逃亡 新装版 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2010年9月3日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167169480

みんなの感想まとめ

人間の心の葛藤と成長を描いた物語は、戦時中の恐怖と逃亡をテーマにしています。主人公は過酷な状況に追い込まれ、恐ろしい行為を経て逃げることになりますが、その背景には時代の影響や複雑な心理が絡んでいます。...

感想・レビュー・書評

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  • 彼の作品はどのお話も読み終えた後にずっしりと深く心に残るものがあります。40年ほども前に記された文章ですが、相変わらず決して古臭さを感じさせません。そして、読み始めるとページをめくる手が止まらなくなります。

    主人公は戦時中に大変恐ろしい行為をしてしまうことにより逃亡することになったのですが、これも時代の流れ、背景がそうさせたこと。決して彼の若さ、気の弱い部分があったことだけが原因ではありません。ただ若い彼がそれほどのことをしてしまうまでの心理状況に、自分が彼の立場だったらどんな行動に出るだろうか、同じことをしてしまったかもしれないと感じます。

    人間の弱い心が起こした大事件でしたが、生きるために逃亡の計画を練る頃から少しずつ強くなり力を付け成長していきますが、その強さに惹かれ、そしてその過程の描かれ方が素晴らしいと思いました。

  • 逃げ続ける恐怖と緊張感、戦中戦後の空気の変化、じわじわとくる。
    しかし、どうにも主人公のことが理解できないまま終わった。

    主人公は弱いのに、強い。
    知能はないけれど、生きる本能は長けている。
    だからそのために自分で自分を窮地に追い込んでおいて、生き残る。
    だから理解ができなかったのかもしれない。

  • これは面白かったわ。ハードボイルドではあるけれど、そこまでグロい箇所は全くなく、不快さは無い。ストーリーの展開が秀逸なのと、実際の調査の上であったかもしれないフィクションが絡んでいる。戦時下の状況は考えられないほどこのような場面の過酷な日々、状況が日本国内にあっただろうことを感じた。

  • 面白くて一気に読んでしまいました。
    主人公の後ろめたさに感情移入して、私も何かから逃亡しているような心地がしました。下腹部がゾワゾワするような感覚がいまも残っています。


  • 吉村昭さんの作品は淡々と書かれているので何とも言えない怖さがある。
    幸司郎が全て誤った判断で罪を重ねていく前半部分と、その罰から逃れるためにあらゆる思考を巡らす後半とで主人公に対する印象が180度変わる。
    戦争の渦中にあって、規律にしばられ倫理的に暴走していく旧日本軍の影響を強く受けた者は冷静な判断ができなくなるという受け取りかたをしました。
    そして、逃げてはいるがしかし自由に自分の思考を活かせる環境下で徐々に冷静に人間らしさを取り戻すように感じました。

    物語の構成も、第三者の目線から描かれていて、いわばネタバレからスタートしているのがなんとも面白い。

    すっきりした読後感ながら、やっぱり「U」の正体、「山田」の正体が気になってしまいます。

  • 「吉村昭」の長編小説『新装版 逃亡』を読みました。

    この季節になると第二次世界大戦に関連する作品を読まなきゃな… という気持ちになるんですよね、、、

    「吉村昭」作品は、昨年10月に読んだ『漂流』以来ですね。

    -----story-------------
    戦争に圧しつぶされた人間の苦悩を描いた傑作

    軍用飛行機をバラせ……戦時下の緊迫した海軍航空隊で、若き整備兵が背負った過酷な運命とは?
    初期の力作長篇が待望の再登場
    解説・「杉山隆男」
    -----------------------

    1971年(昭和46年)に発表された作品… 逃げる男の心理を、戦争という暗い存在とともに巧みに描いた傑作でしたね、、、

    当時の風景や雰囲気が、すっと頭に浮かんできて、まるで本当にその場に居るような感覚に陥るほどの、とても丁寧な描写に惹き込まれ、そして、主人公に感情移入しながら読めて愉しめました。


    霞ヶ浦海軍航空隊に所属していた若い整備兵「望月幸司郎」は、外出先から隊に戻る際、上野駅で最終列車に乗り遅れ激しく動揺する… その時、助けてくれたのが「山田」だった、、、

    年長の「山田」に親しみを抱き、信頼を寄せるようになった「望月」に「山田」は航空隊が管理している落下傘を持ち出すよう頼んできた… ためらいながらも「山田」の求めに応じた「望月」だったが、そこから彼の運命は狂い始める。

    そして、落下傘窃盗の発覚を防ぐために「山田」の指示で九七式艦上攻撃機を爆破することに… その犯行が発覚しそうになり、「望月」は軍を脱走して“逃げる立場の人間”へと追い込まれていく。

