新装版 青い壺 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 360
レビュー : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167137106

作品紹介・あらすじ

無名の陶芸家が生み出した美しい青磁の壷。売られ盗まれ、十余年後に作者と再会するまでに壷が映し出した数々の人生。定年退職後の虚無を味わう夫婦、戦前の上流社会を懐かしむ老婆、四十五年ぶりにスペインに帰郷する修道女、観察眼に自信を持つ美術評論家。人間の有為転変を鮮やかに描いた有吉文学の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 陶芸i家の省造が焼き上げた奇跡的に美しい青い壺。
    デパートで売りに出されてから様々な人の手を渡り、そして再び省造と巡り合うまでの間、
    青い壺が出会った人々の、人生の一端。

    青い壺は脇役で、主役はその青い壺の持ち主の人たち。
    ほんの一端を垣間見るだけなのに、あるなぁとかわかるなぁとかいるなぁとか思う。
    久しぶりに有吉佐和子さんの本を読んだけれど、やっぱりこの人はすごいなぁと思った。
    30年以上も前に書かれた本で、時代背景も違うのに、今読んでも色あせない。
    女性が社会進出して、色々便利なものが増えて、インターネットでコミュニケーションとるようになって…
    でも人間って同じようなこと考えて、同じような年の重ね方をして、似たようなこと
    繰り返してきているということなんだろう(笑)

    どの話も面白かったけれど、
    食べる物のなかった戦争直後の思い出を語るお姑さんの話や、
    50年ぶりに女学校時代の旧友たちと旅行するおばあちゃんの話なんかは、
    特によく印象に残っている。
    また有吉さんのほかの作品も読みたくなってきた。

  • ある一人の陶芸家が生み出した美しい青磁の壺は、売られ、盗まれ、譲られながら人の手を渡り、果ては遠く異国の地へ運ばれる。
    青い壺が映し出したそれぞれの人の営みが今ここに。

    青い壺が誕生する瞬間の、見事なまでの美しさを目に焼き付けたところから物語ははじまり、青い壺が辿った道のりを読者は追随していくのですが、これがまたおもしろいんです。
    連作短編集といっても、ある一定の範囲で主人公が入れ替わるのと違って、青い壺が受け渡されると場面はかわり、それでいて前後の繋がりはわかり、不思議な縁に導かれてそれぞれの物語を読むのがこんなにわくわくするものだとは思いませんでした。

    そして、章ごとに綴られた物語がまた胸を打つんです。
    どの章も甲乙つけがたいんですが、特に好きだったのが、素敵なご夫妻が戦時中にとった特別なディナーの話。
    読んでいて違和感がないからつい忘れてしまいそうになるけど、この本が書かれたのも35年ちかく昔の話だから、自然と戦時中のことが身近な昔話として登場したりするんですよね。戦争を乗り越えた人たちの、芯の強さに触れて、人としての尊さとは何かを考えさせられたりもしました。

    きっと骨董品などの古くから受け継がれたモノたちもまた、こんな風にたくさんの人の手を渡って、いろんな物語を見てきたんだろうと思うと、それもまたおもしろく思えます。
    時代を越えていきいきと息づく物語は、今の時代にこそ読まれてしかるべきものなのかもしれないですね。

  • 初めて読む有吉佐和子作品。
    「紀ノ川」とか「不信のとき」とか映像化もされてる有名な作品もたくさんあるけれど、まずこの本を選んだのは、本を紹介する本で見て気になったから。

    ひとつの青磁の壺が辿る運命。
    ある陶芸家の手から生まれ、色んな人の手に渡って転々とする、13編の短編連作。
    贈り物として人から人の手に渡り、時に置き忘れられ、そして盗まれ、海外にも渡る。
    そして最後の章で驚きと小さな笑いが。

    実際昔から伝わる古美術品なんかは、こんな風にして様々な人の手に渡って今に至るのかもしれない。
    持ち主それぞれの人生と、その人の手に渡った理由もみんな違って、でもその品物はひとつも変わらないままただそこに在り続ける。
    壊れないでそこまで来た奇跡と軌跡。

