空港にて (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.17
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本棚登録 : 2429
レビュー : 290
  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167190064

感想・レビュー・書評

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  • 全編通して流れる空気感が好き。ある一場面を切り取ったお話なのに、それぞれの主人公が体験した物語が同時進行で語られて広がっていく。あとがきにもあるけど、境遇はあまり恵まれてないむしろ不幸の範囲に収まってる瞬間から、前向きに前進するであろうひとすじの光明が差している。そんな空気が漂っている。

    長編であるような幻想的な表現は抑えられていて、非常に読みやすい。内省的語り口にはなるけど、破滅要素はほとんどない。心がぽっと軽くなるような小説です。

  • 文章が好き ◯
    作品全体の雰囲気が好き ◯
    ひきこまれた ◯
    内容結末に納得がいった ◯
    また読みたい ◯




    何年かぶりに、本を手にした。
    リハビリ読書。
    題名を見て、なんとなく選んだ。

    私の今の希望ってなんなんだろう、と考えると戻ってこれなくなる。

  • 初めて読んだ村上龍作品。面白かった。
    引っ越しや入学・卒業、就職など、人生における転換点に立っていると感じる人に是非読んでもらいたい。

  • 2017年、25冊目です。

  • 「他人と共有することのできない個別の希望」を著者はこの短編集に込めたと言った。共有はできないが共感は出来たかもしれない。理不尽で困難な状況の中で希望を抱く自分と他人との距離感について。

  • エッジの効いた切れ味抜群の語り口と言いたいのだけれど、わたしには、なんだか訥々と思えて、それがむしろ愛おしかった。感情を削げるだけ削いだ、色のない文章から仄かに見える希望の光が、絶妙で巧妙でとても凄くて震えた。文体というものは、こんなこともできるのか、と。様々な小説を読むうちに、日本語を日本語として読むだけではない微妙なその小説の色のつき方みたいなものが、大分分かるようになってきて、その感覚がこの本を読んでいるときにふいに襲ってきた。それくらい、この文章は鮮烈なものだったし、そこから見える巧妙な希望もうつくしかった。
    この時代に、希望を書かずしてなにを書く、みたいなことを村上龍はあとがきで言っている。その論をみて、確かにそうだな、と思い、この人は小説を書く意味を正確に捉えようと努力して、そして書いているんだと痛切に感じ。信用というのはすごい。

  • 最後2編がいい。

    諦める理由は、実は周りが作り出すもので、自分の希望を貫く意志が未来を作り出す。

    鬱々とした文体、描写は、現状に対する不満、不満足の表れ。効果的。

    現状に希望が見えないから海外に、というのは安直過ぎるし、意味が分からないので、全うな理由が欲しいが、ちゃんと書かれているのも好感が持てる。

    果たして最高傑作かは別の話だと思う。

  • 時間の流れ方、意識の飛び方が素晴らしく好み。ゆるいようで、全ての物語が全力疾走。でも、ゆるい。

  • 今まで読んだ村上龍作品の中で一番良かった!
    本書のような官能的すぎずグロすぎず変態過ぎないストーリーの村上作品がもっと読みたい。
    どちらかというと平凡な一市民の寂しさや虚しさが詰まっていて、そこに実業家や売春業やワインの話が挟まっているのが良い。

    台詞にカギ括弧を付けずに堰を切ったように言葉が溢れ出してきて筆者のペースに巻き込まれてしまう文体なのが彼の特徴なのだと思う。
    それはそれで悪くない。

  • 少し読みだしたところで奇妙なデジャヴを感じた。

    昔、書店でタイトルが気に入り購入して読んだ単行本が、改題され文庫化されたものだったとわかったのは、1作読み終わって明確に読んだことがあることに気づき、目次を見てさらに確信し、奥付の右隣のページで確認してからだ。

    そのタイトルは、「どこにでもある場所とどこにもいないわたし」で、私は、こちらのほうが好みだ。ついでにいえば、接続詞としての 「と」 の代わりに句読点のみにして、「どこにでもある場所、どこにもいないわたし」であれば、音読したときのテンポがよくてなおいいのに、と思う。とはいえ、作者があとがきで書いているように、「それぞれの登場人物固有の希望を書き込みたかった」というテーマを踏まえて改めて眺めてみれば、なんとはなしにマイナスな雰囲気をまとっているように思え、改題は仕方のない選択だったのだろうと思うほかない。

    さて、前置きがやたら長くなったが、内容について言えば、村上龍のファンであれば、さすが、というほかないクオリティーだということだ。

    この人は、「現代」という流動的でとらえどころのないように見える時代の空気を的確につかむことに長けているばかりか、しかもマクロな目とミクロな目を併せ持っていてそれが絶妙にバランスしているものだから、もう、その才能と努力に嫉妬するしかない。

    そういう意味では、村上龍という作家の作品を読んだことのない方にとっても、入門編とも呼べるほど、アクは薄めだし、楽しめるし、考えさせられるし、なにより読後にすっきりと前向きになれると思う。

    お勧めの一冊です。

著者プロフィール

1952年長崎県生まれ。76年に『限りなく透明に近いブルー』(第75回芥川賞受賞)でデビュー。2003年には、514の職業を紹介した『13歳のハローワーク』が125万部を超えるベストセラーに。財政破綻した近未来日本を舞台にした『半島を出よ』(05年)では野間文芸賞を受賞。10年には『歌うクジラ』(毎日芸術賞)を電子書籍として刊行。 近著に『55歳からのハローライフ』、『オールドテロリスト』などがある。16年に『日本の伝統行事 Japanese Traditional Events』を刊行。

「2018年 『収録を終えて、こんなことを考えた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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