わが人生の時の人々 (文春文庫 い 24-8)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167128098

感想・レビュー・書評

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  • 小難しい小説なんかより、よほど石原慎太郎という作家の魅力を伝える一冊ではないだろうか。特にスポーツ選手に関する肉体の考察が秀逸。昭和の作家の交遊録。

    石原慎太郎という作家、弟裕次郎も合わせ伝説的なデビュー。一瞬にして時の人となる。今では死語だろう文壇、文士との交流を始め、スポーツ選手、政治家などとの交流の記録。50年ほど過ぎてからの回想であり本書の登場人物の多くは故人。だからこそそれぞれの人生を俯瞰的に洞察したところが魅力であろう。

    特に三島由紀夫に関する考察は決して褒めたり神格化するより、時に悲喜劇的にエピソードを振り返り独特。

    スポーツ選手については氏の十八番だろう。植村直己だったり金田正一だったり、達人だけが肉体を克服し見た世界の描写が素晴らしい。

    氏の作品はいくつか読んだことがあるが、どれも正直難しい。それに比べて本書の視点、洞察力を見ると不世出の作家の一人であることが良く分かる。

    過ぎ去りし時代を回想する、人生の深み、出会いの大切さを感ずる一冊でした。

  • ボクが彼らの文章が好きだから勝手に思うことなのだが。太宰の世界と三島の世界と石原の世界はいつもどこかで繋がっていていつもどこかで消しあおうとしているところが実に面白い。別に嫌っているわけではなく互いに互いを気にして嫉妬している部分のことである。太宰の世界の持っている主題など毎朝冷水摩擦していれはどこかに飛んでいってしまう。と痛烈な言葉を吐いた三島をどこかでこいつ無理しているな。と感じていた石原は三島によって「太陽の季節」の主題を後になって気づかされていた。太宰を気にかけていた三島は自分の中にある太宰的世界を美に置き換えただけだと石原が交戦してもおかしくはない。漱石がはるばる天から降りてきておのおのなだめすかせるとそれぞれの熱がふうっとさがっていくような気がするのだけれど。。とそこまで想像できるところが3人の魅力というところに尽きる。とか。

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著者プロフィール

1932年神戸市生まれ。一橋大学卒業。55年、大学在学中に執筆した「太陽の季節」により第1回文學界新人賞を受賞しデビュー。翌年同作で芥川賞受賞。『亀裂』『完全な遊戯』『死の博物誌』『青春とはなんだ』『刃鋼』『日本零年』『化石の森』『光より速きわれら』『生還』『わが人生の時の時』『弟』『天才』『火の島』『私の海の地図』『凶獣』など著書多数。作家活動の一方、68年に参議院議員に当選し政界へ。後に衆議院に移り環境庁長官、運輸大臣などを歴任。95年に議員辞職し、99年から2012年まで東京都知事在任。14年に政界引退。15年、旭日大綬章受章。2022年逝去。

「2022年 『湘南夫人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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