新装版 富士山頂 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167112417

作品紹介・あらすじ

新田次郎 生誕一〇〇年 記念刊行富士頂上に気象レーダーを設置せよ! 国家プロジェクトにのぞむ気象庁職員の苦闘を、新田自身の体験を元に描き出した傑作長篇

感想・レビュー・書評

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  • 富士山ブームに乗って読了。山頂での激しい気象の表現は職人技。臨場感にあふれ情景が目に浮かびます。これを安易に映画にするのは難しいだろうと思います。やっぱり小説で読むべき一冊です。

  • 夏になれば新田次郎でしょうか。山岳小説の雄。私の大学の大先輩。
    六本木ミッドタウンの近くに大きなポスターが出ていました。というのもミッドタウンの富士フィルムスクエアで新田次郎の愛した山々という写真展をやっているのです。7月18日までなので見に行かないと...
    本書を手に取った理由の最大のものは今年の夏は富士登山を計画しているというもの。本書を読んでなんらかの参考にならないかと。
    わかった事は大自然の脅威。そしてレーダー観測所を設置した方々の想像を絶する努力。そしてやり遂げるまでの強い信念。
    富士登山はご来迎目当てなのですが、観測所もこの目に焼き付けたいです。
    しかし昭和42年にも官僚達のセクショナリズムはとんでもないなぁ。今も変わらないんでしょうけど。

  • 富士山頂における台風観測用のレーダー建築に、気象官として携わった作者の自伝小説。

    富士山頂での困難な工事に立ち向かうという冒険の描写はありつつ、大蔵省との折衝(予算説明)や「幽霊」(有形無形の圧力)の跋扈などが強調され、山の小説というよりは官僚小説といった趣であった。

  • 気象衛星の登場で今では使われなくなった富士山気象観測レーダー建設の物語。
    業者の選定や現場とのやりとりなどが作者の体験を基にしてるだけに実話に限りなく近いと思う。
    淡々と展開する場面もあるけどかなりの葛藤があったろうなと容易に想像できるのはやはり簡単な仕事じゃないと思うからか。

  • 富士山の気象レーダー設置プロジェクトにおける小説。でかい仕事を成し遂げようと思えば、ひとりではできない。というか自分ひとりでできることなんて、たかがしれている。組織の中で組織を動かす勘所が散りばめられている。覚悟、人の和、何を捨てるか…。

  • 史実に基づいた話。葛木測器課長の姿は気象庁の役人と作家の二足の草鞋を履いた著者がモデルになっている。
    ここぞというところで意思を曲げず、押し通す。
    この人がいなければ、こんなに短時間で、
    富士山レーダーは実現しなかっただろう。

    ヘリでレーザードームを山頂に運ぶ山場や、
    台風に宿舎が飛ばされたり、責任者が噴火口に
    落ちてずぶぬれになりながらも、運用にこぎつけた。
    伊勢湾台風で膨大な被害をだしてから5年ほど。
    気象衛星ひまわりが運用されるまで、この日本を
    守り続けていた本当にすごい大事業に、
    ロマンや、男たちの心意気や誇りなどを感じる。
    まさに、プロジェクトXの初回にふさわしい内容。

    しかし、富士山山頂ということ以上に困難なのが、
    国の組織と役人たちの勢力争いに、許可庁の横暴、
    マスコミや企業の圧力。
    はっきりしない正体の幽霊の出現に、さすがの葛木も上司の村岡観測部長のことを考えると妥協せざるをえなかったが、相手方の自滅により助かった。実際に似たようなことがいくらでもあるのかもしれない。
    それにしても、いろんな人と渡り合い、押し切るところは押し切り、引くところではいくらでも頭をさげ、富士山頂での頭痛を乗り越える体力もあり、文才もある、周りの人にはさぞ煙たかろうが、著者はすごい人に違いない。誇張もあるかもしれないと思ったが、別の人の手記にも同じエピソードが出ているので、現実に近いところもたくさんあるのではないだろうか。

