緋い記憶 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (1994年10月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784167164058

作品紹介・あらすじ

思い出の家が見つからない。同窓会のため久しぶりに郷里を訪ねた主人公の隠された過去とは……。表題作等、もつれた記憶の糸が紡ぎ出す幻想の世界、七篇。直木賞受賞作!(川村湊)

みんなの感想まとめ

記憶をテーマにした短編集で、主人公が故郷を訪れることで隠された過去と向き合う様子が描かれています。各短編は、忘れられた記憶や失われた時間を探し求める人物たちの物語で、東北の情景が色濃く反映されています...

感想・レビュー・書評

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  • あとがきで川村湊さんが、
    岩井出身の“みちのく”作家。
    心の中の “みちのく”の情景を描く。
    と、上手こと表現している。
    直木賞の人生の曖昧となった記憶を物語とした
    7編の記憶シリーズ。舞台も東北が多い。
    どの短編も、記憶から欠けた時間を探し始めるところから始まる。そこに記憶を封じなければならなかった事情を思い出していくという構成。
    各作品、設定も展開も工夫されて、とても素敵な短編集です。

    「緋い記憶」
    故郷での緋色の記憶。そこに残る少女との思い出。なぜか、住宅地図には、その家の記録がない。
    「ねじれた記憶」
    男は母との記憶が残る寂れた温泉宿へ。そこは、母親の自殺した場所。母親とよく似た女性との出会い。自殺前の時間がねじれた記憶。
    「言えない記憶」
    子供時代の不確かな記憶と鮮明な記憶。
    缶蹴りの途中で行方不明のまま亡くなった少女の本当の死因。
    「遠い記憶」
    忘れていた幼児期の記憶。家だと思っていたのは、父親の愛人の家。忘れてていたのは、鴨居にぶら下がる愛人とそれを見る母親。
    「膚の記憶」
    食中毒かアレルギーに苦しむ男。
    原因を探すうち天然水と思い至る。母親の故郷の水。水源地に沈んでいたものは。
    「霧の記憶」
    若い日のロンドンでの曖昧となった記憶。小説家となった男の古い作品から、当時行方不明になった女性の痕跡を探す。
    「冥い記憶」
    一人の少女の死を思い出させるための青森ツアー。
    これは、短編だとわかりにくい。結末がよくわからなかった。

    • おびのりさん
      おはようございます。

      ええもう、ざわざわ感が良い感じですよね。
      かなさんの本棚で続編があることを知りましたが、読まなくて良さそう?笑
      自分...
      おはようございます。

      ええもう、ざわざわ感が良い感じですよね。
      かなさんの本棚で続編があることを知りましたが、読まなくて良さそう?笑
      自分にも沈めた記憶があるかもしれない、と思わせるあたりも好きです。
      私は、本格ミステリー等より、こういう雰囲気の方が自分に合っているなと再確認したところです。
      2024/02/01
    • おびのりさん
      そして、ブグログさんに代わりまして、土瓶さんに “自分のレビューより、およその本棚の訪問を大切にしています♪GOLD”を差し上げたいと思いま...
      そして、ブグログさんに代わりまして、土瓶さんに “自分のレビューより、およその本棚の訪問を大切にしています♪GOLD”を差し上げたいと思います。
      2024/02/01
    • 土瓶さん
      ヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
      なんかもらった~♪
      \(゜ロ\)ヤッタネ(/ロ゜)/

      あ。そうそう。
      それで思い出したけど、あらた...
      ヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
      なんかもらった~♪
      \(゜ロ\)ヤッタネ(/ロ゜)/

      あ。そうそう。
      それで思い出したけど、あらためておびのりさん、ユーザー賞おめでとうございます!
      みんみんさんもかなさんもおめでとうございますm(__)m
      なんかね。
      インフル明けのよく回ってない頭でへんなとこでおめでとうコメント出したら、「そこで言っても誰にも伝わらんわ」言われたんだった。
      メーロンんとこの楊令伝6だったかなw
      2024/02/01
  • R3.3.21 読了。

     記憶をテーマとした短編集。読んでいてゾクッとする作品もあったが、ジャパニーズホラー的な作品を期待していたが違っていて残念。

  • 生まれ故郷の古い住宅地図には、あの少女の家だけが、なぜか記されていなかった。あの家が怖くて、ずっと帰らなかったのに。同窓会を口実に、ひさしぶりに故郷を訪ねた主人公の隠された過去、そして彼の瞼の裏側に広がる鮮やかな“緋色のイメージ”とは、一体何なのか……。直木賞受賞の傑作ホラー。

