思考のレッスン (文春文庫 ま 2-16)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167138165

作品紹介・あらすじ

思考の達人・丸谷さんが「どうすればいい考えが浮かぶか」のテクニックを伝授。「仮説は大胆不敵に」「ひいきの学者をつくれ」「ホーム・グラウンドを持て」「文章は最後のマルまで考えて書け」…。究極の読書法、文章を書く極意、アイデアを生むコツが満載。レポートや論文を書く時に必携の名講義。

感想・レビュー・書評

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  • ●考えるコツ
    ・通説・定説と違っても構わないという度胸を決めて考える
    ・本を読んだりせず、まず自分の心の中を眺める。手持ちのカードで考える。すぐに解決してくれる本なんてない。
    ・比較したり、分析したりする
    ・対話的な気持ちで考える。自分の内部に甲乙2人がいて、その両者がいろんなことを語り合う。ああでもない、こうでもないと議論して考えを深めたり、新しい発見をしたりする。
    ●書き方のコツ
    ・考える時間が短いから書く時間が長くなる
    ・書き出しに挨拶を書かない、終わりもパッと終わればいい

    ●読んだ感想
    前半は、昭和の知識人が出てきていておもしろいが、身になる部分が少なく感じる。
    最後の方の考えるコツ、書き方のコツだけ読めばいいかも。本を読む時間を減らしてでも考える時間を増やしたいなと思いました。

  • 本書にも現れているが、丸谷才一の考え方やものの見方は面白いなぁと思うときがある。こだわりがあったり、裏づけがあったり、など。本を読む限りでは、害になる事は無いと思う。普段は我々が、あまり気にしないところを指摘していると思う。ヒントもあるが、どうでもいいこともあり。
    白玉クリームあんみつ、については著者と同意見。即物的で考えなくとも分かってしまう、デジタルな名前の付け方で、色気が無いと思う。
    本を読むコツ、インデックスリーディングは出来そうに無いと考える。本の大筋を捉えることばかりで、言葉には注目していないと思う。人物表、年表については、同感。出てきたら、すぐに書き留めないと、忘れてしまい、後から誰だ?と探すのが大変。という経験は、何度もした。
    敬語が邪魔になる時、首相某のあと、変な敬語が増えたと感じる。口からすらすらと出てくる。おかしいなと感じたら、直す努力をしないと。直すためには、大変な時間と労力がかかる。
    発見したこと、丸谷と三島は同年であった。

    読書の効用
    1 情報を得られるということ
    2 本を読むことによって、考え方を学ぶことができる
    3 書き方を学ぶということ

  • 本書は、「戦略脳を鍛える(御立尚資)」のあとがきに記載されていた事でその存在を知り、読むきっかけになった。「地頭力を鍛える(細谷功)」の索引に記載されている。

    思考とは文字通り「思い考えること」。
    思考のレッスンとあるが、前半(レッスン1、2)は生い立ち、経験、読書歴、親交などからどのように著者の考え方が形成されていったのか、エピソードを交えながら語られており、後半(レッスン3、4、5、6)は「思考」するための、読書の仕方を中心に語られている。巻末解説には「思考のルールブック」とあり、「論文指導に役立つ本」との記載。

    読了後、「うーん」と複雑な思いが頭の中に浮かんだ。というのも、私のような一介のビジネスマンにとっては「別に論文を書くわけじゃないしなぁ」というのが率直な感想だったからだ。

    アカデミックな分野での定説に斬新な視点から新たな説を唱えてみた、だとか、サラダ記念日が新古今と実はつながっていたんだ、ということを発見したりだとか、そのような思考ではなくむしろ、「思考のレッスン」を読むことで、明日から会社で役立つ、生きるために少しでもお給料につながるような内容を学びたい、という思いを私自身、無意識に持っていたからかもしれない。

    つまり、世に溢れては消えていく、一種の自己啓発本と同じような期待を、浅はかにも本書に抱いていたんだと思う。

    しかし、改めて本書を読むと、「思考」する営みが、小手先のテクニックではなく、どのように育ち、だれと対話し、何をどう読み、それを通して蓄えられた自分の中の資産を使い、言わば自分という人間全体を使って生み出されるものである以上、自分の中にあるすべてのことをどう活用し、表現していくのかが「思考のレッスン」で著者が言いたかったことなのではないか、と思い直す。