  • 『八甲田山』などの山岳小説で知られる新田次郎の作品。富士山レーダーの入札から稼働の物語。山岳小説でありながら、入札における企業間の駆け引きなど、産業小説としての一面も持ち、読み応えがある。
    リアリティがあり迫真の物語だなぁと感じたが、本書の背景などを調べてみると、事実を題材にしていた。しかも、著者である新田次郎はこの富士山レーダー事業の気象庁側の担当課長であり中心人物の一人。この仕事には、思い入れがひとしおだったのだろう。良書。

  • 名作と言われているので、一度は読んでおこうということで読了。
    さすが、プロジェクトX第1話のテーマになった富士山レーダー建設の話。それを気象庁の測器課長というまさに中心的な役割で推進したのが当時小説家との二足のわらじを履いていた新田次郎本人。そりゃあ小説にもするわな。

    富士山頂はときに風速60mを超える風が吹く過酷な環境。工事は雪の消える夏場に限られ、その中でもヘリが飛ばせるような良好な天候の日はもっと限られる。しかし2年で事業を完遂させねばならない。(まぁ、予算上2年でやるって言っちゃったからという風にも見えましたが。。)
    そこで手を挙げてくるメーカー3社+α。業者選定からしっかり書く辺りが誠実と言うべきなのか、とは言え様々な人の思惑が交錯する姿が描かれ、建設開始・完成までの軌跡が描かれていきます。

    個人的には、面白いのですが少し淡々としすぎているような感もありました。記録なのか小説なのかで言うと前者寄りのような気がしていて、もちろん富士山という歴史に残る仕事だという憧れはそれだけで燃える要素ではあるのですが、それを更にドラマチックにする見せ方は(敢えて?)しなかったように感じました。
    どちらかと言うと役所の中の縄張り争いやしきたりのバカらしさがありのままに、せっかくの富士山レーダーを邪魔するありのまま厄介なものとして描かれていて、意趣返し的な側面があるのでしょうか。。
    著者自身、と言うか主人公葛木は役所の中でも一貫して自分の考えを主張する「うるさ型」という役回りで、作家もやっているから…なんて言われつつも強力に仕事を進めていきます。文句なしにカッコいいのですが、自分でそれを描くことの難しさ!だからこそ淡々としているのでしょうか。

    自然描写が圧巻だったので、今度は山岳モノでも読んでみようかな。

  • 「要するに二億四千万で、富士山レーダーに関する一切合財の仕事をすればいいのだ」(P.57)

  • 『官僚たちの夏』のレーダー版(気象庁版?)といった一冊。
    しかし、『官僚たちの夏』が法改正・人事・予算一辺倒であるのに対し、むしろ現場での苦闘が描かれているのが良い。
    予算折衝のくだりは(冒頭でこそあれ)冒頭の高々10ページにとどまっていて、その後の実現のための各種調整に重きが置かれていることが象徴的。

    「これこそ人生を賭してなすべき一大事」との気概を抱いて、関係各社が奮闘する様子が描かれる。
    気象庁職員にあっても、その覚悟を基に、本件事業にあっては多少泥臭く動いている。
    また設置業者に対しても「銘板に名を遺す」と鼓舞して、「皆で取り組むのだ」という意思を示し団結している。
    こんな仕事、出会えたら、良いなぁ。

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著者プロフィール

新田 次郎(にった じろう)
1912年6月6日 - 1980年2月15日
長野県諏訪郡上諏訪町(現:諏訪市)生まれの日本の小説家、気象学者。本名は藤原 寛人(ふじわら ひろと)。電機学校(現:東京電機大学)卒業。次男に研究者・作家の藤原正彦。
終戦後で生活が困窮しているところ、作家である妻の兩角(もろすみ)ていの刊行した『流れる星は生きている』がベストセラーになったことから作家を志し、執筆活動を兼業する。
1956年『強力伝』で第34回直木三十五賞受賞。1966年に専業作家。1974年に吉川英治文学賞、1979年に紫綬褒章。
気象職員としても富士山気象レーダー建設という大きな業績で名を残しており、退職時には気象庁から繰り返し強い慰留を受けた逸話が残る。

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