    とのことですが、ホラーというよりは世にも奇妙な物語的な。
    人の記憶って曖昧だし、忘れるし、塗り替えるし、捏造する。
    そして、その記憶が呼び覚まされたり、真実に近づいたりすると…
    で、微妙に後味の良くない読後感。
    30年以上前の作品で、当時流行っていたショートショートの終わり方ってこうでしたよね、という。
    そして、やたら不必要なくらいの性描写もまさに時代だなと。
    読みやすくはあるのですが。
    いずれ僕の記憶も都合よくねじ曲げられて、「緋い記憶」名作だよーとか言い始めるかもなー。

  • 時代的古さを感じるけど、記憶をテーマにした短編で、記憶はセピア色のイメージだから、その古さが味を出していて逆にいい。
    伝奇的ミステリーだけど、どれも人の仄暗さを覗き見する気分で、昏い楽しみがある。
    共通して、岩手をテーマにしているので、遠野物語のような趣もまた風情がある。

  • 特別面白い話があったわけではないけど、作者特有のジメッた空気感がとても好き。

    ″ねじれた″と″虜の″が好き。

  • タイトル通り「記憶」がテーマの短編集。
    遠い過去の記憶がいつの間にか都合よく書き換えられているのですが、書き換えられるには必ず相応の理由があり、それを思い出す過程で忘れたかった忌々しい真実が明らかになるという同じパターンの構成となっている。
    今から30年近く前にも書かれた作品であり、その当時に過去を振り返っているので、高度成長期を迎える前の東北地方という日本の原風景的な描写が少しだけ怖い雰囲気ながらどこか懐かしい印象を受けます。
    高橋氏といえば東北地方を舞台にした歴史ものか浮世絵シリーズという印象だったので、こんな作品を書いていて、かつそれで直木賞を獲ったなんて意外でした。

  • 記憶をテーマとしたホラー短編集。
    ふと思い出した記憶を探るためジグソーパズルを埋めるように遡っていく人々の話。
    記憶は現実にだぶるものだと思う。記憶と現実とは重なるわけがないけれど何か繋がりがあり、そこに欠落を感じる。
    その欠落が何かを理解するために、納得するために現実をほっぽって過去へと向かう、途中で恐ろしいものが行き止まりにはあると考えても行き着くまで止まることはない。
    破滅を呼ぶわけでもないのに、忘れる事がよく生きるコツなのかとさえ思う。

    好きな作品は捻れた記憶と膚の記憶。

  • 記憶をテーマにした七篇。
    粒揃いな中、表題作とねじれた記憶は舌を巻く巧さ。重厚で好み一直線のホラー作品。

  • 短編集。
    一つひとつ、何となく答えが見えてそうで、見えなかったり、気付いたら最後まで読んでた感じ。
    読みやすいサスペンス。

  • 本のタイトルにもなっている『緋い記憶』が、やはり逸品。
    発表された年が30年ぐらい昔だから、
    時代背景とか人物描写に古臭さを感じるけれど、
    物語はどれもこれも、今読んでみても引き込まれる。
    ひんやりとしたものを感じつつ、
    自分の記憶の断片が脳裏に浮かんでは消え、
    1話1話の主人公の記憶に吸い取られていくような気さえする。
    短編で、ここまで人の危うい側面を描ききるのは凄いな。
    さすがだなと思うけれど、まだ高橋克彦氏の長編は未読でもあり、
    長編に向かうのには躊躇がある、何故だろう。

  • 24年ぶりの再読。四半世紀前の読後感は、ただただ怖いことと、ストーリーのうまさ、文章の読みやすさであった。それが故にタイトルが深く記憶に刻まれ、再読のために再び本を手にしたのだろう。そして今また恐怖を感じている。自分自身、心の奥底に押し込んできた記憶が少なからずあることを承知している。もしそれを白日の下に曝し真正面から向き合わねばならなくなったら、恥ずかしさと自分自身への嫌悪で内側から壊れてしまいそうだ。恥ずかしさは、まさに恐怖とイコールなのだ。

  • これはミステリというか、結構ホラーですね
    しかしうまいです、ねじれた記憶のラストにはぞっとしました
    膚の記憶も、食中毒の原因を探す話がどうしてあんな結末になってしまうのか??
    手品を見るような面白さのある短編たちです

