希望の国のエクソダス (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 364
  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167190057

感想・レビュー・書評

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  • ◆ネタバレがありますので未読の方はご注意ください


    ポンちゃんの国会参考人招致まではとてもおもしろかったのだが、最後はなんとなく尻切れトンボのように感じてしまった。経済についてかなり書き込んであったがさっぱりわからない。なんとなく感じたのは経済というのは結局集団による活動の集合体であり、決まり切った法則によって動いているのではなく、群集心理のようなものによってその動きが決まってくるということ。大きな固まりなのでアタマが曲がっても全体がすぐに曲がりきれるわけではない、横滑りしながら曲がっていくが一定ラインを超えると今度は雪崩を打って曲がっていくというようなイメージ。

    ポンちゃんの国会での発言は非常に明快でカタルシスがあったが、小説としてはここがクライマックスになってしまった。その後ASUNAROが拡大していき、やがて北海道に移住して理想郷を築くあたりになってしまうと、逆にリアリティが薄くなっていき、作者がこれだけいろいろ調べましたということをただ並べているだけのような印象を受けてしまった。ボランティアを申し出て野幌郊外に占拠したラブエナジーがなにか事を起こし、それによって共同体が重大な危機を迎えるとかそういったラストに向かってのクライマックスがあるかと思っていたが、あっさりと排除されてしまったし。ポンちゃんも国会中継以降はすっかり影が薄くなってしまっている。冒頭のナマムギが日本に帰ってきてASUNAROと接触するというのもエピソードとしては描かれなかったし。

    前半が非常におもしろかっただけに後半が盛り上がらなくて残念。「愛と幻想のファシズム」も読んでみよう。

  • <blockquote>「こいつらに」
    そう言ってポンちゃんは校長を指さす。
    「何かをお願いしてもダメなんだ。こうして下さい、ああして下さい、これを下さい、あれを下さい、お願いしてもダメなんだって確認したじゃないか。奪うんだ。戦って、奪わなきゃいけない。奪うんだ、わかったか、奪うんだ。わかったか。奪って戦い取るんだ」
    中庭の生徒たちに何かが伝染していくのがわかった</blockquote>。

    <blockquote>「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない」 p314</blockquote>

  • 何度目かの再読。最初の読んだのが発刊すぐ後だったので2000年。17年前。当時はまだポンちゃん側に感覚が近いと思っていたが、自分の子供が、ポンちゃんや中村君の年代に。また違った感覚で読んだ。ポンちゃんが国会議員に対して「コミュニケーションできません」と答える場面は、今の自分に突き刺さる。

  • <u><b>この国には何でもある。だが、希望だけがない。</b></u>

    <span style="color:#cc9966;">2002年、一斉に不登校を始めた中学生がネットビジネスを展開し、遂には世界経済を覆した! 閉塞した現代日本を抉る超大型長篇</span>

    イライラしている時に村上龍はスカッとする。これが村上龍文学の私の一番好きなところ。誰かが、この『希望の国のエクソダス』を2000年版『愛と幻想のファシズム』と言っていたが、まさに『愛と幻想のファシズム』に似た読了感がある。

    ナマムギが発する「この国には何でもある。だが、希望だけがない。」という言葉は、きっと小説内だけではなく、今現在日本に住んでいる人間の多くが思っていることではないだろうか。私自身、そう思う時がある。新しい価値観が欲しい。そして本作では、新しい価値観・希望をポンちゃんたち中学生が提示してくる。それに寄り添いながら、支援しながらも、本当にこれで良いのだろうかと迷い続ける関口。スカッとしないけど、スカッしないその曖昧な関口の態度が好感が持てる。でも、その関口の曖昧な態度に好感を持つのは、自分を重ねて関口を正当化しているのだけか?うーん、、


    <blockquote>おれはまだ結論を出していない。</blockquote>
    私も、日本という国に対して、また、この小説の受け取り方について、まだ結論を出せそうにない。

  • かなり昔に読んだ作品。登録していなかったので、登録しました。
    主人公は子供たちのようだが、あくまで大人目線で描かれているところが、この作品の良いところ。
    子供たちの危うさを思いながら、少し羨ましくもある、大人達の葛藤が良く分かる。

