聖徳太子 4―日と影の王子 (文春文庫 く 1-26 日と影の王子)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167182267

感想・レビュー・書評

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  • 本棚の奥に並んでいた古い文庫本を再読。

    蘇我氏と物部氏の合戦から遣隋使派遣や斑鳩宮建設の頃までのまでの厩戸皇子(聖徳太子)の青年時代を描いた小説。

    蘇我氏の一族である用明天皇の皇子に生まれ、聡明な皇太子として大きな期待を受けながらも、大王以上の権力を持つ蘇我馬子の傀儡とならないようバランス感覚を保ちながらも自分の理想とする政治・国づくりを目指す。

    刀自古郎女、菟道貝鮹皇女をはじめ厩戸を取り巻く女性や舎人たちとの関わり方など、人間性を現代的に描写しながらも、歴史的事実や通説への疑問点など知的情報が網羅されていて古代史初心者には興味深い内容でした。

  • 【1〜4巻総評】素晴らしい小説でした。厩戸王子の人間らしさがあふれ、古代に生きる人々の生きる苦しみがありありと表現されています。馬子、蝦夷との政治は一歩間違えれば暗殺される可能性もあり、読んでいて非常に恐ろしい。政治とはこうも難しく、かつ面白いものだったと再発見しました。そしていつの時代でも偉大な人物の子孫は続かないようです、聖徳太子の後継の山背大王は父の後を継げませんでした。まだまだ続きが気になるところですが、聖徳太子の生涯を最後まで味わいことができました。

  • 「聖徳太子(4)」黒岩重吾著、文春文庫、1990.05.10
    406p ¥480 C0193 (2021.12.12読了)(2001.12.15購入)
    冠位十二階の制定、遣隋使の派遣、斑鳩宮の造営、と事業を成し遂げたあたりで終わっています。まだ20代です。49歳で亡くなったということですので、残り20年は、描かれませんでした。
    17条憲法の制定は、史実ではないというのが通説だそうです。
    全四巻に渡って楽しませてもらいました。

    【目次】
    斑鳩への夢
    冠の煌き
    海の彼方に
    戻った山背王
    終章
    参考文献
    解説  尾崎秀樹

    ☆関連図書(既読)
    「聖徳太子(1)」黒岩重吾著、文春文庫、1990.04.10
    「聖徳太子(2)」黒岩重吾著、文春文庫、1990.04.10
    「聖徳太子(3)」黒岩重吾著、文春文庫、1990.05.10
    「「日出づる処の天子」は謀略か」黒岩重吾著、集英社新書、2000.02.22
    「聖徳太子 ほんとうの姿を求めて」東野治之著、岩波ジュニア新書、2017.04.20
    「日出処の天子(1)」山岸涼子著、白泉社、1980.08.25
    「日出処の天子(2)」山岸涼子著、白泉社、1980.12.25
    「日出処の天子(3)」山岸涼子著、白泉社、1981.04.25
    「日出処の天子(4)」山岸涼子著、白泉社、1981.11.25
    「日出処の天子(5)」山岸涼子著、白泉社、1982.04.25
    「日出処の天子(6)」山岸涼子著、白泉社、1982.09.25
    「日出処の天子(7)」山岸涼子著、白泉社、1983.03.25
    「日出処の天子(8)」山岸涼子著、白泉社、1983.08.24
    「日出処の天子(9)」山岸涼子著、白泉社、1984.02.23
    「日出処の天子(10)」山岸涼子著、白泉社、1984.07.24
    「日出処の天子(11)」山岸涼子著、白泉社、1984.12.25
    「聖徳太子(1)」池田理代子著、創隆社、1991.11.08
    「聖徳太子(2)」池田理代子著、創隆社、1992.02.20
    「聖徳太子(3)」池田理代子著、創隆社、1992.06.15
    「聖徳太子(4)」池田理代子著、創隆社、1993.03.31
    「聖徳太子(5)」池田理代子著、創隆社、1993.07.24
    「聖徳太子(6)」池田理代子著、創隆社、1993.10.29
    「聖徳太子(7)」池田理代子著、創隆社、1994.11.10
    「飛鳥の朝廷 日本の歴史 3」井上光貞著、小学館、1974.01.31
    「飛鳥王朝の悲劇」大羽弘道著、光文社、1977.01.31
    「蘇我蝦夷・入鹿」門脇禎二著、吉川弘文館、1977.12.01
    「飛鳥 新版」門脇禎二著、NHKブックス、1977.12.20
    「隠された十字架」梅原猛著、新潮文庫、1981.04.25
    「NHKさかのぼり日本史⑩奈良・飛鳥」仁藤敦史著、NHK出版、2012.06.25
    (「BOOK」データベースより)amazon
    皇太子廐戸皇子は、つぎつぎに新しい政策を打ち出した。斑鳩宮の造営、冠位十二階の制定、飛鳥寺の建立、遣隋使の派遣…。さすがは皇太子、と蘇我馬子は表面上感心してみせたが、その胸の底には廐戸を傀儡として操ろうという強烈な意志が潜んでいた。廐戸の野望と挫折を描いた古代史大河小説完結篇。

  • 黒岩氏の描く聖徳太子に引き込まれ、まだまだ読んでいたい、もっと聖徳太子の考えている事を知りたい。馬子とどう対峙していったのか、山背王の教育をどんな風に描くのか興味がある。
    終わるのが惜しいと思った本に出会えて良かった。

