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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784167184308
みんなの感想まとめ
人の存在や倫理について深く考えさせられる物語が展開されます。着物の下絵作家の巨匠に破門された男が、再び弟子入りを願うところから始まるストーリーは、殺意を抱く瞬間に至るまでの心理描写が印象的です。夏樹静...
感想・レビュー・書評
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夏樹静子だから、とりあえず殺人事件が起こって、誰が解決するのかなと思いきや、これはSF?ホラー?それとも社会派?
着物の下絵作家の巨匠百合沢に一度破門された男が、再度弟子入りを願いに行ったところ、才能だけでなく作家の存在自体を否定され、殺意を抱く。帰り道で百合沢を見かけ、手に持っていたナイフでめった刺しにするが、その後百合沢は生きているとの記事を目にする。
この本の売りは「夏樹静子って、こういうのも書くんだ」という点のみであって、☆4をつけているのはそれだけである。面白いとかそういうことを書いても、夏樹静子なんて80年代ミステリブームの人でしょ、と切って捨てられるだけなので。
まず、最初の殺人(?)は、コテコテといろんな盛り付けはされるものの、ちょっと動機も何も単純すぎるし、偽装も何もしようがないし、どうやってこれを最後まで引っ張るのかと思うだろう。しかし、次の章でなんだか分けのわからない話が始まり、中盤までに読者全員が「あーなるほどね」と解ってしまう。
その解ってからがしばらくもどかしく、早い話が解っているのにわからないふりをするような話が続くので、間違いなくだれてしまう。
終盤、事件が起こるあたりから一旦話がリズムよく進むのは、やはり殺人事件=解決のために警察が動くというあたりを描きなれているからであろう。それ以外の描写は全体にイマイチだ。
いろいろと都合が良すぎるのはともかく、むちゃ描きよんなと思いながら読んでいると、ちゃんと「HLAの一致を確認」など、調べたあともしっかりあって、だったらもう少し倫理観的な部分を典子と読者に丸投げするんじゃなくて、両論のせめぎあいで後半を占めたほうが良かったのではないかというのがネタバレ的な締め。 -
文春文庫から新装版が出たので再読。
最初に読んだのはもう何年前になるだろうか。
この小説が書かれたのが1980年ごろなので、がん告知などのあり方が今とは少し違っている。それをのぞけば、マスコミの反応などほとんど現在と変らない。
つまり、技術だけははるかに進歩しているけれども倫理面に関してはまったく進展がないということなのだ。
最近は臓器提供が少しずつ増えてきたけれども、「移植」という医療行為に関する立ち位置はあまり明確にはされていない。移植される方から見れば「喜ばしいこと」であるが、移植のために臓器を摘出される方から見ると常に「取られる」という被害的な捉え方がされている。たぶん人には判断のつかない問題なのだろうと思う。
人の存在は「脳」で決まるのか、「肉体」で決まるのか。答えはまだ出ない。
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