劒岳〈点の記〉 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2006年1月11日発売)
3.74
  • (125)
  • (217)
  • (197)
  • (30)
  • (5)
本棚登録 : 2057
感想 : 208
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784167112349

みんなの感想まとめ

測量官の挑戦とその成果を描いた物語は、厳しい自然環境の中での人間の勇気や知恵を浮き彫りにします。剱岳という霊山の初登頂に成功した柴崎芳太郎の姿を通じて、当時の測量の過酷さや、地図が生まれる過程の苦労を...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 地学に関する本を読んでいて気になって読んだ。
    何気なくみている地図、1箇所ずつ測量していた時代があったんだなと、改めて実感した。今みたいにヒートテックがあるじゃなし、装備も揃わなかった頃に切り立った山に測量の為に入る。
    なかなか見つからなかった登頂路の謎を解いて?初めて山頂にアタックするシーンは息が詰まるほどの緊張。

    今だと人工衛星とかから測定したデータで地図を作れるんだよね。Google マップをその当時の人達が見たらさぞ驚く事だろう。

    先日読んでいた宗教本につながる部分もあった。さいきん読書量が増えたので思わぬところでつながる。
    山岳信仰に絡んで曼荼羅や大日如来の話も。

  • 前人未踏といわれ、地元でも長らく登ってはならない霊山とされてきた劔岳。それまで、越中奥山の地図には立山以外の山は等高線すら入っていなかったが、日露戦争後、その空白地域の地図を完成させるため、測量官の柴崎芳太郎が三等三角網完成の仕事の命を受ける。
    陸軍の陸地測量部に属する柴崎は、国の年度予算に縛られるなか、優秀な案内役、宇治長次郎らとともに、1年のうちごく限られた時期にしか登れない劔岳に挑み、多くの苦労の末、初登頂に成功する。

    当時は今のような山登りの装備があるわけでもなく、時に命がけとも言える挑戦をしなければならない、測量官の仕事のハードさに驚き、改めて尊敬の念を抱いた。

    当然のように目にする地図も、最初にそれを完成させるときには並々ならぬ苦労があったことを思いながら眺めると、もっと細部まで見なければいけないような気持ちになってくる。

  • 写真を見ると針の山、という形容が正に当てはまる剱岳の初登頂に成功した測量官の話。
    同じ著者の八甲田山死の彷徨や孤高の人と違い、成功して終わる話なのは後味が良い。
    今でこそTJAR選手が馬場島から一晩で山頂まで登り切るけど、道も装備も無い100年前に登った人たちの叡智、体力、精神力に感服するしかない…

  • 初めての山岳小説でした。史実に基づいていることもあると思いますが、必要以上のドラマチック演出もなく、リアリティ重視で、小説だけど登場人物の横に一緒にいるような親近感を持たせてくれる本でした。その分測量の作業のイメージはつきづらいので、少し時間はかかりました。

  • 文体もさることながら、なかなかストーリーにも入り込めず。
    八甲田山の話は臨場感あってのめり込んだんだけど、こちらは淡々と物語が進んでいき、気が付いたら終わってたという印象。

  • 「剱岳 点の記」#読了
    前人未到と言われ、決して登ってはいけない山と恐れられていた剱岳。その山に挑む測量隊と山岳会隊の姿を描いた物語。登頂ルートすら見出せず、謎めいた伝説に慄いた末、山頂に辿り着いて見たものは。自然の偉大さと神秘を感じる実直な一冊。
    #剱岳 #山岳小説

  • 点の記:三角点設定の記録
    明治40年に測量隊柴崎芳太郎らによって成し遂げられた剱岳初登頂の小説。
    長い間本棚に積読になっていたのを、この春は剱岳を目前に滑ったのをきっかけに色んなところで剱岳のことを目にすることがあって読んでみた。

    当時まだ日本では山岳会という民間の会は発足しておらず、ほとんどの山は役所の測量部によって登頂されていたそう。しかも道なき道を行っていたのだからすごい。先人は偉大です。立山は何度か行ったことのある山域で山の名前や地名も知っていたから、割にするする読み進められた。物語としてもとても面白い。

    三角点ってほとんど興味なかったんだけど、今度見かけたらタッチしたくなりそう。

    2021.5.24

  • 今では剣沢からの南稜ルートでアプローチは楽になっているが、それでも前剣、やっと剣とピークを乗り越えて、剣岳山頂に至る真夏の道は厳しかった記憶が残る。頂上から北は日本海側に開け、眼下には急峻な尾根が連なる。 映画が放映された後新田次郎の原作を読んで、初期の登攀ルート開拓の困難さを思い知るにいたった。

  • 山の測量について、先人への感謝の気持ちが湧く興味深い本でした。
    しかし読み進めるのはなかなか苦行でした。説明的で、測量方法も地形も人物についても全く頭に入ってこない。。。時代小説を読む習慣が無いからだろうか。読むのに体力が必要でした。

  • 『劒岳 点の記』は、自然への畏怖、人間の挑戦心、歴史の重みを感じられる一冊であり、静かに心を揺さぶられる作品でした。

  • 点の記:三角点の設置記録を記した資料。劔岳は一般登山ルートとしては最難関として知られる岩稜険しい山であり、測量官、柴崎芳太郎によるこの山への初登頂、三角点設置の記録が描かれている。基本は史実に則した内容だが、ドキュメンタリーに留まらない苦難や緊迫感が伝わってきた。これを読むのと読まないのでは剱岳を登る際の解像度が遥かに違ってくるだろう。

