陸軍二等兵比嘉真一 殉国 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (1991年11月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167169220

作品紹介・あらすじ

中学三年生の小柄な少年は、ダブダブの軍服に身を包んで戦場へ出た……。凄惨な戦いとなった太平洋戦争末期の沖縄戦の実相を、少年の体験を通して描く長篇。(福田宏年)

みんなの感想まとめ

少年兵の視点から描かれる沖縄戦の実態は、想像を絶する過酷さと自己犠牲の精神を浮き彫りにしています。主人公は、まだ成長途中の中学三年生でありながら、故郷を守るために戦場へと駆り出されます。彼の体験を通じ...

感想・レビュー・書評

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  • 昭和20年3月アメリカ軍沖縄上陸作戦開始。小柄な十四歳の比嘉真一は、だぶだぶの軍服の袖口を折って、ズボンの裾にゲートルを巻きつけ「鉄血勤皇隊第一中学校隊員陸軍二等兵」として、食料運搬、負傷兵運搬、伝令など前線後方での洞窟を転々とする防衛戦に参加する。〝中隊長は、真一たちを豪内の一角に集合させて「貴様たちは死ねるか。武士は、死にきる覚悟をもつことが第一だ。 これからは、貴様たちの郷土は決戦場となるが、至誠殉国の精神を以って郷土防衛のために死ね。俺もすでに死を覚悟している。俺は、貴様らの先頭に立つ。俺の後に続いて死ぬのだ」と、血走った眼で訓示した。真一は「はい、死にます」と、友人たちと甲高い声をあげた・・・〟沖縄戦の実相を、地獄絵図さながらの迫真の筆致で再現された<吉村 昭>氏の長篇小説。

  • 少年兵を通して想像を絶する戦争体験。
    この過酷な状況は現在を生きる
    私たちに耐えれるものなのか。
    祖国を守るため、自分たちの生まれ育った
    故郷と家族を守るために自らの
    生命を盾にする少年、少女。
    そこまで追い込めさせたのは何か?
    生命を投げ出して
    戦うことしか道が無かったのか?
    犠牲を強いる当時の状況を今を生きる
    私たちは分かる訳が無いが
    日本人が持つ自己犠牲の精神は
    今も変わってないんじゃないかと思う。

    戦争は男が死んで女が生きる。
    少年兵のこの言葉が印象に残った。

  • 吉村昭作品は、ノンフィクション系で『関東大震災』、『蚕と爆弾』と読み、小説で『星への旅』を読んで、こんなものも書くんだ、と乾いていながら美しい文体にときめいた作家。
    この『殉国』はノンフィクションとフィクションのあわいにある作品だった。

    1945年、3月、沖縄。
    主人公は旧制中学3年のまだ腋毛も生えていない少年だ。
    サイズの合わない軍服を着させられ、戦場となった故郷で”鉄血勤皇隊”となる。
    軍国教育を施され、軍人に憧れたこの時代の少年たちは、あまりにも惨い鉄の暴風のなか、どう生きたのか。
    これはいたかもしれない、いや、いた、少年の話である。
    吉村昭の文体はわかりやすく、そして美しいので、是非同世代の少年少女に読んでほしいと思う。
    今となりにいる友だちが無慈悲に死んでいく。町の人たちが恐怖のなか何か月も彷徨い、殺された。そんな時代があったのだと。
    そして、一方的に日本側からの視点だけではなく、戦った相手側からも見てほしい。
    映画だったら最近公開された『ハクソー・リッジ』がわかりやすい。
    誰も殺したくてきたわけではない。思想がふたつに分かれると、自分が感情移入するほうが自分にとって正義となるだけだ。

    ”鉄血勤皇隊”の悲劇はやましいところが大きく、看護に従事したから美しい話にしやすい”ひめゆり学徒隊”にくらべて知られていない。
    今と違って一方的な情報しか得られない時代、純粋無垢な少年たちの心がどういうふうに扱われたのか、そして今現在も同じような国でどういう風に人間が育ってしまうかも考えるきっかけになるかもしれない。