    「望月」は、東京に出て運送店に勤めるが、顔をさらすことに危険を感じ、軍属として北海道に渡る… 過酷な労働に耐え、再度の逃亡の後、終戦に救われる、、、

    この作品はフィクションなのか、ノンフィクションなのか… どちらとも解釈できるようなミステリアスなプロローグとエピローグが良かったですね。

    でも、ホントに逃げる男の心理の描き方が絶妙でしたね… ひとつの嘘を隠すために、嘘を積み重ねることになり、軍から逃れようとする主人公、、、

    作中、ずっと続く恐怖と緊張感、焦燥、苦悩がリアルに感じられて心がヒリヒリする感じ… 久しぶりの「吉村昭」作品でしたが、面白くて大満足でした。

  • ストーリーの面白さから、あっという間に読み切れる作品である。
    戦時中の混沌とした時代背景の中、主人公は謎の人物に操られるように、犯罪を犯していく。そして逃げ続ける。最後まで、謎の人物の具体的な正体は掴めないが、主人公を操ったまま、小説は終える。

  • 少年兵の脱走をテーマにした小説。逃亡劇をドラマチックに描いた作品。太平洋戦争下の日本で自ら起こした数々の事件を主人公目線で描いている。

  • ひとつの嘘を隠すために嘘を積み重ねていく男。
    戦時下、あらゆる物が不足している中で、海軍航空隊から逃亡を図る。
    紙面から伝わる緊迫感、焦慮、恐怖、苦悩。
    過酷な逃亡生活を克明に描き切った傑作。

  • 人間の弱さ、そして、作中ずっと続く、主人公が体験する恐怖と緊張感を、自分も味わう。

    太平洋戦争末期、主人公が犯したある犯罪が引き金となり…。

    一気に読んだ。

    終戦前後の空気感も背景として描かれている。

  • 「逃亡」は、「戦艦武蔵」の後に書いている。吉村昭の真骨頂とも言える史実に忠実な記録文学の手法は、「逃亡」のあと「破獄」や「長英逃亡」、「桜田門外の変」で、逃げ惑う人間の内面の描写に見事に引き継がれていく。
    人間は、思いがけないことをしてしまうもの、というなんでもない所作がストーリーの中で驚愕の展開で迫ってくる。
    語られない戦時下の出来事が、まさに人間の本質として表現され、また、触れられてこなかった戦時下の闇の怖さが伝わってくる。

  • 海軍の若者が一寸したミスから軍用機爆破、そして脱走へと追い詰められて行く。その心理の動きに大変迫力があります。読んでいる私たち自身にもほんの小さい嘘が取り返しのつかない犯罪に結びついてしまうという恐怖感を感じるからでしょうか。太平洋戦争末期という異常な社会のもとで、未熟な青年の心の動きから国家的犯罪者へという運命の重さを感じます。冒頭のこの記事を書くことになった経緯のプロローグもまた秀逸でした。それにしてもこの作家は逃亡というテーマの取り上げ方が巧い人です。

  • 平成25年5月11日読了。

  • 私の好きな逃亡モノ。ノンフィクションみたいやけど、逃げる理由に今一つ、感情移入できず。「にげろ!」って思いながら読めんかった。

  • 2012.10.13(土)。定価¥495。
    2012.10.22(月)。

  • 2012/07/31-09/04 アメリカのテレビ映画逃亡者のリチャード・キンブルのようなハラハラ感はない。幸司郎が自ら選んで人生を破綻させていく、自堕落感さえ漂ってくる。構想に筆がついていかないまどろっこさを感じる。

  • 舞台は太平洋戦争中の日本。ある青年兵は些細な過ちをきっかけに、日本軍から脱走する。彼は長い逃亡生活を経て、庶民として現在にも生き続けた。そんな元青年兵のことを偶然に知った著者は、彼への取材を通してその過酷な生き様を小説スタイルで浮かび上がらせる。

    青年兵の逃亡中、日本は敗戦を迎え、彼は家族と再会します。フィクションならば、まさに感動の名場面。が、著者はこのシーンに多くの枚数を費やさない。逃亡兵という非国民の家族。戦争中、そんな嘲りを受け続けた者たちにとって、いくら家族でも、その青年兵に許せない感情を持っても不思議じゃない。青年兵は再び、戦後のすさんだ世界へ一人で戻っていく。そこで、小説は完結。

    そんな突然の幕引きに戦争の不条理さ、悲惨さを感じる。しかし、元青年兵は他人に初めて逃亡生活のことを語ったことで、気持ちに踏ん切りがついたのか、著者にこう語る。「よく眠れます。すべてをお話ししてから不思議なほど眠れるのです。」

  • 戦争という自らの力ではどうしようもない状況下。
    置かれている状況からただひたすら逃れようとするが、受身的な逃亡は結局次の逃亡に繋がっている。
    自らの力で逃亡したラストの主人公の姿が象徴的。

  • 緻密な取材と、その構成力は言うまでもありませんが、事実に対する感受性は、だれもまねができません。吉村昭は素晴らしい。その中でもとりわけ好きな作品です。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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