    考えるためには本を読み、また考え、ホームグランドを作り、比較分析してさらに読み、どう表現するかを考え…の繰り返しで、一見無関係と思われる話題、横道にそれたような話も「思考」を深めるための大切な資産。

    対話形式で「僕はこうして『思考』してきたよ」と語りかけてくれるような気がする。

    ビジネスマンが読むにあたっては、論文を書く・書かないという視点ではなく、論文という「知の結晶」の指導に役立つといわれるほどの質の高い普遍的な内容であり、だからこそ、2002年の第一版から約20年たち、その間、思考に関するビジネス本にも引用されてきている、という視点で読んだ方がいいと思う。

    ****
    ・考えるためには本を読め
    ・本を読むことには3つの効用がある
    ・どう本を選ぶか
    ・深く本を読むために
    ・頭にある今までの資産を使ってじっと考える
    ・そして、また本を読む
    ・考えるにあたっては別の物と比較して分析するのがコツ
    ・考えたこと=思考は文章の形で規定されるので文章は重要な問題
    ・文章力がないと精密さを欠く
    ・文章力と思考力はペア

  • 自分の読書量が足りな過ぎて恥ずかしくなるんだけど、何よりも恥ずかしくなったのは暇なときに本読むなってところかな。
    予定が流れた土曜の昼下りに読んでました。。。

    対話形式で書かれているが、最後に文章は対話形式で書けって書いてあるのが痛快です。

    自分のホームグラウンドは何だろうか。

  • 始めは 同業者批判本に見えましたが、徐々に 目からウロコが 落ちまくります。本の読み方、考え方のコツ満載の本。私の読みたい本が 一気に増えました


    文筆業者は まず 第一に 新しいことを言う責任がある

    日本文学論について
    日本の小説は なぜ こんなに景気が悪いことばかり扱うのか、という著者の疑問から始まる。自分のために書くのが純文学、他人のために書くのが大衆文学に対して、自分と他人を分けてしまったのが、日本文学の不幸。自分と他者のために書くのが 文学のあり方なのに

    読書について
    読書の効用は 情報、考え方を得られ、書き方を学べる。本は 忙しい時に読むべき、暇な時は ものを考える

  • 早くも丸谷氏の一周忌であります。それを期に、このたび文藝春秋より『丸谷才一全集』全12巻の刊行が開始されるさうです。
    寡作作家とはいへ、12巻は少ないなあと思つたら、小説は全作収録するさうだが、評論のたぐひは主要作品のみらしい。すると軽めのエッセイ類は仲間はずれでせうか。
    第一回配本は小説『女ざかり』ださうです。欲しいなあ。独身時代なら間違ひなく購買を決意したでせうが、作品のほとんどを所持してゐるので、逡巡するところであります。

    それはともかく『思考のレッスン』について。
    インタヴュー形式で、丸谷流の思考術が明らかにされる愉快な一冊であります。「レッスン」は全部で6講。

    レッスン1は「思考の型の形成史」。少年時代の丸谷氏が不思議に思つたことの一つに、日本の小説はなぜ不景気なことばかり扱ふのかといふのがあります。小説の神様・志賀直哉を有り難がらず「ゲンナリしてしまうんだなあ」。すでに大勢に迎合しない姿勢を見せてゐますね。

    レッスン2「私の考え方を励ましてくれた三人」。この三人とは、中村真一郎・バフチン・山崎正和の面々ださうです。加へて、つきあひの深かつた吉田健一氏から得たことなども語つてゐます。

    レッスン3「思考の準備」。考へるためには、まづ本を読め。思考の準備として読書の効用を説くのであります。しかし面白いと思はない本を無理して読むのは逆効果であると。

    レッスン4「本を読むコツ」。同じ内容の本であつても、活字の組み方や注釈の挿入位置などの相違で理解度が違ふとの指摘は凡人のわたくしでも肯くところであります。書物自体を有り難がる風潮にも抗して、丸谷氏は本を自分が駆使しやすいやうに破つたりするさうです。単なる情報源と割り切つてゐるのですね。

