高丘親王航海記 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (1990年10月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167140021

作品紹介・あらすじ

幼時からエクゾティシズムの徒であった平城帝の子・高丘親王は、占城、真臘、盤盤、魔海を経て一路天竺をめざす。読売文学賞に輝く怪奇と幻想の遺作ロマネスク。(高橋克彦)

みんなの感想まとめ

幻想的な旅の物語が織り成す美しい世界観が魅力的で、主人公の高丘親王が天竺を目指す旅路にはエキゾチックな出来事が満ちています。政争によって地位を失い、老齢での出発にもかかわらず、親王は旅を楽しむ心を持ち...

感想・レビュー・書評

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  • 東宮の地位を政争のあおりで失い、出家したのち老齢で入唐、インドに向かおうとして消息不明となった親王を主人公とした幻想的な旅行記。
    どんな気持ちで生涯を過ごしたのだろうかと思い、またその旅が少しでも楽しいものであったらと想像する。

    • ロカさん
      初めまして。
      実は私は『高丘親王航海記』が連載されていた当時の文學界を今も持っています。

      澁澤先生ならではの視点で、こんな小説が書け...
      初めまして。
      実は私は『高丘親王航海記』が連載されていた当時の文學界を今も持っています。

      澁澤先生ならではの視点で、こんな小説が書けたらなぁと思ったものです。(作家になるのは諦めましたけどね)
      2021/03/21
    • つこさん
      ロカさん、ありがとうございます。雑誌を持っているなんて凄いです。
      ロカさん、ありがとうございます。雑誌を持っているなんて凄いです。
      2021/03/21
  • 貞観七(865)年、高丘親王67歳は、
    お供を連れて船で天竺(インド)を目指す。
    奇妙な人獣との邂逅や、うたた寝に見る夢のまにまに、
    親王は徐々に自身の「死」へ近づいていく。
    しかし、悲壮感はない。
    むしろ、旅の果ての、そのまた向こうの世界へ赴くことを
    心待ちにしているようだ。
    読むたびに目頭が熱くなる美しい小説。

  • 時は貞観7年、高丘親王は幼少期から夢見た地·天竺に向けて出港します。
    訪れた国々で親王を待っていたのは、妖しくも美しい幻想的な出来事ばかりでした。

    なんともエキゾチックな雰囲気に、強いお香を炊いたときのような、鼻の奥からくらくらするような感覚になりました。
    父王の愛人であり、親王の幼き頃からの憧れの人·藤原薬子が、甘い蜜のような抗いがたい魅力をもって描かれていることも、くらくらをより強めているのかも。

    澁澤龍彦の遺作ということで、特に物語の後半からは死と再生の色が濃くなっていきます。
    旅先で本書を読んだせいか、親王たちが行く先々で出会う不可思議なあれこれにわくわくさせられてばかりの読書となりましたが、次に読むときは腰を落ち着けて、じっくりと向き合いたいと思います。

  • 再読。随分と久方ぶりなので細かいエピソードを失念していたせいか、初読のような瑞々しい感覚で物語を味わうことができた。まるで玉手箱のよう。禁を犯して蓋を開けると澁澤龍彦の生涯を賭けた(彼の見た夢の)コレクションが蜃気楼の如く浮かんでは空気中に拡散し私はうっとり恍惚となる。最後に残った一粒の真珠が彼の生きてきた証だ。それを最後の最後、渾身の力で残してくれた。迫りくる死を意識し見つめ乗り越え、一流の美学とユーモアで装飾しながらこの怪傑作を書き切り死に尽きた。その生き様に憧れる。死に際まで彼はかっこよかった。

  •  言わずと知れた澁澤龍彦による幻想文学の名作であります。
     実は宇月原晴明の「安徳天皇漂海記」を読みかけていて、そのあとがきで触れられていたので再読したもの。
     平安時代に高丘親王が天竺に向かおうとした逸話をベースにしているものの、決して歴史小説ではなく、珍妙な生き物などが次々と登場する幻想譚となっています。
     天竺を目指して進む親王は、同時に夢と現実のはざまを旅していく。人語を解すジュゴン、鳥女を閉じ込めた後宮など、ある意味バカバカしくも、しかし非常に美しい世界観に魅了されます。
     澁澤龍彦氏はガンによる死を前にしてこの小説を書き上げたとか。美をもって死を迎え入れる姿勢に、遺作として単純に心打たれます。
     初めて読んだときはそれを知らなかったため、衝撃的なラストは氏の芸術至上主義とニルヴァーナ願望を表出したものと考えてたんですけど。

