

    読みながら、秋葉原の無差別殺傷事件のことを思い出した。その事件自体ではなくて、事件の後、犯人の弟が自殺してしまったということを。
    犯人が隣の市出身だから、たまに知ってる人がいたりして、少し話を聞くこともあって…こう言ってはあれだけど、事件を起こした人間はその後すぐに社会には戻らないで刑期を過ごすなり死刑になるなりするけれど、そういう家族を持った人間は変わらず社会の中にいて、もしかしたら受刑者よりも苦しい思いをするのではないかと思う。

    この小説もそうで、いつまで経っても兄の起こした事件が直貴につきまとう。それは理不尽に思えることばかり。
    でもこれは直貴にスポットを当てているからそう感じるだけで、もし実際近くに直貴のような人がいることが分かったら、自分だって小説に出てくる多数の人間のような振舞いをしてしまうのかもしれないと思う。露骨に避けはしなくても、腫れ物に触るような扱いをしてしまうかもしれない。それも無意識に。
    だからそういう差別はけして特別なことではないということ。
    私自身は法に触れるわけでもないことで差別されたことがあるくらいだから、世の中にはそういうことって溢れてるんだと思う。悲しいけれど、当たり前に。

    一度重大な過ちを犯してしまったら、それまでどれだけ真面目に生きてこようが、どれだけ優しい人間であろうが、そんなことは全く関係なくなってしまう。外から見ている人間の大半は、起きた事実にしか目を向けない。
    「本当は悪い人じゃないのに」って身近な人間が思ったとしても、罪を犯してしまえばみんな一様に「悪い人」にされてしまう。それも当然のこと。

    それぞれ色んな思いがあって起こってしまったことだからこそ悲しくて、どうにかして防げなかったのかと辛くなった。
    ほんの少しの気の迷いで周りの人間の人生までめちゃくちゃにしてしまう可能性がある。それは常に心に留めておかなければならない。

    東野圭吾さんの小説って数冊しか読んだことなかったけど、すごく読みやすくて、どんどん進む面白さがあった。売れてる理由が分かりました。

  • ひたすらに切ない。家族ってどこまでも家族なのだなと。

    主人公のような状況に私自身いつどこでなるか分からないと思うと正直に怖かった。

    周りでこのような境遇の人に出会ったら、私はどのような態度をとるのだろう。

    差別や偏見はダメだと世の中は簡単にいうが、本当にダメなのかなとか。

    全然、答えが出ない。

  • 実に重い。東野圭吾らしい作品ですねぇ。
    弟の大学進学資金欲しさのあまり空き巣に入り、強盗殺人を犯してしまう、兄剛志。

    まず、この時点で大馬鹿野郎ですよ。
    弟直貴は頭いいんだから、奨学金とかさぁ、なんか他に手段ないの?なんで空き巣なん?
    そして、空き巣に入ってお金盗んで、なんでソファーでくつろぐの?

    序章から飛ばしてくれます。

    その後は服役した兄からの手紙に苦しめられる直貴。
    獄中からくる手紙がやたら呑気に見え、強盗殺人犯の弟というレッテルを貼られて差別に苦しめられるのが嫌で嫌でたまらなくなる。

    重いよね。
    作中にもありますが、たいていの人は強盗殺人犯とは無縁の世界で生きている。
    なので、その身内ってのが近くにいたら無意識に排除してしまう。同情はするけど仲間にはなりたくない。
    運よく、身内に強盗殺人犯がいないのでリアルに心境を掴み取ることができないものの想像すると空恐ろしくて身震いする。
    一瞬にして自分の人生も終わってしまうんだから。

    主人公直貴も事件当時は高校生でアパートも追いやられるところから始まり、兄のことを隠して生きていくものの兄からの手紙でいつも境遇がばれてしまい、バイトも辞め、職場もバンドでメジャーデビューって夢も潰えてしまう。
    正々堂々と生きようと思ってもやはり兄の影が重く垂れこみ、娘や嫁がいじめにあう。

    本当にこの立場の人はどう生きればいいのでしょうか。
    職場の平野社長が何度かアドバイスくれます。
    差別について、逆差別について。
    でもねぇ、読んでもやっぱり私にもわからない。どうすればいいのか。

    直貴は最後に兄が被害者家族に送った最後の手紙を読んで悟ったような感じですが、私は読んでも悟れなかった。

    まだまだ未熟ですわ、私。

  • 自分の現実にはない出来事。
    でも、この現実を受け入れなければいけない人がいるのも事実。
    なにかコメントしても、その現実を知っている人にあまりに失礼な気がして。

    なんでだろう。
    愛があるのに。

    • 9nanokaさん
      深いです…
      感動したとか言っちゃわないところがさすがkomoroさんだと思いました。
      深いです…
      感動したとか言っちゃわないところがさすがkomoroさんだと思いました。
      2016/03/22
  • 東野圭吾の世界に私を飛び込ませてくれた作品。
    本を読んで涙を流したのは初めてで、それ程自分が中に入り込めた。

  • 厳しい環境で、どのように生きていくかを考えさせれる一冊です。
    私は、この本に出てくる人のような境遇ではないけれど
    ここに出てくる弟や、弟の妻はとてもとても強い人間だと
    思います。

    でも精一杯がんばれば、くもの糸を1本1本増やすように、
    応援してくれる人が増えていくということを教えられました。

  • 初めて読んだ、東野圭吾の作品。一度も飽きる事なく、読めました。最後は何だか感動。とても深い内容だった。

  • 初体験だが、さすが東野圭吾と思った。
    兄が強盗殺人。直樹はこのレッテルによりバンド、愛人、会社、様々なことが暗礁に乗り上げた。
    他社の作品であれば、由美子と戦う決意をしたあたりで終わり、陳腐な作品であり、何処であっても再三述べられている。
    しかし、現実の不平等さを受け止めるということが甘んじた道であると今まで考えもしなかった結論へと帰着していく。
    不平等さをあえて受け止めることは決して苦難な道などではなく、むしろ兄と縁を完全に切ることこそが幸せへの近道であだだのだった。
    .......................................................................................
    内容としては俗物とはかけ離れているという印象であったが、表現については月並みな表現が多く、扇情されるものは少ないであろう。

  • 結局は、社長が言ったように、「正解はない」ということ。手紙を出すことを自己満足と考える人もいれば、忘れてくれていなくて気休めになる、と考える人もいる。
    自分ならどうするか、とても考えさせられる話でした。

    July. 22, 2018

著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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