新装版 海の祭礼 (文春文庫) (文春文庫 よ 1-42)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (490ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167169428

感想・レビュー・書評

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  • 先日、「ブラタモリ•利尻島」を見ていたら、ラナルド•マクドナルド(1824〜1894)というアメリカ人の記念碑があるということが紹介されていた。何処かで聞いたような…と思っていたら、この作品でした。

    ネイティブアメリカンの血を受けた彼は、日本に興味を持って幕末の1848年に利尻島に単身密入国します。長崎で幽囚の身となりますが、長崎通詞だった森山栄之助(1820〜1871)らに英語を教授します。物語は、森山栄之助がその後関わっていく幕末の外交交渉史を俯瞰的に描いていきます。一般的に、薩摩•長州ら新政府側からの視点で描かれる事が多い『幕末史』を、幕府側の外交下役だった一通詞の視点で見ることはとても新鮮に感じました。

    …それにしても、パレスチナでの戦闘やウクライナ侵略戦争が続いている次節柄、"アの国"の傲岸不遜ぶりがどうしても鼻につきます。昔からずっとこうだったんだなぁ。
    マクドナルドのような人物がいたという事が、何か奇跡のようにも思えます。

  • ノンフィクション感のあるフィクション

  • 読みづらいが、読み応えあり。
    感情やセリフが少ない分、妙に心情が響く。
    歴史に埋もれて名も残らない方々にスポットを当て、調べ上げる作業は大変であろう。
    それを一冊の本としてまとめ上げられたからこそ、こうやって知ることができる。大変ありがたいことだ。

  • いつもながら筆力・迫力満点で、真面目な努力を考えさせられました。

  • 幕末の英語の通訳の話ですが、
    外国の動きも知れて面白かった。

  • 守山栄之助(多吉郎)の墓所が巣鴨「本妙寺」に有り。
    戒名:晴心院茶山日勇居士

  • 主人公は、米国人ラナルド・マクドナルドとオランダ通詞森山栄之助の2人である。マクドナルドは、スコットランド人の父とネイティブ・アメリカンの母の間に生まれた。それ故に白人から差別を受けるとともに、船員として世界を回りながら奴隷売買の現実も知る。そんな中で彼が憧れたのは、ネイティブ・アメリカンの祖先の地とされるアジア、就中西洋列強に対して国を閉ざしている神秘の国日本であった。日本語を学び英語を教えることを夢見て、彼はついに日本近海で捕鯨船から単身下船し、漂流民を装って鎖国日本に足を踏み入れる。もちろん彼は囚われて長崎に送致されるが、穏やかで礼儀正しい彼に日本側は好感を抱き優遇した。それどころか、英語学習の必要性を痛感していたオランダ通詞たちの求めに応じて、彼は念願の英語教師として英語を教えることになる。そのオランダ通詞たちの筆頭が森山栄之助であった。マクドナルドが本国に送還されるまでのたった半年ほどの期間、2人はそれこそ寝食を共にするようにして学習に励んだ。その後2人の人生が交錯することはなかったが、この凝縮された時間を終生忘れることはなかったようだ。それ故に、それぞれの最期が心に沁みる。

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  • 太平の 眠りをさます上喜撰 たった四杯で 夜も眠れず
    青天の霹靂、浦賀沖に突如現れたペリー艦隊に、無能な幕閣は何もできず右往左往するばかり。教科書的な1853年はこんなところだろう。
    自分も基本的には同じような認識しか持っていなかったが、それならなぜ、世界を蚕食する列強の圧力から日本が植民地化を免れたのか。色々な要素はあるだろうが、しっかりとコミュニケーションができた、というのが、交渉の大前提となっているはずだ。本書を読むと、それを支えたのが、ほとんど一人の人物であり、その「師匠」とも言える人物との間で温かみのある人間的な交流があった、となると、冒頭のような一面的な見方ががらりと変わって立体的に見えてくる。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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