  • 貞観7年正月、高丘親王は唐の広州から海路天竺へ旅立つ。
    幼い頃に藤原薬子が添い寝で語った天竺の話。
    薬子の思い出と寄り添うように天竺へ旅をする。
    「そうれ、天竺まで飛んでゆけ。」
    夢か現か。
    異国の景色、むせ返るようなジャングルの熱、しんとした湖の舟。大蟻喰い、儒艮、蘭房の女、獏園、蜜人、卵生の娘、王妃の肉身像。

    夢のようで、でも天竺までの彼の地ならそんなことが起きても不自然でないように思うのは西遊記が頭にあるからかな。
    ほんわかとじっとりとミーコと一緒に旅をしてきた。
    親王の歳を感じさせない好奇心と行動力にニヤリとしつつ。親王の薬子への想いが甘酸っぱさとヒリヒリした闇を垣間見させて切ない。
    地図を見ながらミーコの旅したあとを追ってみたくなる。

    「一生に一度しか夢を見ず、夢というものの効能も知らずに死んでゆく人間が、この国にはざらにいるのじゃ。おまえは天竺へ達することを一生の念願としているそうだが、そんなに夢を見ることに堪能ならば、どうしてまた天竺なんぞへ足を運ぶ必要があろう。天竺は夜ごとの夢で見ていれば十分ではないか。」

  • 実在した高丘親王の話を元に作り上げた物語.高丘親王が天竺を目指して弟子たちとともに旅に出る.道中の不思議な,夢とも幻とも言えるような出来事の話.この本には面白いか,面白くないか,といった評価基準はあまり適していないと思う.適しているのは気持ちいいか,気持ちよくないか,という基準である.そしてこの本はものすごく気持ちのいい本である.両手両足が伸ばせるお風呂があったとする.仰向けに寝っ転がってもおぼれないような深さのお風呂.そこでぬるめのお湯につかりながら,仰向けになってぼーっと上を向いている感じの心地よさ.そういう心地よさの本.最後に書かれた高橋克彦の解説は実にくだらないが,ただ「これは大人の小説だと思う.できるならば,四十になり,五十になって読み返して欲しい.その時期ごとに別の思いが生ずるはずである.」という部分には賛成できる.きっとその通りだと思う.

  • 澁澤龍彦最初で最後の長編小説にして、至高の一冊。複雑に絡み合った澁澤さん好みのモチーフ、文体の軽やかなテンポの良さ、主人公高丘親王のさっぱりと明るい魅力と、親王を天竺へ導く永遠の女性薬子、あらゆる部分に舌を巻く素晴らしい作品。おかしなものがたくさん出てきてずっと楽しい。語り出したら止まらない。

  • 22年ぶりの再読。あれ?こんなマイルドだったけ?「パタリロ!」と世界観が重なる。珍動物とか、エロ風味とか、奇想天外な感じが。て、パタリヤパタタ姫のせい?実はパタリロのほうが、先に発表されてるのは驚きの事実。

  • 天竺へ向かう高丘親王らが波瀾万丈の旅の途上で目にしたのは、人語を操る儒艮や、えもいわれぬ香気を放つ糞をひる獏や、怪しい真珠や、砂地を離れて空を飛ぶ舟。飄々とした口調で蘊蓄を垂れる、めくるめく幻想の世界へようこそ。

    率直な感想は3.5、とはいえこの手の小説はレアなので加算0.5、総計星4と言ったところ。澁澤龍彦の文体が、個人的にそこまでぐりぐりと壺に入らないせいかもしれない。

