石田禮助の生涯 「粗にして野だが卑ではない」 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 129
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167139186

作品紹介・あらすじ

三井物産に35年間在職し、華々しい業績をあげた後、78歳で財界人から初めて国鉄総裁になった"ヤング・ソルジャー"-。明治人の一徹さと30年に及ぶ海外生活で培われた合理主義から"卑ではない"ほんものの人間の堂々たる人生を著者は克明な取材と温かな視線で描いた。ベストセラー作品の待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 2014.12 記。

    サラリーマン小説の書き手としてはやはり城山三郎氏は別格だと思う。
    本書の主人公石田礼助は元三井物産社長という生粋の商社マンにして、請われて国鉄総裁に就任。戦後の混乱期、初代総裁が「不審死」するような時代だった。大赤字と非効率経営がはびこるなか、国会で議員を前に「国鉄が今日のような状態になったのは、諸君たちにも責任がある」と言い放った男。彼の奮闘を描く。

    「能率を上げるにはね、全体の統制を乱さない範囲において、独断専行をできるだけ許す」。戦前に満州の大豆投機で稼ぎまくったビジネス感覚を国鉄に持ち込むべく腐心する。それは赤字路線のバスへの切り替えから青函連絡船の安全スペックの引き上げまで、収益の観点からだけ見ればプラスなものとマイナスなものの両方を含んでいた。そこを貫くのは、徹底してリスクを取って金儲けをした経験があってこそパブリックな仕事を徹底できる、という姿勢であった。これは実感としてよく分かる。

    今ネット上には「ファッションとしてのワークスタイル」を巡るカタカナだらけの言説が溢れている。が、読み終えてみて、「時代が変わって働き方が変わる」危機感なんて不要だな、と感じる。
    カネを稼いだ経験と使命感。これがあれば時代を問わず働く場所はあるよ、と再確認できたことが私にとっての成果であった

  • タイトルから中味を期待したのと、kindleに手頃な小説が見つからず、購入。期待ほどの中身ではなかった。
    確かに人物だし、魅力的なのだ、書きっぷりが余りに平坦。ビジネス書なのか娯楽なのか、はさ伝記なのか小説なのか、定めかねているうちに読了。

    ブクログで帯を見て、驚愕。日本人に遺された城山文学の最高峰なのか、これが!
    無責任なコピーライターだ。

  • こういう、もはや歴史となりつつあり、だけど案外近い過去である時代に、こういう変な傑物がいたことを知れてよかった。石田のあらゆる「卑」との闘いが、パブリック・サーバントであり続けるという信念が、城山さんの熱っぽい筆で描かれている。鋭い目をしたジイさんが背筋を伸ばした表紙の石田が話す声まで聞こえてきそう。

  • 大正から昭和にかけて三井物産代表取締役、国鉄総裁などを歴任した大物財界人である石田禮助の半生を痛快に描いた伝記である。書評雑誌などでは「経営者が読むべき書」として紹介されていることが多い。
    元々、この書を手に取ったきっかけは、「官僚たちの夏」を読んでいたときに巻末に著作一覧が掲載されており、この独特の書名が妙に気になったからである。
    石田禮助という人物を、私は初めて本書で知ったのだが、このような一本筋の通った生き方を、現代において体現できる人は中々いないだろうと思う。「祖にして野だが卑ではない」という強烈なフレーズは頭にこべりついて離れない。私の日々の行動など正に「卑」である。
    自分が与えられた職務に対し頑固なまでに懸命に取り組み、更に無欲。私が最も達したい境地である。本書の記述のほとんどが高齢期以降であることから「こんな格好いい老人になりたい」と思った。
    最近、本書のほか「官僚たちの夏」「坂の上の雲」などの小説を楽しんで読んでいるが、共通の魅力は「恐れを知らぬ豪快な仕事人」というところか。仕事において、ともすれば置かれた立場や上下関係から、過剰なまでに周りを気にしたり恐縮したりすることが多い。それが標準的な勤め人の姿だろう。しかし、本書を含め上記の小説の主人公は豪放磊落そのものであり、「こんな感じで仕事が出来たら…」という勤め人の理想形である。理想形である主人公を題材にしているからこそ、サラリーマンによく読まれている訳である。一歩でも彼らに近づきたいものだ。そのためには、仕事で実力をつけることに他ならない。
    非常に読みやすく、気がついたらどんどん読み進めている感じの書であった。それはやはり、作り上げの小説ではなく、実在した人物を綿密な取材の裏打ちによって描いているからであろう。今後、もっと城山三郎氏の作品を読んでみようと思う。