  • 講評や、この本でよく言われる評価と同様に、日本の近未来を書いた本としてはおどろくほど未来に対する予測を当てているなという感想を抱いた。経済の流れもそうだし、「この国にはなんでもある、ただ希望だけがない」というこの本で最も強烈なメッセージに表される、日本の政治や体制。2000年頃に書かれた本ながら2018年である今でも同様のことが言われていることには率直に鳥肌がたった。

    と同時に、この本の文庫本のあとがきを読んでいて、当時の日本を率いるような”リーダー”たちが、この本を客観的に講評していることに対して、違和感を強く感じた。講評というものは客観的に本を分析し、それぞれの観点での評価、感想や筆者の心境や意図を探るものなのかもしれない。しかし、この本で強く訴えかけられたものは、誰もが認識しているこの国の大きな問題に対して、社会を担っているリーダーたち、体制側の人間が、その課題解決のボールを持っていない、持つことを避けているということであると僕は感じた。あとがき、講評で有名なリーダーさんたちが述べていることは、その課題の認識にとどまり、中には「ぽんちゃんが現れるないと変わらないのかもしれない」といった内容のことを書いている人を見て、まさに本書が示した国の現状を見事に体現されているなと感じた。

    正直僕はこの本を読むのが辛かった。それは別に、僕が何か強い課題感を持っていたり、この国をどうしたいか考えていることを表明したいわけではない。しかし、この本を読んで、そのメッセージに対して反対する、批判するならまだしも、それっぽく認識して、賛成して、無視するといった行為は、何もこの本の本質を掴めてはいないのではないかと感じざるを得なかった。ぜひこの本を読んだみなさんの感想を聞いて見たいと思う所存である。

  • 読み始めた時、てっきり2001年9月以降に書かれたものだと思ったら、違っていて驚いた。村上龍さんの目には、この世界はどんな風に見えているんだろう、そんなことを読んでいる間中思っていた。

    あとがきで、これは”ファンタジー”だと村上さんは書いているが、現実味があり過ぎるくらいある物語だと感じた。もしかしたら、書かれた2000年当時よりも2018年の今の方が、余計にそう思うのかもしれない。

    「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない」
    希望って何だろう。主人公の少年たちは、周りの大人たち、学校、国家に失望し、自分達で立ち上がり、自分達の手で理想卿を作り上げたわけだけど、結局、希望は持てるようになったんだろうか。

    そもそも、希望なんて必要としていなかったのかもしれない。「昔の方が情報が少なかったから、感情が豊かだったんじゃないか」そんな風に主人公が考える場面があるが、そうは思いたくないと思った。人間は間違えることはあるけれど、それでも進歩している、そう思いたい。昔の方が良かった、なんて思うようになったらおしまいだ。目の前の現実から目を背けて、静かにゆっくりと”死んでいく”国をただ黙って眺めている、そんな人生は送りたくない。そんなことを思った。

  • いま僕らが読み返すべき、もしかしたらある種のバイブルになる本。この話が現実で実現されるかもしれない世界に近づいているような気がした。

  • テロ、窒息しそうな日本。中学生。限定電子通過、再生エネルギー、未来。
    はぁ。ため息しか出ないほど良くできた本。何度も読みすぎてボロボロボ。

  • 10年以上ぶりに再読。
    著者の小説は暗い話が多いように感じるけど、
    この小説は終わり方も含めてまさに希望がある。
    今は仮想通貨が注目されているけれど、この古い小説でもその内容が描かれている。
    政治・経済も為になる。
    就職の氷河期についてもわかりやすく書いている。
    勉強になるなぁ。
    ちなみに相変わらず内容はあまり覚えてなかった。

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著者プロフィール

1952年長崎県生まれ。76年に『限りなく透明に近いブルー』(第75回芥川賞受賞)でデビュー。2003年には、514の職業を紹介した『13歳のハローワーク』が125万部を超えるベストセラーに。財政破綻した近未来日本を舞台にした『半島を出よ』(05年)では野間文芸賞を受賞。10年には『歌うクジラ』(毎日芸術賞)を電子書籍として刊行。 近著に『55歳からのハローライフ』、『オールドテロリスト』などがある。16年に『日本の伝統行事 Japanese Traditional Events』を刊行。

「2018年 『収録を終えて、こんなことを考えた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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