鬼平犯科帳 (12) (文春文庫)

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  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784167142308

感想・レビュー・書評

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  • しまった、今年はまだ日本文学を読んでいなかった。
    慌てて取り出した鬼平12巻。


    盗賊改方同心の寺田又太郎は任務中に鹿熊(かぐま)の音蔵という盗賊一味に殺された。弟の寺田金三郎は兄の仇を討つために鬼平の同心となった。
    その金三郎は、又太郎の密偵だったおせつという女と行き会う。
    しかし又太郎も金三郎も、鬼平におせつを使って鹿熊一味の探りを入れていることは言えない事情があったのだ…。
    ==まあ事件は解決するんですが、あんたたち何やってんじゃいという感じもする(苦笑)。
    お白州での取り調べでの、鬼平の圧倒的な迫力の秘訣は、「呼吸ものさ。相手の吸う息吐く息が手に取るように分かるようになればそうなる」ということ。武道(鬼平の場合は剣術)が、相手との勝ち負けだけでなく武”術”とか武”道”というのはこういうところなのでしょうね。
     /いろおとこ

    鬼平と岸井左馬之助は若き日に通っていた剣術道場の高杉一刀流道場で、もう一人の長沼又兵衛を加えて三羽烏と呼ばれていた。だが剣術師範の高杉銀平先生は、長沼又兵衛にはけっして免許皆伝を授けなかった。そのため又兵衛は伝書を盗んで出奔していた。
    その又兵衛はどうやら盗人になったようだ。二人は高利貸しの屋敷で盗賊改方と盗人として再会する。そして鬼平は、高杉銀平先生の免許皆伝の真髄、「すべて白紙に戻ることだ!」を伝えるのだった。
     /高杉道場・三羽烏

    70を超える鬼平の老密偵舟形の宗平と、五郎蔵とおまさの密偵夫婦は、宗平の昔なじみ長久保佐助の息子の敵討ちを見届けようとしていた。
    その頃鬼平は、一家の者20人余りを殺し金を奪った畜生働きの強盗一味を追っていた。こちらには同心酒井祐介と密偵の伊三次がついている。
    実は2つの事件は繋がっていた。
    すると、同心が探る店に密偵がいて、密偵が密偵の跡を付けるというなんだかややこしいことに…?
     /見張りの見張り

    鬼平の密偵の中でも、舟形の宗平、大滝の五郎蔵、相模の彦十、小房の粂八、伊三次、そしておまさは、鬼平から最も信頼されている。彼らは腕が利くし鬼平のためには命を惜しまず、なんといっても盗賊時代にも「殺さぬ、犯さぬ」を守り盗みの”芸”を守ってきた仁義ある盗賊たちだったのだ。だから彼らが密偵になったのは、近頃の殺傷を行う畜生ばたらきをする盗賊たちが許せなかったからだ。
    そんな6人がある時懇親酒宴を開いた。一級の盗賊だった彼らの話は徐々に懇親からずれてくる。「近頃の畜生ばたらきのやつらに俺たちのみごとなつとめをみせてやりてえ」「そんな話をすると盗人の血が騒いじまうじゃねえか」「長谷川さまにも分からぬようにやればいいんだよ」
    こうして密偵たちは、江戸でも嫌われ者の高利貸しの屋敷を探ることになった。
    だが探っているうちに、どうやら畜生ばたらきの盗賊一味もこの高利貸しを狙っているとわかる。
    はたして密偵は一度騒いだ盗賊の血を鎮められるのか?鬼平は気がつくのか…?
     /密偵たちの宴
    ==ただの懇親会飲み会からなんか「現役盗賊に負けてられるかい」と盛り上がっちゃった密偵さんたち。コワイ鬼平さんの目をかいくぐるなんて本当にできるのか?!なんか盛り上がってる男たちを唯一の女密偵であるおまさが段々呆れ気味になったり、そんなやり方じゃすぐバレるでしょ!って冷静だったりする姿が微笑ましい 笑

    お忍びで江戸市中を見回っていた鬼平は、老人に売春を持ちかけられる。
    近頃は老中松平定信の風紀取締が厳しくなり景気は悪く貧乏なものはそこから抜け出しづらくなっている。そのぶん素人娘が生活や家族のために売春斡旋者を仲介にして体を売ることが起きていた。
    近頃の風俗のありかたに興味を持った鬼平は老人についてゆく。
    だが案内された宿には、過去に鬼平に因縁のある男がいたのだった。
     /二つの顔

