波のうえの魔術師 (文春文庫 い 47-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167174071

作品紹介・あらすじ

あの銀行を撃ち落とせ!謎の老投資家が選んだ復讐のパートナーはフリーターの"おれ"だった。マーケットのAtoZを叩きこまれた青年と老人のコンビが挑むのは、預金量第三位の大都市銀行。知力の限りを尽くした「秋のディール」のゆくえは…。新時代の経済クライムサスペンスにして、連続ドラマ化話題作。

感想・レビュー・書評

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  • 自分が若かった頃読んだ本の再読ブームが来ている。
    当然ながら昔と受ける印象はかなり違うと感じた。

    最初に読んだときはくすぶっている若者の成長譚、あるいは悪事を働いた巨大な銀行を知恵とスキルで手玉にとるクライムサスペンスとして楽しんだものだった。

    同じ小説でも時を経て読んでみると依然面白いのだが、なんともやりきれない感じが残った。
    「罪と罰の非対称性」とでも云うべきか。

    確かこの小説が原作のドラマ「ビッグマネー」では融資つき変額保険を作った張本人(確か原田泰造さんが演じてた気がする)が罰を受けた記憶がある。それがテレビの大衆性ってことなんだろうが、現実はそうは行かない。

    大体罪を犯す者と罰せられる人間は別である。
    白戸もその辺りは理解していて、今の行員に同情はしているが、まつば銀行をはめるディールの手を緩めることはしない。
    またディールの成果を得るのも一部の人間であるし、失われた命が戻ることもない。

    資本主義が続く限り我々に逃げ場はなく、否応なくプレイヤーにさせられる。

    せめて我が身と、手の届く範囲の人位は守れるようにしたいものだ。

    これ聴きながら読んだ
    ELLEGARDEN『Fire Cracker』

    併せて読みたい
    伊坂幸太郎『SOSの猿』

  • とても勇気づけられる作品。
    ひとりきり孤独に貧しいものは、まだ金をつくっていない金もちにすぎない。という言葉がなぜか最後まで頭に残っていた。その上で徐々に成長していく主人公を見ていると胸にくるものがありました。

  • テンポもよく、主人公たちのモチベーションには十分共感できるので面白かったです。
    でも、なんかねえ、主人公が格好良すぎるのよ。

    地方から出てきてそこそこの大学に一浪して入り、5年かけて卒業したものの半年もの間就職浪人してパチンコで日銭を稼ぐ。
    よれよれのスエットを着てちびたスニーカーを履いて過ごす毎日。
    そんな主人公が、ちょっと見ただけでオーダーメイドのスーツの出来について語り、クラシックの曲や演奏について語り、当たり前のようにその家具のデザイナーについて語る。

    そういう人がいないとは言わない。
    地方から出てきたってスーツや音楽や家具に造詣の深い人はいるだろう。
    だけどこれ、フィクションなのよ。小説なの。
    そんな主人公が、下から這い上がってきた人物だと読者は思うだろうか。
    なぜわざわざそんな人を主人公に据えたのかな。

    どうにも作者の顔がちらついてしょうがなかった。

    同じように若くてちょっと世間をかじっただけの若者が、その道のプロに導かれて偽札作りの腕を磨いていく小説「奪取」には、そんなこと感じなかったんだけど。
    もちろん作者真保裕一の顔は知っている。でも。

    かっこ悪いやつがかっこ悪く這い登っていく話だったら、もっと私は面白く読めたのにな、と残念。
    これはあくまで私の趣味ですから。
    格好良い若者が、まじめに一生懸命に株式の勉強をして恋をして世の中を知っていく話。
    どんでん返しももちろんあります。
    仕掛けはうまくいくのか、復讐は成し遂げられるのか。
    そもそも誰の復讐なのか。
    上手い小説です。

  • 株式投資と銀行を舞台とした物語。前半は株式投資に出会って成功と失敗を繰り返しながら成長していく所にリアリティがあって面白い。後半はリテラシーの無い人に金融商品を売りつける銀行の闇の部分を暴く所が痛快で面白い。体験に裏付けられた投資格言がたくさん出てくるのも見どころ。『株は海水と同じ、喉が乾くと海水でもどんどん飲みたくなるけど、飲みすぎると死に至る』と言う言葉が刺さる。

  • 面白かったけど、まあ普通。
    主人公の白戸君をかっこよく描きすぎじゃないかと。ちょっと白々しくなるような個所が多々ありました。だって、部屋に入って流れてるクラシックが、まあブラームスだとか曲名や作曲者が何だとか分かるとしても、聞いただけで指揮者(かな)が目の前に浮かんだり、初対面の人がきてるスーツを「XXXXの上下を着て」みたいなそんなわかるかって、なんか人間味ないというかかっこよすぎてしらじらしいというか、しょっぱい感じがして、こういうのは好きじゃない。

  • あらすじ(背表紙より)
    あの銀行を撃ち落とせ!謎の老投資家が選んだ復讐のパートナーはフリーターの“おれ”だった。マーケットのAtoZを叩きこまれた青年と老人のコンビが挑むのは、預金量第三位の大都市銀行。知力の限りを尽くした「秋のディール」のゆくえは…。新時代の経済クライムサスペンスにして、連続ドラマ化話題作。

  • 実は、石田 衣良を読むきっかけになったのは、この作品のテレビドラマ「ビッグマネー」*1でした。
    まあ、あんまりテレビを見なくなってた時期だったので、かなりいい加減にしか見られてなかったのですが、なんか、気になるドラマでした。

    これに出てくる老人が、植木 等で、これが格好いいんだ。

    で、原作の「波のうえの魔術師」という原作があることを知って、読もうと思って、石田衣良に手を出したわけです。

    あれから、数年(笑)。やっと、読めました。

    老人の名前は、小塚。やっぱり、格好いいわ。

    まあ、株の話はよくわからないので、途中、「なんのこっちゃ??」っていうのはあったのですが……。

    ちなみに、これ、妹も読んでました。

    「全然、おもしろくなかったわ」

    という感想でした。
    株とか、マネーゲームに、全然理解や愛がないのは、そういう血だからかもしれません。

    でも、それなのにあの無精な人が(スマン)最後まで読んだというのはけっこうすごいなぁと思いました。
    なんか、読ませるものがあるみたいです。

  • 石田衣良の描く経済小説。ラブストーリーではないところに惹かれて手に取ってみた。

    得体の知れない老人にハントされ、投資の世界に足を踏み入れていく大学生の僕。老人に投資のいろはを仕込まれ、最後には高齢者の財産を踏みにじった都銀に戦いを挑んでいき…

    プラザ合意に始まるバブル景気の歴史や、変額保険などの金融商品について、物語を読めばざっと理解できる。

    ミステリー&青春小説仕立てなので、経済小説初心者にはオススメです。

  •  石田衣良らしからぬ、株式トレーディングの話。
    ある老人が、うだつのあがらない(カイジの最初みたいな)青年に声をかけて、株トレードを仕込み、バブル崩壊後融資つき変額保険の加害者ともいえる大手銀行に痛手を負わせるために2人で仕掛けていく。。。という話。
     私は数字が苦手だから株のことはわからないし興味もないけど、こういう物語は嫌いじゃない。 

     それにしても、電話1本で大金を右から左へ動かす株式の世界を見ると、仕事って一体なんだろう。。。って思う。金って一体なんだろう。

     私ももっと金を得ようとする努力をしなきゃいかんな

  • 石田衣良らしく、スピード感有。ある程度の知識さえあれば、楽しめる。もうちょっと勉強してからもう一度読みたい。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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