  • 立山の山小屋にて読了。
    その後劔に登り、感慨深いものがあった。

  • 測量方法、山の名前がなかなか頭に入ってこず読了するのに時間がかかったけど、ようやく読み終わりました。劔岳をどう踏破するかという面白さもあるけど、測量するまでの過程を知ることができて、過去の人々の努力によって自分が今地図を見ながら登山することができてるんだなと実感でき良かった。映画も見てみようと思う。

  • 明治40年に剱岳に有史以来の初登頂を達成した柴崎隊の記録.柴崎隊,といっても登山隊ではない.参謀本部直属の測量部が,三角点設置のために登頂するのである.日本における登山はまだ黎明期で,山岳会がようやく数年前に結成されたばかりであった.測量のためなので,登山は手段でしかなく,測量機器を背負って登るのである.しかも山岳会に先を越されては軍隊の沽券に関わる.柴崎氏自身は文官であるが,軍の体面にも振り回されながら,前代未聞の難題を成し遂げた,その記録である.

  • 山岳小説の白眉といわれる本書をついに手を取りました。柴崎芳太郎らの測量班により明治40年7月に登頂に成功した剣岳と立山連峰周辺の測量記録に基づく小説であり、山の厳しさと地図の奥深さに一層の興味を抱かせてくれる一冊でした。

    明治時代には測量の基本であった三角測量についての知識(選点・造標作業)やその過酷さを理解することができました。常に危険と隣り合わせで山の中で天幕を張って数週間過ごさないといけないのは、想像を絶します。

    さらに物語を楽しむためには剣岳周辺の詳細な地図や何より実際に上ってみることが一番だと感じました。

  • 日本の歴史

  • 山を歩く時当たり前のように手にする山地図。登頂記念にタッチする三角点。これらがここにあることのありがたみを噛みしめました。

  • 数日前に読んだ井上靖の氷壁と比べると、とても淡々としている。氷壁の解説を読んで、恋愛小説と紹介されているのをみて…恋愛小説ぅ?と思ったものだけど、比べてみれば確かに氷壁は恋愛小説だと思う。一方で劒岳点の記では、人間関係に対してはシンプルだった。妻に関して一点の曇りもなく愛情を注いでいるところが心地よい。基地では嫁のことを思い出すことも多いけれど、いざ登山がはじまると心の中の葉津よにしばしの別れを告げるところなどはとても潔い。
    社会的葛藤もちろんあって、競争相手だと思っていた山岳会が唯一純粋に柴崎の功績を称える手紙をよこしたところなどは涙が出た。
    山の描写はいちいち素晴らしく、劒の不思議な魅力に惹かれっぱなしになった。かつて見た別山からガスの合間に一瞬だけ姿を表した剱岳が記憶の中から蘇った。
    文中ではないけど、巻末の山行記のみどりのモルゲンロートという表現も心に残った。
    それにしても私のやってる夏山登山なんてまじでお遊びなんだなぁと思い知らされる。劒岳を通して測量の努力と苦心、地元山村の素朴さと頑固さ、はるか昔の信仰登山まで想いを馳せることができて、日本の登山文化に対してちょっとだけ理解が深まったと感じる。これから山に行くにあたってさらに山を楽しめると思う。

  •  明治の時代地図を作るために剣岳登頂を命ぜられた男たちのお話。地図を作るための三角点作成のためにこれほど苦労しないといけないとは・・・

     雪の山にわらじで分け入って、しかも1,2ヶ月も山にこもってテント生活して。こんなすさむ生活をするにもかかわらず、その男たちが本当にいい男ばかり!!柴崎芳太郎さんはきちんと周りの人を思いやる人。官僚や役人があんなにへりくだれるものなのか・・・私も役人だけど、柴崎さんの器の広さは本当に尊敬するしかない・・・私は、あんな風に人に頭が下げられるだろうか。
     人夫頭の長次郎さんは、自分よりもまず人に忠義を尽くす人。なんていい男なんだろう。

     「そうだよ。弾丸こそ跳んでこないが測量官の仕事は戦争よりもつらい」生田信さんの言葉が印象的。何気ない仕事一つ一つが重なり合って、大業をなしているんだなあ。

     ラストが官僚的な日本を表していて、より印象に残った。もっと、ものごとは多面的な視点から見なければならないと思ったし、そして何より、山に登らなきゃなあ、と思った作品でした。

  • 09/01/12読了 久し振りに時間をかけて。仕事への誇りを忘れずに。

全188件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

新田 次郎(にった・じろう):1912-80年。長野県上諏訪生まれ。旧制諏訪中学校、無線電信講習所(現在の電気通信大学)を卒業後、1932年、中央気象台(現気象庁)に入庁。1935年、電機学校卒業。富士山気象レーダー(1965年運用開始)の建設責任者を務めたことで知られる。1956年『強力伝』で、第34回直木賞受賞。1974年、『武田信玄』ならびに一連の山岳小説に対して吉川英治文学賞受賞。

「2024年 『火の島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

新田次郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×