文学全集を立ちあげる (文春文庫)

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レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167138226

感想・レビュー・書評

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  • 新しいカノン(正典)として「文学全集を立ち上げる」ために当代きっての博識碩学の批評家文学者作家のやんややんやの鼎談ですが、これはあくまで「仮想全集」目録作成の試みでありつつ、ギリシャラテンの世界の古典から大江健三郎まで古今東西の作品を紐解きながら全集所蔵作品をバッサバッサと選定する中で「これ本当に入れる?」「入れないわけにいかないでしょ」「僕はこれつまらないな」的な火花飛び散るシーンも散見されるので、書き起こし前の録音聴いたらもっと楽しいのではないかと胸騒ぎが止みません。

    つまるとこ「全集編纂」とはすなわち「文学史再検証」にあたり、さらには鼎談者三名の主義主張の「文学宣言」をも顕にしてしまわざるをえず(また文学宣言は前衛宣言イコールパラダイム批判)、にもかかわらず冊数分量バランスの制約という全集ならではの妥協選定も鑑みると、歴史記述とはやはり今から振り返って見えたところの「生起」から「帰結」へ至る長い長いSTORYを幹として枝葉を剪定していかねばならぬというそのまんま「正史」観であり、そのSTORYこそが実は選定者が信じるカノンであるという事実もありますが、「世界は一冊の書物」的なマラルメ的なオチをシタり顔で述べれば選者三名に失礼にあたり、当然選者三名はその痒さは自覚の上でなくては選定=剪定は出来まいし、だいたいカノンという設定自体が21世紀には野蛮であるわけだからこそ、その野蛮と啓蒙の間の暴論をも厭わないのが優雅なるエンターテイメントの条件でもあります。

    鹿島氏が同時代サブカルの文脈なくして正史作品語れないだろうまた正史作品がサブカルに与える影響(太宰から昭和歌謡曲論)の今様の文化批評をさらっと語り、丸谷氏の「つまるつまらない」で切り捨てられた文学史教科書的作品たちはかえって煩悩が晴れて成仏してくれそうに見え、三浦氏の津軽愛と戯曲愛だけで外史が作れる違いないと確信が持てながら、最後は鼎談自体がバッツンとカットアウトされて終わるあたりが、また其の後の酒宴のオフレコがもっと楽しいことになっていたに違いないと胸騒ぎが止みません。

    個人的な暴論を言えば、全集編纂とは結局は「手相見」にも似て過去確かに生きていた証の掌の皺から健康や長寿、性格や結婚恋愛、はては人生の成功可否まで占うような世界観であり、結局は全集を編むことは未来を占い、その未来への「願い」でもあるものだと思えば、どんなジャンルでも各自各様に仮想全集を編纂していくのも善いのではないかと思え、また本件「仮想」であるからこそ「ブックガイド」にもあたるので、Web版にしてハイパーリンクを仕込んでストア導線や世のパブリックドメイン(青空文庫など)へのリンクがあると素敵な試みになるのではないのかと思います。

    つまり「ブクログ」でもやれるわけです。

  •  世界文学全集と日本文学全集を立ち上げるべく、三人があれやこれやと議論を交わす鼎談。私が本の話をする時にごっそり抜けおちている観点である文学史や作家論を汲んだ文集ラインナップでとても面白かった。お偉い三人方が好き放題言ってるのも楽しい。(笑)自分の好きな作家や作品が褒められていると嬉しくなったりもした。
     また、これを読むと自分が全集を立ち上げるなら何を収録するか考えたくなるのだけど、もっともっと古典を読まなきゃいけないなぁと痛感する。

  • これさえあれば、この先、いくらでも
    読むべき本が迷うことなく探せること必至。
    ああ、世界にも、日本にも、
    まだまだ魅力的で素敵な本が、こんなにもあるのだ、
    たくさんの喜びとときめきを感じさせるものが待っている、
    と希望を持ちながら、無知であることに喜びを感じた。

  • 文学全集を立ちあげる

  • 面白かったが、自分の知識不足のために全くわからず読み飛ばした箇所が何ヶ所か。。もっとたくさん本を読んだあとにまた読み返してみたい本ですね。

    『文学のレッスン』のほうが初心者向けかも。

  • 僕はこの本を国語便覧の作品年譜のように、必読作品リストとして資料的に活用している。はて、その道は遠きにありや。

  • 面白かった!

    「この作家ってそんな感じなのか」、「確かにあの作家は大して良い小説ないよね〜」、「この小説は面白いじゃん!」とか、納得したり納得できなかったりが楽しくてサクサク読めました。

    日本文学は古典から現代までさっぱり分からなかったけど……。

    作家や小説の好き嫌いをかなりズバッと言っているのが、また本音トークっぽくて良かったです。無難な感じでまとまらないところが良い。

    とにかく、まだまだ読んでいないものばかりだなって痛感した。下手な文学論を読むよりも、こっちの方が記憶に残るし、勉強になりそう。少なくとも、着火材にはなるでしょう。

    文学好きの人たちと、同じようなテーマで話し合ったりしたら楽しそうだなぁ。

  • 丸谷才一、三浦雅士、鹿島茂が世界文学と日本文学を編むための打々発止の議論。両方あわせて300巻にもなる全集を立ち上げるという壮大なる、そして架空の前提の上での座談である。緊張感がないというか、なれ合いというか、だから本音が出るのかもしれない。読んでいて口元が緩む。
    仏文学が30巻になるとか、森鴎外は嫌いだとか、丸谷才一が石川淳で一巻作るように提案するとか、まあ楽しそうだ。大人の知的遊びのひとつか。
    まてよ、昔程度はまるで違うが似たような事をやったことがある。
    ドライブ用や旅行用に90分とか120分のカセットに入れる曲を選んで編集したことを思い出した。時間や曲の流れの考えた一日作業だったなあ。なんか懐かしい。

  • 世界にはたくさんの作家さん、作品があるんだな〜と改めて実感。
    まだまだ沢山の出会いがあるな〜と楽しみです。

  • 文学界最強トリオによる架空文学全集編集会議。とにかく書籍マニア、文学史マニアにはたまらない。三浦雅士も言っていたけど、たしかに仏文30巻は多い。ジッドは3分の1巻でまぁ御の字だが、抱き合わせのピエール・ルイスはいらない。説明がなかったが、大岡昇平2巻とはどういうことか。あと宇野千代1巻で三人が一致しているのが面白い。

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著者プロフィール

1925-2012。作家・英文学者。山形県生まれ。東京大学英文科卒。「年の残り」で芥川賞、『たった一人の反乱』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。他『後鳥羽院』『輝く日の宮』、ジョイス『ユリシーズ』共訳など。

「2016年 『松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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