    レッスン5「考えるコツ」。考へる上で大切なのは、いかに良い問を自分自身で発するか、そしてそれをいかに上手に育てるかといふこと。人は疑問が湧いても、それを「なぜ?」と持続させずに、なんとなく放擲してしまひますからねえ。仮説を立てることの重要性も説きます。「定説に遠慮するな」「仮説は大胆不敵に」と。

    レッスン6「書き方のコツ」。文章を書きながら悩むのは愚の骨頂らしい。文章はまづ頭の中で完成させてから書くべしとの助言があります。耳が痛いのであります。

    とにかく、他者の思想をなぞるのではなく、自分でとことん考へる習慣が大切なのですね。まとまつた時間があると、普段読めない本を読まう、と考へがちだが、時間のあるときは読書ではなく、考へる時間に充てよ、とかの指摘も新鮮でした。

    ところで、インタヴュアーは誰なのでせうか。どこかに書いてありますかね?

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-127.html

  • 白玉クリームあんみつを夏の月と表現する奥ゆかしさは今の若い人にはもうないなと感じた。
    夏の月だなんて考え方にむしろびっくりしました。そんな言い方紛らわしい!何が入ってるかわからないじゃないか、と思ってしまう。確かにレトリック欠如してます(笑)

  • 少し期待していたものと違い、中断しました。

    本を読むことについても書かれているようです。

    BCG御立氏著「戦略「脳」を鍛える」のあとがきにも紹介されていました。
    「地頭力を鍛える 問題解決に活かす『フェルミ推定』」(細谷功)の参考文献の一つでもあるようです。

  • 会話形式で読みやすい良書。
    文学をこよなく愛しているのが伝わってくる。

    日本のレトリックの欠如を挙げる。
    「白玉クリームあんみつ」は昔なら、比喩的に「夏の月」というような名前がついたものだと。今は直接的で奥ゆかしさを失ったと。

    思考の準備としては、まずは読書をすること。
    そして、面白がって読むこと。いやいやでは意味がないし、何も残らない。
    読書の効用は
    ?情報を得られる
    ?考え方を学ぶ事ができる(思考のプロセスを追う)
    ?書き方を学ぶ事ができる
    本選びのこつは、書評を読むこと。お気に入り書評貨を探すこと。そして、書評家の書いた作品を読むこと。
    本を読むときには、文体=言葉の使い方に気をつけながら読むことが大切。筆者がなぜその言葉を使っているのか、意味は何なのかを考えながら読む。

    思考のテクニックは
    ?「比較と分析」ほかの作品と比べてみて、それから分析をすること。
    ?「仮説」を立てること。
    ?多様なものを要約、概括してそこからひとつの型を生み出すこと。

  • 当たり前だけど、忘れかけていたものを気付く事が出来た。本職は、数々の賞を受賞した著者の考え方やそれに至る年少時代の事など、対談形式によるストーリー仕立てとなっている。好みが分かれると思う。個人的には、日本語と英語の特徴に記されている所は、とても勉強になった。

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著者プロフィール

大正14年8月27日、山形県生まれ。昭和25年東京大学文学部英文学科卒。作家。日本芸術院会員。大学卒業後、昭和40年まで國學院大學に勤務。小説・評論・随筆・翻訳・対談と幅広く活躍。43年芥川賞を、47年谷崎賞を、49年谷崎賞・読売文学賞を、60年野間文芸賞を、63年川端賞を、平成3年インデペンデント外国文学賞を受賞するなど受賞多数。平成23年、文化勲章受章。著書に『笹まくら』(昭41 河出書房)『丸谷才一批評集』全6巻(平7〜8 文藝春秋)『耀く日の宮』(平15 講談社)『持ち重りする薔薇の花』(平24 新潮社)など。

「2012年 『久保田淳座談集 暁の明星 歌の流れ、歌のひろがり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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