  • 薬子のアレとか、出てくるもふもふとかよいのだが、貘は毛生えてるけど儒艮は無いか、わんこ頭n
    はい。
    面白いよ。

  • プリニウス『博物誌』のように、奇怪な人・獣・植物が次々と出てくる。と思えば地の文に「この件についてはプリニウスは珍しく本当のことを書いている」とあったりして。オオアリクイに「お前は南米産ではないか、アナクロニズムを承知で言うとしかもまだ発見されていない」と糺すと人語を話し「蟻がいるのにアリクイが居て何が悪い…」と巧妙に反論する。犬頭人は「将来が見える。プリニウスに滅茶苦茶に書かれる、ああ憂鬱だ」と言い。大粒の真珠を「持っていると命取りになりますぞ」と警告されても持ち続け、運命を受け容れた親王、薬子のもとへ

  • 夢幻的でいてどこか牧歌的な航海記。ためらっていたが思いのほか読みやすかった。高丘親王の足跡は史実を元にしていながら、喋る儒艮に蟻食い、頭が女人身体が鳥の生物に会ったり夜な夜な獏に夢を食べられたりと、夢の中のお話だった。そしてエキゾチックで蠱惑的で艶かしい。薬子を追い求めていたのだろう。ぼんやりした話なのに真珠を飲んで喉が痛くなり病み衰える描写だけがリアルで、澁澤の遺作だというこの本、重ね合わせずにはいられなかった。

  • 時間も空間も夢も現実も自在に行きつ戻りつ、こんな幻想譚…、楽しいなぁ。
    美しくも死の象徴である真珠を飲んで親王が喉の病いを患ってしまう最終章は、本作を執筆していたのが筆者の咽頭癌末期であったことを知ると切ない。

  • 2015.12.27

  • 幼少期、父平城帝の愛人・薬子に寝物語で聞かされた天竺のことが忘れられず70歳に至って天竺を目指す高丘親王のお話。

    不思議な感触の小説である。
    天竺を目指しあらゆる島々を巡り、そのたび親王は夢とうつつの淡いを行き来する。
    一見ファンタジーのようだけれど、親王の行動や奇態な夢に強烈な「男の性」を感じるというか……男の腋の下の臭いをかぐようなリアリティがおもしろいのだ。

    それぞれの女の役割というのを考えてみても、なんだかおかしいというか割り切れない。
    薬子は親王の母代わりのようであり愛人のようでもあり、そこに実の父平城帝に対するエディプスコンプレックスも感ぜられる。けどそういう事は意外と瑣末なことであるかもしれず、親王が抱く薬子の思い出はどこか「やわらかい」。

    秋丸・春丸もどういうものだろう。
    「蘭房」において、口惜しそうにしながらも親王を欄房に見送る秋丸の姿に僕はどこかくすぐったい気持ちになる。

    解説にあったが40歳くらいになって読むとまた違った感慨が湧いてきそうである。

  • 河口慧海の『チベット旅行記』を読んでいたらふいにこの本のことを思い出して再読。澁澤さん好みのモチーフ、アイテム、変な動物満載で、小説なのだけれどいつものエッセイを読むのと同じ感覚で読んでしまう。アナクロニズムを多用するだけでなく登場人物自らそう言ってしまうのもご愛嬌。何度読んでもどうしても親王(みこ)と澁澤さん自身の姿が重なります。

  • 澁澤氏の遺作となった作品。『うつろ舟』を読んで彼の世界にハマった身として、とても面白く読んだ。人面鳥身の女、犬頭人、獏、諸々の奇怪な生き物と出会いながら、高丘親王を育てた藤原薬子の転生を軸に繰り広げられる冒険譚。読み物として楽しいし、一気に読んでしまった。

  • 澁澤 龍彦が書いたと思うとそれほどグロくない。
    でも、まあ、アルコール抜きの場では語りづらいことも。苦笑。

  • ジャンルのよく分からない小説だが、おそらく幻想文学……かな。
    これぞ爺ファンタジー 笑
    自由な想像力の世界を堪能。

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著者プロフィール

1928年、東京に生まれる。東京大学フランス文学科を卒業後、マルキ・ド・サドの著作を日本に紹介。また「石の夢」「A・キルヒャーと遊戯機械の発明」「姉の力」などのエッセイで、キルヒャーの不可思議な世界にいち早く注目。その数多くの著作は『澁澤龍彦集成』『澁澤龍彦コレクション』(河出文庫)を中心にまとめられている。1987年没。

「2023年 『キルヒャーの世界図鑑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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