読始:2009,2,28
読了:2009,3,1
直木賞受賞作「光と影」他「宣告」「猿の抵抗」「薔薇連想」を収録。
元医者の渡辺さんの書くこの作品。医者の視点と物書きの視点の両者が交差し絶妙な表現となる
収録作四つに画かれているのは人間の妬み・嫉妬など人生の皮肉をえがいている
純粋に読む価値のある一冊だと思う
誰が悪いわけでもないのにどんどんよくない方向へ進んでいくことってこの世の中確かに在る
そんな時、行き場のない気持ちをどうしたらいいんだろう?
読んでて思うところも多かった
直木賞受賞作「光と影」と「宣告」が個人的にはお気に入り
以下各作品ちょっと紹介
「光と影」
西南戦争で負傷した2人のキャリア軍人。ともに腕を負傷し手術することに。カルテの順序がもたらした悲劇:一人は片腕切断、一人は不自由ながら一応自身の腕がついたままに。偶然が分けたこの手術がもたらす人生の光と影。作中の誰が悪いということはない、そしてそれ故に生じる嫉妬をぶつけるはけ口がない…個人のそんな微妙な思いを的確なタッチで描いている
「宣告」
芸術家、それもそこらの芸術家ではなく“ほんもの”の芸術が癌にかかる。余命一年の癌。
ほんものの芸術家なら自分の死期を知れば最初こそ絶望するかもしれないが、やがては死期を悟ったことでよりよい芸術を残すことに全力を注ぎ、そして死期をしれたことを感謝するのではないか?
そして遂に死の宣告をする!!
描かれているのは宣告をされた側ではなく宣告をした側の葛藤…
最後までどうちらが正しいとか作者の考えが書かれていない
あくまで読者それぞれの判断ということだろう
実際自分が不治の病にかかったとき死期を宣告されたいかどうか…真剣に考えてしまった
いつか死ぬことは100%であり、死ぬこと自体は新情報ではないのだから、避けられない死をしればそれまでに悔いのないように出来る限りのことはできる!
だが死を認識しながらも日常では死を意識していないわけで、死を意識していないからこそいつかくる死にも耐えていける。「いつ」を知ることでこの死と常に向き合わねばならず、それを乗り切れてた時は最初のように悔いのない人生が送れるだろうが、そうじゃなければ何にも希望が持てず絶望のうちに死ぬことになるだろう…どうせ死ぬんだから何をやっても…こう思ってもしかたがない
何が正しいと絶対的な答えはないが、それを考えることには意味があるのではないだろうか
長くなるので以下数行でw
「猿の抵抗」
学用患者の葛藤を描いた作品。最後には自殺してそれから逃れようとするが、実際に死んだかどうかはわからずに終わる。重要なのはそこにいたるまでの過程であり、それを見事に描いている
「薔薇連想」
梅毒にかかった女性の恨み、妬みを描いた作品
女性の行動が正しいとは思わないし、共感はできないが、そう考えるのも無理はないのかなぁとは思った
どの作品も完成度が高くよかった
読む価値のある一冊