雲奔る 小説・雲井龍雄 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (1982年11月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784167192044

作品紹介・あらすじ

薩摩討つべし。奥羽列藩を襲った、幕末狂乱の嵐のなかを、討薩ただひとすじに奔走し倒れた、悲憤の志士雲井龍雄。その短く激しい生涯を、熱気のこもった筆で描く異色の長篇歴史小説。

みんなの感想まとめ

幕末の混沌とした時代を背景に、米沢藩士・雲井龍雄の一途な志と葛藤を描く物語は、国を思う志士と現実主義者たちの対立が織り成す深い人間ドラマを展開します。彼の行動は、時に周囲から「邪魔者」と見なされること...

感想・レビュー・書評

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  • 幕末から明治維新前後、国を思う志士有り、後の自分の立場がどうあれば得となるかの判断で動いている現実主義的人もあり藩も有り。
    雲井龍雄はそんな混沌の中にあって一途に国を思い迷う事なく動いていったのではないだろうか。
    その志は大いに賞賛できる。
    ただし、私から見ると現実的と思える新政府側となる人々、さらに軟着陸を望む旧幕府側の人々の目から見る彼は正論を大上段に掲げて歯向かい、圧力に屈しない扱い難い、言うならば邪魔者であったのではないか。
    けれど、もし彼の正義が通った時に果たして後に日本は今よりも良くなっていただろうかと疑問を持つ。

    本作品を読んで感じるのは、その頃いかに佐幕派と討幕派が混沌としていたかという事でした。
    同じ藩でも意見が割れ、状況によっていずれにも傾く、考えてみれば生き残るための当然の動きをしていたのだなあという事です。
    酷いのは、藩の存続のために生贄を出すこともやぶさかでないという現実があるという事。

    権力者の横暴から現在の日本でも似たような事が時折顔を見せていると思う。
    違うのは現代ではこれだけ情報網が発達しているにもかかわらずそういった悪事が握りつぶされているらしい事だと感じるのです。
    もはや新聞、テレビなどのマスメディアは信頼できないのだろうか。
    だとすればソーシャルメディアの働きに望みをかけたくなる。
    今ひとつ信頼性に欠ける気がするのは、それを利用する側にこれからのソーシャルメディアの重要性に気付いていない人々が多いからなのかなあ。

  • 藤沢周平氏は山形県出身。解説でいわく「自分の郷里で幕末維新にかかわった人物がふたりだけいる。それは清河八郎と雲井龍雄である」ということで、歴史小説よりも人情もの時代小説の印象が強い藤沢周平に2作だけ歴史小説があります。ひとつは清河八郎を描いた『回天の門』、そしてもうひとつが本書、雲井龍雄を描いた『雲奔る』

    米沢藩士・雲井龍雄は弘化元年生まれなので平均的に若い幕末の志士の中でもかなり若手。最初はいわゆる勤王の志士の活動をしていたが、戊辰戦争開始後は会津の窮地を救うために立ちあがる。しかし奥羽越列藩同盟は瓦解。

    終戦後、新政府に出仕するも明治3年、反乱を企てたとして(雲井龍雄の乱)処刑される。大量の処刑者を出したこの乱ですが、実は現在では冤罪の見方もあるようです。龍雄のもとに不平士族が集まっていたのは事実だけれど、実際にアクションを起こすまえに全員逮捕、厳罰に処されたので、他の不平士族への見せしめ的な意味合いだったのではと。

    後半に少し永倉新八も登場。

  • 藤沢周平にはめずらしい幕末もの、しかも歴史小説っぽい(時代小説でない)。反幕の心と同時に、討薩に心を焦がし、長土連合構想を目指す米沢藩士雲井龍雄の物語。時代に少しずれている幕末の志士を主人公にするところが、藤沢周平らしい。市井もの、下級武士ものとは、一味違った趣がある。

  • 1982年第1刷、文藝春秋の文春文庫。単行本は『檻車墨河を渡る』。歴史小説らしい作品。最も重要と作者が考えた大政奉還以後の部分が大半。それより前は重要なエピソードがあるのみ。この作者の場合、時代小説が有名なため、なんとなく主人公が実在でなく作り物めくかとも思ったが、そんなことなかった。激しい性格だったらしい。明治政府の基盤が脆弱な時代の犠牲者となるのだろう。

    あとがき:「あとがき」(昭和50年3月)著者、

  • 作者の藤沢周平さんが「あとがき」で書いてる。
    「私の郷里から、明治維新と呼ばれる激動期に、志士として積極的にかかわった人が二人いる。一人は清川八郎であり、一人が雲井龍雄である」
    本書は、幕末の米沢藩士、小島龍三郎こと雲井龍雄のものがたり。
    逆上せを併せもち、安井息軒の三計塾きっての俊才と言われた27年の人生は、激しく、潔い。
    冒頭の高畠屋代郷警備から小伝馬町の牢屋敷で梟首されるまでの6年間は、明治維新史的には日の当たらない人生かもしれないが、“米沢の賊魁”と呼ばれた先人の行動は、郷里の後輩たちに生きる矜持と勇気を与えてくれる。

