ずばり東京 (文春文庫 か 1-6)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167127060

感想・レビュー・書評

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  • 1964年、東京オリンピック間近の社会状況を、さまざまな市井の人に会いながら描き出したルポルタージュ。まだベトナム戦争に行く前の時期の作品だが、饒舌な開高節は鋭く東京の様子を伝える。

    それにしても、再度の東京東京オリンピックを迎える2020年の今にしても、当時と何も変わっていないというのは、いったいどういうことなのだろうか。


    「いまの子供は保育園だ、幼稚園だ、学習塾だ、ソロバン塾だと学校の外でも追い立てられていて、とても紙芝居など見ている時間がないのである。」

    「聞くところによると、工業倶楽部は財界の"奥の院"で、資本主義の"最後の牙城"なのだそうだ。倶楽部員の名簿をもらって見るといずれも高名な名が目白押しにならんでいる。(中略)どういう仕掛けになっているのかこの人びとはなにをしてもぜったい悪口を書かれるということはない。」

    「"近代化"とは、利口で、正確で、ゆとりがないということらしい。寛容とか、即興とか、想像力などというものは追放されるらしい。」

    「わが国では甲羅が一メートルもある海ガメが沼津海岸にあがったことや、通産省の木っ端役人が2万5千エンの汚職をしたということは徹底的に自由に報道されるが、政府首脳たちの派閥争いのために二十億、三十億の金が贈与税の対象になることもなくスイスイスイとうごくという実態については、なにひとつとして報道されないのである。」

  • 今から37年前の東京。そう、東京オリンピック前夜を開高健の何でも有りのルポタージュ。何かの紹介でこの本を知り、前回の東京オリンピックの空気を読むべく読み始めましたが、まあ、戦後感たっぷりの貧しさと、ちょっと前の中国感たっぷりの発展具合に、歴史は繰り返されるのは当たり前感を改めて悟り、戦後を引きずっている当時の貧富の差がハンパネー事にどんだけ今の時代がマシなんだよと、昔は良かったとほざく老人達ちょっとカモンってな感じで、それなりに読ませて頂きました^^
    もちろん開高健の文体による事が大きいとは思うのですが、当時の猥雑な空気もしっかり読み取れて、当時とすればかなり無茶苦茶なノリで面白かったんだろうとは想像に難くはありませんでしたが、やっぱり時代が古すぎて私にとってはいまいちこれと言った感動もなく☆2個で許してください。東京オリンピック万歳!

  • 古本で購入。

    東京オリンピック前後、1960年代前半の東京を取材したルポルタージュ。
    戦後を引きずりながらも現代の東京へ確かに繋がる、「眼もなく足もなく日々生成をくりかえすアメーバの街」が活写され、当時の東京の雰囲気「におい」のようなものすら表現される。

    各項文体の異なる文章で構成され、それぞれがユーモアと毒と皮肉と好奇心に彩られている。
    個人的に共感を覚えたりおもしろく感じたりしたのは、「“戦後”がよどむ上野駅」「上野動物園の悲しみ」「古書商・頑冥堂主人」。

  • 2006/8/27購入
    2009/3/5購入

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著者プロフィール

開高 健(かいこう・たけし):1930年大阪に生まれる。大阪市立大を卒業後、洋酒会社宣伝部で時代の動向を的確にとらえた数々のコピーをつくる。かたわら創作を始め、「パニック」で注目を浴び、「裸の王様」で芥川賞受賞。ほかに「日本三文オペラ」「ロビンソンの末裔」など。ベトナムの戦場や、中国、東欧を精力的にルポ、行動する作家として知られた。1989年逝去。

「2024年 『新しい天体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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