空港にて (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 2429
レビュー : 290
  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167190064

感想・レビュー・書評

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  • 村上龍に最近はまってて、たまたま手に取った一冊。自分が今まで読んだ他の作品に比べるとえぐい描写はほとんどなく、心情描写に焦点をあてて「時間を凝縮させた技法」で主人公の人生の背景や人間関係が描かれている。
    一遍話が終わったところで時間は大して進んでいないけれど、話の終わりには主人公のことをずいぶん知った気になって、気が付いたら感情移入していた。主人公たちは少し暗い部分を抱えていて、全体的にもやがかかったような雰囲気があり、その感じが個人的に良かった。自分も頭の中でよく考えるタイプなので、この描写の細かさ、面倒くささが気にいったのかもしれない。

  • 想像を掻き立てられながら読んでいたのですが、最後のサイトウで急に現実に引き戻されました。

  • 初の村上龍。読んでいて空気が淀んでいるような閉塞感を感じたにもかかわらず一気に読んでしまった。「空港にて」は希望を感じさせるラストてよかった。

  •  8編からなる短編集。
     8つの身近な場所があり、8通りの時間経過があり(絶妙な表現方法を用いている)、閉塞感を漂わせる8人の男女が登場する。
     話の流れを追う、というよりも、とある場所のとある時間を切り取った場面を描写している。
     過去は語られるが、未来は語られない。
     つまり、その場所から、その時間から、突き詰めて言えばその人生から、旅立つことが出来るのか、出来ないのか、希望は叶うのか、叶わないのか、それら一切は語られていない(最後の「空港にて」のみは、ホロリとする希望に満ちた作品ではあるが)。
     結果を求める人や、話の流れを読みたい人、突拍子もない出来事を楽しみにしている人にとっては、この本は退屈で仕方ないだろうな、と想像できる。
     僕は読み始めてから、ズルズルと引き寄せられるように、最後まで一気に読み通してしまった。

  • ひとつひとつの話は短いが、それぞれの人物の鬱屈した思いが凝縮されていて、一方で周りの人間はそれを知らずに「日常」を過ごしている。
    人はそれぞれに複雑な思いを抱えているのだと思うと同時に、自分の心の弱さの襞に触れられる感じがした。

  • もう一度読んでみたら違うものが見えそう

  • 短編小説
    この本も昔読んだことがあるずだ。
    2回目のはずだが、どこも記憶のフックに引っかからない。
    本棚にあっただけなのか、読んだことを忘れてしまったのか、今となっては分からない。
    でもこの本の表紙は記憶にある。
    あの頃は何をしていたのか。
    どうしてこの本を買ったのか。
    今となってはどうでもいい。
    でも奥と手前の二層式の白い本棚でその手前の右側にこの本があったのは覚えている。
    なぜそんな記憶ばかり喚起されるのかが不思議だ。
    昔、英単語を覚える作業ばかりしていた時もそうだ。
    綴りも分かるし、発音も分かるが意味が分からない。
    そんな時も決まって、あのページの左側の下にこの単語はあったんだと思い出すんだ。
    物事の本質を理解することよりも空間的な把握の方が記憶に定着しやすいのか。
    脳内記憶の媒体が上手く他の細胞に連動していない感じだ。
    さて、寝るか。

  • ジャケットと、持った時の薄さになんだか惹かれて購入。

    村上龍は、初めて。

    「海外に留学することが唯一の希望であるような人間」をテーマにした短編集で、短いながらも主人公たちの「眼」を通したストーリーは濃厚で面白い。

    精緻な描写は、話を硬質にさせるのに、そこに漂う彼らの希望だけはしっかりと温度を持っている。村上龍はこんな書き方をするなんだな、と興味を持った。

    一番初めの「コンビニにて」で、音響の仕事をしている主人公の、眼と音と回想の交錯がとても良かった。
    何気ないシーンから、しかし彼の父や兄を置いて、主体的な生き方を選ぶ回想の切り替え。

    最後の「空港にて」は、風俗で働く女が、蔑みながら、それでも真面目に自分の生を選ぼうとする姿が良い。
    理想論であっても、理想論ではないと言いきる人の存在って、大事なんだろうな。

    旅に出る前に、生き方に迷ったときに、ゆっくり読みたい一冊。

  • ありそうな場所で出会いそうな人がどんなことを思ってるか覗きみてしまったような面白さがあった。

    趣味は人間観察ですっていっているひとは、これくらいの観察力をもって何か思っている、としたらいいなとおもう。

    男目線より、女目線のほうが、興味深く読めた。

    作者が自身最高の短編とした「空港にて」はそこまでではなかったが、独特の「希望」の描き方に心をひかれた。

    コンビニにて、居酒屋にて、公園にて・・・・・と続いて、最後にあとがきが「アラスカにて」だったのは笑った。

  • 誰にも言えない気持ち。
    言葉にならない感覚。
    誰とも共有したことがない不安や混乱が、そのにはあって、なんだかホッとできる世界。

    ひとは弱くて、
    どうしても過去にとらわれがちになってしまうのが、混沌と描かれる。
    誰もそれに気づけなくて、そこから抜け出せない。


    131117読了。
    空港にて。すごく共感できる。
    期待と後悔と希望と不安と
    戸惑いと流されて行く様子が。
    自立することや
    たよることや
    いろいろなこと。

著者プロフィール

1952年長崎県生まれ。76年に『限りなく透明に近いブルー』(第75回芥川賞受賞)でデビュー。2003年には、514の職業を紹介した『13歳のハローワーク』が125万部を超えるベストセラーに。財政破綻した近未来日本を舞台にした『半島を出よ』(05年)では野間文芸賞を受賞。10年には『歌うクジラ』(毎日芸術賞)を電子書籍として刊行。 近著に『55歳からのハローライフ』、『オールドテロリスト』などがある。16年に『日本の伝統行事 Japanese Traditional Events』を刊行。

「2018年 『収録を終えて、こんなことを考えた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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