  •  中学(旧制)を繰上げ卒業し(ただし、本人の主観はともかく、客観的には卒業させられという印象が強い)、召集令状を受けた少年が、砲弾飛び交う沖縄戦のただ中で体験したことは何か。

     短いので読破にさほどの時間はかからないだろうが、戦時下、批判精神の欠片もない自己陶酔の中で始まる物語が、死体の腐敗臭に塗れつつ重苦しい雰囲気のまま終始する小説である。殊に戦傷者の模様が生々しい。
     正直、ここ数日、重い作品ばかり読んでいて、少し疲れ気味である。

  • 昭和二十年三月、中学三年生(14才) で召集令状を受け、鉄血勤皇隊に所属することになった比嘉真一という少年兵を通して見た沖縄戦の実態。
    私自身、吉村昭の著作は「熊撃ち」「炎熱隧道」に続いて3冊目だが、ある種の極限状況に立ち向かう人間を描いている点では共通している。感傷に流されないリアルな眼差しが好きだ。

  • 吉村昭の作品は、短編なら色褪せることはなく
    現在でも読める。長編それも戦記物は今はもう
    古い。十四歳の中学生が陸軍二等兵となり、
    沖縄戦の壮絶なストーリーを展開する。

  • 毎年この時期になると、どうしても沖縄戦の本が読みたくなる。沖縄が間も無く梅雨に入りそうなこの時期、80年前には沖縄戦の真っ只中だ。
    本書の主人公は14歳の中学生であるが、沖縄戦ではよく知られているように中学生であっても兵士として召集されている。男子は鉄血勤皇隊として主に武器の輸送や負傷兵の護送、炊事や壕堀などの後方支援業務に当たっていた。女子であれば高等学校の齢になればひめゆり学徒隊や白梅学徒隊などで有名な看護婦として召集され、こちらも同じく後方支援の任務に当たっている。今の同年代の子供達から見れば信じられないであろうが沖縄戦は正に老若男女関係なく戦争に投じられた総力戦だ。何故なら日本国土そのものに米軍が上陸するという純粋な地上戦としては、直前の硫黄島の戦いがあるものの、多くの民間人が暮らす場所での本格的な戦いとしては初である。これが太平洋戦争唯一の地上戦が行われたとされる所以である。
    沖縄戦に投じられた兵力は米軍548,000人、サイモン・バックナー中将率いる海兵隊や陸軍、海上を埋め尽くす艦艇などで構成される。迎え撃つ日本軍は牛島満中将率いる第32軍で総兵力は116,400人。数の上では米軍が圧倒するものの、日本軍は守備を固め迎え撃つ側であるため、攻撃三倍の法則からすれば互角とまでは言わないが、かなりの接戦が予想される兵力差である。そこに兵器の質量では劣っても、精神力では優位にあるという、旧帝国軍独自の理論が乗ってくる。アメリカは4月の上陸に向けて、前年1944年10月の10.10空襲に見られる様な徹底的な空爆を事前に実施した。通常の島嶼作戦では上陸時の水際を狙う事が常套手段であった日本も、この戦いは本土戦までの時間稼ぎの目的を含んでいたため、ガマなどの地下壕に籠っての徹底的な持久戦となった。敵を上陸させての戦いであれば、当然民間人が戦禍に巻き込まれる。そして前述した様に、少年少女達が戦場に駆り出される。
    本書のタイトルは「殉国」。これを見て分かる通り、主人公である比嘉少年は、文字通り少年兵、鉄血勤皇隊として国の為に殉じようとする心構えを持つ。同じ様に召集された他の少年たちより少し華奢な体格でありながら、その精神は国のために最後まで戦い、そして死ぬ運命を覚悟した少年だ。ストーリーは米軍上陸前の緊迫した状況から始まる。未だ負傷者もなく、実際の戦闘を経験した事も無い「未だ」広がる沖縄の田園風景も何処か長閑な状況だ。いよいよ米軍が上陸開始するとそうもいかず、負傷兵の護送任務は徐々に過酷を極めていく。そして友人達の負傷や死を目の前にして変わっていく心情。それは死への恐怖というよりも、それ自体が日常化されることによって起こる死への「慣れ」である。この辺りの心情変化を作者の吉村昭氏が周囲の風景の変化に合わせて描き出していく。読んでいる私の中にも、気が付いたら訪れている絶望感が芽生えている。つい数日前に目の前に広がっていたサトウキビ畑。蛙が鳴き幼い頃の平和であった頃の記憶が呼び覚まされるのだが、次にそこを訪れれば、爆撃で穴だらけ、とても畑の体をなさない様な戦場に変わり果てる。沖縄という小さな島で繰り返し繰り返し同じ場所を通り、そこで出会う非難住民の描写を徐々に加えていく事により、逃げ惑う住民に真の逃げ場などない事を痛感させられる。
    本書は沖縄戦によくある日本軍が住民を殺害したり、住民を避難場所の壕から追い出す、泣き叫ぶ子供を殺害する様なシーンは殆ど出てこない。純粋に国を守るために戦う少年兵の「殉国」精神を描いており、その邪魔になる様な日本軍兵士への怒りの感情などが生まれない事で、より比嘉少年の心の変化だけをなぞっていく事ができる。戦争は人を狂気に変えるが、比嘉少年にとっては最後の最後まで国のため、沖縄のために戦うという純粋な心情をもち、一貫してこれが変わらずに続く。この辺り、風景や戦況、自分の周りから徐々に消えていく友人達の生死の別れが、目まぐるしく変わる中にあって、一貫して抱き続ける気持ちの強さを際立たせる描写となっている。だがそれでも絶望的な状況の中で、死への恐怖を抱かせるシーンもある。絶対的に強く願っても、戦争の悲惨さはそれ以上の圧力となって、人に覆い被さって来るという現実を知る。
    二度と戦争を起こしてはならない。少年少女の未来を大人が奪うことはできない。彼らの心に「殉国」の精神は要らない。今の沖縄の現状を思い浮かべながら、問題の出発点となった沖縄戦を知り、そこにあった少年たちの現実を理解する事は、未来の沖縄の在り方を考える上では必要だと感じる。