  • 副題「小説・雲井龍雄」。単行本『檻車墨河を渡る』改題。
    藤沢さんの数少ない本格的な歴史長編小説。
    主人公の雲井龍雄は幕末期の米沢藩の尊皇の志士。反幕でありながらに戦争よる政権転覆を目指す薩摩藩を嫌い、新政府軍の東征が東北に及ぶと「討薩檄」を著し奥羽越列藩同盟の奮起を促した人です。

    でも今一つ魅力に欠けます。秀才であり努力の人なのは良いのですが、正論を声高に主張し、反対意見の相手はやりこめるまで満足しない「逆上(のぼせ)」癖を持つ。情熱と理念先行の人で漢詩が得意。多くの人に頼られた一方、実務は弱く策は実を結ばない。これが司馬遼太郎が描く竜馬のような人なら物語として弾むのですが、実像を描こうとしたのでしょうね。
    しかし歴史に埋もれた(多分に明治政府に寄って封じ込められた)こういう人物を掘り起こし、幕府や薩長側からでは無く、東北側から描いた幕末という意味で興味深いものが有ります。
    歴史小説を描く藤沢さんは文章まで変わります。お得意の心情を示すような風景描写は少なく、事実を淡々と述べているような文体です。その中で主人公が新政府に政府転覆の陰謀を疑われ、檻車に乗せられ東京に護送され場面、妻のヨシが檻車の後を追うシーンは周平さんらしく光ります。

    初めに「藤沢さんの数少ない本格的な歴史長編小説」と書きましたが、調べてみると『義民が駆ける』『一茶』『回天の門』『蜜謀』『白き瓶』『市塵』『漆の実のみのる国』、結構ありますね。

    ========
    余りに繰り返し読んだ挙句、ストーリーが完全に頭に定着してしまい、2009年を最後に再読を封印してきた藤沢さん。
    先日から封印を解き、全作品を出版順に読み返しています。これが4作品目です。

  • 海坂藩士じゃなくって米沢藩士雲井龍雄の幕末維新を駆け抜けた短い生涯。藩一頭の秀才にして維新後も米沢を代表する官吏として処遇されながらも最後は大獄に散った若き俊英。西南戦争まで待てれば何か違ったのかも。
    秋月悌次郎とも通じる敗者の美学としか言いようのない東北雄藩の人々の想いを見事に表したけっさ。

  • つまらないので中々進まない。読み終えたときの達成感は高い。

  • 雲奔る
    いまさら藤沢周平シリーズ第2弾。
    「漆の実のみのる国」も
    希望のない物語だったけど
    こちらもなかなかの希望のなさ。

    個人的には(ここ大事)
    坂本竜馬とか西郷隆盛とか
    維新のあっち側の人たちに
    あまり興味・関心がないので
    希望がないながらも
    何事かを成し遂げたい、
    という気持ちは気持ちとして
    結果的に何事も成就しない
    苦しみとかもどかしさに
    非常に強く感情移入してしまいました。
    と、同時に
    維新のこっち側の話が
    気になってしゃあない状況に。
    しょうがないから
    そろそろ司馬遼太郎の『峠』に
    手を出そうかな、と。


    藤沢周平の事実に基づいた本、
    もっと読みたかったな、
    という気持ちでいっぱいです。

  • 他の藤沢作品と大きくことなる。司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」のような作品。

    ただしこちらの舞台は、米沢藩。奥羽越列藩同盟。となるので、歴史が語るように未来は見えているのである。ただ、主人公の雲井龍雄なる人物を知らないので、どのように結末になるのか非常に面白く読むことができた。

    他の藤沢作品と異なるので注意が必要。

  • この話は読み難くて一日3~40ページくらいしか進まず、仕方なく延長して借りて、昨日やっと読み終えた。
    いや~読んでてなんていうか。辛いっていうか苦しいっていうか。
    私には政変がごたごたずらずら書かれた内容って合わないというか・・・興味が湧かないのだ、と痛感したわ^^;
    まぁ男が自分の藩を救おうと、山形の山奥でウツウツとするのを嫌い東京や京都に上って時代の流れの中に身を投じるのは勝手だけどさ。
    それを待つ身にもなってみろよぉ。。。と、ひたすら仕送りして待ち続ける、
    姑や嫁さんに同情してしまったり^^;。
    ま・早く言ってしまえばこの話しの中の主人公、雲井竜雄の激烈な性格が
    あまり好きになれなかったのかもしれない。
    「あー死ぬまで頑張ったのねぇ・・・」って話しではあったのだが。^^;

  • 山形などを舞台とした作品です。

  • 薩摩討つべし。奥羽列藩を襲った幕末狂乱の嵐の中を、討薩ただ一筋に奔走し、志半ばで倒れた男。悲憤の志士・雲井龍雄のみじかく激しい生涯を描く異色歴史長篇。

  • 「‥いわば、藩が遠ざかったような気分が龍雄にある。‥あれほど愛し、忠誠を誓った藩とは異質の、得体の知れないものに、米沢藩全体が変貌しつつある、‥」

    激しく憤り、やがて断罪にのみこまれた男の寂滅。

  • 未読。10月31日購入。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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