新装版 武田信玄 山の巻 (文春文庫) (文春文庫 に 1-33)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (543ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167112332

作品紹介・あらすじ

甲州・信州の全域をわがものとして、さらに駿河府中をおさえた信玄は、いよいよ京都にのぼろうとするが、織田信長に先をこされてしまい焦るばかりだ。その上、年来の病いが身をしばりつける。合理的な戦術によって、合戦に転機をもたらした名将・武田信玄の生涯を描いた長篇三千枚がいよいよ完結する第四巻。

感想・レビュー・書評

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  • あぁ、4巻読み終わってしまった。。
    何と言うか、ここまで延々と信玄の凄さを読んでしまうと、「嘘でも良いから西上を達成して!!」と思ってしまうのですが、学校で習った歴史にそんなコト書いてないですもんね。歴史は変えられない。
    でも、それだけ感情移入させられた作品でした。だからこそ読後の寂寥感と言ったら。なんかラストだけでも美しい救いがあったら…とも思ったんですが、そこは新田次郎。あくまで信玄のカリスマと、残酷ではありますがその後の「事実」を描いたのでしょう。

    不思議だったのが武田勝頼です。
    どうにも最後まで、「やる気があるけど…なお坊ちゃま」の域を脱せなかった感があります。オトンもあぁ言ってるんだし、国に帰んないで西行っちゃいなよ!というツッコミを心の中で何回したことか。
    しかし、そんな描き方をした張本人たる著者が『武田勝頼』という本を書いている。しかも、「ときに凡将愚将とも評価される勝頼の実相に迫る歴史大作」というフレコミつき。
    高度なマーケティングなのだろうか…(笑

    派手ではないものの、歴史小説というものの面白さを教えてくれた秀作でした。

  • 全4巻を読了。昭和40年から8年にわたって「歴史読本」に連載された大長編ものだそうですが、さすがに読み応えがあり、充実した読了感です。

    晩年の信玄。といっても53歳で亡くなるので、今から考えるとさほどの年齢ではないのですが。結核に悩まされながらも、天下統一に向けて、西上の夢を追いかけます。ラストの三方ヶ原の戦いで家康を破るも、そこで命が尽きる場面。さどかし無念だったろうし、もしあと10年命があったなら、その後の歴史は変わっていたかもしれません。

    忘れられない歴所小説となりそうです。

  • 武田信玄の西上作戦が描かれている。
    三方ヶ原の戦いは武田軍が一気に徳川軍を蹴散らしたイメージだったけど、徳川軍をおびき寄せる作戦を立てて実行したこと、それが時間との戦いであったこと等、面白かった。
    信玄ほどの武将も病には勝てず。進軍していると思わせて信玄の体のために古府中に連れて帰ろうとした重臣たち、側室たちの心中はいかばかりか。

  • すごく面白かった。ますます信玄が好きになった。

    ・父、信虎追放の経緯
    ・山本勘助が間者という事
    ・川中島や三方ヶ原の戦いの見解
    ・長男、義信の離反の解明
     
    は創作

  • 最終巻の中心は西上作戦。

    正直、不要ではないかと思う話も少なくなかったが、三方ヶ原の戦いと信玄の最期の描写は読み応えがあった。

    物語は新田の自説によって締めくくられている。

  • 再読2020.8.7~
    2020.9.1完了
    何度読んでも涙してしまう。最期の話。
    なにが悲しいって信玄のあくなき西上への執念ではなく、これから始まる武田家の凋落の一途。
    たくさんの大将が討ち死にすることを思うと涙を禁じ得ない。

  • 歴史にifはないけど信玄が病気じゃなかったら
    信長は積んでたかもね。あと信玄は若い頃より
    肺炎持ち。Covid19の症状と繋がる。

  • 信玄の最期の章
    文章の句読点が多い書き方が気になりながらもやっと最後まで読めた。
    武田信玄の心残りが伝わり、そして何故信玄の死後勝頼が当主になったら裏切り者続出したのか、信玄の偉大さに加えてそれを超えるのが難しかったし、家臣を信頼できなかったのか…。

    初の信玄の小説なので詳しくは知らないからまた違う作家の武田信玄を読んでみたい。

  • (*01)
    エロスとタナトスとを備えた戦国考証文学(*02)と言えるだろうか。雑誌への100回にわたる掲載という関係もあってお色気路線への脱線が見え隠れする。これは脱線というだけでなく、タナトスである戦場描写とのバランスとしても読み物に必須であったとことと思う。

    (*02)
    文学であれば一人称(*03)から三人称で済ませるものが、考証パートとして、甲陽軍鑑ほかの史料の引用や検証が文内でなされ、著者の考察も射し込まれている点に文芸の新しさを感じさせる。

    (*03)
    この著作に描かれたのは近代人としての信玄とその近代性であった。戦略戦法、経営、愛憎において中世的でない刷新者や先進者としての人物像を描き、病魔と野望の桎梏に喘ぐ人間像を結んでいる。その視角や文体が既に近代である。かつての戦記が描いた英雄像を還元し、必ずしも英雄的でないが様々にとびきり優れた人物と手腕として描ききったところに著者自身(*04)の近代的な史観が投影されている。

    (*04)
    多くの読者から指摘されるように、川中島、桶狭間、三方が原などの有名な合戦に、気象的な要因を読み込むのはこの著者特有のものであろう。また、情報収集や情報操作、血族による婚姻や人質による戦略的な人事、鉱山経営、攻城における工兵や兵站など、経営規模拡大のための諸々も描かれている点で、近代的な読み(*05)にも対応したリアリティも付加している。

    (*05)
    「西上の望み捨てず」の章にこんな一節がある。
    「信玄でない信玄は、信玄らしい顔をして長篠城にいた。」
    つまり信玄とは、英雄的で唯一の絶対者ではなく、多であり組織であったという読みなどもできるかもしれない。

  • 16/4/7読了

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著者プロフィール

新田次郎
一九一二年、長野県上諏訪生まれ。無線電信講習所(現在の電気通信大学)を卒業後、中央気象台に就職し、富士山測候所勤務等を経験する。五六年『強力伝』で直木賞を受賞。『縦走路』『孤高の人』『八甲田山死の彷徨』など山岳小説の分野を拓く。次いで歴史小説にも力を注ぎ、七四年『武田信玄』等で吉川英治文学賞を受ける。八〇年、死去。その遺志により新田次郎文学賞が設けられた。

「2022年 『まぼろしの軍師 新田次郎歴史短篇選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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