    しかし読み通すと、「記憶」というテーマに沿って作者がアイデアを搾り出すようにして書いてくれた、ある意味連作的な短編たちであることがわかります
    アンソロジーではなくて、一人の作家が一つのテーマで書き重ねた作品集であることが非常に興味深く感じました。

    続編も読みたいと思わせる作品集でした

  • 表題作よりも後ろに収録されている作品が面白かったです。
    特に「ねじれた記憶」はさらっと読み流したつもりでしたが
    読了後、強く印象に残りました。

    ただ全編を通して、やたら性的表現が多いのが気になります。

  • 高橋克彦の直木賞受賞作短篇集とのことで、合間にでも読もうと積ん読しておいた本。
    これがなかなか面白かったので、一気に三部作を読了。

    どれも「記憶」をテーマにした作品であり、主人公が曖昧になってしまった「記憶」を突き詰めていくと、最後には思いがけなかった真実が明らかになり、それが背筋を凍らさせるような出来事だったり、心あたたまる話だったり、とそのひねり、驚き、衝撃で読者の掴み方を探っているようにも思えてくる。
    殆どの作品が著者の故郷である岩手県盛岡近辺を舞台にし、主人公は画家、小説家、脚本家などのどれかで、記憶が明らかになるに連れて、殺人、ホラー、SF、はたまた暖かな想い出などに繋がっていくストーリーはある意味でワンパターンだが、それにしてもこれだけのバリエーションを良くも産み出せるものだと驚かせる。

    三作の中では、やはり一作目の緋い記憶が最も秀逸である。
    読んでいて最後にぞっとさせる短編が多く、ぐっと引きずり込まれた。
    おかげで一気に三部作終わるまで止められなくなってしまったよ。

    元々、一度も読んだことのない作家だったのだが、歴史物の長編を知人から薦められていて読もうと思いながらも、まずは軽くトライしてみた短編だったが期待以上だった。
    これは今後、作品を読み連ねるのが楽しみである。

  • パラレルワールドのような短編集。

    緋い記憶
    ねじれた記憶
    言えない記憶
    遠い記憶
    膚の記憶
    霧の記憶
    冥い記憶

    ホラーなのかファンタジーなのか、境が微妙で遠野物語のような読後。
    それぞれ、不思議な結末だけど、後味が違う。
    解説でみちのくの作家とあるけれど、みちのくガイドに挟まれていたら面白いかも。とにかく行ってみたくなる。
    秘境の温泉宿、鍾乳洞、冷麺、わんこ蕎麦。
    今はどうなってるのかな。

    作者のあとがきが面白かった。
    「秘密の花園」への甘美な記憶。
    この本が直木賞をとってしまった戸惑い。
    確かにあれ?こういうのを描く作家さんだったっけ?と思いつつ読んだので。
    「私は悪役がほんの一瞬見せる恥じらいというものが好きで、それこそがダンディズムだと思っている。つまり、これはそういう狙いの本だったのだ。」

  • 記憶の存在ほど不確実なものはなく、個人の意識の奥底に閉じ込められた記憶は都合良く勝手に上書きされてイヤな思い出は楽しい思い出にすり変わってしまい、ある程度他人と共有できたとしてもやはり曖昧で、全てはなかったことにしたほうがいいかもしれないくらい厄介なものだったりする。

    それでもなかったことにできない記憶があって、犯した罪が当人の想像を超えていて無意識に追いやってしまった記憶は、その罪によって犠牲になったものが、悲しみ悔しさの行き場をなくして強烈な腐敗臭を放ち、罪を償えと訴える。それは「緋い記憶」では友人の住宅地図だったり、「膚の記憶」では蕁麻疹であったり、突如日常に意外な形で現れるところがヒネリが効いてて面白い。古い住宅地図にあるはずの家がないと気づいたときの焦りと恐怖感って実際はどんなものだろう?例えば、自分が良く遊びにいった友達の家が住宅地図から消えていたら..やはりものすごい怖いことなのだろうか。何かしら理由があって心底忘れたい家だったら、地図から消えてくれてラッキーだと思ってしまいそうだ...自分の住んでた町がそっくり消えていたら怖いけれども。

