新装版 鬼平犯科帳 (5) (文春文庫) (文春文庫 い 4-56)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167142575

作品紹介・あらすじ

横なぐりに脇差をたたきつけてきた。かわしきれなかった。浅手ながら左肩を切り裂かれた平蔵。「鬼平。お前もこれまでだな」闇の底から、網切の甚五郎の声が聞こえた。…鬼平の危機せまるスリルを描く「兇賊」をはじめ、「深川・千鳥橋」「乞食坊主」「女賊」「おしゃべり源八」「山吹屋お勝」「鈍牛」の七篇が収録されている。

感想・レビュー・書評

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  • 「おれの死に水を取ってくれないか」
    大工の万三は、屋敷の見取り図を盗人に売りつけることで稼いでいた。
    結核で余命が短いことを悟った万三は、自分と同じ匂いのする女と出逢い、女のために最後の稼ぎを狙う…
    ***
    人情的なオチで読者としては安堵した。
    第1巻の頃だったら、万三も女も破滅していただろうなあ。
    作者が丸くなったのか鬼平が丸くなったのか。
     /深川・千鳥橋


    「ある乞食坊主を殺してほしい」
    菅野伊介は依頼を受けた。
    しかしその乞食坊主に襲いかかってみて驚愕した。
    かつて同じ道場で刀を振るい合った先輩の井関録之助だったのだ。
    そしてその同じ道場では、若き日の鬼平も共に稽古に励んでいた。
     /乞食坊主


    隠居した老賊に知らされた急、赤子の頃に里子に出した息子が危機にさらされている。
    どうやら女賊に誑し込まれ、押し込みの片棒を担ぐことになりかけているようだ。
    女賊のお千代は、その身体を男たちによって育て上げ、男たちを操り押し込み強盗を繰り返している、一筋縄ではいかない女だ。
     /女賊


    鬼平の手下の久保田源八は、心臓を患い、鬼平のために余生を生きようと決意していた。
    そんな源八が、密偵の最中に賊に襲われ、今までの記憶を失ってしまった…
     /おしゃべり源八


    ひとりばたらきの老盗賊、鷺原の九平は、たまたま鬼平の殺害計画を耳にする。
    盗賊なら知らないものはない、火付け盗賊改め鬼の平蔵、鬼平。
    九平の表向きの仕事は芋酒呑み屋だ。
    たまたま訪れた鬼平の男っぷりに惚れ込んだ九平は、鬼平を亡き者にしようとしてる相手を探ろうとする…
     /兇賊


    鬼平の親族の三沢仙衛門は、今年で五十五になる。
    そんな仙衛門が若い女を嫁にとりたいと言い出した。
    女を探る鬼平は、その身のこなしに堅気でないものを感じる…
     /山吹屋お勝


    火付けの犯人として捕らえられたのは、”鈍牛(のろうし)”と呼ばれる亀吉だ。
    精神薄弱だが真面目でお人よしで近所の人々からも可愛がられていた亀吉が、果たして本当に犯人なのか…?
    ***
    いわゆる冤罪事件。
    検挙率を挙げるため、拷問などで罪人を仕立て上げた場合、取り調べに当たったものたちも処罰される、というシステムがあったようだ。
     /鈍牛

  • 今回もおもしろかった。

    「乞食坊主」「兇賊」が特に好き。
    敵も惚れる男、鬼平がよくわかるお話。

    「鈍牛」は、ほろりとしてしまった。
    どんな人も偏見なく接する平蔵さんを見習いたい。

  • このシリーズを読み始めているが。
    この作品は、池波正太郎のアブラがのっている感じを受けた。
    鬼平が、盗人を見つける勘の良さは、いつものことであるが、
    密偵を使っての捜索は、鬼平の人柄と人徳によって、自然と強化されて行く。
    何よりもすごいのは、人に対する情に基づいた対処方法。
    深川・千鳥橋;大工の万三は、病があり、見取り図を売っていた。
    乞食坊主;いのちがけの井関録之助
    女賊;瀬音の小兵衛は、盗人の足をあらい、息子幸太郎のことを案じていた。
    密偵のおまさは、幸太郎を探す。
    おしゃべり源八;記憶喪失となった源八
    凶賊;足を洗った九平は、鬼平に惚れる。九平の芋膾はおいしい。
    芋なますの作り方。
    里芋を きぬかつぎ にし、鯉やすずきを細めにきり、塩と酢につける。
    芋の皮をむき、魚のなますと合わせ酢にして、キザミショウガをのせる。
    九平は、あわやの鬼平をすくいだす。
    山吹お勝;叔父の仙右衛門の黄昏症候群。
    鈍牛;亀吉はのろまだった。

    ひとつひとつの物語が、いぶし銀のようだ。

  • 2020.8.6 読了


    やっぱり 長谷川平蔵の人柄
    大好きですー!

    部下も 『このお頭なら、ちゃんと判断してもらえるはず!』
    と 信頼しているのがいいです!

  • 人情話が読みたくなって、久々に鬼平の続きを。
    「兇賊」鬼平さんのピンチにハラハラ。極悪人の甚五郎に見せた「鬼」の部分にしびれた。かっこいいなぁ!夜鷹のおもんに「人じゃねぇか、俺もお前も」と言えるところもいい。どんどん鬼平さんが好きになる。本当理想の上司だわ。
    現代で言うところの冤罪を扱った「鈍牛」もよかった。この時代普通に冤罪は多かったんだろうなと思う。

  • 4巻読み終わったところで随分、止まってたけど久々に続きの5巻を読んだのだが、やっぱり鬼平シリーズは安定の面白さ!中でも凶賊は読み応えありました!まだまだ先の巻があるから、引き続き読んでいく予定。

  • 鬼平犯科帳 (5)

    諸事情により、4巻未読のまま5巻を読むことに・・。

    今回も7篇それぞれ読み応えがあり、楽しませて頂きました。
    第五話「兇賊」では、鬼平さんが強敵(凶敵又は狂敵ともいえるかも)・“網切の甚五郎”に命を狙われ、大ピンチに陥る場面もあり、ハラハラしました。
    早く4巻が手元に来てほしいです。

  • 鬼平犯科帳シリーズも読み直すこと三度目なのだが、飽きませんねぇ、全く。この第五巻は鬼平の鬼気迫るスリルを描く作品が収録され楽しめる。

  • やっぱり長谷川平蔵よねぇー。
    私のタイプだわぁ。

    女にも好かれる前に、弟子たちにも好かれ、そして盗人にも好かれる。
    一人の人間として素晴らしい。
    小説のキャラだけど、心ときめく存在だわぁ。

    今回の巻は、盗人を捕まえる話の他に、放火犯の話もあって今回も退屈しないで読めました。

  • 人情話が良い。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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