新装版 武田信玄 火の巻 (文春文庫) (文春文庫 に 1-32)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167112325

作品紹介・あらすじ

川中島の大会戦に勝利を得た信玄は、天下に号令する道を一歩一歩確実に歩んでゆく。しかし、長男の義信との仲が思わしくなく、やがて信玄は苦悩のすえ、親子の縁を断つのである。後継者を愛する湖衣姫との間にできた勝頼と決めた信玄は、強敵北条氏を追いおとすために、関東に軍を進め、小田原城に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 武田信玄、全4巻の3巻目。ボリューム感は凄いのですが、著者の読ませる力もまた凄い、という感じで、あんまり苦にならず読了。
    この巻、風林火山の「火」の巻で、そりゃまぁ3巻目なんだから当たり前なのですが、個人的に最も印象的に感じた「火」は、武田信玄が織田信長に対して抱いた「嫉妬の炎」でした。
    これまでロジカルかつ慎重に物事を進めてきた信玄が、信長の上洛を機に嫉妬を燃え上がらせ、天下統一への焦りを見せ、性急にも見える動きを取るのがこの3巻。実際にそうだったのかはもはや誰にもわかりませんが、信玄の行動パターンの変化を、信長の影響と見て著者が描いたその姿は非常にしっくりきます。あれだけの人でも嫉妬するのか。。

    他にも、親として側面、夫としての側面で意外な人間味を感じるシーンがあり、本当にこうだったのかなぁ、と思うと面白味があります。
    4巻をどう締めくくるのか。日本史をあまり知らない自分ですが、楽しみになってきました。

  • 円熟期を迎え、いよいよ太平洋側(駿河)への進出を図る信玄。一方で、嫡子である義信との仲が難しく、結局は義信を失ってしまう。やがて正室の三条の方との別れも突然にやってくる。第3巻では、信玄の親としての悩み、年を取ることの悲しみもしっかりと描かれています。

  • 2021.58

    4巻中、3巻目、完!
    勝頼に継ぐことが決まり、北条攻め!

    ラストどうなるか楽しみだなぁー!

  • 川中島の合戦後の信玄。太郎義信との不和、四郎勝頼の成長。

  • 前半は義信事件、中盤以降は駿河侵攻と北条との戦いが話の中心。

    武田信玄というととかく川中島にスポットが当てられるが、実際には川中島後と言うよりも晩年の西上作戦の方が重要だったのかもしれない。

    本巻はその布石となっている。

  • 再読2020.7.19~
    2020.8.7完了
    義信の悲劇と勝頼の頼もしさが載る。
    武田家を扱う小説を読むと、いつも勝頼が活躍し出すと武田家の終わりが近いことを覚り何とも言えない悲しい気持ちになる。
    駿府を取り上り調子真っ只中であるのに悲しいものだ。

  • 信玄の戦略のすごさと長男のワガママ、親を超えたいがために命令を無視して重臣を死なせるなど度重なる違反で信玄は親子の縁を切る。
    勝頼を跡継ぎとし、勝頼のたくましさに親バカになりそうなのを必死で隠すなど、信玄の人間らしさも描かれている。
    勝頼も期待を裏切らない戦略で期待の跡取りだったんだなぁ。
    戦闘部分は飛ばして読む。。。

  • (*01)
    エロスとタナトスとを備えた戦国考証文学(*02)と言えるだろうか。雑誌への100回にわたる掲載という関係もあってお色気路線への脱線が見え隠れする。これは脱線というだけでなく、タナトスである戦場描写とのバランスとしても読み物に必須であったとことと思う。

    (*02)
    文学であれば一人称(*03)から三人称で済ませるものが、考証パートとして、甲陽軍鑑ほかの史料の引用や検証が文内でなされ、著者の考察も射し込まれている点に文芸の新しさを感じさせる。

    (*03)
    この著作に描かれたのは近代人としての信玄とその近代性であった。戦略戦法、経営、愛憎において中世的でない刷新者や先進者としての人物像を描き、病魔と野望の桎梏に喘ぐ人間像を結んでいる。その視角や文体が既に近代である。かつての戦記が描いた英雄像を還元し、必ずしも英雄的でないが様々にとびきり優れた人物と手腕として描ききったところに著者自身(*04)の近代的な史観が投影されている。

    (*04)
    多くの読者から指摘されるように、川中島、桶狭間、三方が原などの有名な合戦に、気象的な要因を読み込むのはこの著者特有のものであろう。また、情報収集や情報操作、血族による婚姻や人質による戦略的な人事、鉱山経営、攻城における工兵や兵站など、経営規模拡大のための諸々も描かれている点で、近代的な読みにも対応したリアリティも付加している。

  • 19/3/18読了

  • 信長上洛の報せを聞いてからの信玄の焦りというか変わり様が強く出ている.

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著者プロフィール

新田次郎
一九一二年、長野県上諏訪生まれ。無線電信講習所(現在の電気通信大学)を卒業後、中央気象台に就職し、富士山測候所勤務等を経験する。五六年『強力伝』で直木賞を受賞。『縦走路』『孤高の人』『八甲田山死の彷徨』など山岳小説の分野を拓く。次いで歴史小説にも力を注ぎ、七四年『武田信玄』等で吉川英治文学賞を受ける。八〇年、死去。その遺志により新田次郎文学賞が設けられた。

「2022年 『まぼろしの軍師 新田次郎歴史短篇選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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