    東北、村、秘密。これらキーワードがそろえば、私にとって結局なんでもホラーになってしまう。村という共同体で長いこと秘密にされたきた事実は長い時を経ていつのまにか伝説となり、そして改めて伝説を解体していゆく作業はいつもたまらない。また家の裏に存在する古い蔵とか、古民家の、襖の隙間の向こうに広がる薄暗い空間とか、凄惨な場面が仕込まれているような気がしてつい警戒しゾワゾワする。「緋い記憶」は結構ゾワゾワしっぱなしで、襖を覗いたらそこにはというパターンが貴志祐介の「黒い家」にもあったことを思い出して余計に寒気がした。

    つけものの樽からはみ出す白い大根の記憶が実は少女の白い手だったという甚だしい記憶の書きかえ、各作品に必ず盛り込まれるエロ要素、色々つっこみたいけど、高橋克彦、かなり好きなタイプだわ。

  • 短編集で読みやすかった!全体的に怖い話だったけど、怪奇現象とかじゃなくって、人の記憶による隠れた真実とかそういう感じの。(説明できてないなぁ)

  •  東京でデザイナーをしている〈私〉は、共に盛岡での高校時代を一緒に過ごした友人である加藤から古本屋で、古い盛岡の住宅地図を買ったことを聞かされる。古い地図から過去の自分自身の記憶を振り返るのが趣味だというのだ。〈私〉には淡い記憶があった。彼に倣って住宅地図で過去を振り返ろうとした〈私〉は、記憶の中にある一軒の家を探した。確かにあったはずの家がどこにも見つからない。あの家の正体は。そしてあの思い出は。ラストに恐怖と切ない余韻が残る――「緋い記憶」

     東北の民家が中心の画集の中に描かれた断崖の側に建てられた大きな宿屋の絵。〈私〉はその絵を見て、胸騒ぎがした。幼い頃、〈私〉はその岩手の山の奥の温泉に行ったことがある。なぜ母は郷里でもない岩手に。三十年以上の月日を隔てて、〈私〉はその宿を訪れる。母親が死んだその宿で、そこで〈私〉は美しい女性、静子と出会う。意外性もあり、奇妙な味わいのあるラストが印象的な――「ねじれた記憶」

     記憶というのは、いまではなくなってしまった時点、必ずどこかがぼやけてしまっているものです。だからこそ無性に怖くなってしまう時があります。そのぼやけて、分からなくなってしまったところで、自分はとんでもないことをしでかしてしまったのではないか、と。本書は全七篇、記憶にまつわる短編が残っています。どこにでもある自然な一幕に不穏さが滲み出しくる導入と切れ味良くも決して合理では割り切ろうとしないラストが、全体的に素晴らしかったです。特に表題作の「緋い記憶」が印象的で、これからも読み継がれていって欲しい作品集だ、と思いました。

  • 記憶がテーマとなっている短編集。作者が岩手出身ということで、よく登場する。記憶は時とともに、変化したり、無くなっていったりするものである。出来事は同じでも、その時の感情は人それぞれだ。自分のいいように記憶していたり、都合よく忘れていたり、、、そういった人間らしい描写が面白かった。
    本作は過去の自分に会ったり、あるはずのない家が存在したり、オカルト的な要素もある。しかし、主人公たちは嫌なオジサンが強く、読んだ気分は良くはない

  • 【ねじれた記憶】
    『空耳だろうか。こっそりと忍び寄る足音が聞こえる。あれは私の足音なのだ。
    振り返って確かめたい欲望にかられた。
    ひたひたひた。
    どちらの私も息を潜めていた。

    【膚の記憶】
    『体の関係ができたのは半年前のことだ。ママは三十八。私の生活に割り込んでくるような野暮な女ではない。五十にもなって妙な言い方だが、私たちは文字通り大人の付き合いをしている。』

    【霧の記憶】
    『だが、すべてはロンドンの霧のようにぼやけている。記憶にも時効があるのだろうか。
    私はひたすらそれを願った。
    でなければ生きていけないような気がした。
    咲子を殺したのは私かも知れない。』

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著者プロフィール

1947年岩手県生まれ。早稲田大学卒業。83年『写楽殺人事件』で江戸川乱歩賞、87年『北斎殺人事件』で日本推理作家協会賞、92年『緋い記憶』で直木賞、2000年『火怨』で吉川英治文学賞を受賞する。他の著書に『炎立つ』(全5巻)、『天を衝く』(全3巻)などがある。

「2009年 『To Tempt Heaven』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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