  • 仕事が忙しくなったりして、少しくたびれたときにこの本を取り出します。ぐっと元気になります。5回くらい読んだ。これまでに4冊くらい買って、人に勧めた。25才くらい年が離れた恩師も、この本を好んでおられることを知って、うれしくなりました。

  • ずっと読もうと思っていた本です
    事の良し悪しは別に、現代の財界人の発言に道理や筋を感じないもので…

    石田礼助
    明治~昭和を生きたカッコいい男の不器用かつ天衣無縫の仕事ぶりを描いています

    もう、物語どうこうではありません

    国鉄時代の直近の部下に
    「ずいぶん多勢の人に仕えたが、あんなに気持ちのいい人はいない。毎朝、石田さんに会うのがたのしみだった。生涯、あの人ほどの人物にめぐり会うことはないだろう」P162から

    周囲から、このように評される人物に私はなれないし、会えてもいない…
    (私も言いたい放題系であるが、徹底的に人望がない。 器が小さいんだわ)

    くせ者も多かったであろう当時の代議士や記者も礼助の卑でない実直な発言に魅せられていったようです
    時代が人物を産むのかもしれませんが、それにしてもねぇ…

    まあ、良い心構えを教わった読書となりました

    星は★★★(3.0点)
    ※満点は5点です

    伝記というか人物記ですので評点するのは若干違う気もしますが…
    卑屈、卑怯なやり様は私の生きざまから駆逐しようとの決意も込めて

    きっちり思う点をつけさせてもらいました

  • 三井物産から旧国鉄の総裁まで歴任した
    石田禮助氏の生涯。
    タイトルは国会で代議士を前に初登壇した際のコメント
    続いて「国鉄が今日のようになったのは、諸君たちにも責任がある」と気骨ある発言。
    男です。


  • 三井物産に35年間在職し、華々しい業績を上げた後、78歳で財界人から初めて国鉄総裁になったヤングソルジャーこと石田禮助の生涯。
    明治期から昭和初期この時代って、こういう一線を画す大物が多いよなー。

  • 久々の経済人の本を新幹線の中で読みました。
    仕事を生きがいにしつつも家族を愛する姿は理想の姿である。

  • こういう上司ほしい!組織の上に立つ人、人を使う立場の人には是非読んでいただきたい。
    自分はそういう立場にあるわけではないが、真似したい参考にしたいと思えることがいくつもあり、付箋を付けながら読んだ。敵対する立場の人々からも慕われるなんて素晴らしい。(もっとも家族には面倒がられる部分もあったようだが)

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著者プロフィール

城山三郎(しろやま さぶろう)
1927年8月18日 - 2007年3月22日
愛知県名古屋市中区生まれ。大日本帝国海軍に志願して入隊し、特攻隊の部隊に配属されたが、訓練中に終戦となった。東京産業大学(一橋大学の前身)を卒業後に1963年までは大学講師を務めながら作家活動を続けていた。経済小説を一ジャンルに格上げした先駆者のひとり。伝記小説、歴史小説も多い。
1957年に『輸出』で第4回文學界新人賞、1959年『総会屋錦城』で第40回直木賞、同年『落日燃ゆ』で吉川英治文学賞と毎日出版文化賞、1996年『もう、きみには頼まない 石坂泰三の世界』で第44回菊池寛賞をそれぞれ受賞。2002年に朝日賞を授与される。
代表作としては上記作品に加え、二度テレビドラマ化された『官僚たちの夏』、妻との想い出を描いた遺稿のエッセイ『そうか、もう君はいないのか』、よくタイトルが人物評としても用いられる、『粗にして野だが卑ではない』が挙げられる。

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