  • 「吉村昭」の長篇小説『殉国 ―陸軍二等兵比嘉真一― 』を読みました。

    「蓮見圭一」の著作『八月十五日の夜会』に続き沖縄戦をテーマとした作品… 「吉村昭」作品は初読です。

    -----story-------------
    「郷土を渡すな。全員死ぬのだ」太平洋戦争末期、沖縄戦の直前、中学生にガリ版ずりの召集令状が出された。
    小柄な十四歳の「真一」はだぶだぶの軍服の袖口を折って、ズボンの裾にゲートルを巻き付け陸軍二等兵として絶望的な祖国の防衛戦に参加する。
    少年の体験を通して戦場の凄まじい実相を凝視した長篇小説。
    -----------------------

    70年前の沖縄では、本当にこんな時代があったんだ、、、

    一般常識としての知識はあるものの、住民として、その場に存在したらどのような状況に置かれたんだろう… ということをリアルに思い描いたことはなかったので、本書の主人公である十四歳の少年「比嘉真一」が、現地召集の少年兵(鉄血勤皇隊)として沖縄での凄惨な地上戦経験した日々が淡々と綴られている本書を読み、初めて当事者の立場として沖縄戦を考える機会になりました。

    そこには第三者として戦争を思い描く際の勇壮さ、壮烈さはなく、凄惨で悲壮な世界しか感じられませんでしたね。

    例えば、重傷者や死者に囲まれた壕での生活、、、、

    暑さ、湿気、臭気(死臭・腐臭・膿汁臭… )に満ち、足元が汚濁した環境の中で、排便、排尿の処理もままならず、膿んだ傷口からはおびただしい蛆が湧き出る… 戦局が悪化の一途を辿る戦場での実情なんでしょうね。

