斜陽 人間失格 桜桃 走れメロス 外七篇 (文春文庫 な 47-1 現代日本文学館)
- 文藝春秋 (2000年10月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167151119
作品紹介・あらすじ
没落貴族の家庭を背景に、滅びゆく高貴な美を描く『斜陽』。太宰文学の総決算ともいうべき、小説化された自画像『人間失格』。ふたりの若者の信頼と友情を力強く表現した『走れメロス』など、20世紀の日本が生んだ天才作家の名作11篇を収める。奥野健男氏のくわしい年譜、臼井吉見氏のこまやかな作品案内と作家評伝付き。
感想・レビュー・書評
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今日は「桜桃忌」ですか。
太宰治の作品の中で記憶に残る一節は「人間失格」の中の友人の言葉
「ワザ、ワザ」なんです。
確か主人公が周囲に迎合しようとして何かの失敗(転んだか?)を意図的にしたところ、常日頃あまり鋭くない友人が「ワザ、ワザ」と言う。
主人公の意図的な行動を見破られたのだ。
何故この事が記憶に残っているのだろう。
桜桃忌、合掌。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
若い時読んでいたらどんな感想を持ったのか。「葉桜と魔笛」が好き。
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駆込み訴えは読んでいて苦しくなりました。相手を想っても想っても通じない、一方的な感情を持て余す様がある意味人間的だとも思いました。愛憎入り乱れる相手だからこそ、自分が相手の運命を握ってやると思ってもおかしくはないなと。しかも、相手はそれすら予測してしまっているのなら、望み通りやってやろうと思っても、自ら身を落としてしまっても仕方無いのかもしれません。
自分の感情が上下左右あちこちに揺り動かされる作品が多いので、平常心が保てる時に読むのが良いかもしれません。 -
斜陽
読もうと思っていたけれど踏ん切りがつかず、戦争の番組が多くなってきて手に取った。
思ったよりすぐに読み切った。格差について考えることが多かった今日。格差はいけない、なくさなければとする現代だけれど、それによって自分の居場所や生き方が失われる、どこにも進めなくなる人が確かにいる。世界はそう単純なものじゃないな。もしかして、いまの状況と、戦後の財閥解体はそう遠くないんじゃないかと思った。身分とそれに対応するプライド、自分の拠り所がなくなったとき、人は混乱の中で死を考えるのかもしれない -
太宰の有名な作品を収めた贅沢な一冊。
こうして読んでみると、太宰の中にある自分への不信感や他人への恐怖心、それをどの作品も反映してるように思う。
文章が意外なほど美しく、リズミカル。
「走れメロス」の文体は、メロスが疲労困憊しながらも、体に鞭打って前に前に疾走する姿が感じられた。
簡単ではない文章なのに、するする読める。
とくに口語体の、話すような、語りかけてくるような言葉のリズムが心地よい。
聖書からの引用、女性の言葉遣いのたおやかさ、上品さなど、代表作を並べてみるとわかる太宰らしさを発見することができた。
大学生以来の「斜陽」が一番刺さった。
あの頃はこんなに感動しなかったのに。
没落していく貴族の姿が美しく静かに伝わってくる。
華族や宮様の品格のよさと、そこには相入れない俗人の世界の違い。
言葉遣いも違い、生活態度も違い、生きることに対する必死さは感じられない。
市井の人々から見ておママごとに見える生き方。
時代に取り残されようとしている人々、忘れ去られようとしている人々がこの時日本にもいたのだなと、その生き方が強く印象に残っている。
それだけではなく、おママごとみたいな生活、生き方をしているかず子は、ある人に恋をする。
その恋愛の姿も、やはりどこか浮世離れしている。
現実感がなくて、ふわふわしているようにも思う。
でも、情熱的で、時代がどうとかよりも、世間がどうとかよりも、自分の心だけを大切にする生き方を選ぼうとするところが、とてもしなやかにたくましく感じ、不思議な感動が呼び起こされた作品。 -
「斜陽」、眠れない夜に一気に読んでしまった。やっぱりすごいよね。
前読んだのがいつか覚えていないくらいだけど、下手したら20年くらい前だけど、それでもなんとなく覚えている表現はあって。
読ませる力があるなあと思う。 -
《レビュー編集中》
ダス・ゲマイネが読みたかったので、まずはこの作品から
太宰治(本名・津島修治)は例えるというのが絶妙に上手い作家なのだと知った
頁左の解説もありがたい、これがなければ彼がどんな時代にいてどんな人物に興味があるのか、話が全然分からなかった
解説者の名前を控えなければ(臼井吉見さん)
ダス・ゲマイネより引用とメモ
p.308
ダス・ゲマイネ das Gemeine(独)ドイツ語で、一般的なもの、通俗的なもの、の意。それに、太宰の郷里津軽地方の方言で、ダスケ=だから、マイネ=だめだ、となり、それが掛け言葉になっている。
佐野次郎左衛門 歌舞伎「杜若艶色紫(かきつばたいろもえどぞめ)」の主人公。
これをもひとめ見た印象で言わせてもらえば、シューベルトに化けそこねた狐である。
新潮文庫2020夏小冊子より『恋をしたのだ。そんなことは、全くはじめてであった。』 -
この本は「斜陽」「人間失格」「桜桃」「走れメロス」など、この一冊を読めば太宰治作品をほぼなめることができるので、とてもおすすめ。
私がもう少しだけ綺麗で、もう少しだけ根性があったら、太宰治と不倫してこの人に私のすべてを捧げて捧げて、どうしようもなくぼろぼろになってみたいな、と思ったのは中学生の頃。子供だ‥。
自意識過剰すぎた女子高校生を乗り越えて、大学生になって、もう一度太宰を読んだら私はどうなるのか?と思って読んでみた。
一番びっくりしたのは前はわけわからんかった「斜陽」に感情移入できたこと。ほんの少しだけ大人の女に近づけたのかしら、遠慮がちにはにかんでみる。 -
今まであまり読んでこなかった純文学を読みたくて手に取ってみたが、前知識なしで読むと自殺とかネガティブな話ばっかりで気が滅入ってしまう。大人の教養として、心に余裕があるときに読むべき。走れメロスは太宰作品の中で特異な存在なことに気づく。
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斜陽(2020/10/20)
文豪・太宰治の作品。小説を読むのは数年振りかもしれない。
終始暗いストーリーで、読んでて寂しくなった。難しい言葉が多く、海外の作家や作品も多く登場していて、作者自身の知性をすごく感じた。昔から読み継がれて今でも残っている作品だけあって凄かった(小並感)。