闇からの谺 下 北朝鮮の内幕 (文春文庫 チ-1-2)

  • 文藝春秋 (1989年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784167162030

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  • 下巻では離れ離れになっていた女優・崔銀姫と監督・申相玉が再会し、共に暮らすようになる。
    幾度も逃亡を試みて収容所に収監された監督は、むやみに逃げるのではなく金正日の信頼を勝ち取って、絶対に失敗しない機会をみつけて脱北することを決意する。

    北朝鮮のために映画を作ることを誓った2人に、金正日はお金を惜しまずに与え、会社も設立してやり、また海外での撮影も許可するなど大きな特権を与える。
    長らく行方不明になった2人が東欧などに出没したことにより、韓国や日本のメディアから注目を浴びることになるが、彼らは「自分の意思で北朝鮮に行った」と主張する。
    しかし、韓国では「敵国」である北朝鮮に勝手に行ったり、称賛したりすることは「国家保安法」違反になり得る。そのため、2人は金正日との会話を何時間にもわたって録音するなどの危険も冒している。
    (このテープの一部は映画「将軍様、あなたのために映画を撮ります」で公開されている)

    金正日の信頼を得るため、でもあるが、しかしやはり彼らは映画人だったのだろう。
    北朝鮮で2人が映画を製作したわずか2年の間に7本の映画を製作し、13本の映画の製作指導を行ったという。
    その過程で、北朝鮮では俳優や女優と言っても虫が這い回るような部屋で過ごしたり、悪臭がしたり、空調などない部屋で寝起きしていることや、男女のスキャンダルが広まると前途のある役者が地方に追放されること、女性が職場を移ったり就職するときには妊娠経験や処女であるかの検査をされたりするという北朝鮮の現実を目の当たりにしていく。
    2人は北朝鮮では特別に豪華で贅沢な暮らしを送っていたというが、「いっしょに満喫する自由でなければ」と述べているのはとても心に刺さる。

    2人は結局、脱北に成功するが、あとがきに書かれている「わたしは自由を得た。しかし、それは彼らとともにあることを拒み、彼らとともに苦しみを分かちあいながら彼らを手助けしようとせず、薄情にも自分ひとり彼らのそばを離れてきたという悔恨の疼きをともなうものだ」(崔銀姫)、「自分たちだけが自由を得たと快哉を叫びえぬまま、今日も苦悩している」(申相玉)といった言葉を見ると北朝鮮で暮らし、その中でかかわりをもった人々や民衆への思いが滲む。

    皆で分かち合う自由、贅沢、そういったものが未だ朝鮮半島の北半部では実現していないということがいま一度思い起こされる。

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著者プロフィール

現職:佛教大学社会学部 教授。
最終学歴:東京大学大学院社会文化研究科博士課程中途退学(専門:メディア研究)
韓国ソウル大学言論情報研究所客員教授(2010年)。
主な単著に『韓国のミドルクラスと朝鮮戦争――転換期としての1990年代と「階級」の変化』(明石書店、2021年)、『「反日」と「反共」――戦後韓国におけるナショナリズムの言説とその変容』(明石書店、2019年)、『表象の政治学――テレビドキュメンタリーにおける「アイヌ」へのまなざし』(明石書店、2017年)(韓国語翻訳版2018年)、『日本のテレビドキュメンタリーの歴史社会学』(明石書店、2015年)、共著として『社会情報学ハンドブック』(東京大学出版会、2004年)などがある。

「2022年 『東アジアと朝鮮戦争七〇年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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