珠玉 (文春文庫 か 1-11)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167127114

作品紹介・あらすじ

アクアマリン-掌のなかにきらめく、記憶の海の色。ガーネット-流された血と流されなかった血の物語。ムーン・ストーン-男のいのちの1滴のしたたり。3つの宝石に托して語られる3つの物語。これは、時代を駆けぬけて逝った小説家が、死の直前に書き遺した限りなく澄明な白鳥の歌である。

感想・レビュー・書評

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  • 人生の鮮やかな記憶を宝石に擬えた3篇からなる、開高氏の遺作。
    本当に日本語が巧く重い。性(色)・食・美への気迫ある表現に息を呑む。
    大き目の活字と200p弱というボリュームに反し、内容は濃厚。作家が、こういった作品でキャリアの最後を締めれるのは幸せな事なのではと余計な事を考えた。

  • 原稿用紙と対峙してこんな文章を練り上げるのはすごい。いちいち感心して読んでしまう。食や官能の場面も好きだが、開高さんは“甘睡”という語をよく使われていて、その表現が好きだ。あと光彩の機微を丹念に描写しているのもいい。

  • アクアマリン、ガーネット、ムーン・ストーン。時に人をなぐさめ、時に走馬灯のように記憶の奔流を呼び起こし、時に変容のひとときを垣間見せそうで垣間見せぬ。海で行方不明になった息子を探して船医になり世界をめぐった先生、あなたのような作家が持っていたほうがいいからと託してくれた中華料理店店主。そして大量に仕入れたからといって安価に売ってくれた鉱石店主。さまざまな物語を聴き、引き寄せて。◆道道無常道という言葉ね。これはもと老子の言葉ですよ。(略)この世に絶対不変の道、絶対不変の真理などというものはないのだ、というね。しかし、まあ、毎日、ささやかな別天地というものはある、と。だから天天小有天というわけです。p.52◆そして本筋でもなく、作者が使った意味とはきっとずれるけれども、「文献のための文献の、そのまた文献を読みあさり、そしてそういうことがやめられないのである。」(p.144)という一節が深く刺さる。

  • 司馬遼太郎「十六の話」より
    *老医師、中華料理店主、阿佐緒は 全て 空の転じたもの
    *開高健は 「珠玉」によって みずからの生を送り、みずからの葬儀をしつらえ、みずから声明梵唄をとなえた

    開高健 「 珠玉 」3つの短編小説。最後の「一滴の光」だけだと変態小説だが、司馬遼太郎の書評を 参考に 3編連作の遺作として読むと、著者の死を迎えた空の境地が見えてくる

    珠玉=宝石=尊いもの。3編とも尊いものとは何かを問うている。「掌のなかの海」では 息子の記憶。「玩物喪志」では 作家としての志。「一滴の光」では 慈悲の世界

  • 読んで損なし。

  • タイトルの「珠玉」の文字通りの宝石を核として、開高健らしく酒にまつわる話を3つ。

    内容は「ザ・文学」とでもいうような、改行のほとんどないカチカチの硬派で、しかも石にまつわる幻想風景のような話が挟み込まれるので、まあ読みにくい。

    途中は開高健らしい、中国の故事やいろんな昔話、物に関する蘊蓄がたくさん詰まっており楽しめるのだが、他の作品に比べると、それらが読み手に襲い掛かってくるような、そういう勢いは少ない。

    最後はエロ絡みにまとまるも、いつものウィットや皮肉というものも感じられず、ただただ真面目で重い印象であった。

    初めての開高健なら、他の作品が良いでしょう。

    子供向けではないが、エロ描写まで我慢して読み進めることのできる子供はほとんどいないだろう。

  • 「開高健最後の文学作品」というタグがあるらしいんですが、まあ、それはおいておいて。

     3つの石をモチーフに記憶や現在が描かれる”石小説”、もしくは作家本人の回顧、老境小説と呼んでもいいでしょう。
     光の当たりかたによって表情を変える石の煌きのように、人の人生も光の当て方でいろいろに映しだされる、記憶が引っぱり出される、もしくは今現在の輝きをふと感じる。

    「文學」というものは具体的に存在しなくてね、「文學する」「文學している」という状況があるのだ、というのはあたしの師匠の受け売りなんですが、人生の間に間に「文學する」瞬間がある。その瞬間瞬間を石の煌きにリンクさせた、というのが本作の、文学作品としての値打ちではないでしょーか。

     老境小説だなーって思って読んでいると最終話でいきなりふんだんなエロ展開が待っているので、期待していいぞ!

  • 掌のなかの海、老医者の高田先生は息子を海で亡くし、船医となり世界の港を探し廻るが、アクアマラリンという宝石を握りしめて、寂しがり屋と話す。第二は中華料理の主人から預かったガーネットと老子の話、第三はムーンストーンと彼女の話、探していたものは、女出会った最後に解る。一挙に読めた物を巡る人の話、本屋で探す本、題字を見るだけで、本が判る‼︎安岡先生も同じような話を書いていた。

  • 開高健の遺作、1990年に初めて読みました、この人のノンフィクションに凄く影響を受けました、
    正直 物語には 当時19歳位ですがあまり好きでは無かったのですが… なんか 知性とボキャブラリーに酔わされて(^ .^)y-~~~ 高級クラブの勘違いしたネエチャンみてーな文章が鼻について(^-^; さて43歳になって読み返すと( ̄□ ̄;)!! 凄いもんです 紡がれて 磨り潰されて 寝かされた文章が胸をうちます! 「本当に毎日楽しかったら芝居なんかしない」 と 言った役者さんがいましたが、この人は心に灯った小さい炎を消さないように 体を折り曲げながら 言葉を紡いで死んでいったのだと感じました。
    食を語り 酒を語り 戦争を語り 女を語り 釣りを語り… 最後の物語のelementは宝石でした…
    アクアマリン ガーネット ムーンストーン
    海の色と 血の色と 月明かりの色 静謐と言う言葉がぴったり当てはまる話です(^ .^)y-~~~

  • 石が買いたくなった。
    読んだあと、何か温かいものがとどまりつづける。
    すこしだけ開高健の人生を見ることができた気がする。

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著者プロフィール

1930年大阪市生まれ。大阪市立大卒。58年に「裸の王様」で芥川賞受賞。60年代からしばしばヴェトナムの戦地に赴く。「輝ける闇」「夏の闇」など発表。78年「玉、砕ける」で川端康成賞受賞など、受賞多数。

「2022年 『魚心あれば 釣りエッセイ傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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