新装版 劒岳 ―点の記 (文春文庫)

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  • 文藝春秋
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レビュー : 137
  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167112349

感想・レビュー・書評

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  • 今では剣沢からの南稜ルートでアプローチは楽になっているが、それでも前剣、やっと剣とピークを乗り越えて、剣岳山頂に至る真夏の道は厳しかった記憶が残る。頂上から北は日本海側に開け、眼下には急峻な尾根が連なる。 映画が放映された後新田次郎の原作を読んで、初期の登攀ルート開拓の困難さを思い知るにいたった。

  • 山を歩く時当たり前のように手にする山地図。登頂記念にタッチする三角点。これらがここにあることのありがたみを噛みしめました。

  • 数日前に読んだ井上靖の氷壁と比べると、とても淡々としている。氷壁の解説を読んで、恋愛小説と紹介されているのをみて…恋愛小説ぅ?と思ったものだけど、比べてみれば確かに氷壁は恋愛小説だと思う。一方で劒岳点の記では、人間関係に対してはシンプルだった。妻に関して一点の曇りもなく愛情を注いでいるところが心地よい。基地では嫁のことを思い出すことも多いけれど、いざ登山がはじまると心の中の葉津よにしばしの別れを告げるところなどはとても潔い。
    社会的葛藤もちろんあって、競争相手だと思っていた山岳会が唯一純粋に柴崎の功績を称える手紙をよこしたところなどは涙が出た。
    山の描写はいちいち素晴らしく、劒の不思議な魅力に惹かれっぱなしになった。かつて見た別山からガスの合間に一瞬だけ姿を表した剱岳が記憶の中から蘇った。
    文中ではないけど、巻末の山行記のみどりのモルゲンロートという表現も心に残った。
    それにしても私のやってる夏山登山なんてまじでお遊びなんだなぁと思い知らされる。劒岳を通して測量の努力と苦心、地元山村の素朴さと頑固さ、はるか昔の信仰登山まで想いを馳せることができて、日本の登山文化に対してちょっとだけ理解が深まったと感じる。これから山に行くにあたってさらに山を楽しめると思う。

  •  明治の時代地図を作るために剣岳登頂を命ぜられた男たちのお話。地図を作るための三角点作成のためにこれほど苦労しないといけないとは・・・

     雪の山にわらじで分け入って、しかも1,2ヶ月も山にこもってテント生活して。こんなすさむ生活をするにもかかわらず、その男たちが本当にいい男ばかり!!柴崎芳太郎さんはきちんと周りの人を思いやる人。官僚や役人があんなにへりくだれるものなのか・・・私も役人だけど、柴崎さんの器の広さは本当に尊敬するしかない・・・私は、あんな風に人に頭が下げられるだろうか。
     人夫頭の長次郎さんは、自分よりもまず人に忠義を尽くす人。なんていい男なんだろう。

     「そうだよ。弾丸こそ跳んでこないが測量官の仕事は戦争よりもつらい」生田信さんの言葉が印象的。何気ない仕事一つ一つが重なり合って、大業をなしているんだなあ。

     ラストが官僚的な日本を表していて、より印象に残った。もっと、ものごとは多面的な視点から見なければならないと思ったし、そして何より、山に登らなきゃなあ、と思った作品でした。

  • 点の記とは、山の頂によく設置されている「三角点」の設定記録のこと。1888年以降の点の記が国土地理院に保管されているそうですが、「点」を追い求めて道なき道を開いた測量官たちの、まさに命懸けの仕事の証なんです。

    「地図に載っているのに今は廃道になっている」からって軽々に文句を言ったらバチが当たりますね(^^;)。
    (もっとも、今の2万5千図の登山道などは航空写真を参考に描かれているようですが)

    ところでこの小説は、明治40年、柴崎芳太郎という測量官(実在)が、険峻であり、また宗教上の理由で登ってはならないとされていた劔岳に苦難の末に登頂を果たし(この時、山頂で遠く奈良時代のものと思われる錫杖と剣が発見され、「初登」ではないことがわかった)、立山一帯の地図作製に目途をつけた物語です。

    さて登頂は果たしたものの、三等三角点設置のための資材を担ぎ上げることができず、四等三角点を設置するにとどまりました。ところが四等…は、「点の記」としては残らないのです。そこで新田氏が勇躍登場し、かれの功績を現代によみがえらせた、というわけなんですね。

    やはり、綿密なファクトの積み重ねによる物語の密度と迫力は魅力的です。最後まで一気に読みました。

  • 主人公の柴崎芳太郎と同じ世代の自分。彼の仕事に取り組む姿勢には考えさせられるものがあった。

  • 興味深い。時代を感じさせる。山小説が嫌いな人には向かないかもしれない。

  • 三等三角点埋設とともに剣岳初登頂の至上命令を受けた柴崎芳太郎の物語。剣岳初登頂だけに争点を置かず、山岳会との競争、県庁や軍幹部との確執、立山信仰といった土着文化など、複合的な要素を交えることで本作を重厚な物語に仕上げている。主人公を測量官という特殊な職業にすることで、所々「測量」という観点で描写され、ほかの山岳小説とは一線を画す作品となっている。仕事に誇りを持ち寡黙に職務を果たし部下を労る姿は勇ましい。

    著者あとがきにあたる登山記「越中劔岳を見詰めながら」も著者の着想の一端に触れながら物語当時の剣岳が偲ばれ興味深いものであった。

  • 本より先に、2009/7/15 映画を見てきました。

    こちらを見てね ⇒ URLは http://sea.ap.teacup.com/pasobo/720.html 『Myあれこれブログ:映画:劔岳 点の記を見る』 :  2009/7/16

  • 実話に基く小説なので、重みがあった。
    測量の事はわかるが、山登りをしないので地名に苦労した。

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著者プロフィール

新田 次郎(にった じろう)
1912年6月6日 - 1980年2月15日
長野県諏訪郡上諏訪町(現:諏訪市)生まれの日本の小説家、気象学者。本名は藤原 寛人(ふじわら ひろと)。電機学校(現:東京電機大学)卒業。次男に研究者・作家の藤原正彦。
終戦後で生活が困窮しているところ、作家である妻の兩角(もろすみ)ていの刊行した『流れる星は生きている』がベストセラーになったことから作家を志し、執筆活動を兼業する。
1956年『強力伝』で第34回直木三十五賞受賞。1966年に専業作家。1974年に吉川英治文学賞、1979年に紫綬褒章。
気象職員としても富士山気象レーダー建設という大きな業績で名を残しており、退職時には気象庁から繰り返し強い慰留を受けた逸話が残る。

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