    「まるでつきたての餡ころ餅のような妓でねえ」
    鬼平の不肖の息子の辰蔵は、剣術の才はなく遊蕩が好きという困ったやつだ。だがたまに遊びの最中に面白い情報を仕入れてくる。鬼平はもう諦めて「剣術の筋はないけど、遊びっぷりも堂に入ってきたようだし、もう同心を一人抱えてるつもりでおるよ」などという。
    そんな辰蔵が小遣い欲しさに仕入れてきた情報に鬼平の直感が働いた。
    「私の馴染みの妓を買う男がいるのですが、実はその男は男のなりをした女なのだそうでございます。しかも相当腕が立ち、私などは軽くあしらわれてしまいました」
    はたしてその”女おとこ”は何者なのか…?
     /白蝮
    ==男の格好をした女って「男おんな」のような気もするけれど、「女おとこ」なんですね。

    お熊婆さんの茶屋に高木軍兵衛がやってきた。軍兵衛は見掛けは厳ついが腕前はイマイチ、しかし鬼平に恩があり、いまでは剣術の面白さもわかり、大店の用心棒として雇ってもらっている。
    そんな軍兵衛が過去に組んだ黒狐の加賀谷佐吉という盗人から「彦島の仙右衛門という盗賊の頭を殺してほしい」という依頼を受ける。
    だが加賀谷佐吉は、その仙右衛門の手下で、組の乗っ取りを考えていたのだ。
    仙右衛門を見に行った軍兵衛は、人殺しも厭わない盗人とはいえ鷹揚で気前の良い仙右衛門に好ましいものを感じ取ったのだ。
    ==この12巻での鬼平は、疲れを感じたり年を感じたり、忙しく緊張が抜けない日々に流石に疲労が溜まっている様子。この巻の最後で、妻の久枝、お供兼話し相手として相模の彦十とおまさを伴い疲労回復の休暇旅行に出かけることになりました。次の巻は旅先での事件かな。しかし疲れたー年だーという鬼平もちょっと心配ではある。
     /二人女房

    • 地球っこさん
      淳水堂さん、こんにちは。

      しまった。
      わたしも鬼平ストップしたまま……
      ついつい、いつも傍にあると思うと安心しちゃって後回しになっ...
      淳水堂さん、こんにちは。

      しまった。
      わたしも鬼平ストップしたまま……
      ついつい、いつも傍にあると思うと安心しちゃって後回しになっちゃいます……

      「密偵たちの宴」が面白そう!
      2021/04/23
    • 淳水堂さん
      地球っこさんこんにちは\(^o^)/
      私も数ヶ月ぶりでした(^_^;)。

      「密偵たちの宴」は、いい大人の密偵たちがまるで担任の目をか...
      地球っこさんこんにちは\(^o^)/
      私も数ヶ月ぶりでした(^_^;)。

      「密偵たちの宴」は、いい大人の密偵たちがまるで担任の目をかすめていたずら考える悪ガキ状態、そして呆れるおまさ(笑)

      しかし12巻では全体的に鬼平が「疲れた」と言っていてちと心配ではあります(~_~)
      2021/04/23
  • やっぱり。
    結局、鬼平さんはなんでもお見通し。

    盗賊から足を洗っても、昔を思い出して、自分たちの腕を試したくなっちゃうのかな。

    高杉銀平先生の免許皆伝の真髄は、武道以外でも通じるものがあり、どんな習い事でもそうなんだと思う。
    基本が大切。終わりはない。

    鬼平さんも半分まできた。
    残り12巻、楽しみです!

  • 密偵たちの宴…元盗賊たちの密偵が、さも童心にかえったかのように昔を思いだし悪事(?)をはたらこうとするが、結局は本分にたちかえる、というお話。人は善も悪も内包しているし、昔の血が騒ぐのはしょうがない気もする。おまさが最後、五人に対して呆れ返ってやけ酒を始めるのが可笑しくてたまらなかった。そしてやっぱり平蔵の恐ろしさがじわじわと感じられる。

  • 密偵たちの宴は元盗人だけれども、盗人のプライドを守る為、日々狗と蔑まれながらも、盗賊改メ方の為に奮闘する彼等の悪い顔がちらりと覗くお話し。
    案外、そんなことを考えてる彼等を見られることは、一安心する気がしないでもない。

    二人女房は、鬼平のある意味、怖い部分をまざまざ見せつけたラストシーンで占められている。最後に収録されているので、ぞくぞくとする読後感が何とも…さすがなのである。

  • プロット自体を色々と工夫するのが目立ってきた。思いもよらないパターンもあり、楽し。

  • 読了

  • おもしろい。

  • 傑作揃いで気に入った。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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