    年代問わず、家庭の女を描くのがとても巧くて、生きている時代は違えど、こういう会話の感じ解る、という節があちらこちらにあった。
    母子、祖母と孫、嫁姑、など。
    持ち主として男の人も出てくるのだけど、女性の印象が強い物語だった。

    色々書いたけどシンプルにおもしろかったから、他の作品も読んでみたい。

  • この世に産み落とされ、その後数奇な運命を辿るのはなにも人間だけの専売特許ではない。「もの」だって同じこと。いや、むしろ自分の意志で移動できないぶん、「もの」の一生のほうがじつははるかにドラマティックといえるかもしれない。

    というわけで、これは一個の青磁の経管をめぐる物語である。壷が「主人公」というので、壷がいきなり自分の人生についておしゃべりを始めるのではないかと心配したが、もちろん、そういうことはない。さまざまな偶然が重なり、さまざまな「家」を転々とする青い壷。そうしてその壷は、それぞれの場所で、思いがけずそのときどきの持ち主の心(それは美しい思い出であることもあれば、ときに醜悪な虚栄心だったりもするのだが)をまるごと映し出す鏡になる。最後、一見無関係と思われるエピソードが唐突に挿入されるが、そこから一息に導き出される決意が清々しい読後感をあたえる。

    「弓香と律子は手を繋いで部屋を出た」。ごく短いセンテンスだが、50年ぶりに再会した女学校時代の旧友たちの時間を一気に巻き戻してしまうあるエピソードの後ろに置かれるとき、そこに彼女らの歳月が凝縮されて鮮やかに立ち上がる。いまの感覚からすると、それぞれの物語の描き方は往年のホームドラマのように大仰で滑稽な印象を拭えないものの、こういうハッとするような瞬間とたびたび出会えるのが、読んでいてなんとも楽しい一冊だった。

  • 骨董品に詳しくないけど、こういう
    職人さんの作り出した「いいもの」には
    それを手にする人の想いやもろもろが
    重ねられて、育まれていく感じがする。

    壺が人の手から手へ渡って行く、そのそれぞれの
    ものがたり。
    こういう話は面白い。

    好きな世界観。

  • 読み物が嫌いな人に読書の楽しみを知っていただくのに最適だと思っております

  • ​老境に差し掛からんとした陶芸家がふとした偶然で青磁の名品を焼き上げる。その青い壺が人から人へと渡り、様々な形で紡いで行く13編の物語。一つ一つの話はどうということのない日常描写なのだが、不思議と飽きさせない。

    有吉佐和子は(友人からオススメされて)少し読んでみようと思っている作家なのだが、なかなか時間が取れずに、まだ「恍惚の人」も「複合汚染」も未読。しかし、この「青い壺」も代表作の一つとのこと。

  • -20170219

  • 壺がいろんな人の手に渡り、というオムニバス。
    ところどころ読んだ。

  • 短編の連作。会話が中心で非常に読みやすく、引き込まれる。それぞれの話にちょっと毒が含まれていておもしろい。それでいて考えさせる要素も盛り込まれていて、非常に満損感を得られる作品だった。

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著者プロフィール

有吉佐和子(ありよし さわこ)
1931年1月20日 - 1984年8月30日
和歌山県和歌山市出身の小説家、劇作家、演出家。娘は作家の有吉玉青。日本の歴史や古典芸能から現代の社会問題まで幅広いテーマを扱い、多くのベストセラー小説を発表している。
東京女子大学英文学科入学後に休学を経て、1952年同短期大学部英語学科卒業。1956年に『地唄』が文學界新人賞候補、そして芥川賞候補となり文壇デビューを果たす。1963年『香華』で第1回婦人公論(中央公論新社)読者賞、第10回小説新潮賞を受賞。1979年 『和宮様御留』で第20回毎日芸術賞を受賞。ほか、多くの受賞歴がある。
その他の代表作に、『複合汚染』、『紀ノ川』、『華岡青洲の妻』、『恍惚の人』、『出雲の阿国』、『和宮様御留』など。

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