  • 名前が長いので黙読するのにも時間がかかります(笑)。4巻目にしてようやく長い名前にも慣れた気がしました。
    廐戸皇子が権力者の馬子とぶつからないよう上手く立ち回り、自分の理想とする政治を実現しようとする姿を書いた本巻。廐戸皇子が自分の妃達の嫉妬に手を焼く姿や、師と仰ぐ慧慈に助言を求めたりと人間らしい姿をみると、あの肖像画のイメージが少し崩れ、身近に感じられました。彼が大王(おおきみ)になり、彼の理想が実現されたならどんな世の中になっていったのかなぁと想像してしまいました。

  • ようやく全巻読み終わった。

    最終巻は、厩戸が23歳から30歳手前までの、摂政皇太子として自らの政治理想を形にしていった全盛期のころを描いている。

    冠位十二階の制定、斑鳩宮の建立、遣隋使の派遣などなど。
    馬子との葛藤や政治的な駆け引きを続けながら、自らの地位・権威をより強固なものに固めていったことがわかる。

    残念ながら、小野妹子の第二回遣隋使派遣や、斑鳩寺(法隆寺)建設までの部分は描かれていない。

    全巻を通して見えてくる聖徳太子の人間像としては、
    当時としては珍しいくらい、ニュートラルな考えの持ち主であったこと(人間平等主義、成果主義、家族主義)
    平和主義で戦争を嫌い、ゆえに仏教に帰依するようになったこと、
    後世に言われるような御仏のような存在ではなく、あくまで人間の普遍的な欲を持ちながらも、繊細で感受性高く、策略家でもあったこと、
    など、
    要は彼もまたひとりの人間でありながら、立場的に権力抗争に巻きこまれつつも、理想を貫くべく奔走してきた姿が垣間見えた。

    面白かったです!


    ・馬子による飛鳥寺の建立が完成
    ・河勝の紹介で調使麻呂を舎人長として仕えさせる
    ・高句麗僧:恵慈と親交を深め、伊予の道後温泉にも
    ・刀自古郎女は、菩岐岐美郎女を嫉妬し、菟道貝蛸皇女は刀自古を嫉妬していた
    ・599年、群臣の反対を受けながらも冠位十二階を制定。中国の五常思想(仁・礼・信・義・智)に、徳を加え、それぞれ大小の二回層に分け、大徳を最高位とした。ちなみに、大徳には、蘇我氏が懇意にしていた軍臣:阿倍氏が内定。河勝も渡来系氏族としては異例の大礼に内定。
    ・遣隋使を迎えることを口実に、斑鳩宮を建立、上宮より居を移す。政治の場は飛鳥で、厩戸は斑鳩より通っていた。
    ・刀自古は第三子日置王を生み、菩岐岐美は春米女王を生む
    ・菟道貝蛸皇女は、結局、子供ができないまま、労咳で死去。姪にあたる橘大郎女(尾張皇子の娘で推古天皇の孫)を厩戸に嫁がせ、厩戸の血縁を保つ
    ・近くの国とうまくいかないときは、遠くの国と親しくすべしという兵法の教えから、遣隋使派遣を決行。朝鮮三国の平定を目論むと同時に、隋との国交をもつことで先端文化の吸収につとめる。
    ・第一回遣隋使派遣は、600年。第二回は、小野妹子が行った607年。対隋的には厩戸が倭国の大王(あめたらしひこ)として名乗り、対朝鮮的には馬子がその位置を占めていた。対内的には、豊御食炊屋姫(推古)が神祇を司る最高位の大王、厩戸は仏教法大王で皇太子、実質的な政治の実権は馬子。
    ・山背王が11歳で斑鳩宮に戻る。甘やかされて育ち、自尊心が強く理屈っぽいところが政治に向かず、後年は蘇我蝦夷らに追われ、643年に一族自決。
    ・蝦夷の警護隊長:東漢坂上直麻呂と、厩戸の舎人長:調使麻呂の武芸仕合は、引き分け
    ・晩年(厩戸30代後半)608年ごろから馬子から疎外されるようになり、仏教の研鑽・布教に専念。49歳で死亡。一日前に菩岐岐美を亡くしており、厩戸は毒殺をおそれ、末期の水を与えなかったと言われている。

  • 皇太子廐戸皇子は、つぎつぎに新しい政策を打ち出した。斑鳩宮の造営、冠位十二階の制定、飛鳥寺の建立、遣隋使の派遣…。さすがは皇太子、と蘇我馬子は表面上感心してみせたが、その胸の底には廐戸を傀儡として操ろうという強烈な意志が潜んでいた。廐戸の野望と挫折を描いた古代史大河小説完結篇。

  • 飛鳥
    聖徳太子

  • 教科書の神様みたいな聖徳太子しか知らなかったから、当たり前だけど彼にも悩みが有った事を知った。思っていたより、ずっと、哀しい人だ。

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著者プロフィール

1924-2003年。大阪市生まれ。同志社大学法学部卒。在学中に学徒動員で満洲に出征、ソ満国境で敗戦を迎える。日本へ帰国後、様々な職業を転々としたあと、59年に「近代説話」の同人となる。60年に『背徳のメス』で直木賞を受賞、金や権力に捉われた人間を描く社会派作家として活躍する。また古代史への関心も深く、80年には歴史小説の『天の川の太陽』で吉川英治文学賞を受賞する。84年からは直木賞の選考委員も務めた。91年紫綬褒章受章、92年菊池寛賞受賞。他の著書に『飛田ホテル』(ちくま文庫)。

「2018年 『西成山王ホテル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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