神々の沈黙 心臓移植を追って (文春文庫 よ-1-9)

  • 文藝春秋 (1984年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784167169091

みんなの感想まとめ

心臓移植の黎明期を描いたこの作品は、医学の進歩に情熱を注ぐ外科医たちの姿を通じて、心臓移植の歴史とその難しさを深く掘り下げています。特に、南アフリカでの初の心臓移植から始まり、世界各国での手術の進展を...

感想・レビュー・書評

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  • 和田移植事件を知りたくて読んだ。前半3分の2は海外の話。
    医学を己の手で進歩させる意欲に満ち溢れた、熱狂的な外科医達による世界的な心臓移植ブームがあり、そこにのっかる形で札医大の和田医師が心臓移植を実施した、という流れを感じることができた。
    あとがきを読んで、勉強量と取材量に驚くばかり。
    ただ、「神々の沈黙」のタイトルが分からない。(追記)それぞれのケースで何が正解だったのか分からないから、倫理的に沈黙せざるを得ない→神々の沈黙ってことかな。

  • ・10/6 読了.あまりの迫力で思わず自分の心臓の様子を確かめたくなった.なるほど心臓と肺の機能が両方必要だからコロナのために有名となったECMOは人口心肺装置なんだね.知れば知るほど心臓移植の難しさや恐ろしさをじわじわと感じた作品だった.

  • 南アフリカで行われた心臓移植第1例から、各国で次々に行われた移植手術。細かい取材を元に心臓移植黎明期について書かれた本。
    日本第1例目の和田移植についても詳しい。

    『凍れる心臓』『消えた鼓動』の和田教授が、なぜ心臓移植をに急いだか?
    世界の心臓移植の流れがこの本ではよくわかる。

  • 心臓移植についてのドキュメンタリー。世界初の心臓移植がアフリカで行われ、それを皮切りにして世界各地で心臓移植が行われる。心臓移植を望むことは誰かの死を望むことと同義である。ある父親は娘と妻が交通事故に遭い、妻は即死、娘は重症。そんな時に娘の心臓が欲しいと医師に言われ、錯乱状態のまま署名してしまう。そこには白人・非白人の問題も存在した。冷静な判断もさせないまま、延命処置もとらず心臓を取り出してしまう医師側に強い反発を覚えた。しかし、一番反発を覚えたのは報道記者らの存在である。いろいろ考えさせられる本だった。

  • 心臓移植の黎明期,世界中のまた日本の手術例と経過を単に記するのではなく,提供者にも移植される側にも人生があり,また執刀医にも情熱があるということを丁寧に物語っている.技術的なことはかなり解決されているが,倫理的な問題など未だにこのころの思いと変わらないことも多いような気がした.

  • やっと手に入れて、読了。小樽っこの私として、臨場感あふれる場面により深いものを覚える。臓器移植が日常的になり、今は生殖の範囲に神業と人の意志が一体化してしまった。こうしてここまで来たのか、というなし崩しの倫理はすでに倫理ではなく、私たちの立ち位置が幻想でしかないと確認してしまった1冊。

  •  吉村昭らしく,よく調べたノンフィクション。南アフリカにおける世界初の心臓移植と日本初の和田移植。いづれも生命倫理の点で大きな問題を抱える結果に終わった。医療の進歩と個人の尊厳を秤に掛けるのは難しいが,何らかの基準がないと勇み足は止められないんだろう。はじめはなぜ世界初が南ア?と不思議だったけど,時代と,社会構造の影響が大きかったという印象。

  • 内容紹介
    心臓移植手術、それは生命の神秘に対する現代医学の果敢な挑戦であった。世界の外科医が試みた手術にまつわる様々なドラマを描く感動のドキュメンタリー・ノベル

  • 今では、必要に応じて心臓移植も行われるようになったが、
    1960年代は世界で誰も心臓移植を成功したものがいなかった。
    誰が先に移植を成功させるかにしのぎを削っていた。
    その頃の話を海外取材と日本の和田移植を、
    移植される人、提供する人の人柄、家族の心情などを
    今では個人情報で開示されないことを克明に書かれている。
    日本の札幌医大の和田教授による心臓移植。
    本当に移植が必要だったのか。
    提供する側の人の死の判定。

    日本初という事に和田先生はこだわってしまったのか。
    やはり、きちんとしたガイドラインが必要だと思った。
    吉村さんは手術についても素人なはずなのに、
    器具の名前、手術の様子など、
    医師としてその場にいたのではないかと思われる作品でした。

    心臓が止まってしまったら、次の心臓に替えてしまう。
    寿命とはいったいなんなのだろう。
    移植というのは、やはり神の領域なのかもしれない。

  • 副題のとおり、心臓移植手術のパイオニアたちの苦闘を描いた力作。「医学は、オリンピックじゃありません」と信ずる良識派の医師たちが、来る日に備えて拒絶反応を抑える手法などの研究に邁進する中、昭和42年、南アフリカの野心的な医師が、世界初の心臓移植手術を行い、その翌年には日本でも、やはり野心的な医師が、我が国初の心臓移植手術を強行する。ただ、札幌で手術を受けた少年は3ヵ月弱で拒絶反応のために亡くなってしまう。著者は、南アフリカの患者が1年半強も生存した事実と対比させながら、日本でその後、「果たして心臓移植は本当に必要だったのか」という批判が起こり、その結果、臓器移植手術をタブー視する風潮も出たことに触れながら筆を置いている。ただ、世の中には、祝康成「真相はこれだ!「昭和」8大事件を撃つ」(新潮文庫。永瀬隼介「疑惑の真相~「昭和」8大事件を追う」に改題)という、続編ともいうべき著作が存在する。こちらを併せて読むと、「心臓移植は必要だったのかどうか」という以前の問題として、そもそも海水浴で溺れたドナーは、実は脳死に至ることなく助かりそうだったということが分かってくる。1つしかない心臓を取り出されてしまうのだから、ドナーは当然、心臓移植手術の当日、亡くなっている。“続編”には、検察当局が殺人容疑での告発を検討しながら、遂に断念せざるを得なくなったことまで書いてある。鑑定を依頼された当時の心臓外科の第一人者が、「ここで和田くんを罪人にしたら、将来日本では心臓移植ができなくなるかもしれません。和田くんについてはいろいろ風評もあるけれども、助けてやろうと思います」として、心臓移植手術は適切だった、という結論を出してしまうからである。これらは遠い昭和の日のことと片づけてしまってよい話なのか。心臓移植手術とは直接の関係はないが、この鑑定人だった医師の縁者が関わったバイオベンチャー(平成16年11月マザーズ上場)が、総合商社を舞台とする巨額詐欺事件に巻き込まれ、今夏上場廃止となることを考えると、「昭和は終わったわけでもない」と思わせられるのである。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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