    米軍上陸後は転戦(退却)を重ね、夜間に行動し、昼間は腐敗しつつある死体の山に紛れて身を隠す… 死体が浸かり、その死体から発生した蛆の大群が水面を覆う小川の水を汲んで喉を癒す、、、

    凄惨な体験の一部ですが、そんな状況下でも士気は一向に衰えず、退却の列の中で「真一」のような少年兵にすがりついてくる負傷兵に対し憤懣を感じる等、純粋無垢で強固な忠誠心や一人でも多くの敵を倒したいという使命感は、平和な現代では、想像し難い精神状態ですね。

    それだけ、当時は軍国主義教育が日本国内隅々まで徹底的に浸透していたんだろうと思います。


    生きていればしんどいことがありますが、当時のことを考えれば不満なんて言えないですよねぇ。

    平和な日本… 護っていかなきゃいけないですね。

  • 沖縄本島での戦闘を一中学生の目で見た記録文学。戦争の生々しさが恐ろしい。吉村昭独特の文章

  • 20210429

  • 沖縄の少年兵のお話。戦争を知らない世代だからこそ、定期的に戦争関連の本を読んで、悲惨さを語り継がなければと思う。読書として読後感が爽快になる類の本ではないが、親たちに聞いていた話より、小説の方がより描写がリアルで悲惨であった。

  • 沖縄戦の短編。吉村昭らしい、淡々と述べてくスタイル。沖縄戦のことは詳しくないが、この本を読めば二等兵として沖縄戦を追体験できる。

    死んだら靖国で会おうね。という無邪気な女子学生のセリフは今持ってる靖国への先入観をガラッと変えないとダメなのだなと感じた。

  • 徴兵された十四歳の少年の沖縄戦の記録小説。
    祖国防衛のために純粋な忠誠心、女性や子供を問わず、死と蛆が隣り合わせる、本当の戦場を体験させてくれる。腐敗した死体の臭いがしてくるようだ。
    主人公の祖国を守る美しい意思を、単なる集団ヒステリーだったと単純に断言できない。沖縄戦は、県民の意思なのか?国家としての命令?で参加したのかどうかは読者が考えなけばいけない。

  • 解説:福田宏年

  • 2015.11.6(金)¥100+税。
    2015.11.15(日)。

  • 沖縄戦を題材にしたドキュメント小説。重い内容。12/9/14Sold

  • 記録文学。
    確かに沖縄戦で現実にあったであろう情景が、ある意味では抑揚の無いタッチで描かれています。
    英雄的な人物や、戦場の恋が出てくるでもない。
    映画化には程遠いと思います。
    それでもほぼ一気に読みきりましたし、読後に胸にせまるものがあります。
    圧倒的に「リアル」だからだと思います。
    もう少し他の作品も読んでみます。

  • 描写がすごーく丁寧なので、蛆が肉を食む音が聞こえてくるような。
    死体からにじみ出る腐敗の液が匂ってくるような。
    蠅の羽音が耳元でうるさく、暗い壕内で、押しつぶされていくような。

    読んでいるだけで錯覚する。

    沖縄戦ということで、古処誠二も読んだけど、どうもすっと入ってこない。むしろ何かしら振り払いたくなってしまうんだが、殉国は気がつくとその場にいるような感覚に捕らわれる。

  • (欲しい!/文庫)

  • 沖縄決戦を迎える中学3年生の比嘉真一「二等兵」の複雑な心の中が極めてリアルです。誇らしげな気持ちで、日本人としてお国の役に立ちたいと言う純粋な気持ち、米軍に恐れを感じることなく、戦闘の現場に出たいと思いつつ、それが帝国陸軍の兵士たちへの失望など、経験を通して成長していく姿を見ることが出来ます。著者のいつもの淡々としたリアルな描写が生々しく正に映画を見るような現実感があります。沖縄戦の悲惨さを改めて知らされました。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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